2012年3月10日土曜日

2012 IZODインディーカー・シリーズ 佐藤琢磨コメント2 3月8日セブリング プレシーズンテスト3日目 「開幕戦を見据えた試行錯誤で、ラップタイム以上に満足感を得ることができました。自分自身の準備も今年はいい状態です。チームはまだ生まれたばっかりのような状態ですが、少しずつ追っかけて行きたいです」

3月8日
フロリダ州セブリング
セブリング・インターナショナル・レースウェイショートコース
コースタイプ:クローズドサーキット
全長1.67マイル(=約2.687㎞)


天候:晴れときどき曇り
気温:23~27℃

52秒4111(86周走行) 16台中5位


セブリングテストに臨む佐藤琢磨。マシンのカラーリングもフレッシュな印象だ
Photo:Masahiko Amano\Amano e Associati

いろいろなセットアップをトライしてマシンへの理解度が向上

Jack Amano(以下――) 午後もトラブルがありましたが、ラップタイムは良くなってました。どういうセッションでしたか?

佐藤琢磨: 前回はかなり順調なステップアップをしてった感じがあるので、今回はそういう意味では、確認を含めていろんな方向性のセットアップをやってみたんです。それでクルマへの理解度は少し良くなった感じがする。今回のテストでは、ショートランでセッティングの良し悪しを見極めていってます。最後にトラブルが出て止まっちゃったのは残念でしたけどね。

―― 今日1日でのマシンの仕上がりは?

佐藤琢磨:今日のセットアップは必ずしもこのコースに合った方向性じゃなかった。ストリートコース、セント・ピータースバーグを見据えたトライっていうか試行錯誤をいろいろやってみて、そういう意味では良いデータを残せたと思います。

―― ラップタイムが良くなくても、満足感得られるケースがあるということですね、テストにおいては。

佐藤琢磨:そうですね。

―― コースコンディションはどうでしたか?

佐藤琢磨:風向きが前回の時と結構違ってたんですよ。110何度も違った。完全にリバースじゃないんだけど、結構な違いなので大きな影響を受けてました。あとはタイヤラバーの乗り具合だけれど、これは案外コンシスタントでしたね。1日を通してグリップは安定してました。昨日まで3日間、昨日はインディライツでしたけど、ずっと走り続けていたことで、そういうコンディションが作られたんでしょうね。ただ、ターン8だけはすごく乗りづらかった。色んなゴミが出てたり、ダストがあったり、風向きによってラインが1本しかない状況になっていたりで。前回のテストの時の方があそこは安定してたと思います。

エンジニアは今日が初めて。明日が開幕前最後のテスト

―― エンジニアのジェリー・ヒューズ氏は、今日はどんなことを?

佐藤琢磨:今日の彼は聞き役ですね。まだいろんなことを勉強している最中だから。でも、明日は多分、ジェリーでやるんじゃないかな?

―― ジェリー氏がサーキットに来るのは今回が初めてなんですか?
佐藤琢磨:そう。だって昨日の夜着いたから、ロンドンから。つい最近までバルセロナだったんじゃない?

―― 明日はどういうプログラムを予定してますか?

佐藤琢磨:今日の学んだことから、もう一歩煮詰めてやってくと思います。
―― 明日が開幕前の最後のテストになるということですが……。
佐藤琢磨:はい。なんか、来週結構な台数がバーバーに行くらしいじゃないですか?
―― それに琢磨選手も参加すると思ってましたが……。

佐藤琢磨:それをやると僕らはセント・ピータースバーグに間に合わなくなるらしいんです。

自分自身の準備はこれまでの中でもよい状態

―― 開幕前最後のテストを迎えて、自分の準備の整い具合というのは、過去の2シーズンと比較してどうですか?

佐藤琢磨:僕自身の準備というのはこれまでの中で良いわけだけども、経験も積んだし。だけど、チーム側がまだやっぱり……ノウハウはあるチームだとはいえ、このメンバーでやるのはまだ……生まれたばっかりのような気がする。だから、そういう意味では去年、一昨年に僕が走ったKVレーシングの場合は、そういうところは3台体制ってこともあって、結構整ってた。今の自分たちの場合、例えば今日、ピットストップの練習はできなくて、走行時間終了後に始められたぐらいなんで、少しフラストレーションというか、我慢しなくちゃいけないところはあるかもしれませんね。

―― オーナーであるボビー・レイホールのリーダーシップ、マネージングディレクターに起用されているトム・アンダーソンという体制はどうですか?
ボビー・レイホールとトム・アンダーソン。キャリアも実績も
申し分ない二人がチームを支える
Photo:Jack Amano \ Amano e Assiciati
佐藤琢磨:もう文句なしですね。でも、自分たちの持っている中でベストを尽くさなくちゃいけなくて、幾つか足りないものもあるので、少しずつ追っかけて行くしかないですね。

2012年3月9日金曜日

2012 IZODインディーカー・シリーズ レポート 3月8日 セブリングプレシーズンテスト 3日目「第2グループのテスト初日、ガナッシ勢が第1グループを圧倒するタイムをマーク! 佐藤琢磨は5番手のタイムで好発進」

3月8日
フロリダ州セブリング
セブリング・インターナショナル・レースウェイショートコース
コースタイプ:クローズドサーキット
全長1.67マイル(=約2.687㎞)


天候:晴れときどき曇り
気温:23~27℃


ディクソン、圧倒的なタイムをマーク。フランキッティも続く

 合同テストで今日から第2グループが走り始めた。気温は朝から高くなっていたが、風も強く、コンディションは決して良いとは言えなかった。しかし、スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)が午前中にいきなり52秒を切るラップタイムをマークした。一昨日まで走っていた第1グループでのトップ、エリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)のベスト=52秒1413を0.3481秒も上回る51秒7932を出したのだ。
それでもディクソンは、「このコースにセッティングを合わせ、タイムを出そうとはしていない」と余裕の表情だった。昨日のメディアデイ、コースではインディライツのマシンが走り込みを行っていた。今日の路面のコンディションが、第1グループの走っていた時よりも良くなっていたことは十分に考えられるが、このタイムはライバル勢を驚かせるに十分なインパクトを持っていた。
午後にはダリオ・フランキッティ(チップ・ガナッシ・レーシング)がトップタイムをマーク。今日のトップ2はディクソン、フランキッティの順となった。チップ・ガナッシ・レーシングの1-2だ。ある意味、予想されていた事態となったとも言える。


注目のバリケロが3番手タイムをマーク

 3番手にはルーキーのルーベンス・バリケロ(KVレーシング・テクノロジー)が来た。インディーカーでは彼をルーキーとして扱わないこととしたが……。
今日はアンドレッティ・オートスポートのジェイムス・ヒンチクリフ車でアナ・ベアトリスが走行していた。まだ正式な契約は結ばれていないが、ブラジル戦やインディー500への出場を睨んで、双方の陣営として実力チェックを行ったのだ。
ドラゴン・レーシングは女性ルーキーのキャサリン・レッグを走らせた。セバスチャン・ブルデイはサーキットにこそ来ているが、明日走れるかも完全には決定していない。レッグが走行を今日で終える決断がなされれば、ブルデイが走ることが可能になる。彼らはまだエンジンが1台しかデリバリーされていないのだ。


佐藤琢磨、トラブルにもかかわらず走り込みに手応え十分

 佐藤琢磨はセッティングパッドの故障で走行開始は10時過ぎだった。ランチブレイク中にデフの交換作業などがあり、午後の走行開始も2時過ぎと、同じく1時間以上の遅れがあった。さらに、夕方の4時を回ってからクラッチにトラブル発生。琢磨はコースサイドにマシンを停めた。それでも今日だけで彼らは86周を走り込んだ。今日の彼のベストは午後に記録された52秒4111で、16台走行中の5番手だった。
「午前、午後ともにトラブルはありましたが、全体的に見て良い1日にできました」と琢磨の表情は明るかった。新チームでのテストもこれで3回目。もう随分と馴染んでいるようだ。
今日のテストはテクニカルディレクターのジェイ・オコーネルがエンジニアを務めながら進められたが、彼の横にはジェリー・ヒューズの顔があった。06年のスーパー・アグリF1で琢磨の担当エンジニアを務めていた男だ。07年から同チームでテクニカル・ディレクターを務めた彼は、琢磨のまた一緒に戦うこととなったのだ。「今日は多くのセットアップを試せましたし、多くのデータを集めることもできました。マシンに対する理解度をまた一段深めることができたと思います。明日はジェリー・ヒューズがエンジニアをやるかもしれません」とも琢磨は話していた。

2012年3月8日木曜日

2012 IZODインディーカー・シリーズ 佐藤琢磨コメント1 3月7日プレシーズンテスト メディアデイ 「DW12はダウンフォースも高く、ロードのパフォーマンスはとても高いです。今年はシャシーだけでなくエンジンの開発にも携わることができるので、試したことがうまくいくかどうか、そのあたりが今シーズンのレースを面白くすると思います」

 今日、セント・ピータースバーグに佐藤琢磨も姿を現した。明日からのテスト、そして新しいシーズンへの抱負を聞いた。

2回のテストで遂げた進化に確かな手応え

Jack Amano(以下――):新チームでのシーズンが始まりますね。ボビー・レイホールのチームはどうですか?

佐藤琢磨:歴史のあるチームであるとはいえ、完成されたパッケージの中へと飛び込んだんじゃなくて、今回は「チーム再結成」という形です。新しいインディーカーのプロジェクトで、新しいメンバーも加わっています。だから、少し時間はかかるかもしれないけれど、すでに行った2回のテストで大きな進歩を遂げているので、すごく楽しみにしています。

――明日からの合同テスト2日の後、さらにテストを行いますか?

佐藤琢磨:いえ、しないです。

――では、開幕前の最後のテストとなる明日と明後日、何がメインテーマとなるんでしょう?

佐藤琢磨:もちろんクルマを進化させるのはいつもどおりです。いろんなテストプログラムをやらなくてはいけないです。ただ、今はまだ僕らは1台体制なので、テストプログラムでやりたいことの全てを試すことはできません。何を優先して行うべきなのか、慎重に選択を行う必要がありますね。あとは、ピットストップの練習も、まだ1回もできていないので、今回、チーム全体のパフォーマンスアップを果たすべく、やっておくことになります。今回のテストではエンジニアも全員揃うので、そこらへんの流れも大事になってきます。

――エンジニアの話は、おいおい聞いていきます。

佐藤琢磨:はい。

非常に高いニューマシンのロードでのポテンシャル

――今年から始まるエンジン競争はどうですか? 琢磨選手はホンダ・エンジンで走りますが、ライバル勢の実力など、どんな印象をこれまでのところ持っていますか?

佐藤琢磨:前回一緒に走った時には、まだロータスはフルブーストになっていないみたいな話でしたから、多少の差があったようですけど、開幕までには彼らもエンジンを仕上げて来るでしょうね。シボレーとホンダはかなりコンペティティブな争いをテストの時から見せているので、実際にレースで戦うのが楽しみですね。

――新シャシーはどうでしょう? DW12はロードレースでの使用を十分に考慮して設計されたもの
ですが、フィーリング、ポテンシャルなどはどんな印象ですか?

佐藤琢磨:オーバルはまだ走ってないんですけど、ロードでのパフォーマンスは去年のクルマよりずっと高いところにあります。ダウンフォースも高いし。でも、色々な方向性を見ていくとウィンドウっていうか、コンペティティブなラップタイムを出せる幅っていうのは意外と狭そうです。

――旧型マシンより走らせていて楽しいですか?

佐藤琢磨:やっぱり、ラップタイムが良くない時は楽しくないですね。でも、色々な部分で進化を遂げているし、特にブレーキはカーボンになって、今まではカーボンはオーバルでだけ使ってたんだけど、今年からはロードでも使えます。ロードでこそカーボンブレーキは真価を発揮するので、安定したブレーキパワーが得られることは、レースでも良い効果を表すことと思います。クルマのフィーリング自体は、去年までのものとそんなにかけ離れてはいないんですよ。同じようなカンジはある。やっぱり、それは重さから来ているんだと思うけど……。ただ、今年からはターボエンジンなので、パワーの出方とかは全然違っていて、そのあたりがレースの鍵を握ることになるかもしれない。

エンジン競争のカギとなりそうな3つのブーストレベル

――コースのよって異なるブーストレベルが設定されるルールになるということですね? そうすると、コースによってエンジンのフィールなども変って来るということですか?

佐藤琢磨:ブーストレベルの違いは、スーパースピードウェイ、それ以外のオーバル、ロード&ストリートに分けられるのですが、確かに、エンジンメーカーによってブーストレベルの違いが多少のパフォーマンスの違いとなって現れることは考えられますよね。ひとつのメーカーのエンジンが、三つあるブーストレベルのひとつかふたつに特性が合ったり合わなかったり……ということは出てくるかもしれない。そのあたりは、逆に競争がおもしろくなるところ。ドライバーやチームにとっては、ブーストレベルが三つ存在することがそんなに大きな違いになはらないですね。

エンジンを進歩させようというユーザーチームの結束が頼もしい

――今年からシャシーのセッティングに関してだけでなく、エンジンのパフォーマンスに関しても注文を出すことができます。今までのインディーカーとは違ったレースになりますね。

佐藤琢磨:そうですね。そのあたりは、各メーカーごとにユーザーチームが力を結束して、とにかく進歩させようって動きがあります。それはすごく頼もしい。エンジンに関しては、自分たちだけじゃなくて他のチームからのインプットなどもあって、テスト毎に良くなっていることを感じられてます。僕らの場合、前回のテスト2回は連続していたので、エンジンは同じ物を使ってやりましたけど、マッピングを変えたりはしました。12月にマニュファクチャラーテストをやらしてもらった時には、新しいマクラーレン製の共通ECUを使っていかにパフォーマンスを上げるかということをやったんですが、その開発みたいのは楽しかったですね。

――エンジンの開発なども重要な要素なって関わって来る今年からの戦いでは、F1でマシン開発に携わった経験が有利に働くのでは?

佐藤琢磨:どうなんだろう? わからないけれど、でも、チームを含めて新しいアイディアとか、試したことがうまく行ったり行かなかったりはあると思うので、そのあたりがレースを面白くして行くんだろうと期待しています。

2012年IZODインディーカー・シリーズレポート プレシーズンテストメディアデイ 「KVレーシング・テクノロジーに新スポンサー」

電子機器メーカーのマウザー、今季メインスポンサーも4戦予定

 正午前、コース内シアタービルディングで会見が行われ、KVレーシング・テクノロジーにマウザー・エレクトロニクス(半導体を始めとする電子部品のメーカー)が新たなスポンサーとして加わると発表された。
 マウザーは昨年、サム・シュミット・モータースポーツのサポートをしていたが、参戦規模を大きくし、同時にチームをKVレーシングにスイッチした。
 2004年チャンピオンで、昨年からKVレーシングで走っているトニー・カナーンのマシンは、今年からカーナンバーが11に変わる。彼がアンドレッティ・オートスポートで使っていた親しみあるナンバーだ。そのマシンのメインスポンサーは、保険会社のガイコだと言われて来たが、そこに今回、マウザーが新たに加わった。
 しかも、マウザーはアソシエイトスポンサーとしてではなく、ロングビーチ、テキサス、インフィネオン、青島の4戦でメインスポンサーを務める。そして、インディ500ではガイコと共に11号車のメインスポンサーになる。今日の会見ではカナーンが着用するレーシングスーツ、およびマウザーがメインスポンサーで走るマシンのカラーリングも明らかにされた。

2012年IZODインディーカー・シリーズレポート プレシーズンテストメディアデイ 「しめやかにダン・ウェルドン追悼セレモニー」

3月7日 メディア・デイ
フロリダ州セント・ピータースバーグ


最高気温:26℃

ダン・ウェルドンの名がアメリカでの彼の故郷に残されることに

 3月7日正午から、コースの設営がすでに始まっているセント・ピータースバーグで、インディーカー・シリーズ出場ドライバーのほぼ全員が出席し、ダン・ウェルドンの追悼式典が行われた。
 イギリスからアメリカへとやって来たウェルドンは、セント・ピータースバーグに居を構えていたのだ。
 式典はターン10で行われた。ウェルドンは2度のインディ500優勝を果たし、インディーカー・シリーズで1度タイトルに輝き、地元セント・ピータースバーグのレースで1勝を挙げている。そららの功績を讃え、彼の名を人々の記憶に留め続けるべく、セント・ピ-タースバーグ市は、ターン10に入って行く海沿いの道を「ダン・ウェルドン・ウェイ」と名づけた。「ダン・ウェルドン・ウェイ」という標識が、今日の式典では披露された。除幕式を行ったのは、セント・ピータースバーグのビル・フォスター市長と、ウェルドンの未亡人スージーさん。ウェルドンのふたりの息子もこの式典に出席していた。この秋までには、ウェルドンの功績を讃えるモニュメントもこのコーナーの近くに建てられる。そして、そのモニュメントには、セント・ピータースバーグでのレースウィナーの名前が過去のレースのものから、今後のものまで刻まれて行くことになるという。

 「この数か月間の私たち家族に対しての市の愛情と支持を深く感謝します。私はセント・ピータースバーグを故郷としていることを誇りに感じ、神に祝福されているとも感じています。ダンをこのように特別な形で記憶しようと努力を払ってくれているを市と、セント・ピータースバーグ・グランプリ、アメリカン・ホンダに対しても感謝の気持ちです。セバスチャンとオリバー、ふたりの子供たちも、亡き父がこの地域とレース界に残した功績を誇りとして生きて行くことでしょう」と式典出席者たちを前にスージー・ウェルドンは語った。

2012年3月7日水曜日

2012年IZOD インディーカー・シリーズレポート 3月6日セブリングテスト2日目「第1グループはペンスキー勢トップ3を独占で走行終了。しかし、トップから最下位の10位までの差はわずか1秒!」

3月6日
インディーカー 合同テスト2日目
フロリダ州セブリング
セブリングインターナショナルレースウェイ ショートコース
コースタイプ:クローズドサーキット
全長:1.67マイル(=約2.687㎞)

天候:快晴
気温:18℃~25℃


チーム・ペンスキーの1-2-3で第1グループのテストは終了
安定した走行でカストロネベスはトップタイムをマーク
Photo:INDYCAR(LAT)
 今日もセブリングは晴れ、気温は昨日より少し高くなった。ところが、午後には風が強く吹いた。
 そんなコンディション下でラップタイムは向上した。やはり、10台が走行を重ね、路面にタイヤラバーがガッチリと乗り、グリップが上がったことが大きく影響しているのだろう。
 2日間のテストでは、合計6セットのタイヤを各エントラントは使えるのだが、どこもすべてのセットを投入し、夕方の5時までフルに走り込みを行っていた。
 その結果、走行2日目のトップタイムはエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)が手に入れた。52秒1413をベテランはマークしたのだ。初日のベスト(ライアン・ハンター-レイ)より0.4秒以上、自らのタイムでの比較では0.5679秒も速くなってのトップ獲得だった。


パワー、2日連続出火のアクシデントも

 2番手はウィル・パワー(チーム・ペンスキー)。彼は昨日に続いて車両火災が発生したがが、今日はピットでの火災だったためにダメージは最小限に抑えることができ、チームはすぐさまエンジンを換装。パワーはライバル勢と変らない周回数をこなすことができた。彼のベストは52秒2059=トップと0.0646秒差だった。
 3番手にはライアン・ブリスコー(チーム・ペンスキー)が来た。それも、計測時間終了間際の夕方5時前、ラスト・ラップで52秒2072の自己ベストを記録。チーム・ペンスキーは1-2-3でテストを終えたのだった。
 カストロネベスは、「チーム・ペンスキーがトップ3を独占した。この2日間のテストはとても良いものとなった。もちろん、テストでのトップタイム自体には大きな意味はない。賞金が出るわけでもない。しかし、僕らはこの2日間でまた大きく進歩を遂げることができたと感じている。その点が嬉しいんだ。まだマシンは開発が始まったばかりで、改良すべき点はアチコチにあるけれど、それらを着実に良くして行くことができている。シボレーは素晴らしい仕事ぶりでエンジンを信頼性が高く、そしてパワフルなものとしてくれている」と話した。


シモーナ、ノントラブル走行でロータスにも光明

 2日間の総合での4位はライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)。5番手はシモン・パジェノー(シュミット・ハミルトン・モータースポーツ)だった。
 テスト前半では唯一ロータスエンジンを搭載して走っていたシモーナ・デ・シルベシトロ(ロータス・HVMレーシング)は、2日連続で最下位の10番手だった。しかし、昨日がトップから27秒遅れだったのに対して、トラブルがほとんどなく走り込めた今日は、彼女はトップとの差を約1秒まで縮めた。ロータスエンジンもポテンシャルは決して低くはないということだ。

2012年IZODインディーカー・シリーズレポート 3月5日 セブリング合同テスト その3 [ニューマシンはドライバーに好評」

好天下でライアン・ハンター-レイがトップ・タイム
初日トップタイムをマークし新車に好感触のハンター-レイ 
Photo:INDYCAR(LAT)

 テスト初日は朝から晴天となった。ただ、午前中は冷たい風が吹いていた。クルーたちの中には半袖組も多かったが、それはアメリカ人やイギリス人(カナダ人も)は寒さに超強い人が多いからで、16℃あったといっても風のせいで体感温度は低くなっていた。午後には風も和らぎ、やっとフロリダらしくなった。少し動けば汗ばむほどの暑さ(=22℃まで上昇)で、クルーたちは日焼け止めを塗っていた。
 午前中は9時に走行開始で、正午からランチブレイク。第1セッションのトップタイムはカストロネベスによる52秒9415だった。
 2番手につけたのはハンター-レイで、その差は0.1623秒差。3番手にはパワーがトップから0.1711秒差でつけた。ホンダ勢のトップはウィルソンで、カストロネベスとの間には0.8436秒の差があった。ロータスのデ・シルベストロは、トップから大きく1.6225秒も離され、走行10台中のの10番手だった。

 午後は1時から5時まで走行。最終的にトップに立ったのはハンター-レイ。タイムは52秒5826で、これが1日目の最速となった。
 午後の2番時計はカストロネベスによる52秒7092。午前も午後もトップ2は同じ顔ぶれで、順位が入れ替わっていた。
 午後の3番手で、今日の3番手につけたのは、ホンダ搭載のルーキー、パジェノーだった。タイムは52秒7311と、トップに迫る競争力十分なものとされていた。

新しいマシンは楽しい!

 「セブリングでのテストはストリート・コースに向いているが、多くのマシンが一緒に走るとどんどんタイヤラバーが乗ってしまう。走り込んでタイムが良くなるのは、単に路面のグリップが高まっただけ。ストリートレースとは路面のコンディションが大きく変って来てしまうということだ。その点で、初日と2日目に走れる第1グループで走れることを嬉しく思っている。今日は多くのマシンセッティング変更を行い、それによるマシンの変化という貴重なデータを多く得ることができた」とハンター-レイは話し、「新しいマシンは走らせていて本当に楽しい。軽くて加速が良く、カーボンブレーキ導入で減速も素晴らしい。エンジンは排気量が小さくされたが、ターボによって体感スピードが高い。もしメーター類がついていなかったら、このコースで1周につき4秒も速く走っているような印象を受ける。そして、この新車はコーナリングスピードが高い。それってドライバーなら誰でも大好きなことだ」と続けた。

カストロネベスもシボレーと新シャシーに手応え十分


カストロネベスも、順調に初日を終える。ニューマシンへの信頼感も高い
Photo:INDYCAR(LAT)
 カストロネベスは、「新シャシーでの走行は楽しいし、シボレーエンジンも素晴らしい。今のところシボレーが少々優位と見えるかもしれないが、本当の実力は開幕戦になってみなければわからないね。ロータスは開発のスタートが遅かったために苦しんでいるようだけれど、彼らだって侮ることなど絶対にできない」とコメントしていた。彼はまた、「セブリングでのテストは、ストリートコース用のセッティングを試すのに適している。もうずっと前からストリート用のテストはセブリングでやって来ている。路面の種類が多く、バンピーで、ストリートと違うのはコースをグルッと壁に囲われていない点だけといっていい。ここで獲られる成果は大きいよ。僕らとしても、今日だけで本当に多くのセッティングを試すことができた。エンジンの耐久性についても僕らは大きな問題はないと感じている。そちらのテストは、先日ホームステッドでやったんだ。もちろん、すべてが新しいエンジンだから、まだまだ何が起こったって不思議はないんだけど、ここまでのテストを見る限り、耐久性にも心配はないと捉えている」とも話していた。

パジェノーはキャリアにたがわぬ実力の片りんを初日から見せつける
Photo: INDYCAR(LAT)
 パジェノーも走行終了直後に満足気に話した。「このチームで走るのは今年からだけど、クルーの中には以前に一緒に働いたことのある人が多くいるので、最初っから家族的な雰囲気を感じている。みんなハードワークをこなしてくれる、モチベーションの高い人々だ。能力ももちろん高い。すでに彼らの力が今日のテストでも存分に発揮されていた。僕らは1台体制の小さなチームかもしれないけれど、このオフの間にも大きな進歩を遂げ、今日、こうしてセブリングでのテストでも早くも成果を上げてみせた。マシンはとてもパワフルで俊敏だ。僕はインディーカーでの走行経験が少ないから、去年までのマシンからの違いに戸惑うようなこともなかった。与えられたマシンに即座に慣れ、できぐ限りの性能を引き出す。それは僕がこれまでにも求められて来た能力で、自分としては高いものを発揮して来れていると思う。それにしても、このインディーカーは走らせていて本当に楽しいよ。ロードコースでの速さは去年までのマシンより格段に上。ホンダエンジンはパワフルで、文句のあるはずもない」と彼は笑った。

3月5日 総合タイム順位 ドライバー(チーム) タイム 周回数
1  ライアン・ハンター-レイ   (アンドレッティ・オートスポート)      52.5826秒  60周
2  エリオ・カストロネベス   (チーム・ペンスキー)                     52.7092秒  83周
3  シモン・パジェノー      (サム・シュミット・モータースポーツ)52.7311秒  81周
4  ジェイムス・ヒンチクリフ  (アンドレッティ・オートスポート)       52.9125秒  76周
5  ライアン・ブリスコー     (チーム・ペンスキー)                     52.9275秒  63周
6  ウィル・パワー        (チーム・ペンスキー)                     53.0512秒  84周
7  ジャスティン・ウィルソン  (デイル・コイン・レーシング)           53.1770秒  59周
8  マルコ・アンドレッティ    (アンドレッティ・オートスポート)       53.2814秒  68周
9  ジェイムズ・ジェイクス   (デイル・コイン・レーシング)           53.9260秒  69周
10 シモーナ・デ・シルベシトロ (ロータス・HVMレーシング)            54.5640秒  31周

2012年IZODインディーカー・シリーズレポート 3月5日 セブリング合同テスト その2 「エンジン別のチーム状況は?」

エンジン3メーカーのユーザー、それぞれ2チームずつが初日走行

 テストの第1グループをエンジン別で見てみよう。
 ホンダ・ファミリーは、シュミット・ハミルトン・モータースポーツとデイル・コイン・レーシングの2チームが走っている。
 ボウタイ軍団は、チーム・ペンスキーとアンドレッティ・オートスポート。こちらも2チームだ。
 ロータス勢は? というと、HVMレーシングとドラゴン・レーシングと、やはりコチラも2チームだったのだが、走行初日は前述のとおりにドラゴンは走れなかった。なお、このロータスユーザーたちだが、チーム名のアタマにロータスの文字をつけ、ロータス・HVMレーシング、ロータス・ドラゴン・レーシングを名乗っている。


ペンスキー、今年も盤石の3台体制

今年もベライゾンカラーをまとうパワー Photo:INDYCAR(LAT)
   チーム・ペンスキーの陣容は去年と同じだ。ウィル・パワー、エリオ・カストロネベス、ライアン・ブリスコーという強力な3台体制。パワーは今年もベライゾンがメインスポンサーで、カストロネベスとブリスコーは、やはり去年と同様、幾つかのスポンサーカラーでシーズンを走る予定である。テストのカストロネベス車はシェルカラー、ブリスコー車はIZODカラーとされている。

シボレーのアンドレッティではヒンチクリフがGO DADDY継承

アンドレッティへの加入でヒンチクリフは飛躍を期する Photo:INDYCAR(LAT)
    アンドレッティ・オートスポートは、4台から3台へ縮小した。マルコ・アンドレッティとライアン・ハンター-レイは残留したが、ダニカ・パトリックはストックカーのNASCARへとサヨウナラ(アチラでの彼女はシボレーワークスだけれど、インディー500にも出場しないとすでに宣言)。マイク・コンウェイはAJ・フォイト・レーシングに移籍した。


マルコのRCコーラのカラーリングが映える Photo:INDYCAR(LAT)
 3台へと1台減ったが、昨シーズンで突如として活動を終えたニューマン・ハース・レーシングから将来有望なジェイムス・ヒンチクリフ=2012年INDYCARルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得できたのは朗報か。マルコはRCコーラが新スポンサー。RHRはサークルK他、ヒンチはダニカの後を継ぐゴー・ダディ・カラーだ。

ホンダ勢では早くも注目を集めるシモン・パジェノー

昨年、インディーカー初レースで驚異的なパフォーマンスを見せたパジェノー
今シーズン早くもテストから注目を集めている  
Photo:Masahiko Amano\Amano e Associati
  サム・シュミット・モータースポーツは、シモン・パジェノーを起用。チャンプカー・シリーズに1年フル・シーズン参戦した経験を持つ彼だが、オーバル経験はゼロのため、今年のインディーカーではルーキー扱いとされる。
 パジェノーはフォーミュラ・ルノー3.5で戦った後に渡米、すぐさまフォーミュラ・アトランティックでチャンピオンになって、チャンプカーへとステップアップ。ここまでは順調だった。しかし、その後は波乱万丈だ。チャンプカーで1シーズンを戦ったが、そこでシリーズが破綻し、IRLへと併合されてしまった。まだキャリアが浅かったパジェノーはインディーカーへのスイッチがうまく行かなかった。
 しかし、彼の才能を認めていたのがHPDで、ド・フェラン・モータースポーツからアメリカン・ル・マン・シリーズへとシーズン途中から出場。LMP2で始まったプロジェクトは2シーズン目にトップ・カテゴリーのLMP1へと移行し、ド・フェランがインディーカーへと移った後にはハイクロフト・レーシングでアキュラ・ワークスのマシンを駆り、シリーズ・チャンピオンとなった。
 ところが、ここでパジェノーにとってはまたも不運な事態が起きた。リーマン・ショックでアキュラがスポーツカー・プロジェクトをストップしたのだ。それでも、彼の才能は母国で認められ、プジョーのワークス入り。彼は2011年のル・マン24時間で2位フィニッシュしている。2011年には、インディーカーに2チームから3レース出場。デビュー戦となったバーバー・モータースポーツ・パーク(負傷したアナ・ベアトリスの代役)での8位フィニッシュはセンセーショナルだった。なにしろ、この週末まで彼はインディーカーには乗ったことがなかったのだ。
 シュミットのチームは2カーでの出場を目指していたが、フル・エントリーは1台だけとなった。77号車のメイン・スポンサーはhpだ。
 その彼らはシーズン開幕を目前にして、去年もインディー500に出場したドライバーのデイビー・ハミルトン(去年、hpカラーで走ってた)がチームの経営へと参画したことを発表。エントリー名はシュミット・ハミルトン・モータースポーツへと変るようだ。ハミルトンは今年もインディー500に出場するプランで、パートナーにシュミットを選んだということなのだろう。

ホンダになったデイル・コインにはウイルソンが復帰


昨シーズン終盤の負傷も癒えウィルソンは再びデイル・コインに
Photo:INDYCAR(LAT)
 デイル・コイン・レーシングはブルデイが抜けたが、チームに彼らの初勝利をもたらしたジャスティン・ウィルソンが戻って来た。そして、ジェイムズ・ジェイクスが2シーズン目のエントリーを行う2カー体制。ウィルソンはBBQレストランのソニーズ、ジェイクスはボーイスカウト・オブ・アメリカとACORNがスポンサーだ。

今回、唯一走行できたロータス、HVMレーシングのシモーナ


シモーナは真新しいロータスカラーに Photo:INDYCAR(LAT)
 ロータス・HVMレーシングは、今年もスイス出身の女性ドライバー、シモーナ・デ・シルベシトロを起用する1台体制。スポンサーは去年と同じニュークリアー・エナジー(はい、原子力エネルギーのことです)他。

2012年IZODインディーカー・シリーズレポート 3月5日 セブリング合同テストがスタート

3月5日 テスト1日目

フロリダ州セブリング
セブリングインターナショナルレースウェイ ショートコース

全長1.67マイル(=約2.687㎞)
コースタイプ:クローズドコース

天候:晴れ
気温:16℃~22℃


今回がシーズン前唯一のインディーカー主催のテスト

セブリングを走るハンター-レイ Photo:INDYCAR(LAT)

 インディーカーの合同テストがフロリダ州セブリングで始まった。
 サーキットはセブリング・インターナショナル・レースウェイ。ディズニー・ワールドのあるオーランドから1時間半ほど南下したところにある。ここはデイトナ24時間レースより古くから耐久レースの舞台となって来ているコース。そのレース=12Hours of Sebringは今年で60回目の開催を迎える。そして、そのイベントはWEC(世界耐久選手権=今年復活するチャンピオンシップ)の開幕戦として来週行われる。


アスファルトからコンクリートまで多彩な路面が特徴のセブリング

 インディーカーのテストは全長:3.7マイルのフルコースでではなく、全長1.67マイルのショートコースを使って行われる。CART時代からオフシーズンのセブリングでのテストは恒例となっている。温暖なフロリダの地にあることもオフに使えるサーキットとしてメリットが大きいのだが、舗装素材がアスファルト一種類だけでなく、コンクリートの部分もある上、路面の継ぎ目など、非常にバンピーな点がストリートコース用のマシンセッティングに向いているのだ。ショートコースだとラップタイムは1分を切るので、多くのセッティングをトライし、それぞれに対して短時間で評価を下して行くテストに適している。近頃のインディーカーではテスト日数が大幅に制限をされて来ていたが、今年は新エンジンと新シャシーの導入されるとあって、オフの間のテストが盛んに行われて来た。
 特に、今シーズンはロードレースの数が多くなり、ストリートでのレース開催数も大きく増えているので、セブリングは人気のテストスポットとなっている。佐藤琢磨選手もホンダのエンジンテスト、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングでの初テストの両方をセブリングで行った。彼らは合同テストの後、さらに開幕直前のテストをセブリングで行う計画だ。
 インディーカーが主催する合同テストは、開幕前には今回のセブリングでの1回だけがスケジュールされている。オーバルでのテストは、5月に入ってから、テキサス・モーター・スピードウェイでのレースの安全性チェックを目的としたものしか、今のところ正式には決まっていない。今年最初のオーバルレースはインディアナポリス・モーター・スピードウェイでのインディー500だが、インディーでのテストも今のところ一切予定されていない。

走行はトータル4日間、メディアデイを挟んで5日間の予定

 今回のテストは、シーズンへのフルエントリーを行う全チームを2グループに分け、それぞれが2日ずつ、間にメディアデイ(開幕戦の地=セント・ピータースバーグでイベント及び写真撮影会を開催)を1日挟んで、合計5日間に渡って行われることとなった。
 今日、3月5日にスタートし、翌6日まで走るのは、サム・シュミット・モータースポーツ(シュミット・ハミルトン・モータースポーツに名称変更するとのこと)=1台、デイル・コイン・レーシング=2台、チーム・ペンスキー=3台、アンドレッティ・オートスポート=3台、ロータス・HVMレーシング=1台、ロータス・ドラゴン・レーシングの2台のうちの1台で、合計11台のはずだった……が、ドラゴンはセバスチャン・ブルデイの走行ができなかった。ロータスのエンジンが届かなかったためだ。チームはサーキットに来ているのに、エンジンがないという、驚くべき状況! やはり、ライバルであるホンダとシボレーに対して開発で3か月以上も出遅れたことが大きく響いてしまっている。ブルデイは明日走る予定というが、果たして本当にそうなるのか……。