2011年9月21日水曜日

2011 INDYCAR 佐藤琢磨コメント87 第15戦インディ ジャパン ザ ファイナル Race Day 決勝レース後記者会見 「僕としては非常に苦い最後のインディジャパンになった。だから、次こそファンのみんなに思い切り「ありがとう!」と言えるレースを見せたいというか気持ちが強くなっています。それが今後、インディジャパンで叶えられないのは残念です」

Photo:Naoki Shigenobu

アクシデントがなければ上位進出は十分可能だった……

 予選11位からレッドタイヤ装着でスタートした佐藤琢磨(KVレーシング・テクノロジー・ロータス)だったが、実はそのレッドは予選で使ったユーズドのレッドだった。予選のトップから9位までがフレッシュレッドを装着。琢磨はちょっとしたギャンブルに出たのである。もっとも、彼の前からスタートしたマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・グリーン・レーシング)は、それ以上に大胆なフレッシュブラックでのスタートを切っていたが……。
 琢磨は最初のスタートでそのアンドレッティの前に出るつもりだったが、それには失敗した。二列スタートはツインリンクもてぎの最終コーナーがS字状のため、トップから3列ぐらいまでしか整列しないうちにグリーンフラッグとなるからだった。
 アンドレッティの真後ろにスタックしたまま序盤を戦うこととなった琢磨は、自分のベストのペースでは走れていなかった。それがジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(コンクェスト・レーシング)とのアクシデントに繋がってしまった。あの時の琢磨は油断をしていたのでも、ドライビングミスをして隙を作ったのでもなかった。インディーカーのルールでは、後続がオーバーテイクを仕掛けた場合には前を行く者がイン側を開けた状態を保たなくてはいけないのだ。
 アクシデントとなったのは、琢磨が十分なスペースを与えていたにも関わらず、インに飛び込んだ相手がオーバースピードで曲がり切れずに体当たりをして来たからだった。この接触で琢磨のマシンはサスペンションが曲がり、ハンドリングに悪影響を及ぼすこととなった。
 アンドレッティは最終的に3位でゴールした。スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)とウィル・パワー(チーム・ペンスキー)というトップ2にはまったく届かないペースだったが、トラブルなしで戦い抜いて表彰台に上った。琢磨も序盤にアクシデントに遭わなければ、上位フィニッシュは十分に可能だったのだ。


Jack Amano(以下――):マシンの仕上げに苦労をしたインディジャパンと見えてましたが、レースでのマシンはどう評価しますか?

佐藤琢磨: レースでのマシンは乗りにくかったですね。今週末を通して、一度としてシックリとは来なかった。僕らなりにセッションを追う毎にクルマは良くして行けていたとは思うんですけど、自分たちが思い描くようなスピードが出せていなかったのは事実で、相当苦労しました。例えば、セットアップを変えて、それを確認して、「ヨシ、これで行こう!」と次のセッションに行くのではなくて、これでいいだろうと思って行ったセットアップに対して別のリザルトが出たり、別の方向性が出たりと、次に走る時に必ずセットアップを変えなければいけない状態でした。だから、決勝日のウォームアップで確認をして「これがパーフェクトだ」っていうのではなくて、ウォームアップを走って「じゃぁ、コレとコレが課題だから」と言って決勝に向けてまた未知数のセットアップを施す。つまり未知数のクルマができてしまう。でも、そういう状態でレースに行かなければならなかった。ウォームアップまででの状態では、あまりにもスピードがなさ過ぎたのでね。そういう観点から見れば、レースがスタートして、あの集団に置いて行かれないでついて行けていました。

――ユーズドのレッドでスタートするという、トップグループでは珍しい作戦を採用してもいましたね?

佐藤琢磨:予選で第2セグメントまで進んだので、新品のレッドは決勝用に供給される1セットだけしか僕らにはなかった。恐らく全員が、基本的には僕のまわりのドライバーたちの大半がスタートには新品のレッドを入れて来るだろうという読みがあったので、同じ戦略を取ると、おのずと結果も同じになってしまうと考えました。冒険し過ぎではないけれど、少し変えて見るって感じでした。ユーズドのレッドスタートして順位を落とさなければ、それから、最初のペースで、みんなに対して7周とか8周ぐらい自分のタイヤは古いんだけれども、それでも着いて行ければ、何か違った展開が見える。自分たちとしてはレッド、レッドと続けて使うチームが多いと予想していて、タイヤを換える時点で自分の前後にどういうドライバーたちがいるかによってレースは大きく違って来るとは思っていたけれど、2番目に投入するのはブラックとして、最後のラストスパートでレッドの新品に威力を発揮させるという戦略でした。
 それは決して悪くないものではなくて、最後、自分たちには少しのアドバンテージがあったと思います。でも、それ以外の部分で、展開に恵まれた部分と恵まれなかった部分がありましたね。最終的にトップ10に入れたことは決しいて悪いことじゃなかったと思います。

――完全燃焼のできたレースでしたか?

佐藤琢磨:完全燃焼ではなかったですね。完全燃焼した後っていうのは、例え順位が悪くても自然と体からエネルギーが出て来るものです。ファンの応援などに対して感謝の気持ちはものすごく大きくありましたけど、後味の悪かった部分も拭えない。最後に納得の行かない接触があって、こういう順位(10位)となってしまったというのは、すごく複雑ですね。それも、チームメイトとの接触でした。お互いに6番手と7番手でリスタートを迎えてた。そんなに大きな問題ではないですよね、6位でフィニッシュしようが、7位になろうが……。ただ、自分としてはヤッパリ、たくさんのファンのみんなが見てくれている前で、やっぱりコース上でオーバーテイクして、それをキッチリ決めてゴールへと戻る。そういうところがひとつ、レースをやっている意味だと思うので、その部分で、最後のリスタートの時にグリーンフラッグが振られて、スタート/フィニッシュラインを越えるところですでに僕の方が順位を上げていたっていうのは、僕の中では大きなポイントなんですよね。彼の方も僕が前に行っているのは知っていた。そういう部分があって、なんで1コーナーに入ってから外側から被せる必要があるのか、まったく意味がわからない。これが例えば、僕らふたりがチャンピオンシップを争っているとかね、そういう状態だったら絶対に譲れないとかもあると思うんだけど、インディ・ジャパンが最後で、僕が日本人ドライバーで、チームメイトに対してでも負けるのはおもしろくないかもしれないけど、1コーナーに入る前にすでに順位で負けていたら、無理矢理被せる必要はないんじゃないかな。特に、僕の前にはアレックス・タグリアーニ(サム・シュミット・モータースポーツ)がいる状態で、こちらの身動きが取れない状況の時に、あんなに接近して来る必要はないかなって思うんですよ。それがあって僕はまったく接触を避けれ切れなかった。それがすごく悔しいですね。アレがなければ、ポジションをひとつ上げただけでの6位。でも、もしかしたらその後の1周、2周でまた順位を上げられたかもしれない。そうできていたら、最初の鈴鹿の時みたいに、なんかこう……凄い達成感もあったと思うんですけど。そうすればJP(・デ・オリベイロ)との件も帳消しになったと思うんだけど、ウーン、僕としては非常に苦い最後のインディジャパンになった。だから、次こそファンのみんなに思い切り「ありがとう!」と言えるレースを見せたいというか気持ちが強くなっているし、それが今後、インディジャパンで叶えられないのは残念ですね。今シーズンに残された2レース、精一杯頑張ります。

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