2017年7月16日日曜日

2017 INDYCARレポート 第12戦ホンダ・インディー・トロント:トロントのポール・ポジションはシモン・パジェノー

今シーズン初のPP獲得で珍しく感情をあらわにするパジェノー。シリーズタイトル連覇へのファイティングポーズだPhoto:INDYCAR (Chris Jones) クリックして拡大 
パジェノー、12戦目にして今季初のポール・ポジション
 ディフェンディング・チャンピオンのシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)がシーズン初ポール・ポジションをトロントのストリート・コースで獲得した。去年はトロントの前までに5回もPPを手にしていたパジェノーだが、今年はシーズンももう後半戦の12戦目にして、ようやくひとつ目を手にいれた。

キャリア初のショート・オーバルPPでタイトルにも勢い


 去年はテキサスでのレースが雨で中断になり、シーズン終盤に決着がついたため、トロントは12番目のレースだったが、結果が出たのは11番目だった。その時点でのパジェノーは獲得ポイント409点でランキング・トップにあった。今年のパジェノーはここまでで1勝。去年の3勝と比べるとパフォーマンスは低いように映っている。しかし、唯一の勝利は意義あるキャリア初のショート・オーバルでのものだったし、そのフェニックスでの1勝も含め、パジェノーは11戦で8回ものトップ5フィニッシュを記録する高い安定感を見せて来ている。これはポイント・リーダーのスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)の7回をひとつ上回る数字で、チャンピオンシップ・ポイントはトップからマイナス31点、2番手のエリオ・カストロネヴェス(チーム・ペンスキー)との差は23点で3番手につけている。今日、ポール・ポジションのボーナス1点を加算したことをきっかけにパジェノーは終盤戦のスパートをスタートさせるつもりだ。勢いを掴むに足る目覚ましいポール・ポジション獲得だった。ファイナル・ステージで彼が出したラップ・タイムは58秒9124。ただ一人59秒の壁を打ち破り、去年ウィル・パワーが記録したコース・レコード=59秒7747を楽々と上回って新コース・レコード・ホルダーとなった。
Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大

 「とても良い、自分のキャリアの中でもベストに数えられるべきアタック・ラップだった。マシンの持てる力はほぼ出し切ったと思う。しかし、それよりも今日の自分は予選全体に渡って、細かな部分まで考え抜き、計画を立て、ドライビングも含めて、すべての仕事をプランの通りに完遂したことが嬉しい。3人のチームトたちが素晴らしく、彼らと力を合わせてマシン・セッティングを進めているが、その雰囲気はまさに最高のものとなっている。各プラクティスの後に彼らと話し合ってマシンを向上させて来た。今日の予選では、自分のマシンからは最高のものを引き出したし、セッティングはベストのものを施せていたと思う。それは自分が最も大きな満足を得らえることだ。そして、いつでも私が求めているものだ」とパジェノーは語った。

レイホール、ユーズド・レッドでセカンドポジション獲得!


ペンスキー勢をユーズドレッドで向こうに回し予選2位 Photo:INDYCAR (Joe Skibinski) クリックして拡大
 今日のもう一人のヒーローはグレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)だ。Q3に進んだチーム・ペンスキーの3人は全員がフレッシュ・レッドを1セット残していたが、レイホールはユーズド・レッド2セットで彼らに挑戦し、2セット目でのアタックで59秒2245をマーク。エリオ・カストロネヴェス(予選3位)とウィル・パワー(予選4位)を上回る予選2位となってフロント・ロウ・グリッドからスタートする権利を手に入れた。予選5位は2013年のダブルヘッダー両レース・ウィナーのスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)、予選6位は地元カナダの人気者ジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)のものとなった。
 レイホールは予選後、「すごく嬉しい。レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングを誇りに思う。エンジニアとクルーたちが素晴らしいマシンを作り上げてくれ、それをファイナル・ステージで最高の状態に仕上げることができた。チーム・ペンスキーが今週はずっと優勢を保っていただけに、予選のファイナルで彼らの間に割って入る2位を掴み取レたことは本当に嬉しい。ポール・ポジションより嬉しいぐらいだ。ファイナルに進んだチーム・ペンスキーの3人全員が新品のレッドを残していたから、カストロネヴェスとパワーが僕より速いラップを出せなかったのにはちょっと驚いている。それにしても、2番グリッドからなら彼らを相手に激しく戦うことができるんだから、全力を出し切るつもりだ。僕らはレース用セッティングもかなりレベルが高いはず。あと少しだけ安定感を持たせ、是非とも優勝したい。これだけ良いマシンに仕上げているんだから」とコメントした。

カストロネヴェス、連勝に好感触の3番手
パワーはレッドでタイムを出せず、やや不本意な予選4位

 ポイント・スタンディングで2番手につけ、初のタイトルを狙っているカストロネヴェスは59秒4345のベストで予選3位になった。レイホールには先を越されたが、アイオワからの2連勝を狙うに十分なスターティング・ポジションだ。
 今シーズン5回目のPPを狙っていたパワーは4位。これは彼にとって不本意なポジションだろう。「自分たちはブラック・タイヤではとても速かった。マシンのフィーリングも上々だったんだ。しかし、レッド装着でのマシンは同じように良くはなかった。アンダーステアが強く出ていたんだ」とパワーは話していた。 

パドックに姿を見せたブルデイに笑顔で話しかけるディクソン Photo:INDYCAR (Chris Owens)
  予選5位はディクソン。彼は朝のプラクティスで17番手のタイムしか出せていなかったが、それは三味線を弾いていたからではなかった。「今週はスピードが出せたり出せなかったりで安定しない。マシンが手に負えないほどひどい時さえあった。今朝のプラクティスで17番手だったことを考えると、予選でファイナルに進み、5位になれたのだから、チームとしては大きな進歩を実現したと言っていい。しかし、予選でもマシンは少々手に余る状況で、ベストのラップではターン6で壁に結構ハードにヒットし、サスペンションを曲げてしまった。あれがなければ悪くてもひとつ上の4位になれていたと思う。良いリカバリーを予選で果たすことはできたが、明日のレースに向けてはまだかなりの進歩が必要だ。そして、できれば明日のレースでは少しラッキーでもありたい。去年はレースの大半をリードしながらイエローのタイミングが悪くて順位を下げざるを得なかった。明日は自分たちに展開が味方してくれるんじゃないかな、と思っている」とディクソンは語った。

佐藤琢磨、Q2でトラフィックに引っかかりファイナル進出を逃す
 佐藤琢磨(アンドレッティ・オートスポート)は予選10位。Q1で59秒5527をマークしたが、Q2では新品レッドを投入したアタック中にJR・ヒルデブランド(エド・カーペンター・レーシング)のクラッシュによる赤旗が出てしまった。それでセッション終了になるかと思われたが予選は再開され、誰もが1ラップだけ計測できることに。ここで琢磨はトラフィックに引っかかってスピードを乗せることができなかったために好タイムを出せず。このチャンスに59秒台を出した面々によって、中断前の5番手から8番手に下げられ、ファイナル進出を果たせなくなった。



Photo:INDYCAR (Chris Jones) クリックして拡大
 「マシンはプラクティス3からの変更でさらに良くなっていました。Q1では59秒台も出せていました。それだけにファイナル進出ができなかったのは本当に悔しい。あの赤旗が出た時、そこまでのベストより速いペースで走れていて、59秒2ぐらいは出せそうだったんです。あそこでニュー・タイヤの美味しいところを使ってしまったので、Q2の最後の1周だけの勝負になった時にベストを出せませんでした。チームとしても慌てていて、1周のウォーム・アップで1周のアタックになるからタイヤのプレッシャーを上げることに決めたんだけれど、右のフロントしか上げてないところでグリーンになって、その状態でコースに出て行きました。なおかつ、ライバルたちに先にピット・アウトされてしまったことで、ピット・ロードの前の方の陣取っているメリットを使えなかった。コースに出るとシモン・パジェノーの後ろにスタック。彼のウォーム・アップ・ラップがとても遅く、あのスピードじゃ僕らのタイヤは温度が十分なところまで上がらなかった」と、実力より後方のグリッドしか得られなかった事情を話した。そして、レースに向けて早くも気持ちを切り替え、「もう予選スペシャルのセッティングは終わり。決勝に向けて、明日の朝のプラクティスでどれぐらい安定感を持って速いラップ・タイムを重ねられるかを見たいと思います」と意気込みを見せていた。

*ニュース : 2018年からの新型シャシーはファン・パブロ・モントーヤとオール・セルヴィアがテスト
 インディーカーは今日、来る2018年シーズンから起用されるダラーラ製スペック・エアロ・キットのテスト・ドライブァーにファン・パブロ・モントーヤとオリオール・エルビア、二人の大ヴェテランを起用すると発表した。
 エントラント全員が使うことになるユニヴァーサル・キットは現在全チームが走らせているダラーラIR-12シャシーにマウントされ、7月25、26日はインディアナポリス・モーター・スピードウェイの2.5マイル・オーバルでテストされ、常設ロードコース用パッジェージはミッド・オハイオ・スポーツ・カー・コース(8月1日)で、ショート・オーバル用のテストはアイオワ・スピードウェイ(8月10日)、ストリート・コース用シミュレーションはセブリング・インターナショナル・レースウェイ(9月26日)で行なうことになるという。

 テスト用マシンは2台が用意され、現在シリーズに参戦している2ブランドのエンジンが搭載される。チーム・ペンスキーがシヴォレー・エンジン搭載シャシーを、シュミット・ピーターソン・モータースポーツがホンダ・エンジン搭載シャシーを用意する。マシンのメインテナンスだけでなく、テスト現場でのオペレーションも上記のチームが担当するが、テストの指揮はインディーカーが取る。そして、テスト・データは全てインディカーが保持。シャシーもインディカーの管理下に置かれるため、2チームは来シーズンに向けたアドヴァンテージを手にしにくい。そして、全テストが完了した後には、全てにテスト・データが出場チームに提供されることとなる。

 2018年からのマシンは前後の重量比が変更され、1.6パーセントほど現行マシンよりフロント荷重が増えるという。ラジエターも僅かながら前方に移され、ドライブァーを保護する構造もタブ側面に新たに持たせる。そして、後輪後方のホイール・ガードと、それをマシン後部と繋げていたビーム・ウィングが廃止されるのだ。
 ユニヴァーサル・キットはスーパースピードウェイ用と、ロード/ストリート/ショート・オーバル用の2ヴァージョンが開発される。

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