2011年7月1日金曜日

2011 INDYCAR レースアナリシス 第8戦 アイオワリザルトコーン インディ250:他選手より若干早かった琢磨のピットイン。これがアクシデントにつながった可能性を検証

スタート前、コクピットに乗り込んだ琢磨に声をかけるジミー・バッサー。
Photo:Masahiko Amano(Amano e Associati)
 もう6月下旬なのにアイオワでは暑くて困ることがなかった。雨も走行時間には一切降らず、出場チームはスケジュールされていたプラクティスをすべてフルに走ることができた。レースに向けた準備も順調に進めることができたことだろう。
 金曜にはプラクティスが予選を挟んで2回あった。正午始まりの1回目の気温が22〜23℃、路面温度は39〜43℃だった。予選は気温25℃、路面42℃。夜7時半からの2回目はというと、気温が24℃と真昼間と大きく変わらなかった。路面はさすがに30〜32℃とそれなりに低くなっていたが……。

 チップ・ガナッシ・レーシングのスコット・ディクソンがひどいオーバーステアで予選23位となり、チームメイトのダリオ・フランキッティも予選は6位と決して良いパフォーマンスではなかった。チーム・ペンスキーもウィル・パワーの5位がベストで、ライアン・ブリスコーは10位、エリオ・カストロネベスは13位という苦戦ぶりだった。
 そうした状況下、KVレーシングテクノロジー・ロータスはマシンをコンディションに合わせ、佐藤琢磨が初めてのポールポジション獲得、トニー・カナーンは予選3位となった。

 アイオワでのKVレーシングは、セッティングの分担作業をより明確化し、それが成功したようだ。予選前に一度しかなかったプラクティスで、予選用セッティングは琢磨に任せられ、カナーンはレース用セッティングに集中していた。セッションの終盤、琢磨は予選用セッティングのフィーリングを少し多めの周回を使って試し、その後にフレッシュタイヤを続けて2セット投入した。8セットしかないタイヤのうちの3セットを使って予選シミュレーションを重ねたのだ。結果はフランキッティに次ぐ2番手タイムを記録。大胆なタイヤマネジメントで琢磨はマシンのファインチューニングを成功させた。期待された成果をKVレーシングは掴むことができたのだ。インディカーの世界には、「最良のエンジニアはドライバーの中にいる」という言葉がある。琢磨の中には優れたエンジニアがいる。マシンのメカニズムを理解し、空力とそれがマシンに及ぼす影響を理解し、タイヤの特性を理解していることで、琢磨は自らの予選に向けて繊細なチューニング作業が可能で、それがポール奪取に繋がった。

 土曜日に行われたレースは、夜の8時スタート。気温は前日の走行時と比べて若干涼しい19℃。路面温度は21℃だった。そして、これがレース中に下がって行くことがなかった。スタートからゴールまで気温も路面温度もほとんど変わらなかった。コンディションの変化がミニマルであることは、KVレーシングが戦い易い状況だった。大幅なコンディション変化に対応したセッティングとなると、チップ・ガナッシ・レーシングとチーム・ペンスキーの二強が往々にして実力を発揮してくるからだ。
 琢磨とカナーンの走りから見受けられたのは、マシンの仕上がりはまずまず良いものの、本当に乗り易くて速い状態には少し手が届いていなかったということだ。それでも、フランキッティの独壇場となったレース前半に彼に食らいついて行けていた。昨年のウイナー、カナーンが全力を注ぎ込んだレース用セッティングは、レースをリードし続けるレベルにはなかったものの、ふたりをトップ5で戦い続けさせるだけの高い戦闘力を備えていた。こうなると、後はピットストップでの小さなセッティングの調整の良し悪しや、コクピット内のツール類をフルに活用した走りのクォリティが勝敗を決する要素になる。

 琢磨はピットストップでマシンのハンドリングを向上させて行った。マシンの挙動を細かに感じ取り、コンディションの変化を予測し、コンディションにマシンをマッチさせて行く作業を成功させていたのだ。しかし、250周のレースが180周を迎えようという時点で意外や単独クラッシュ。そこまでずっとフランキッティ、カナーン、マルコ・アンドレッティといった面々を相手に堂々たる戦いを見せ続けていただけに、実に悔やまれる結果となった。
 
 今回のアイオワのようにプラクティスと決勝のコンディション差が小さい状況であっても、マシンセッティングは簡単などではなく、一筋縄では行かない。それがインディカーの奥深い世界なのだ。超高速で走るマシンは本当にデリケートで、多くの難しいレースを制してきたフランキッティとエンジニアのクリス・シモンズをもってしても、ハンドリングが最後にはルースになっていた。トップを走っている時は実に安定して速かったフランキッティだったが、数台が前を走る状況では走りのキレが失われ、ゴール目前になってその状況がさらに悪化した珍しいレースとなっていた。琢磨のアクシデントも、バンプに足をすくわれたものとも見えていたが、路面の変化などからマシンのハンドリングのオーバーステアが強調されるコンディションに路面が変わり始めていたということなのかもしれない。

 あのスピンと琢磨のピットタイミングの間に因果関係はあったのだろうか? 琢磨の3回目のピットインは、他のトップグループと比べて4周も早かった。そうすることとなった理由は何だったんだろう? 琢磨はレース後に「みんなももう入るタイミングだったはず」とコメントしていたが、KVレーシングは琢磨のピットのすぐ真後ろがマルコ・アンドレッティ(あの時点で琢磨の目の前の2番手を走っていた)だったため、ふたりが一緒にピットインすると、ピットボックスへのアプローチで琢磨がタイムロスを強いられると考え、早いタイミングでピットインさせたのでは? しかし、早くピットさせれば給油量はそれに応じて多く必要になるから、ピットでストップしている時間が長くなる不利に繋がる。もちろん、その不利と、ピットボックスにマシンを停める際のロスを差し引き勘定した結果、早めにピットさせる方を彼らは選んだのかもしれないが……。
 理論的な作戦だったのか、あるいは消極的な戦いぶりだったのか。トップを走っていたフランキッティと、2位を走っていたアンドレッティは同じ184周目にピットストップを行った。もし、琢磨も同じタイミングでピットインしていたら、トップの座を戦うふたりを視界に納めたままバトルを続けることができていたことだろう。そして、そうした緊迫感の高い状況下ではアクシデントも起こりにくかったかもしれない(特に単独アクシデントは)……などとも考えてしまうのである。

0 件のコメント:

コメントを投稿