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2012年9月5日水曜日

2012 INDYCAR レース アナリシス:R14 グランプリ・オブ・ボルティモア その2 態勢の立て直しに成功したライアン・ハンター-レイ

シーズン最多の4勝目をハンター‐レイが挙げた。精神的安定度を取り戻したその裏には何があったのか?? Photo:INDYCAR LAT USA
 醜態さらした前戦から一転、謙虚な姿勢を取り戻したハンター‐レイ

 ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)=RHRは第13戦ソノマで3位を走っていたレース終盤、アレックス・タグリアーニ(ブライアン・ハータ・オートスポート)にヒットされてスピンし、ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)に大きくポイント差を広げられた。表彰台フィニッシュを逃して彼はプッツン。リスタート後にまったく無関係のEJ・ビソ(KVレーシング・テクノロジー)を突き飛ばし、ゴール下の後にはテレビのインタビューでタグリアーニを大馬鹿呼ばわりしていた。前々週のミッド・オハイオでエンジンにトラブルに遭い、2レース続けて上位フィニッシュを逃したんでキレちゃったんだろうが、RHRの履歴を考えれば他人様のことを非難する資格なんかない。ましてや、八つ当たりのビソ突き飛ばし行為は「列の最後尾へ」なんて甘いペナルティで済むもんじゃない。数レースの出場停止を言い渡されても文句を言えない悪行だった。少なくとも、半年とか1年の執行猶予つきで彼は監視下に置かれるべきと思う。
 それが、ソノマの翌週のボルティモア戦を迎えてみると、RHRは自分の行為を深く反省していたようだった。「まだチャンスはある。この状況は覆せる」とコメントは真摯なものになっており、冷静にチャンピオン争いに臨む姿となっていた。自らの不運を嘆いて喚き散らし、ミスをした相手を口汚く罵っていたあの男が……。


的確だったマイケル・アンドレッティの指示
対するペンスキーはまたも裏目に


 RHRも、彼がタイトルを争っているパワーも、レースで不運に遭遇するケースは確かに少なくない。しかし、アンドレッティ・オートスポートのオーナー、マイケルの現役時代と比べたら、彼らなんてまだまだ幸運な方だ。そのマイケルがソノマでのレースの後、あるいはボルティモア入りした時、RHRに何かを言葉をかけたのかもしれない。とくとくと誰かを諭すようなタイプではないマイケルだけれど、不運を跳ね退けて歴代3位にランクされる42勝を挙げたドライバーの言葉には十分な重みがあるはずだ。
 そして、RHRのピットで陣頭指揮を執っているマイケルはレース中に雨が降り出した時、「タイトルを獲りに行く。そのためにはパワーと同じ作戦を選んでいてはダメだ。チャンピオンになるためにここはスリックで行く」と無線でドライバーに告げたという。走っている当人にタイヤチョイスを相談するのではなく、スリックでのステイアウトを命じたのだった。RHRはレイン・タイヤへのスイッチの方が妥当な作戦と考えていたが、マイケルが攻めの作戦へと舵を切り、それは見事的中した。対するパワー&ティム・シンドリック(ペンスキー・レーシング社長)のコンビネーションは、このところ作戦がことごとく外れている。最終戦フォンタナはどうなる??


2012 INDYCAR レース・アナリシス R14 グランプリ・オブ・ボルティモア その1 人気のイベントに水を差したインディーカーのプロフェッショナリズムの欠如 

ボー・バーフィールド自ら初日の仮設シケイン設置を手伝うことに。Photo:INDYCAR LAT USA

インディーカーが救済して開催にこぎつけたイベントだったが
 
 ボルティモアのダウンタウンを使ったレースは初めてだった去年から大盛況だった。しかし、プロモーターはレースを放り出した。レース開催地である市とのモメゴトがあったりしたからだ。「首都ワシントンDC近郊の、大きなマーケットでのレースは極めて重要」。そう考えたインディーカーは、世間に広く名の知れているチーム・オーナーで、イベント・プロモーターとしての活動も活発化させているマイケル・アンドレッティを広告塔に仕立て上げ、救済に全力投球した。ミルウォーキーとまったく同じパターンだ。おかげで盛り上がった新イベントがたった1回だけで消滅することは避けられた。
 ただ、グランプリ・オブ・ボルティモアに関して残念だったのは、レースといういちばん肝心なところが、つまりはシリーズを主催するインディーカーのプロフェッショナリズムの欠如が目立ってしまっていた点だった。

今年のウリだったシケイン撤廃のストレートは半日で終了

 
 「オーバーテイクを増やし、ファンに喜んでもらいたい」。インディーカーが拘るそのコンセプトはよくわかる。大賛成でもある。しかし、「今年はシケイン撤廃!」と大々的に宣伝をしておきながら、金曜に走り出した途端に「やっぱりシケインがないと危険」となったのにはアキレた。カッコ悪過ぎ。インディーカーの競技担当社長のボー・バーフィルドは、「去年、シケインを通過できずにまっすぐハイスピードのままシケイン部分を突っ切ったドライバーたちが、”ダイジョブだと思う”と証言した」とか、「去年から今年で路面電車の線路部分の形状が大きく変わったのだろう」などと説明していたが、AJ・アルメンディンガーの薬物疑惑並の説得力の低さだった。プラクティス1は全ドライバーが走る前に早めに切り上げられ、プラクティス2は遅延&走行時間が半分に縮小、サポート・レースの走行もストップさせて路面を削る作業が数時間行なわれた後、結局は醜いタイヤを積み上げた仮設シケイン設置。3デイ・イベントの初日はかなり空虚な1日になってしまっていた。
 2年前のサン・パウロ初開催の時も、「サンバ会場の路面が滑り過ぎて危険」と判明、グラインダーでツルツルをザラザラに換える作業が夜を徹して行なわれた。インディーカー・シリーズは、自分たちのマシンがどういうコースを必要としてるかをちゃんと把握してないの? コース設営のコンサルト会社なんてもんを雇っているが、彼らはまるでプロじゃないってこと。即刻お払い箱にして欲しい。今回の件に関しちゃ損害賠償だって請求できるぐらいと思う。おそらく、現地に赴いての調査なんて、ほとんどしてないってことなんだろうから。
 

こちらがくだんのフラッグマーシャル氏。写真はすでに勝負あった最後のリスタート。問題のリスタートはこの前のリスタートだ。Photo:INDYCAR LAT USA
レースの勝敗を分けた不明朗なリスタート
その責任はフラッグマーシャルにあり


 肝心のレースでは、スターターがグリーンフラッグを振るタイミングを心得ていなかった。毎度々々早めに振っていた彼(インディーカーの職員)は、終盤のリスタートでそれがさらに早まっていた印象だった。バーフィールドも、あのスターターのタイミングでオッケーだと捉えていたとうことなんだろう、遅らせる指示は出さなかったようだ。
 隊列の整っていないバラバラのスタートは、ファンに対する裏切り行為だと思う。キッチリ2台ずつが並んで、前後のマシン間隔も揃ったキレイな状態でグリーン! 一斉に加速し、ターン1に塊で到達してブレーキング競争、というのをみんな見たいんだから。そういうレースにできるよう、シリーズもドライバーも全力を尽くして欲しい。
 終盤、トップを走っていたライアン・ブリスコー(チーム・ペンスキー)は、2番手のライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)が横に並び、隊列が整うまで加速を待った(今どき珍しい人の好さだ。私は嫌いじゃない。先輩チームメイトのエリオ・カストロネベスだったら、2位がシケインにいる間に加速をし始めちゃうだろうに)。ところが、スターターの方は隊列なんぞに構っちゃいなかった。グリーンフラッグだけに注目していたハンター-レイ(こういうのをスマートと呼ぶ人もいる)が加速で優り、ブリスコーは2位フィニッシュでハンター-レイとオフィシャルの両方に対して不満を唱えることになった。ブリスコーに強く肩入れしたいのではない。彼の誠実さは高く評価するけれど。私が残念なのは、あのいちばん大事なスタートが、今年のボルティモア戦でいちばんバラバラな、見た目も汚いスタートになっていたところ。もうブリスコーはプッシュ・トゥ・パスの残りがゼロで、ハンター-レイは19秒とか残していたから、隊列が整ってからのグリーンフラッグでもハンター-レイが前に出ていた可能性は高い。それでもブリスコーはキッチリ隊列が整ってのスタートになるのがフェアだと考え、行動していた。実に潔い。
 そもそも、シケイン設置で2台が並んだ隊列になるのは4列目ぐらいまでになっていた。9番手のドライバーぐらいからはシケイン通過中にグリーンになっちゃってたのだ。こういう事態を避けるには、シケインとコントロール・ラインの距離をもっともっと離すしかない。来年はそういう改善がされていることを望みたい。これはロング・ビーチにも言えること。ヘアピンをまだ立ち上がっていないマシンが半分以上いる(彼らはほとんど止まっちゃうぐらいに遅いスピード)うちにトップ・グループは一斉に加速しちゃうなんて、フェアじゃなさ過ぎる。悪しき伝統は変えてかないと。

2012年7月25日水曜日


佐藤琢磨の2位フィニッシュは自己ベスト更新、歴代日本人の最上位タイ
そして、1シーズン複数回表彰台は日本人として初の快挙だ
Photo:Masahiko Amano\Amano e Associati
優勝のカストロネベスはブラックタイヤでスタート 佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング=RLL)が、エドモントンでの第11戦で自己ベストとなる2位フィニッシュを記録した。今年2回目の表彰台だ。そして、今日のレースでの彼の戦いぶりは、まさしく優勝まであと一歩というものだった。
 しかし、2位と1位の間にある差は、3位と2位の間にあるものより遥かに大きい。エドモントンでの第11戦は、それを痛感させられるレースともなっていた。5番手スタートで優勝したエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)と、2位フィニッシュだった琢磨、両陣営の差は、例えばタイヤマネジメントに現れていた。
 今回のレースは非常に稀なケースで、予選の第2セグメントがウェットコンディションとなって、多くのトップコンテンダーたちがフレッシュレッドを2セット持って決勝スタートを迎えていた。普段通りに3セグメントがフルにドライで争われていたら、セグメント1敗退の後方グリッド組はフレッシュレッドを2セット有しているものの、それ以外のドライバーたちは決勝で使えるフレッシュレッドは1セットのみとなる。
 予選でトップ6に食い込んで上位グリッドから戦うレースを豊富に経験して来ているペンスキーと、今回がロードコースでのトップ6入りが初めてだったRLL、その差がエドモントンでは出ていた。


経験値の少ないRLLにとって、正攻法のレッドスタートは誤りではない
 ブラックでのスタートが正解。それは結果論だ。今回の場合、ペンスキーは様々な経験を踏まえてブラックでスタートする作戦を選んだ。近頃は脱セオリーで、ブラックスタートに勝機を見出そうとするチームが増えている。実際、今回のレースではブラック装着でスタートしたチームの方が明らかに多かったほどなのだ。以前なら、ある程度中団に埋もれている、あるいは後方グリッドからスタートするチームがブラックスタートを選ぶパターンだったが、トロントで6番手スタートからライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)が優勝したように、近頃では上位グリッドでも敢えてライバルたちと異なる作戦を選ぶケースが出て来ているのだ。
 RLLはといえば、レッドでスタートして上位のポジションを保ち、順位の安定する中盤はブラックで戦い、勝負どころとなる可能性の高い終盤はまたレッドで……というオーソドックスな戦い方を採用していた。ドライバー、チームともども上位スタートの経験値の少ない彼らとすれば、まずはセオリー通りに戦い、データやノウハウをチーム内に蓄積させる必要があるからだ。
 3年連続、合計4度のタイトル獲得経験を誇るダリオ・フランキッティを擁するチップ・ガナッシ・レーシングでさえ、今日のレースをポールからスタートするにあたり、レッドでのスタートを選んでいた。オーソドックスな作戦とは、つまりは理論的に正しい作戦だからだ。そして、彼らや琢磨陣営のようにオーソドックスな作戦を多くのチームが採用するからこそ、奇襲的に異なる作戦を選ぶチームが現われるのだ。


ピット作業でもアドバンテージがあったペンスキー
 ペンスキーは3カー体制を活かし、フロント・ロー・スタートのライアン・ブリスコーにはセオリー通り、つまり琢磨と同様のレッドスタートをさせ、5番手スタートだったエリオと、17番手スタートだったウィル・パワーのふたりにはブラックスタートを選択させた。5番手という上位スタートのエリオにブラックを履かせた大胆さが今回は見事に当たったということだ。
 その一方でRLLは1カー体制で戦っており、作戦を分散させることは不可能。経験の量からしても、今回はオーソドックスな作戦を選ぶのが当然だった。そして、同じ作戦を選んだチーム群の中で、琢磨とRLLは最良の結果を手に入れた。
 作戦以外でも、ペンスキーは確実かつ迅速なピットストップでRLLよりも優位にあった。エドモントンでは2回のピット・ストップが両方ともグリーン下で行われていた。小さなタイム差が如実にコース上での差に繋がる状況だったのだ。RLLもこのオフに作り上げたチームとしてはピット・ストップのクォリティーは高く、今回もミスはなかった。しかし、カストロネベスが1回目のピットストップで琢磨の前に出て、2回目のピットではタグリアーニの前に出た。それは彼らのピット作業の速さによってだっただろう。


2位という経験が、RLL優勝へのジャンピングボートに
 ジャスティン・ウィルソンとデイル・コイン・レーシングがテキサスで勝利したように、ペンスキーやガナッシといえども倒せない相手ではない。今、インディーカー・シリーズの競争は益々激しく、ハイクォリティになっている。ほんの小さなアドバンテージが優勝をもたらし、ごく小さな不利によって勝利から遠ざかってしまう。今回、琢磨とRLLはひとつ大きな経験を彼らの中に積み上げた。今後は作戦にも今まで以上の幅が生まれ、より広く、深く様々な要素を検討した上でレースの戦い方が選ばれて行くようになるだろう。それは彼らが、また一歩チームとしてのレベルを上げるということだ。残る4戦のうち、3レースの行われるコース(ミッド・オハイオ、ソノマ、フォンタナ)で事前テストを行うことにもなったRLL。彼らのシーズン終盤戦の戦いぶりが非常に楽しみだ。

2012年6月21日木曜日

2012 INDYCAR レースアナリシス:R8 ミルウォーキー Part2 ライアン・ハンター-レイの今季初勝利 シボレーがトップ6独占で今季5勝目


Photo:INDYCAR\LAT USA
 今回、燃費競争はシボレーが若干優位

 去年のミルウォーキーでは1周目にクラッシュしたライアン・ハンター-レイ=RHR(アンドレッティ・オートスポート)。さすがに今年は慎重だった。スタート前の雨で路面が悪くなってもいたし、序盤はポールスタートのダリオ・フランキッティ(チップ・ガナッシ・レーシング)の後ろで様子を見ていた。
 リードを奪いに行ったがそれを阻まれ、RHRはタイヤ&燃料セーブに作戦を。ところが、1ラップ先にピットしたのはシボレー搭載のRHRで、ダリオ(ホンダ搭載)よりもっと燃費の良かったEJ・ビソ、ルーベンス・バリケロのKVレーシング・テクノロジー(どちらもシボレー)勢ふたりが第2スティントで1-2体制に。RHRは3番手で我慢の走行。ダリオはここから下り坂に。
 今回の燃費競争はほぼ互角か、シボレーが若干有利だった。
 第3スティントはステイアウト作戦に出てエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)がトップを走った。RHRはピットでバリケロをパスし、リスタートでビソを抜いて2位へと浮上。残り84周となる142周目に大きくリヤを滑らしたエリオを抜いてリーダーの座にようやく躍り出た。超ロングスティントになっていたエリオはタイヤが終了。トップに立ったRHRはそのままゴールへと突っ走った。今シーズン初勝利=通算6勝目。アンドレッティ・オートスポートも今季初勝利。ついでに書けば、アメリカ人ドライバーも今季初優勝!


マイケル譲りのタイヤマネジメントが功を奏した

 しかし、RHRは楽勝ではなかったという。「トップに立ってからもリスタートが何度かあった。あれは嬉しくなかった。グリーンでずーっと行って欲しかった」。しかし、リスタートでもトップをキッチリ守っていた。彼は勝利の要因として、タイヤを大事にしていたこと、いつ攻めて、いつ流すかメリハリをつけていた点を挙げた。ピットで指揮を取るマイケル・アンドレッティ(今季途中から)について、「彼はこのコースを、そしてミルウォーキーでのレースを知っている(5勝の実績)。彼からのアドバイスが僕の耳には常にあった」とも話した。「グリップが必要な時にちゃんとあるように」というのがマイケルのアドバイス。RHRはタイヤを労ることに注意を払い、しかし、スタートやその他の時でも必要と考えた時には思い切りアグレッシブに走った。また、1スティントの中でマシンが大きく変化する点がショートトラックレースの難しさ&おもしろさで、今回そのアジャストもRHRとアンドレッティ・オートスポートは実にうまく行っていた。

シボレー・エンジンはタレる? 気になるカナーンのコメント

 RHRが最後に戦う相手となったのは、トニー・カナーン(KVレーシング・テクノロジー)だった。リスタートの旨さに定評のあるベテランファイターだ。RHRはその件に関して、「トニーが相手で良かった。なぜなら、僕らはクリーンにレースを戦う仲だからだ」と答えた。えぇっ!? それってまさか、「トニーのリスタートなんて何とも思っちゃいないサ」って意味ではないよね? 「相手によってクリーンだったり、そうでなかったりしまーす」ってことでも……ないよね?
 そのTKだが、チームメイト2人には差を見せつけたものの、RHRには手が出なかった。最後のピットストップとその後の5周で4台をパスしたのは、クルーのピット作業、TKのかけたスパートの両方が良かったため。
 気になったのは、「自分たちのマシンはスピードがなかった」とTKがシェビーV6のパワーダウンがあったかのようなコメントをしていた点。同じシェビー・ドライバーのマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートポート)に至っては、「ウチのエンジンは疲れちゃってたみたいでサ」と、パフォーマンスの悪かった理由としてエンジンのパワーダウンを挙げていた。規定マイレッジ間近になるとシェビー・エンジン、性能ダウンが大きいのか?? だからカナーンとビソ、ペナルティ覚悟でアイオワ前にエンジン交換を決断?? マルコのエンジンはこのレースでマイル完了なのか?? 交換の話はまだ出ていない。


ともあれ、シボレーは1位から6位を独占

 不満を漏らす者もいるが、シボレーはミルウォーキーで1-2-3-4-5-6フィニッシュ。3連敗の後に今季5勝目。ホンダに4勝のタイには持ち込ませなかった。ホンダ勢トップはインディーから1戦ずつフィニッシュ順位を上げて来ているアレックス・タグリアーニ(ブライアン・ハータ・オートスポート)の7位。意外や、3連勝の後に今シーズンのここまでで最悪のリザルトをホンダは記録することとなった。トップ10にもう一人入れたのが9位のグレアム・レイホール(チップ・ガナッシ・レーシング)。トップ15までで見ても、11位のスコット・ディクソン(ガナッシ)と13位のシモン・パジェノー(シュミット・ハミルトン・モータースポーツ)が加わるのみ。トップ15の11人までがシェビー・ユーザーに占められた。シーズン半分終了、マニュファクチャラー・ポイントはシボレー63点に対して、ホンダ56点。ロータスは32点。

2012 INDYCAR レースアナリシス:R8 ミルウォーキー Part1 それにしても……のミスジャッジ

今年からの新競技担当が犯したミス
Photo:INDYCAR\LAT USA
 今年からインディーカーの競技担当社長に就任しているのが、ボー・バーフィールドという男。前任者は傲慢で、権力欲の塊で、批判を許さない恐怖政治を行おうとしていた。思ったより長くその座にいたが、去年限りでようやくいなくなってくれた。もう雨が降ってる中でオーバルレースにリスタートが指示されることは二度とないだろう。何より嬉しいのは、後ろを走ってる人に優先権を与える、レースってものを根本から揺るがすような頓珍漢なルールが消えてなくなっている点。
 バーフィールドは、テキサスでのウィル・パワー(チーム・ペンスキー)の走りにビシッとブロッキングのペナルティを下した。あれは実に正しく、毅然としたものだった。
 リスタートは1列か、2列か? これは難しい問題だ。ルールをもっと詳細に定める必要があるように見える。彼に与えられた今後の課題だろう。
 今回、バーフィールドは大きなミス・ジャッジを冒した。それも、チャンピオン争いをしているスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)に対して。


なんと、1周前のビデオを誤って確認していた!?
 103周目のリスタートでディクソンがフライングをした、というのが彼らの判断だった。ペナルティ通達が少々遅れたのは、バーフィールドらレース・コントロールがタイミング&スコアリングシステムの一部である時計と、ビデオ映像を併用して確認をしていたから。ところが、彼ら(バーフィールドのブレインとして働いているアリー・ルイェンダイクやジョニー・アンサーらのはず)がジックリとチェックしてたのは102周目の映像だった。バーフィールドは進行し続けるレースに注意を払い、フライングの判断は彼のグループに委ねた。
 なんでこんなミスが起きたのか? 「本当のスタート時刻と、計時用時計のスタート時刻が36秒ほどズレていたため」というのがバーフィールドの説明。レースにグリーンフラッグが振り下ろされ、トップのマシンがコントロールラインを横切るタイミングで動き出すはずの時計が、36秒後に動き出したという。このズレが、見事に2回のリスタートの間隔にほぼ合ってしまったところがディクソンにとって実に不幸だった。
 102周でのリスートを見ると、そこでディクソンは確かにフライングをしていた。でも、イエロースタートだった。スタートは切られなかったということ。リスタート実現せず=レースは再開されてないのだからフライングじゃないのでは? ターン1行く前にディクソンは抜いた相手にポジション譲ってたし=イエロー中の追い越しにも当たらない。こうした指摘に対してバーフィールドは、「そうとは限らない」と言った。イエロースタートの原因になる動きをした責任を取らされる場合もあるという。もしそうだとしたら、102周目ディクソンの動きがそれに当たると強弁して、ペナルティの訂正などしなければ良かった。でもそうしなかった。彼のここでの解答は誤り。他の点では全部正直に自分の非を認めてたけれど。


ディクソンは意地を見せたが、後味に悪さは残る
 103周目にディクソンはフライングをしたのか? その疑いがあったからテープを見た。バーフィールドたちが間違いに気づいたのはレース後だったという。そこで彼らは103周目のリスタートをチェックし直し、ディクソンがフライングをしていなかったことを確認したということだ。
 リードラップ最下位の17位まで落ちたディクソン。11位まで挽回してのゴールは見事だった。しかし、21位スタートから3位までグイグイと順位を上げていったレース前半の走りを、ペナルティ後に再び見ることはなかった。ハンドリングが悪くなっていたようだ。それでも、最後にポイントトップのウィル・パワー(チーム・ペンスキー)をパスして意地を見せた。


2012年6月13日水曜日

2012 INDYCAR レースアナリシス:第7戦テキサス ファイアストン550 ポイントリーダーのウィル・パワーがブロッキングで失ったもの

オーバルを苦手としていたウィルソンがついに優勝!
Photo:INDYCAR\LAT USA
あと少しの冷静さを欠いたパワー
ガナッシ勢不振の大チャンスを生かせず……


 テキサスでは、ロングランで安定していたジャスティン・ウィルソン(デイル・コイン・レーシング)が大逆転優勝を飾った。もうあと2周とちょっと……というところでグレアム・レイホール(チップ・ガナッシ・レーシング)はウォールにヒット。08年以来となるキャリア2勝目を逃した。最後の勝負は、ニューマン・ハース・レーシングに籍を置いたことのある長身ドライバーたちによって繰り広げられていた。
 悔しい思いをしたドライバーはもう一人いた。ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)だ。228周のレースが184周目にリスタートとなった後、パワーはチームメイトのライアン・ブリスコーとトップ争いをしていた。そこへトニー・カナーン(KVレーシング・テクノロジー)がうまいことドラフティングを捕まえてアタック。それに自然と反応して、パワーはラインをインへ大きく寄せた。今年はブロッキングのルールがかなり緩和されているけれど、あの動きは「完全アウト」と判定され、パワーはペナルティのピット・ドライブ・スルー。勝利の権利を失った。
 「アレは受け入れられない危険なブロッキング」とレース後のカナーン。パワーも、「トニーの1日を台無しにしてしまった。申し訳ない」と全面的に非を認めた。
 テキサスでのパワーは、スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)がクラッシュしていなくなった時点で優勝候補の筆頭に浮上。しかし、あと少しの冷静さを彼は欠いていた。ファイター・タイプのレーサーは、ああいう反応をしてしまいがちだ。パワーは結局8位でゴールした。

痛恨のドライブスルーペナルティを受けたパワー。この一戦が
今後のシリーズタイトルの行方にどんな影響を及ぼすのだろうか?
Photo:INDYCAR\LAT USA
 ペナルティがなければ、パワーは悪くとも4位にはなれていたと思う。ポイント2位のディクソンがリアイア(18位)、ダリオ・フランキッティ(チップ・ガナッシ・レーシング)はラップダウンに陥る珍しいほどのメロメロぶり(14位)。パワーは彼ら二人よりは上位でフィニッシュできたものの、もっともっとシリーズポイントで大きな差を彼らにつけられるチャンスも逃した。優勝ができなかったとしても、3位だったら35点、4位だったら32点が手に入るところだったのに、加算できたのは24点。フランキッティとディクソンが獲得したのは、それぞれ16点と14点だった。

2012年6月12日火曜日

2012 INDYCAR レースアナリシス:R7テキサスファイアストン500 選手も観客も楽しめた「質の高いパス」インディーカー新時代の幕開け

テキサスのインディーカー第7戦、実に良かった。見応えあるバトル、そしてオーバーテイクをたくさん見ることができた。ああいうのを“クォリティ・パス”って言うんだな。いくつものドラマもあった。

2012年6月4日月曜日

2012 INDYCAR レースアナリシス:R6 シボレー・デトロイト・ベル・アイル・グランプリ――シボレーvsホンダ 燃費競争に大きな変化が――

シボレーの地元でホンダは表彰台独占を達成! 再びロードで相まみえた
両エンジンの燃費性能差は今回どうだったのか??
Photo:INDYCAR\LAT USA
めまぐるしく変わる燃費アドバンテージ

 第4戦ブラジルは、ホンダが大型ターボ・ハウジングの使用を許可され、エンジン・ルールが公平になった最初のレースだった(一部のシボレー・ユーザー・チームのオーナーたちはそう思っていないが……)。サン・パウロのストリートコースでシボレー・エンジンで走るウィル・パワーはホンダ勢の誰よりも速く、燃費でも優っていた。彼がトップを悠々と危なげなく走り続け、燃料セーブをし易かった状況を差し引いても、シボレー・エンジンの燃費の良さは明白だった。ホンダ勢より2周も長く走れていたのだ。 しかし、インディー500ではその立場が逆転していた。今度はホンダの方が、1タンクで2~3周多く走れていた。
こんな逆転が起こり得るものなのか!
ロードコースとオーバルという大きな違いがあるにせよ、ここまで燃費性能は変わるものなのか?
ホンダはずっと実力を隠していたのか?
予選用の高ターボブーストでシボレーV6ツインターボは圧倒的な優位を誇示した。愕然としたホンダ・ユーザー・チームの中からは、「シボレーは予選前のプラクティスでもパワーを隠していたのだろう」という見方さえされていたほどだった。
ところが、インディー500の決勝が始まると、またしても状況の大逆転が見られた。頭が混乱した。「実力を隠していたのはホンダの方じゃないか?」と考えさせられるほど、ホンダ勢がスピードでも燃費でもシボレー勢を上回ってみせた。

2012年5月22日火曜日

2012 IZOD INDYCAR シリーズ レースアナリシス:暑さの中で行われた予選 ダウンフォースが減少し、ラップダウンが多くなるコンディションの下、シュートアウトで明暗を分けたブリスコーの冷静なアタックと、入れ込みすぎてしまったヒンチクリフ

湿度が高く真夏のように暑かったポールデイ
 今年のポールデイは暑かった。最高気温は摂氏31度に達した。真夏のような1日だった。しかも、湿度も高かった。インディアナでは結構フツーに有り得る天候だ。西海岸みたくカラリッて日ばかりじゃないのだ。
 そんなコンディション下で予選は延々と行われた。スタートは午前11時で、近頃は夕方に30分間走行ナシの時間があるものの、伝統に従って午後6時まで続いた。
 4時半、トップ9による予選第2ラウンドがスタートした。しかし、まだ夕方なんて雰囲気はゼロだった。昼間と変わらない。近頃のインディアナ州はサマータイムなので……。当然、気温の下がる気配もナシ。午後5時を過ぎて逆に気温が上がっちゃう日さえあるぐらいで、この日はそんな1日だった。


とっ散らかったアンドレッティ・オートスポーツと
チーム・ペンスキーの最初の予選アタック


 4周のアタックの中では1周ごとにラップタイムが落ちて行く。タイヤの摩耗=グリップダウンするので仕方がない。その落ち幅をどれだけ小さくできるかが勝敗の分かれ目となっている。
 今年のポールデイは、プラクティスが行われた7日間と比べても暑く、湿度も高かった。ダウンフォースが小さくなるコンディションで、予選アタックを更に難しくしていた。ラップタイムの1周ごとの落ち幅が大きくなり易くなっていたワケだ。
 今年は2チームが3人ずつのドライバーをトップ9に送り込んだ。この2チームの真っ向勝負の様相となった。それらは、チーム・ペンスキーとアンドレッティ・オートスポートだった。
 彼らの戦いを振り返ると、最初のアタックでは、6人中の4人が1ラップずつスピードダウンをして行っていた。残る2人はアタック中にミスがあった。ライアン・ブリスコー(ペンスキー)は2周目が遅く、マルコ・アンドレッティ(アンドレッティ)は2周目がワーストで3周目がベストと、完全にアタックがとっ散らかっていた。
 迎えたトップ9によるシュートアウト方式の予選、ここでの両チームのドライバーたちが4ラップを完了させたアタック=7回のすべてが、1ラップ毎にスピードダウンするパターンだった。これらのアタックは、ほぼミスなしで4周が終えられたという意味だ。
 ここで決め手になって来るのが、4周の振れ幅だ。ベストとワーストの差が大きいより、いかに4ラップをハイレベルで安定させるかが重要だ。
 もうひとつ言える重大なのは、計測1周目が遅かったらアウトだっていうこと。2周目からの踏ん張りで逆転……というケースはほとんどを起こり得ないのだ


光ったブリスコーの冷静なアタック。入れ込みすぎたヒンチクリフ
 ブリスコーの4時過ぎの4ラップは見事に安定していた。2チーム、6人のドライバーたちが完成させたアタック=7回の中で、ダントツの最小差の4周となっていた。ベストとワーストの差は0.287mph(=約0.461km/h)しかなかったのだ。
 ブリスコーのアタックは、マシンのセッティングが良かった上に、ウォームアップラップでのタイヤへの熱の入れ方が良く、4周の間には常にマシンが次にどのような変化を起こすのか、先回りしてコクピット内のツール(ウェイトジャッカーやスタビライザー)を操作していた。

 「あの4周目が僕らをポールポジションへと到達させた」と走行を終えたブリスコーは話していた。落ち込みが激しくなりそうな雰囲気を払拭するセッティング変更をコクピットから行い、それが狙い通りの効果を発揮したということだろう」

 悔しいミスを冒したのは、アンドレッティ・オートスポートで今年から走るヒンチクリフだった。彼はウォーム・アップ・ラップでスピードを上げ過ぎてしまった。227.009mph(=約365.257km/h)も出した。もし、この227mph台のラップが1周となっていたら、過は残る3周でよほどのミスをしない限り、ポールを手にできていたはずだ。この日、マシンをベストに仕上げていたのはヒンチだったのだ。彼はまだインディーは2度目の出場ながら、ポール獲得という凄いチャンスが巡って来た。マシンの仕上がりは上々。それで入れ込み過ぎてしまったのだろう。

 対するブリスコーは、先輩チームメイトとの戦いに破れてインディーのポール獲得を逃したこともある。今年の彼は、予選第1ラウンドでのアタックでは、2周目のツール操作がうまく行かずにマシンのバランスを崩していた。しかし、そこでの経験を彼は活かしたのだった。第2ラウンドの予選アタックでは、全ての操作を絶妙のタイミングで行った。計測4周目、ブリスコーはマシンがどう変化するかを見事に読み切り、それに合わせたツール調整を成し遂げた。それでタイムの落ち込みが最小限に抑えられ、ポール獲得がなった。もうベテランと呼ばれる域に入っているブリスコーは、近頃は同じオーストラリア出身のチームメイトの陰に隠れがちだったが、培って来た経験とスキルをフルに発揮して戦い、栄えあるインディー・ポールを初めて手に入れた。