2021年8月9日月曜日

2021 INDYCARレポート R11 ビッグ・マシーン・ミュージック・シティ・グランプリ Race Day 決勝:ナッシュヴィルのストリート・レースを制したのはマーカス・エリクソン

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「空が見えた、地面にたたきつけられた!」

 まさか、レース序盤に宙を舞ったドライヴァーが表彰台のてっぺんに立つことになるとは……。
 「空が見えた。地面に叩きつけられた。その後にピットに戻ろうとしている間にフロント・ウィングが前輪の下に入ってステアリングが効かなくなり、壁にヒットしてフロント・サスペンションを少し傷めた。自分のレースは終わった、とあの時には考えていた。ところが、僕は優勝することになった。自分でもどうやって勝ったのか、まだ完全には把握できていない」とナッシュヴィルの初代ウィナーになったマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)は語った。
 デトロイトでのレース1では、赤旗中断からのレース再開時にトップだったウィル・パワー(チーム・ペンスキー)のエンジンがかからず、2番手だったエリクソンがトップに浮上し、そのまま優勝した。”棚ぼたの勝利だった感”は否定できなかった。しかし、今回の勝利はスウェーデン出身の元F1ドライヴァーが素晴らしいドライヴィング・スキルを発揮して掴んだものとなった。リスタート直前の、前述のアクシデントを除いては……。

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圧倒的な速さを見せていたハータはミスで自滅

 ゴール前には6回のタイトル獲得歴を誇る先輩チームメイト、スコット・ディクソンからプレッシャーを受けたエリクソンだったが、これを退け、最終的に1.5秒以上の差をつけてゴールした。その前には、今週末に行われた2回のプラクティス、そして予選で決定的に速かったコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート)による猛チャージに晒されながら、それを跳ね返し続けて見せた。ハータはブレーキング・ミスによるクラッシュ、リタイアという結果に終わり、チップ・ガナッシ・レーシングの1−2フィニッシュとなった。

「ハータのアタックを退けつつ、燃費もセイヴする
自分のレーシングキャリの中でベストな走りだった」

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  「今週最速だったハータとの戦いでは、燃費が厳しい状況にあったので、その目標となる数字を達成しながら、彼を背後に封じ込めるというふたつの難しい課題に直面していた。彼の攻撃を退けつつ燃料もセイヴする。これを成し遂げることができたのは本当に嬉しい。自分のレーシング・キャリアの中で、ベストの走りになっていたと感ずる」とエリクソンは語った。「彼が追いついて来た時、あのままトップを守れるとは考えられなかった。相手がとても速いとわかったいたから、封じ込め続けるのは難しいと思った。それでも、相手がパスできないところで燃費をできる限りセイヴできる走りをしようと考え、それに全力を投じた。自分の経験をフル活用してハータを抑え込んだ。それをトライし続け、目指した目標を達成できた自分を誇りに思う。彼は表彰台に立つに充分な走りをしていただけに、クラッシュしてしまったのは残念だ。それは、彼もまた全力で勝とうとプッシュしていたことの証明だと思う」とエリクソンはバトルを振り返っていた。

「トップ・レヴェルのシリーズで戦い
勝つことができている今の状況は本当に嬉しい」

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 80周で争われたレース、その5周目にエリクソンは空を飛んだ。マシンは大きなダメージを受け、ストップ&ゴーのペナルティも課せられた。しかし、マシンの修理を施したピット・ストップでタイヤを交換し、燃料補給をして不利を最小限に抑え、奇跡的とも言える勝利に繋げることとなった。

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 「インディカーでは何が起こるかわからない。プッシュし続ければ、今回のようなチャンスが訪れることもある。常に20人ものドライヴァーたちが優勝の可能性を秘めているなんていうレースを行っているシリーズは、世界中どこを探してもインディーカー以外には見当たらない」ともエリクソンは話した。「序盤のアクシデントの後は最後尾まで順位を下げたし、マシーンにもダメージがあったので、できる限り上位でフィニッシュすることを目指すつもりだった。トップ15に入れたらよい……ぐらいに考えていた。しかし、チームの作戦が素晴らしく、ピット・ストップは速く、多くのアクシデントがあの後にも発生したことで自分たちにもチャンスが回って来た」とエリクソン。「F1では小さなチームで走り、常にバックマーカーだった。その苦しく、長い時期を過ごした後だけに、こうしてトップ・レヴェルのシリーズで戦い、勝つことができている今の状況は本当に嬉しい。このままチップ・ガナッシ・レーシングで長く走り続けたい」とエリクソンは笑顔を見せた。

チップ・ガナッシのシーズン1-2-3の可能性も!

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 今シーズン2勝目を挙げた3人目のドライヴァーとなったエリクソン。ポイント・スタンディングは5番手で変わらないが、トップを行くチームメイトのアレックス・パロウとの差は104点から79点に縮まっている。
 「チップ・ガナッシ・レーシングでシリーズ・ランキングの1−2−3を独占する。それが目標だ」ともエリクソンは語った。今日のレースで2位フィニッシュしたディクソンは、パト・オーワード(アロウ・マクラーレンSP)を抜いてポイント・スタンディング2番手へと浮上した。エリクソンはそのオーワードとの差が31点しかなく、チャンピオンは難しくとも、ランキング3位を充分狙える位置につけることとなっている。


ホンダ勢がトップ7をスウィープ
ニューガーデンはかろうじてトップ10に

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   今日のレースで3、4位フィニッシュしたのはアンドレッティ・オートスポートのヴェテラン2人、ジェイムズ・ヒンチクリフとライアン・ハンター-レイ。5位は今シーズン6回目のトップ5入りとなったグレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)で、6位はエド・ジョーンズ(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・ヴァッサー・サリヴァン)。ポイント・リーダーのアレックス・パロウは7位でゴールした。ホンダ勢はトップ7を独占。

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 シヴォレー最上位はフェリックス・ローゼンクヴィスト(アロウ・マクラーレンSP)の8位で、9位はインディー500で優勝して以来初レースとなったエリオ・カストロネベス(メイヤー・シャンク・レーシング)。前戦のミッド・オハイオで今シーズン初勝利を挙げた、ナッシュヴィルを地元とするジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)は10位だった。

佐藤琢磨、好走を見せるもアクシデントに巻き込まれる

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 佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は24番手スタートから序盤の18周で13番手まで大きくポジション・アップしたが、20周目のリスタートでアクシデントに巻き込まれ、サスペンションを傷めたためにリタイアを余儀なくされた。

 

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 今シーズン初めて完走を逃すレースとなった。リスタートが告げられた直後、4ポジション前を走っていたウィル・パワー(チーム・ペンスキー)がチームメイトのシモン・パジェノーのインへと飛び込んで体当たり。アウト側の壁へと追いやられたパジェノーは、リナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)を巻き込み、2台でコースを塞いだ。

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 「安全にアウトから……と思ったら、ヴィーケイもタイヤウォールにヒットしていて、行き場を失いました」と琢磨はクラッシュの状況を説明した。「決勝用に施したマシン・セッティングは良く、コース上でのバトルでスコット・マクロクリンとエリオ・カストロネヴェスをパスできました。ターン4への進入でのパスでした。そのことが示す通り、自分たちのマシンは良いものになっていたんです。あの後もおもしろいレース展開となっていたので、レースに残り続けたかったですね」と琢磨は残念がっていた。生き残ることさえできれば、上位でのフィニッシュも可能なレースとなっていたからだ。
 次戦はインディアナポリス・モーター・スピードウェイで開催される今シーズン二度目のロードレースだ。
以上

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