2012年9月3日月曜日

2012 INDYCAR 佐藤琢磨コメント75 R14 グランプリ・オブ・ボルティモア 決勝「トップを走っている限り抜かれる気はしてなかったから、トップを死守する自信はありました。作戦的にもうまく行くと思ってたし」

リスタートからトップを快走する佐藤琢磨。後続を7秒まで引き離したが……。Photo:INDYCAR LAT USA
 R14 ボルティモア・グランプリ
ボルティモア市街地コース
2.04マイル(=約3.282㎞)×75周
 

決勝 21位 50周走行リタイヤ

雨を味方につけ、的確なレース戦略で
トップを快走した琢磨だったが……

 2戦連続で後方には1台しかいないグリッドからスタート。佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)の今シーズンは、ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)やライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)と変わらない不運に見舞われている。
ボルティモアでのレース、琢磨は24周でトップに立った。ピット・タイミングの良さ、タイヤ戦略の的確さ、濡れた路面での優れたドライビング、リスタートの巧さで2位を7秒も突き放したほどだった。しかし、結果はトラブル発生で失速。レース途中でマシンを降りるしかなかった。


「チームが無線でウェットかドライかと聞いて来たけど
僕はもうドライしかないと思ってた」

Jack Amano(以下――):雨に対する作戦が成功し、トップ争いに加わりました。トップ10はもちろん、トップ5も十分可能な戦いになっていましたね!

佐藤琢磨:もっと上だよ。グリーンになる周にピットに飛び込んだ作戦はかなり無謀にも思えたけど、チームを信じてた。今日はピットストップのシークエンスを変えないと前に行くことはできないと思ってた。順当に同じ戦略で順位を上げて行くのは難しいと思ってたんだけど、最初のピットストップ以降、雨が落ちて来たのは僕らにとってすごくプラスでしたね。

――雨が降り出して、コースはどういうコンディションになってたんですか?

佐藤琢磨:だんだん雨脚が強くなっていたんだけど、コースの表と裏で全然コンディションが違ってた。ある部分は乾いてて、ある部分はすごくウェットだった。メインストレートのシケイン手前あたりからはものすごく濡れていて、走るのはかなり難しくなってました。チームが無線でウェットかドライかと聞いて来たけど、僕はもうドライしかないと思ってた。レーダーはどうだ? って聞いて、雨はすぐ止むとも聞いたので、だったらもうドライのまま乗り切るのがいいだろうって考えた。

――ウェットの方が良い状況もあったのでは?

佐藤琢磨:一時、確かにウェットの方が速そうな状態になってたけど、それじゃ絶対に僕らは勝てないって考えてたんで、ドライで走り続けることにした。それもあって自分の前から10台ぐらいがいなくなって、一気に上位にポジションを上げて、リスタートでパスして、次のリスタートでまたパスをしてレースをリードすることになりました。

――後続を7秒以上リードしてトップを走りました。

佐藤琢磨:あの頃からは燃費セーブもして、本当に順調に、あと1回のストップでゴールまで行けることになってました。レースが終盤に入ってからも燃料についてはかなり自信のある戦いができていました。優勝も見えていたレースになってましたね。

「フューエルセーブを始めたあたりからエンジンが息をつき始めました」

――トップで迎えたリスタートで5番手に落ちたシーンは、もうマシントラブルが始まっていたということですか?

佐藤琢磨:そう。その前のフューエルセーブを始めたあたりからだったと思います。燃費を抑えた走りをしている時、何かスロットルがおかしいと感じて、エンジンが息つきを始めた。でも、まだその時点ではよくわからなかったですね、燃料セーブしてるからかな? とも考えてた。それが、リスタートの時、2速の時点でもう全然パワーがついて来なかった。アクセルを踏んだのに失速してて、バーッと一気に4台ぐらいに抜かれた。その後は、回転が落ちるヘアピンとかでアクセルを踏んでもまったく反応しなくなって、何とか走り続けてたんですけど、だんだん悪くなって行きました。警告ランプが点いてもリセットボタンを押せば殺せるんです。でも、3秒おきに「フューエルプレッシャーが低い」って盛んにメッセージが出てて、最後はギヤもセレクトできない、ブリッピングもできないぐらいの燃圧になっちゃって、ストップせざるを得なかった。

――今朝のウォームアップセッションの後、エンジン周辺の部品をかなり大掛かりな作業で交換してましたが?

佐藤琢磨:そうです。昨日から今日にかけてエンジン交換をして、補器類も換えました。でも、今朝のウォームアップで止まっちゃったのも燃圧のトラブルによってでした。それでセッションの後、また部品を交換したんですけど、同じトラブルが出てしまった。本当のトラブルの原因はまだわからないんですが、フューエルポンプなどの燃圧に関わるエンジン補器類のトラブルであったことは間違いないと思います。

――決勝でのマシンの仕上がりはどう感じていましたか?

佐藤琢磨:ドライで勝負をできてないので、正直言ってわからない。でも、悪くはなかったと思います。路面が濡れている状態では引き離せたし。ただ、リードをしてからはフューエル・セーブに入っていたし、最後のドライの状態ではエンジンがもう咳き込んでいたので……。レース終盤が厳しい戦いになるのはわかっていた。それでも、トップを走っている限り抜かれる気はしてなかったから、トップを死守する自信はありました。作戦的にもうまく行くと思ってたし。

「最終戦では、少しでもマシンがコンペティティブになるようにがんばります」

――最終戦フォンタナに向け、テストをしたんですよね。2マイルオーバルは初めてですね?

佐藤琢磨:インディーとはまったく違う。なんだろう? カンザスともてぎぐらいの感じもある。もてぎぐらいのバンク角なのに、でもDシェイプなのでカンザスっぽくもある。そこをインディー500と同じエアロパッケージで走るから滅茶苦茶ダウンフォースが少なくて、コースはすごいバンピーでしたね。テストでは1回も1周を全開で回れなかった。

――インディー500的なレースというよりは、テキサス的なレースになるってことですか?

佐藤琢磨:そう、テキサス的。ちょっとリーグ(インディーカー)はダウンフォースを落とし過ぎだと思いますね。幾つかの空力効率関連のパーツを取り外してるんですよね。例えばディフューザーの中のフィンだとか整流板を。そういうのを全部取っ払うことでとんでもなくダウンフォースが落ちるんですよ。それらを装着してニューガーデンとかパジェノーはテストをしてて、僕らは装着しないという担当で、彼らはタイヤのデグラデーションなどを見ているようでした。

――テストの段階では、まだフォンタナ向けのエアロパッケージが確定していなかったんですね?

佐藤琢磨:はい。最終戦に向けてまだエアロパッケージは確定してないですね。ブルテンも出てないし。次の12日のテストでの結果をもって、最終戦のウィークエンドの始まる木曜日に発表じゃないですかね。

――健闘を期待しています。

佐藤琢磨:500マイルと長いレースですしね。僕らの場合、走り始めはまだクルマができてないだろうと思います。テストをした時間が少なかったし、インディアナポリスとは全然違ったから。同じような500マイルレースといっても、テキサスのようなローダウンフォースでの戦いになるので。それを考えると、僕らにはまだものすごい量の仕事が待ってる感じですね。それを片づけて、ちょっとでもコンペティティブになるように頑張ります。あとはエンジン交換によるペナルティがあるし、フォンタナではさらにエンジンを決勝前に交換するって話にもなっています。

――最終戦でも新スペックが出て来るということですか?

佐藤琢磨:ホンダ勢はそうなると思います。噂によると、シボレーもそうなんじゃないかってことです。

――じゃ、ロータスがポールポジション・スタートに?

佐藤琢磨:そうかもしれない。 フォンタナはグリッドはあまり関係ないと思いますよ。

――テストではかなりの周回数をこなせたんですか?

佐藤琢磨:いや、あんまり。風も強かったし。ある程度は走れたけど、1台で走るだけで背一杯だった。それでも全開で行けなかったから、2台で近寄りたくなんか絶対になかったですね。いつ飛んでくかわからない感じだった。

――テストは1日だけ?

佐藤琢磨:そうでした。他のチームはまたテストに行くみたいですよ。ウチは行けない事情が色々あるようですけど。

――最終戦、高速オーバルでの激しいバトル、そして上位フィニッシュを楽しみにしています!

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