2020年8月24日月曜日

2020 INDYCARレポート 第104回 インディー500 決勝:佐藤琢磨の見事過ぎる勝利

 
おめでとう、佐藤琢磨!史上20人目のインディー500複数回優勝! Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大

レース終盤の勝負どころで最速だったのは佐藤琢磨!

 レース後に、「スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)のレースだったが……」と言った人がいたが、それは間違っていると思う。彼は200周のうちの111周をリードしたが、レース終盤の勝負どころで最も速かったのは佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)の方だった。また、琢磨は5度のタイトル獲得歴を誇るディクソンよりも燃費セーヴで高いスキルを持っていることを今日の戦いで示した。

 
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 その結果、世界中のドライバーたちが勝ちたいと考えるインディ500での2勝目を琢磨は手繰り寄せ、ディクソンは2008年以来となる2勝目ではなく、3回目の2位フィニッシュを記録することになった。

4ラップを安定させることに徹した予選が勝利への端緒
流れは、ファスト9終了後から確かに変わった



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  予選ではマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・ハータ・オートスポート・ウィズ・マルコ・アンドレッティ・アンド・カーブ・アガジェニアン)が最速。彼に対抗できたのはディクソンだけだった。琢磨はポールを狙えず、4ラップを安定させることでできる限り上位のグリッドを狙う戦い方だった。それが3位スタート=キャリア初のインディー・フロント・ロウに繋がったが、その時点まではディクソンが優位だった。

 しかし、予選直後のプラクティスでディクソンはスピンし、大きくはなかったがマシンにダメージを与えた。そのため、翌週金曜のファイナルプラクティスでの彼らはマシン全体と、スペアウィングの作動確認を行わなくてはならなかった。この辺りから流れは変わり始めていたようだ。
 一方の琢磨は、予選でメカニカル・グリップを向上させるセットアップを見つけ、その直後のプラクティスで再確認。カーブ・デイの走行では複数の新セッティングを試して更なるゲインを目指した。それらが成功に繋がることはなかったものの、アグレッシブなトライをファイナル・プラクティスで行なえるほど琢磨陣営はマシンを自分たちの望むものに近づけることができていた。

燃料セーヴをしながらもディクソンを寄せ付けず
昨年のゲイトウエイを再現した勝利



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 序盤のディクソンの大量リードは驚くべきものだった。しかし、全員をラップダウンにでもしない限り、序盤のリードに大きな意味はない。
 アレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)は自滅。ピットのミスでペナルティを課せられ、リードラップの最後尾まで下げられると頭に血が上ってしまい、リスキーな走りを展開して大きなクラッシュを演じる羽目になった。彼しか優勝争いに絡めなかったアンドレッティ陣営は、来年は予選よりもレースでの強さにフォーカスすべきだろう。 

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 2017年のインディで琢磨はエリオ・カストロネヴェスと死闘を繰り広げた。その時に彼は、”自分が抜いたら、相手が抜き返すまでに何周必要なのか?”を試し、ゴール目前の作戦を立てた。今日のレースでも、彼は150周目過ぎに一度トップに立ち、ディクソンの目の前を走った。そこでディクソンは琢磨を抜き返せなかった。燃費セーヴをしていた可能性もあるが、抜き返せないから燃費セーヴで次のチャンスを待ったように見えた。
 その直後のピットストップで順位は逆転、琢磨がまた追う立場になったが、時間をかけずにトップを奪いに行き、それを成功させた。
 再びトップに出た琢磨は懸命に逃げた。しかし、そこで燃料セーヴを忘れなかった。昨年のゲイトウェイでエド・カーペンターを引きつけて、引きつけて、ギリギリ抜かせずに勝った、あの時の勝利を目指し、見事に再現した。





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  自らシナリオを書き、その通りのレース展開として勝利をものにする。琢磨は2020年のインディー500で、またオーバルでの強さのステージを一段上げてみせた。

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