2012年9月5日水曜日

2012 INDYCAR レース・アナリシス R14 グランプリ・オブ・ボルティモア その1 人気のイベントに水を差したインディーカーのプロフェッショナリズムの欠如 

ボー・バーフィールド自ら初日の仮設シケイン設置を手伝うことに。Photo:INDYCAR LAT USA

インディーカーが救済して開催にこぎつけたイベントだったが
 
 ボルティモアのダウンタウンを使ったレースは初めてだった去年から大盛況だった。しかし、プロモーターはレースを放り出した。レース開催地である市とのモメゴトがあったりしたからだ。「首都ワシントンDC近郊の、大きなマーケットでのレースは極めて重要」。そう考えたインディーカーは、世間に広く名の知れているチーム・オーナーで、イベント・プロモーターとしての活動も活発化させているマイケル・アンドレッティを広告塔に仕立て上げ、救済に全力投球した。ミルウォーキーとまったく同じパターンだ。おかげで盛り上がった新イベントがたった1回だけで消滅することは避けられた。
 ただ、グランプリ・オブ・ボルティモアに関して残念だったのは、レースといういちばん肝心なところが、つまりはシリーズを主催するインディーカーのプロフェッショナリズムの欠如が目立ってしまっていた点だった。

今年のウリだったシケイン撤廃のストレートは半日で終了

 
 「オーバーテイクを増やし、ファンに喜んでもらいたい」。インディーカーが拘るそのコンセプトはよくわかる。大賛成でもある。しかし、「今年はシケイン撤廃!」と大々的に宣伝をしておきながら、金曜に走り出した途端に「やっぱりシケインがないと危険」となったのにはアキレた。カッコ悪過ぎ。インディーカーの競技担当社長のボー・バーフィルドは、「去年、シケインを通過できずにまっすぐハイスピードのままシケイン部分を突っ切ったドライバーたちが、”ダイジョブだと思う”と証言した」とか、「去年から今年で路面電車の線路部分の形状が大きく変わったのだろう」などと説明していたが、AJ・アルメンディンガーの薬物疑惑並の説得力の低さだった。プラクティス1は全ドライバーが走る前に早めに切り上げられ、プラクティス2は遅延&走行時間が半分に縮小、サポート・レースの走行もストップさせて路面を削る作業が数時間行なわれた後、結局は醜いタイヤを積み上げた仮設シケイン設置。3デイ・イベントの初日はかなり空虚な1日になってしまっていた。
 2年前のサン・パウロ初開催の時も、「サンバ会場の路面が滑り過ぎて危険」と判明、グラインダーでツルツルをザラザラに換える作業が夜を徹して行なわれた。インディーカー・シリーズは、自分たちのマシンがどういうコースを必要としてるかをちゃんと把握してないの? コース設営のコンサルト会社なんてもんを雇っているが、彼らはまるでプロじゃないってこと。即刻お払い箱にして欲しい。今回の件に関しちゃ損害賠償だって請求できるぐらいと思う。おそらく、現地に赴いての調査なんて、ほとんどしてないってことなんだろうから。
 

こちらがくだんのフラッグマーシャル氏。写真はすでに勝負あった最後のリスタート。問題のリスタートはこの前のリスタートだ。Photo:INDYCAR LAT USA
レースの勝敗を分けた不明朗なリスタート
その責任はフラッグマーシャルにあり


 肝心のレースでは、スターターがグリーンフラッグを振るタイミングを心得ていなかった。毎度々々早めに振っていた彼(インディーカーの職員)は、終盤のリスタートでそれがさらに早まっていた印象だった。バーフィールドも、あのスターターのタイミングでオッケーだと捉えていたとうことなんだろう、遅らせる指示は出さなかったようだ。
 隊列の整っていないバラバラのスタートは、ファンに対する裏切り行為だと思う。キッチリ2台ずつが並んで、前後のマシン間隔も揃ったキレイな状態でグリーン! 一斉に加速し、ターン1に塊で到達してブレーキング競争、というのをみんな見たいんだから。そういうレースにできるよう、シリーズもドライバーも全力を尽くして欲しい。
 終盤、トップを走っていたライアン・ブリスコー(チーム・ペンスキー)は、2番手のライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)が横に並び、隊列が整うまで加速を待った(今どき珍しい人の好さだ。私は嫌いじゃない。先輩チームメイトのエリオ・カストロネベスだったら、2位がシケインにいる間に加速をし始めちゃうだろうに)。ところが、スターターの方は隊列なんぞに構っちゃいなかった。グリーンフラッグだけに注目していたハンター-レイ(こういうのをスマートと呼ぶ人もいる)が加速で優り、ブリスコーは2位フィニッシュでハンター-レイとオフィシャルの両方に対して不満を唱えることになった。ブリスコーに強く肩入れしたいのではない。彼の誠実さは高く評価するけれど。私が残念なのは、あのいちばん大事なスタートが、今年のボルティモア戦でいちばんバラバラな、見た目も汚いスタートになっていたところ。もうブリスコーはプッシュ・トゥ・パスの残りがゼロで、ハンター-レイは19秒とか残していたから、隊列が整ってからのグリーンフラッグでもハンター-レイが前に出ていた可能性は高い。それでもブリスコーはキッチリ隊列が整ってのスタートになるのがフェアだと考え、行動していた。実に潔い。
 そもそも、シケイン設置で2台が並んだ隊列になるのは4列目ぐらいまでになっていた。9番手のドライバーぐらいからはシケイン通過中にグリーンになっちゃってたのだ。こういう事態を避けるには、シケインとコントロール・ラインの距離をもっともっと離すしかない。来年はそういう改善がされていることを望みたい。これはロング・ビーチにも言えること。ヘアピンをまだ立ち上がっていないマシンが半分以上いる(彼らはほとんど止まっちゃうぐらいに遅いスピード)うちにトップ・グループは一斉に加速しちゃうなんて、フェアじゃなさ過ぎる。悪しき伝統は変えてかないと。

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