2014年5月19日月曜日

2014 INDYCAR 佐藤琢磨コメント28 第98回インディー500 5月17日 予選1日目終了:「ラップ・タイムを捨ててまでアタックに行くほどコンディションは最後は上がって来ていなかった。だから最終的にアタックには行かないって方向になりました」

Photo:INDYCAR (Shawn Gritzmacher)クリックして拡大
「一番のチャンスは残り一時間ちょっとあった時点でしたね」
Jack Amano(以下――):2回目のアタックはせずに……という結論になりましたが……。
佐藤琢磨:なりましたね。

――でも、実はもう一度アタックしたかったんじゃないでしょうか?
佐藤琢磨:行きたかったですね。すごい行きたかった。でも難しい状況でした。最後はもう、残り30分になった時点でどうしようもなかったです。あそこから動いても、多分、太陽が出て来ちゃって、気温が上がって来ちゃったので、ラップタイムはもうほとんどみんな上がりにくくなっていた。上がった人も中にはいましたけどね。一番のチャンスは残り1時間ちょっとあった時点でしたね。雨が止んで、空気がすごく冷えていて、出る人、出る人みんな230mphを出してた。今行くしかないよって言ってたんですよ。

 あの時に行ければ、シモン・パジェノーとかの例を見てもわかるように、2、3回アテンプトをして、ちょっとずつ調整してスピードを上げてってるんですよ。だから、1回目のアテンプトで僕たちはバランス的にハッピーじゃなかったんだけど、そこから調整を施したマシン・セットアップが果たして本当に正しいかのチェック・ランをできないまま行かなきゃいけなかったんで、本当ならあそこで自分のラップタイムを捨ててでもアタックをしに行くべきで、行っちゃえば、例えダメでももう1回タイヤつけてすぐに行けた。だけど、その決定がチームとしてできなかった……というかしなかったので手遅れになってしまいましたね。その後にも引き続き並んでいたのは、僕らとしてはまだ行くつもりがあったから。でも、ファースト・レーンにどんどん人が入って来て、最終的に僕らがアタックするための時間はなくなっちゃった。あの時に並んでいたら、最後の1、2番手でアタックができていたかもしれない。それでもしかしてタイムが落ちても、保険があるレーン(自分のラップタイムを放棄せずにアタックして良い列)だから自分のポジションは守れたんですよ。ラップ・タイムを捨ててまでアタックに行くほどコンディションは最後は上がって来ていなかった。だから最終的にアタックには行かないって方向になりました。僕らにもミステイクは確かに幾つかありました。ここでクルマを作っている間にピットに並んでる台数とか順番をチェックして、そこらへんを計算することをしていなかった。コンディションが良くなった時、あそこは明らかに良かったのにアタックに行かなかった。

――チャンスだって思った時、佐藤選手としては、走っていれば230mphを出せたという感触があったんですか?
佐藤琢磨:ありました。あの時、だいたい約1マイルぐらいのスピードアップを僕らの周りの人はみんな実現してました。最もゲインの大きかった人なら1.2マイル、少ない人でも0.6~0.7マイルぐらいは上がってたんですよ。そうすると、僕らは230mph台にギリッギリ載せられるかな? というところ。だからヤッパリやりたかったよね。やってファスト9に入りたかったし……。でも、正直なところ、どうなっていたかはわかりません。たらレバなんで。クルーたちも、みんな僕が行きたかったっていうのはわかってくれています。すごい残念です。みんなも悔しい思いをしました。それでも、こればっかりは何も言えないです。大コケしていた可能性だってある。行こうって言って、もしバランスが合ってなかったら……。マーティンは遅くなっちゃったワケだし。バランスが合ってなかったらトニー・カナーンみたく落ちちゃってたかもしれない。

――判断が難しかったワケですね。雨で走行時間が減ったのも影響しましたね。
佐藤琢磨:そうでしたね。雨が降らなかったら、もしかしたら全員が二度目のアタックをやれてたかもしれない。そこら辺は、僕らに今日は運が向いていなかった。不運は実際にあった。でも、それを自分たちで覆すこともできたかもしれない。しかし、果たして自分たちのクルマが230mphで走れるものになっていたか、その自信があったかどうかというと、そこはわからないです。アンドレッティ・オートスポートみたいに物量作戦で、ポンポンポンッてアタックしたら、彼らは高いスピードを出せていましたよね? 僕らが唯一、並んでいたラインから外れてファースト・レーンに行くとしたら、マーティンのラップタイムが基準になったでしょうね。でも彼が遅くなっちゃったから……。あの時点で気温が上がり始めたいたということもあったし。あそこで行っても、自分のスピードを塗り替えるのは難しかったかな? 塗り替えられたとしたら、あの涼しくなっていたタイミングだけだったかな。

――明日の予選で決勝用グリッドが決まります。それに向けて練習をする……といった考えはなかったんですか? 本当の予選を使った予選シミュレーションとでもいうような?
佐藤琢磨:そうですよ。それでアタックしたいとも思ってました。でも、要は僕らが保険をかけた、自分のスピードを放棄しないでいい列に並んでいたので、アタックに出ることができなかった。1回目のアタックのスピードを捨ててアタックをするというのなら、誰かがグリッドを保証してくれるんですか? ということです。30番手以降になっちゃったんじゃ困るので。

「こんなに予選をもう一度走りたいと思ったことはない」
――自分のスピードを捨ててまでアタックするリスクは避けた、ということですね。
佐藤琢磨:チームはそう考えましたね。僕は大丈夫だと思ってましたけどね。自信というか、信頼があった。今までデータを見て、クルマを作って来た経緯から、自分のフィーリングでも、今日走った予選が最初はアンダーステアで始まって、オーバーステアに変わった。その変化の具合を見てると、僕らがその後に施したセットアップであれば、4ラップの間の変化を小さくできるんですよ。でもそれはセオリーだから。実際はどうなるかわからない。けど、僕はそうできてたはず、と思ったから、スピードを捨ててでも今行くべきだってチームに言ったんですよ。ここで厄介だったのは、EJ・ヴィソとキャサリン・レッグが追加エントリーになるかもしれないっていう噂が流れてたことですよ。もしバンプ・アウトされるようなことになって、その後に電気か何かのトラブルでクルマが止まっちゃうなんてことになったら、インディ500に出場できなくなっちゃうワケですよ。スポンサーとの契約からしても、インディ500に出場できないっていうのは大事なんですよ。それだったら、18番手でもインディに確実に決勝に出場できる順位にいる(予選1日目の30位以内は決勝出場確定)のだから、明日の予選2日目に最高で10番手になれる。だったらそれを狙おうってコトになったんです。シリーズ・ポイントでは多分7点ぐらい損する可能性はあるけれど、出場できなくなるっていうリスクに比べたら……ということです。それは間違っていないですよ。僕がチーム・オーナーだったら、その判断は間違ってないと思う。ただ……悔しい。こんなに予選をもう1回走りたいって思ったことってない。インディ500初挑戦だったKVレーシング・テクノロジーでの出場の時も二度目のアタックができなくて悔しい思いをしたけど。あの時も絶対にインプルーヴできると思ってた。だから、あれに近いぐらい悔しかったね、今日は。

――4時半の時点では4ラップ全部で230mphの自信があったんですか?
佐藤琢磨:はい。だって、見る人、見る人230mph台だったじゃない。あの時のムニョスなんて230.6mphも出せてた。明らかに空気が冷たかった。エンジン・パワーが物すごく出てる状態だったと思う。空気が冷たくなるとダウンフォースが出る。そうなると色々なトリックがあるわけですよ。ウィングはみんな一番低い10.5度でしょ。あとはディフューザーをわざとストールさせたりとか、色んなテクニックがあるんです。例えば10ポンドのダウンフォースを無くしても、1ポンドのドラッグを削るとかのやり方だと、気温が上がっちゃうと、絶対的に必要なダウンフォースの量、最低のラインていうのがあって、それを切っちゃう場合が出て来て、幾らドラッグがなくたってクルマが滑っちゃう。それが僕らの1回目のアタックだったんですよ。カーペンターのクルマは、僕らよりずっとダウンフォースもドラッグも出てたんだけど、クルマが滑らない分、前に進んでたっていう、そういうカラクリなんですよね。だから、気温が下がっていれば、ダウンフォースが上がるから、色んなものをやって速く走れる。そういうことです。科学だから計算で答えは出る。今行けば絶対速いんだよって。

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