2020年8月24日月曜日

2020 INDYCAR 佐藤琢磨コメント 第104回インディー500 決勝:「すべて最後の戦いに向けての準備をしてました。残り3周の時点から僕としてはベストパワーで走れるだけ燃料をずっと蓄えてましたから」

Photo:INDYCAR (Joe Skibinski) クリックして拡大

「中盤まではリスタートが不安といえば不安でした」
――レース前半、そんなにガッついてなかったですよね?

佐藤琢磨:珍しく落ち着いてたでしょ(笑)。

――でも、リスタートで前にあまり出て来れてなかったので、今日はちょっとレーシーじゃないのかな? と心配したところもあったんですが?


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佐藤琢磨:いや、おかしいな、リスタートが下手なのかな? って自分でも思ってた。いっつも抜かれちゃってて。それはミクスチャーにちょっと問題があったからで、最後はパワー・ベストでリスタートできてました。でも、中盤まではリスタートが不安といえば不安でしたね。トラフィックが間に挟まっちゃって、ディクソンがずっと前に行って消えちゃった時には、追いつくにはイエローがないと難しいだろうなって思いましたよ。でも、まだ100周ぐらいだったし、追いつけるとは思ってましたけど。それよりも、自分たちががターゲットにしているタイヤパフォーマンスのピークをどこに持っていくかっていうのを見失わないようにしようと思って、エンジニアとフロント・ウィング、タイヤ・プレッシャーのマネジメントをやっていました。
「タイヤをうまくマネージメントすることができたので
勝負どころでファイナルラップまで全力で走れるようになりました」

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 ――そのタイヤ、スティントを通じてかなり余裕がある走りになっていましたよね? スティント終盤にペースを上げてみたり。

佐藤琢磨:そうそう。みんなタイヤ・デグラデーションに問題を抱えてて、特にアレックス(・ロッシ)を見ればわかりますよね。リスタートからアグレッシヴに行って、10周ぐらいでタレちゃってたじゃない? ウチらもそういうスティントがあったんだけど、それをやっちゃダメだってわかってたので、どういう時期にどれぐらいのエネルギーをタイヤに与えるかっていうのをセッティングとツールを使ってうまくマネージメントしてました。それができたから最後のスティント、勝負になった時にファイナル・ラップまで全力で走れるような状態になりましたね。

「ディクソンがどんなクルマか、スピードがあることも分かっていました
抜いたら絶対抜き返して来るだろうと思っていました」

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――150周目を越えてからディクソンの前に出ました。前に出たら、もう抜かせないって自信があったように感じましたが、実際はどうでしたか?
佐藤琢磨:今日のレースではオーバーテイクするのがすごく難しかったから。グリッドでナンバー9のマシンがどんなセッティングになっているのかをチェックしました。今日だけじゃないんですけどね、プラクティスの時からディクソンのマシンについては研究をしてました。予選が終わった後も僕がずーっと彼のマシンを見てたら、クルーが両手を広げて、冗談半分でマシンを隠そうとしてた。だから、彼のウィング・レヴェルも知ってました。もちろんサスペンションは知らないけど、どんなクルマか、そして、スピードがあることはわかってました。だから、僕が抜いたら絶対に抜き返しに来るだろうって考えていましたね。事実、エリオ・カストロネヴェスの時と同じような展開になりましたよね。でも、前に出て、そのポジションを守り切れるのかどうか、1回やってみたかったんですよ。

「最後のスティントで逃げられるなら逃げ切りたいと考えていた」

――それで1回前に出たんですね? あそこでもうディクソンに抜かせませんでしたよね?  あの時、ディクソンは抜きにかかって抜けなかったのか、燃費セーヴをしてたのか……。

佐藤琢磨:あそこは燃料セーブをしてましたね。でも、あそこで逆に、自分がずーっと追いかけるってパターンはやりたくなかったんですよね。というのは自分の中で、最後のスティントで勝負になった時にどれだけ逃げれるのかを知りたかったし、僕が全力でやっていても抜かれるんだとしたら、また色々と計算をしなくちゃいけない。エリオを相手にした時みたいに。それは面倒臭かった。逃げれるなら逃げ切りたいって思ってました。ただ、彼がフューエル・セーヴしてたのは明らかだったので、とにかく僕らは引っ張れるところまで引っ張ろうって考えて、で、1周(相手より)ショートになった。それはわかってたんですよ。レースリードできる周回数も燃料計算上で限られるのはわかってたんだけど、もうすでに100周過ぎのところで1回リードした時のフューエル・ナンバーは持ってたし、トラフィックが来ることもわかってて、それがフューエル・セーヴの助けになることもわかってた。それから自分のミクスチャー調整でいかようにでもなるとわかってたっから、全部、最後の戦いに向けての準備をしてました。おそらく最後のスティントも、残り5周でイエローにならなかったとしても、ファイナル・ラップまでいい勝負になってたと思うし、残り3周の時点から僕としてはベストパワーで走れるだけ燃料をずっと蓄えてましたから。大変でしたけどね、リーンにして、ベスト・パワーにしてっていうのを繰り返し続けるのは。ショート・シュートでも変えてたぐらいだから。でも、それが功を奏してました。

「アレックスとぶつかって大きなダメージがなかったのはラッキーだった」

――今日、一番ピンチと感じた瞬間は?

佐藤琢磨:アレックスとぶつかった時。危ないよ、アレは。アンセイフ・リリースだよ。

――それで実際にペナルティになりました。

佐藤琢磨:よかったよ、そうなって。

――ぶつかってたことによるクルマの不安はありませんでしたか?

佐藤琢磨:ありましたよ、多少は。結構バコーンッてぶつかったから。でも、あれ以上は避けられなかった。右側にもう1台いたし、フルブレーキングしていたし。あそこで大きなダメージを負わなかったのは、とても幸運でしたね。

「フロントウィングとタイヤのマネジメントが大事と分かっていたので
今日はその準備の賜物っていうレースになっていたと思います」


――終盤、気温が下がったり、日陰がコースの一部分にできた中で、相対的な速さが増していたように見えていましたが、そこにビシッとクルマを合わせ込めたってことですか?

佐藤琢磨:もちろん。そのためだけに練習を重ねていたし、ターン1が影になるのもわかってた。フロントウィングとタイヤのマネジメントこそが大事だっていうのがわかってたので、今日はその準備の賜物っていうレースになっていたと思います。

「ボビーのチームで勝つためだけに走ってきた。8年間かかったけど。
マイク・ラニガンのフィナンシャル的なサポートにすごく感謝したい」


――ボビーのチームでついに勝ちましたね、インディ。

佐藤琢磨:そうなんですよ。もう、そのためだけに走ってましたからね、本当に。8年かかったけど。最初の優勝はマイケル(・アンドレッティ)にもの凄く感謝しているし、自分のドライヴァーとしての目標は達成できたけど、やっぱり2012年の(最終ラップの)ターン1のことがずっと引っかかってたから、マイク・ラニガンがファイナンシャル的にもサポートをしてくれて、30号車を自分に与えてくれたっていうことにはすごく感謝をしたいですね。

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――ボビーも最高の笑顔でした。
佐藤琢磨:そうですね。ボビーもマイクも、デイビッド(・レターマン)もきて、みんなでブリックヤードにキスができたっていうのは、最高のお礼になったと思います。
以上

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