2011年8月10日水曜日

2011 INDYCAR レポート R11 ホンダ インディ 200 アット ミド-オハイオ決勝レポート:ディクソンが予選の速さを維持、今シーズン初勝利、佐藤琢磨は自己ベストの4位

Photo:Naoki Shigenobu
第11戦 ホンダ インディ200アット ミド‐オハイオ
2011 IZOD INDYCAR SERIES R11 Honda Indy 200 at Mid Ohio

ミド‐オハイオ・スポーツカー・コース
オハイオ州レキシントン
コースタイプ:ロードコース
全長:2.258マイル(=約3.633km)×85周

天候:快晴
気温:29〜31℃
路面温度:50〜53℃

 前日の夕方に大雨が降ったこともあり、決勝日の朝、ミド-オハイオ・スポーツカー・コースには靄がかかっていた。
 朝9時過ぎからのファイナルプラクティスは涼しいコンディション下で行われたが、その後に気温はジワジワと上昇。レースのスタート時刻が近づく頃には、予選日とほぼ同じ30℃まで上がっていた。昼前からサーキット上空には青空が広がり、強い日差しが照りつけるようになった。これで路面の温度は急上昇。予選時より10℃以上も高い50℃に達した。

 今年のミド-オハイオでは、路面コンディションが目まぐるしく変化していた。アメリカン・ル・マン・シリーズ、FF2000、ツーリングカーのワールド・チャレンジなどバラエティに富むサポートレースが行われており、多くのメーカーのタイヤラバーが混じり合うことや、コースオフしたマシンがダートを運び込むことなどが重なってなのか、セッションごとに路面のグリップが大きく変わっていた。そこに路面温度上昇という要素が加わったレースは非常に難しいものとなっていたはずだが、ライバル勢を圧倒してポール・ポジションを獲得したスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)は、レースでも最速の存在であり続け、堂々たる優勝を飾った。2位でゴールしたチームメイトのダリオ・フランキッティ(チップ・ガナッシ・レーシング)に7秒以上もの大差をつけての勝利を記録したのだ。

「先週行ったテストの時から、路面コンディションがコンスタントに変わっていた。いかなるコンディションにもマシンをフィットさせ、できる限り良いタイムを出せるマシンにする。そういう作業を繰り返していた。レースウイークエンドを迎えてからも、僕らのアプローチはまったく同じだった。状況に応じてマシンに小さな調整を加えていた」とディクソンは語った。
 フランキッティが幸運に恵まれ、ディクソンが不運に苛まれるシーンは、彼らがチームメイトとなって以来、もう何度となく見られて来ている。今回も2回目のピットストップで、運が作用しての順位逆転があった。その時点までずっと先行していたのはディクソンだったが、彼がピットストップを行った後、彼より燃費をセーブして1周長く走ったフランキッティがピットに入ると、その作業中にフルコースコーションが発生。その時点でコントロールラインにディクソンは到達していなかたっため、フランキッティが前に出ることとなった。ピット作業を終えたフランキッティがコースへとダッシュした時、ディクソンは勢いよくターン1を通過。イエローが出ていなければディクソンはチームメイトより前を走り続けることができていたのだ。

 しかし、フルコースコーションが出されたために、ペースカーの後ろを走っている間にディクソンはフランキッティの後ろへと下がるようレースコントロールから指示が出された。
 チャンピオン候補のチームメイトが前を走る状況となって、ディクソンのレースは少し難しくなったかに見えた。愚かな事態となるリスクは絶対に避けなくてはならないからだ。しかし、彼はリスタートでフランキッティのドラフティングに入り、アッサリとオーバーテイクを完了させると、そこからはグングンとリードを広げてゴールへと逃げ切った。予選までに見せていたディクソンのスピードは、決勝でもライバル勢をまったく寄せつけないものだった。

 シーズンが後半戦に入っている11戦目になって、ようやくディクソンは今シーズン初勝利=キャリア26勝目を挙げた。ポイントランキングは3位のままだが、すぐ上の2位につけるウィル・パワー(チーム・ペンスキー)との差は68点から一気に31点にまで縮まった。
「ずっと勝てなかった自分が勝てた。流れが良い方に変わったのかな? ファイアストンタイヤが硬くなったからなのか、今年のミド-オハイオは非常に滑り易いコンディションだったが、僕らのマシンは他のドライバーたちのものよりも安定していたようだね」とディクソンは喜んでいた。

 フランキッティは今回も手堅いレースを戦った。12戦(テキサスが2レースのため)で8回目となるトップ3フィニッシュで、パワーが14位という結果に終わったこともあり、ポイント差は38点から62点に広がった。
 パワーはピットタイミングが二度とも悪かった。ともに作戦が裏目に出たのだった。「素晴らしい燃費セーブができていた。トップを争っていた人たちより2周も長く走れる燃費を実現していた。しかし、フルコースコーションの出るタイミングが悪かった。僕らは不運にもイエローに捕まった。今回の燃費の良さは、レース終盤に優勝争いへと復帰する可能性を秘めたものだったのに……」と彼は悔しがっていた。

 予選9位からスタートした佐藤琢磨(KVレーシングテクノロジー・ロータス)は、自己ベストとなる4位でゴールした。決勝日の朝のファイナルプラクティスでは27台中の26位のタイムしか出せなかった琢磨だったが、3カー・チームが集めたデータを分析してレース用セットアップを考案。それが見事に当たってスタートからトップ10圏内を走り続けた。
 スタートをトラブルなしで切り抜け、燃費セーブに努め、クルーたちはピット作業を的確に行い続けた彼らは、チーム・ペンスキーの戦略ミスにも助けられて最終スティントを迎えた時にはポジションを6位に上げていた。

 85周のレースは、60周目にリスタート。ここで琢磨は4位へとジャンプ! エドモントンでブツケられた相手であるライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポーツ)の背後につけた。琢磨が装着していたのはフレッシュ・レッド。対するハンター-レイはフレッシュ・ブラック。逆転のチャンスが訪れる可能性は十分考えられた。ハンター-レイといえば、エドモントンのアクシデントなどによってインディーカーの監視下に置かれている身。琢磨相手に無茶な走りができない状況でもあった。
 ハンター-レイをパスすれば初の表彰台。琢磨のファイティング・スピリットに火がつかないはずはない状況だった。しかし、ハンター-レイのペースが速く、彼が2位のフランキッティにアタックを続けたのに対し、琢磨はハンター-レイのポジションを脅かすところまでは至らなかった。

 残念ながら初の表彰台登壇はならなかった。しかし、琢磨は自己ベストの4位でゴールした。これまでの成績では、今シーズンのセント・ピーターズバーグとテキサスでの2回の5位がキャリアベストだった。

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