2012年9月18日火曜日

2012 INDYCAR インサイド情報&ニュース:なぜ、ウィル・パワーはタイトルが獲れないのか? 復活を果たしたアンドレッティ・オートスポーツとチーム・ペンスキー、トップチームの明暗を分けたものは??

レースだけに集中できる状況で最終戦に臨み、ハンター‐レイはタイトル獲得に成功した。 Photo:INDYCAR LAT USA
 

最終戦前に2年間の契約延長を済ませていたハンター‐レイ
 フォンタナでの最終戦で初タイトルを獲得する前に、ライアン・ハンター-レイはアンドレッティ・オートスポートとの契約を延長していた。さらに2シーズンを過ごすことを決意してチャンピオンの座を争うレースに臨んだということだ。
 チーム・オーナーのマイケル・アンドレッティは、「ライアンと2013、2014年も一緒に戦うことになった。究極のチームプレイヤーである彼は、我々のチームにとって非常に重要な存在となっている。ライアン、マルコ(・アンドレッティ)、ジェイムズ(・ヒンチクリフ)の3人はこれからも協力し合い、チームをさらに大きな成功へと導いてくれると信じている」とのコメントを発していた。ハンター-レイは同じリリースで、「私はアンドレッティ・オートスポートというチーム、そして、チームのスポンサーの多くと深く関わって来ている。それらを今後さらに深めて行けることを楽しみにしている。来年から2年のことが決まっていることで、オフシーズンを存分に楽しむことができる。それは本当にうれしいことだ」と語った。
 ハンター-レイにはペンスキー入りの噂があった。実際にオファーは出されていたようだ。つまり、ハンター-レイはそれを断った。ロジャー・ペンスキーは面子を潰されて衝撃を受け、マイケル・アンドレッティは優越感や満足感を手にしたことだろう。”キャプテン”のチームで走れることを拒むドライバーなど、少し前までなら考えられなかった。これはちょっとした事件だと言える。

チーム・ペンスキー、名声にふさわしい実績をまたも残せず

 もっとも、近年のチーム・ペンスキーは、名声に見合うだけの高いパフォーマンスを発揮して来ていない。確かにウィル・パワーは3年連続でシリーズ・タイトルを争い、その前の年はライアン・ブリスコーが同じく最終戦までチャンピオン候補として戦っていたけれど、チーム・ペンスキーは6年連続でタイトルを獲得し損ねて来ているのだ。
 ロジャー・ペンスキーは、自ら作ったCARTを放り出して02年に彼のチームをIRLへ引っ越した。03年にはアンドレッティたち(前身のアンドレッティ・グリーン・レーシングだったが)もそれに続いた。このころからの歴代チャンピオンを見ると、

02年 サム・ホーニッシュJr. パンサー・レーシング
03年 スコット・ディクソン チップ・ガナッシ・レーシング
04年 トニー・カナーン アンドレッティ・グリーン・レーシング
05年 ダン・ウェルドン アンドレッティ・グリーン・レーシング
06年 サム・ホーニッシュJr. チーム・ペンスキー
07年 ダリオ・フランキッティ アンドレッティ・グリーン・レーシング
08年 スコット・ディクソン チップ・ガナッシ・レーシング
09年 ダリオ・フランキッティ チップ・ガナッシ・レーシング
10年 ダリオ・フランキッティ チップ・ガナッシ・レーシング
11年 ダリオ・フランキッティ チップ・ガナッシ・レーシング

と、11シーズンでペンスキー・ドライバーがチャンピオンになったのはたったの1回だけ。対してガナッシは4年連続を含む5回、アンドレッティも2年連続を含めた3回のタイトル獲得を果たしている。2チームがペンスキーより好成績を残して来ているということだ。
 もっとも、インディー500での優勝回数なら、通算12勝でも、上記の期間内の優勝数でもペンスキーはトップを保っている。しかし、それは02年のエリオ・カストロネベスによる疑惑の優勝を彼らの勝利と勘定した場合(今やそうせざるを得ないが)で、カウント期間を強豪たちが揃って参戦を始めた03年からの10年間に換えると、ペンスキーとガナッシは3勝でタイ。アンドレッティが2勝で続いている。



チームマネジメントの差で敗れたチーム・ペンスキー
固定化した3台体制に次なる一手はあるか??

大破したパワーのマシンを修復し、能力の高さを見せたチーム・ペンスキーだったが……。Photo:INDYCAR LAT USA

 常にトップ争いを行う力を維持するのは非常に難しい。チーム・ペンスキーがトップ・チームであり続けているのは事実で、彼らの能力は敬意を払うべき高さに保たれて来てはいる。しかし、本当のシリーズトップと呼べる存在になれずに随分と長い時間を過ごして来ていることもまた事実なのだ。実際、近年のチーム・ペンスキーに作戦の悪さで自らを窮地に追いやるケースが多く目につくし、ドライバーたちにも名門チームらしくないミスが少なくない。今年のタイトルを彼らが獲り損なったのは、彼らのマネジメントがパワーの性格や能力を把握し、力をフルに引き出す環境を整え切れていなかったのが原因だ。

パワーの決勝前のモチベーションもハンター‐レイに及ばなかったのか? Photo:INDYCAR LAT USA

 アンドレッティは07年に9勝を記録したが、2年後の09年には勝利ゼロだった。彼らはトップコンテンダーの座から転がり落ちても、3年をかけて再びチャンピオンチームに上り詰めることができた。しかし、成績不振に陥ったまま、二度とトップレベルに戻って来なくなるケースもレースの世界ではよく見られる。10年に同じく9勝を挙げたチーム・ペンスキーは、11年には6勝したものの勝てたのはパワーだけだった。そこから彼らは、エリオ・カストロネベスが2勝、ライアン・ブリスコーも1勝と全員が勝てる体制へと実力アップをさせて来た。アンドレッティがしたような一気の凋落が今すぐ起こることはなさそうな気配だ。しかし、彼らがタイトルを獲得するためには、13年に向けてチームを大きく改造したり、補強を行うなどのテコ入れが必要だろう。2カーへの縮小は復活を更に難しくするかもしれない。同じメンバーでの3カー維持でも飛躍は難しそうに見える。果たして、彼らの打つ手はどんなものになるのか。
 

再び、アンドレッティの時代を築いていく方策は?
 
 アンドレッティが王座を保つためには、3カー体制をより強化することが必要だ。チャンピオンになって、ハンター-レイの存在感、影響力はチーム内で大きくなる。彼には更なるリーダーシップの発揮が求められる。来年もチーム内でのタイトル候補筆頭はハンター-レイになるが、チームメイト3人が揃って勝利を重ねられる体制へとレベルアップを目指さねばならない。マルコは最終戦でポールポジションを獲得、チームメイトに対して明らかに劣っていた窮地はそれなりに改善された。これは大きなプラス材料だ。ヒンチは移籍したばかりのビッグチームでもすぐさま居場所を確保、今シーズンも力を大きく伸ばした。彼のさらなる戦闘力アップも来年は楽しみだ。資金確保はまずまず順調に進めて来れているアンドレッティ・オートスポートなので、3人のドライバー全員がメリットを享受できるエンジニアリング体制を構築できれば、さらに勝利数は伸びて行くだろう。

2012年9月17日月曜日

2012 INDYCAR 佐藤琢磨コメント79 R15 MAV TV 500フォンタナ 決勝 「レースの時々のコンディションにうまく合わせることができて、非常に良かったですね。最後のふたつのリスタートではボルティモアと同じようにエンジンの息付きが始まって、苦しくなってしまいました」

R15 MAV TV 500
カリフォルニア州フォンタナ
オートクラブ・スピードウェイ
2マイル・スーパースピードウェイ×250周

決勝 7位 249周 クラッシュ リードラップ6周

21番グリッドから一気にトップ・グループへ
そして優勝争い、トラブル発生、そして悪夢の……


 佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は、フォンタナでも目覚ましいパフォーマンスを見せた。21番グリッドからスタートし、第1スティント終了時点でトップに立った。マシンを仕上げるエンジニアリングが良く、それにプラスして燃費良く走り続けた結果だ。
 しかし、最後の最後に落とし穴が待っていた。ターン1~ターン2で琢磨がグリップを失ったのは、4位の座を賭けたバトルの中でだった。そして、それは今年のインディー500とまったく同様に最終ラップでの大きな出来事となってた。


「最後は純粋なトップスピード勝負になりましたが、
伸びしろがもう残ってなかった」

Jack Amano(以下――):最終ラップにクラッシュしてしまったのは本当に残念でしたね。

佐藤琢磨:はい。すみません。

――21番スタートからオーバーテイクを重ね、楽しいレースになっていたと思うんですが、どんなクルマになってたんですか?

佐藤琢磨:予選までであまりにもプラクティスが短かかった。1ヵ月前のテストでたくさんの収穫が得られてはいたんですけど、クルマ作りで後手々々に回ってしまっていて、レースに向けての満足の準備っていうものはできなかったんですけど、それでもプラクティスと予選、そして昨日の最後のプラクティスで非常に有用なデータ、感触を得て、そこから今日に向けてかなりまた大きくクルマを変えました。 

 もちろん、それでクルマが良くなると信じてエンジニアと一緒にやったんですけど、実際に走ってみないとマシンが良くなっているかはわからないっていうのが正直なところですよね。それでスタートをして、今日もまた暑いコンディションで、まだ陽がある中で結構クルマがスタビリティを持っていたので、思い切って攻めることができたし、それによって順位をひとつずつ上げることができたのはすごい良かったと思います。

 一番心配していたのは、陽が落ちて気温が下がってからのクルマの動きでした。それに対しても、何とかレース中に調整をしながら、時々のコンディション、コンディションにうまく合わせられたと思います。そのあたりは非常に良かったですね。
 ただ、最後はどんどん路面のグリップが上がって、全体的にペースが上がって来ると、ちょっとトップスピードが伸び悩んでる感じがあって自分たちは苦しかったのと、あと、最後のふたつのリスタートではボルティモアと同じようにエンジンの息付きが始まってしまったんです。今、その原因を調べてもらってますけど、あれによって順位を上げるどころか、大きく下げてしまった点はかなり苦しかったです。

――トップグループに入って行くのが早かった。第1スティントを終えるところでトップに立ちましたよね? 燃費もすごく良かった。スタート直後から本当にクルマが良かったという感じだったんですか?

佐藤琢磨:いや、徐々に良くなって行った。最後は伸びしろがもう残ってなかったというか、最後は本当に純粋なトップスピードの勝負になっていたので。路面もできあがって、路面温度も落ちて、結構色々なラインをみんなが取れるようになってから結構スピード勝負になっちゃって、エドとはかなりやり合ってたし、ガナッシの2台を抜いてタグリアーニと争ってたあたりが僕らとしてはベストの状況でした。あの後に最後のリスタートがあって、リスタートがあって、ちょっとトラブルが出始めて非常に苦しい展開になってしまったって感じです。あと、僕の走り方も、昨日のプラクティスだけでは練習時間が足りなくて、ハイレーンはまったく走れなかったんですけど、それが徐々にできるようになって、ラインをみつけて走っていました。レースを戦う上で、そういうマシンにできていた点は良かったです。

――最後は優勝が難しくなった感じもありながら、3位争いができていましたよね?

佐藤琢磨:そうですね。エンジンの息つきがなければリスタートで2、3位は行けてたと思います。さらに1位まで行けてたかどうかはちょっとわからないですけどね、やっぱり、リスタートでポンポンッと順位をふたつずつぐらい落としてしまって、最後の方は順位を確保するだけという苦しい戦いになっていました。

「赤旗解除でレースが再開された時、
僕のエンジンも息を吹き返していたので
よし、あと5周で上を狙うぞ、と思ってました」

――アクシデントはどのように?

佐藤琢磨:最終ラップで1~2コーナーへと入って行く時、僕とライアン・ハンター-レイサイド・バイ・サイドで、彼が僕の真上にいたんですけど、ふたりともラインをコーナーのエイペックスに向けて降ろして行くところでね、自分のリヤが旧にフラついてスピンしてしまいました。

――最後に赤旗が出て、もう一度リスタートをして、グリーンでゴールを迎えることが目指されましたが、佐藤選手としては、4位であのまま終わるより、チャンスを与えられることを希望してましたか?

佐藤琢磨:ちょっと微妙でした。あの時はもうトラブルが出始めてたから。一端ストップして、またエンジンをかけてっていう戦いができるかどうか、不安があったんですよ。でも、赤旗解除でレースが再開された時、僕のエンジンも息を吹き返していたので、よし、あと5周で上を狙うぞ、と思ってました。


「ものすごく良い経験となったシーズンでした
来年いい形でインディーカーにカムバックできるようオフを過ごしたいです」



――今シーズンはこれで終了ですが、どんなシーズンでしたか?

佐藤琢磨:悔しい、惜しいレースがたくさんあった1年。ただ、その代わり非常にコンペティティブに走れたところがたくさんあった。何度もレースをリードして、何度か表彰台を狙えれるチャンスがあったというところは大きな収穫だと思います。自分自身はようやく表彰台に乗り始めて、残るはもう優勝のみ。今日は、予選を戦った後までは非常に苦しいレースになるかな、とも思ったんですけど、レースは最後までわからないもので、終盤に僕らは良い走りができていました。ものすごく良い経験になったシーズンでした。

――来年については?

佐藤琢磨:シーズンが終わったばっかりですが、今シーズンの本当に良かったところ、悪かったところ、すべての反省点をもう1回見直して、僕自身、また来年のインディーカーで走れるように精一杯の良い形でカムバックできるようにオフを過ごしたいと思います。今年これだけ、何度もトップを奔って、可能性というか、チームと一緒にやって来てポテンシャルを見せられたと思うので、来年こシッカリ結果を残したいと思います。

2012 INDYCAR レポート R15 MAV TV 500 フォンタナ 決勝 ドラマチックなシーズン・フィナーレ エド・カーペンター優勝! チャンピオン争いはハンター‐レイが制す

Photo:INDYCAR LAT USA
天候:快晴
気温:30~37℃


壮絶な戦いとなった500マイルレース

 すごいレースだった! 6年間インディーカー・レースをやって来なかったフォンタナの2マイルオーバルは驚くほどバンピーに変わっていた。そこで新型シャシーを使ったレースは行われたわけだが、インディーカーの技術部門が巧みなエアロ・パッケージ・コントロールを行ったことと、ファイアストンの作るタイヤの絶妙なライフの長さによって、順位変動の目まぐるしい、誰が勝つかわからないレースとなった。
 エド・カーペンター(エド・カーペンター・レーシング)が優勝! どれだけ予測のつきにくいレースになっていたかは、このウィナーの名前を聞けばわかるでしょう。もちろん、彼はオーバルでは速いんだけれど。
 最終ラップにダリオ・フランキッティ(チップ・ガナッシ・レーシング)をパスしての優勝。去年のケンタッキーでのキャリア初優勝の時と同じ。
 今日のエドが大きな喜びに包まれていたのは、キャリア2勝目を自らがオーナーを務めるチームで記録できたから。去年の勝利はサラ・フィッシャー・ハートマン・レーシングでのものだった。彼女たちに初勝利をもたらした、そういう価値ある勝利でもあった、
 結成初年度に優勝。これは素晴らしいことだ。
 予選9位だったカーペンターだが、ファイナルプラクティスではトップタイムを出していた。トラフィックでのマシンの仕上がりが良かったということ。ロードコースではからっきしダメなエドだけれど、オーバルではデビューイヤーから速さを発揮している。そして、それはシャシーが新型に代わっても保たれている。


残り6周、ラストチャンスで逆転勝利

 今回はライバル勢がグリッド降格ペナルティを受け、エドのグリッドは5番手へと浮上していた。そして、レースでの彼はそのまま上位を保け続け、チャンスを待っていた。ラッキーな面もあった。トニー・カナーン(KVレーシング・テクノロジー)のクラッシュが241周目に起こった直後、インディーカーがグリーン下でのゴールとするためにレッドフラッグを出したところが、それ。フランキッティの勝利はほぼ確定していたが、エドに最後のチャンスが用意された。
 残り6周でレースが再開されると、フランキッティは赤旗前と同じ強さでトップを走り続けた。トップでホワイトフラッグを受けた。ところが、その後にカーペンターが強烈なアタックを敢行。ターン2でトップを奪った。
 そして、トップ交代劇の直後に佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)がターン2でクラッシュ。レースはそこで終了。カーペンターが勝者となった。「去年の11月に生まれたばかりの新しいチームで勝てた。本当にうれしい」とカーペンター。「インディーは自分のミスで勝ち損ねた。今日、こうして勝つことができて最高の気分だ」。

ウィル・パワー自滅! 3年連続でタイトルを逃す

 チャンピオン争いはライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)が制した。22番手スタートから4位でゴールして。
 


Photo:INDYCAR LAT USA
 ポイント・リーダーのウィル・パワー(チーム・ペンスキー)は自滅した。55周でクラッシュ。しかも、自らコントロールを失ってのことだった。3年連続で最終戦までタイトルを争いながら、今年もタイトルを取れなかった。3点の差でハンター-レイに初タイトルをさらわれた。
 

Photo:INDYCAR LAT USA
 「ハンター-レイにはチャンピオンとなる資格がある。彼は真のファイターだ。オールラウンドのドライバーとして見れば、おそらく彼が現在のシリーズ最強だ。どんなコースでも彼は勝っている。一方で、シーズンを振り返れば、私はまたしてもオーバルだ。3回クラッシュし、大きくポイントをロスした。ロードコース・チャンピオンには、圧倒的成績で3年連続で輝いているというのに。自分に足りないものが何なのかは明らかだ」とパワーは悔しがり、チャンピオンを賞賛した。

2012年9月16日日曜日

2012 INDYCAR 佐藤琢磨コメント78 R15 MAV TV 500フォンタナ Day1 プラクティス2「サバイバル度が高いレースになると思いますが、今回のプラクティスでいいデータが取れたのでそれで臨みます」

R15 MAV TV 500
カリフォルニア州フォンタナ
オートクラブ・スピードウェイ
2マイル・スーパースピードウェイ×250周

Day1 プラクティス2
14位 210.940mph(=約339.402km/h)

エンジン交換で決勝は21番グリッドからのスタートに

 金曜日夕方のファイナルプラクティス、佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は40周の走り込みを行なった。ベストは210.940mphで14番手だったが、多くのデータを収集。それらをレースに向けてのセッティングに役立てることとなる。エンジン交換のペナルティで10グリッドの降格がある琢磨は、決勝レースに21番グリッドから
スタートして行く。


「良くなるであろうというセットアップをかなり施して行ったんだけど、
完全に手放しで喜べるほどではまだないですね」
Jack Amano(以下――):40周を走ったファイナルプラクティスでしたが、トラフィックを走れた度、その中でのマシンに対する満足度はどうでしたか?
佐藤琢磨:うーん、そんなに激しいトラフィックに入れなかったんですよね。なんだかまた、例によってタイミングが悪くて。単独走行に近い状態と、数台の後ろに着いたりはしたんだけど、結構抜くのは難しいですね。

――タイヤはどうでしたか?
佐藤琢磨:最初のフレッシュの状態の時はすごいグリップもあって、古いタイヤで走っているマシンとのスピード差も大きい。1回走って来て、次に出てく時のタイヤはもう全然グリップ感がない。フレッシュにしても最初の3、4、5周ぐらいでもうタイヤのグリップがダーッと落っこちちゃう。

――落っこちた後はどうなるんでしょう?
佐藤琢磨:厳しいですよ。最初に右フロントがギブアップしてアンダーステアが酷くなって行くんですけど、それを例えばツールを使って直そうとしても、リヤのスタビリティがどんどんなくなっちゃう。そうなると今度は右リヤが酷くなって来て、どっちにも動けないってことになりますね。

――落ち始めてからは全体的にどんどん落ち続けて行くって感じですか。じゃ、ラップタイムも1スティントの中で大きく変わって来る。
佐藤琢磨:うん、10マイル近く差があるかもしれない。

――だからってピット回数を多くしてフレッシュタイヤを多く投入したら有利になるってものでもない。
佐藤琢磨:そう。グリーンの状態でピットストップが2回とか増やした場合、そこまでコース上でリカバーできないと思う。さっき言った通り、タイヤは5ラップぐらいしか本当に高いグリップが持たないから、あまり意味ないですよね。ニュータイヤはすごい速いんだけども、そのグリップに頼っている走りだとヤッパリ厳しい。クルマのメカニカルグリップを上げて、エアロダイナミクスの安定感も出してあげないと。そういう意味では、良くなるであろうというセットアップをかなり施して行ったんだけど、完全に手放しで喜べるほどではまだないですね。

――このセッション、結構ステイアウトしていたというか、長く走ってたのはタイヤの状況を一番見たいと考えたからなんですか?
佐藤琢磨:そうです。あと、トラフィックに入った時のクルマの動きを見たかったっていうのもありましたけど、でもやっぱり後ろに着くとフロントのグリップもなくなるし、全体的なスタビリティもなくなって、バンプを越える時にクルマが簡単にスライドし始めるし、ドライビングはすごく難しいですね。

「ボトムのラインは一番グリップが高い感じ
第2レーンは滑りやすい。第3レーンは安定するけど
それなりのマシンと練習が必要で難しい」

――バンプっていうのはコース全体で結構あるんですか? 画像だとバックストレッチがかなりすごいみたいですけど?

佐藤琢磨:バックストレッチでみんな跳ねてるでしょ? その状態のまま、揺れが残ったまんまコーナーに入って行かなきゃならない。不思議なことにボトムのラインは一番グリップ感じは高いですね。第二レーンは滑り易い。コースに繋ぎ目があるんですけど、そこに入るとマシンがフラフラになっちゃう。それを避けて第三レーンに行くとちょっとは安定するんですけど、第三レーンは高いスピードを維持して行くにはそれなりのマシンと練習が必要。僕も少しトライしたけど、相当難しいですね。何人かが高いところをキープして速く走ってますよね。でも、彼らもアクセルは結構抜いている。まぁ、抜いてても下でグチャグチャしている時には、上を走れる人はストレートに出た時に有利ですよね。僕はそこまではまだ行けてなかったですね。

――明日のレース中、タイヤラバーがさらに乗って、気温も路面も温度が低くなって行くと、コンディションとしてはタイヤには多少優しくなるんですよね?
佐藤琢磨:でグラデーションは大分落ち着くでしょうね。でも、そうなると今度はペースも上がって来るのでね、またタイヤに対しては厳しくなっちゃうところがある。ただ、タイヤの劣化は小さくなるでしょうね、気温が下がれば。

――夕日がターン4に沈みますが、視界はかなり厳しいですね、レース序盤。
佐藤琢磨:全然見えない、逆光で。レーススタートしてから1時間半とかになるのかな?

――バック・ストレッチでターン3側が見えない。
佐藤琢磨:バックストレッチからターン3へのターンインが見えないです。イエローも見るのは大変。ランプが点いても薄暗いというか……。

――かなりサバイバル度の高いレースになりそうですか?
佐藤琢磨:うーん、そうですね。ここはあんまりイエローが出ないことで有名だったみたいですね、過去のレースでは。でも、今回極端にダウンフォースが低いので、プラクティスでもクラッシュが続出している通り、レースでもその可能性はあります。ただ、気温が下がってからは安定すると思いますけど。

――フィニッシュすることが第一の目標というところですか?
佐藤琢磨:はい。まぁ、今日のファイナルプラクティスでかなり良いデータは取れたと思うので、それでやるしかないです。

2012 INDYCAR レポート:R15 MAV TV 500 フォンタナ  エントリー & マシン・カラーリング

最終戦は26台がエントリー

 最終戦MAVTV500にエントリーしたのは26台。レギュラー25台にセバスチャン・サーヴェドラを加えたラインアップだ。
 サーヴェドラはAFSレーシング/アンドレッティ・オートスポートから今シーズン3回目の出場(インディー500、ソノマに続き)だ。
 彼のマシンは赤&黄のAFSカラーで変わらず。ただ、サイドポッドにはカラフルなコロンビア(サーヴェドラの母国)のロゴが今回は貼られている。カーナンバーも先の2戦と変わらずの17番をつける。
 ペンスキー勢、今回はライアン・ブリスコーがIZODカラーで参戦。エリオ・カストロネベスはオート・クラブ・スピードウェイだけあってAAA(トリプル・エイ=アメリカン・オートモビル・アソシエイション)がメイン・スポンサーだ。
 

マイク・コンウェイ、オーバル辞退でカニンガムが搭乗

 14号車はドライバーがレギュラーのマイク・コンウェイから、ピンチ・ヒッターのウェイド・カニンガムに代わっている。フォンタナでのテストを終えた後、コンウェイがスーパー・スピードウェイでのレース出場を辞退したカタチ。超高速オーバルを自信を持って、思う存分走ることができないということで‥‥。
 22号車は黒ベースに、銀色のロゴでフォンタナに現れた。メインスポンサーはモテギ・レーシング=今回がDRRのマシンに初登場。
 モテギ・レーシングは、ウィール・プロス社が持つ数多くのブランドのひとつで、スポーツコンパクト用のレーシング&アフター・マーケット・アロイ・ウィールだ。
 彼らはインディーカーでウィル・パワー(チーム・ペンスキー)、アレックス・タグリアーニ(ブライアン・ハータ・オートスポート)のパーソナル・スポンサーともなっている.