2017年10月15日日曜日

2017 INDYCARレポート 特別編 レッド・ブル・エア・レース・ワールド・チャンピオンシップ最終戦 Day2 予選:室谷義秀選手(チーム・ファルケン)は予選11位。ポイント・リーダーのマーティン・ソンカ(レッド・ブル・チーム・ソンカ)は予選4位で、明日イキナリ室屋と直接対決

予選1位となったマット・ホール選手のフライト Photo:IMS クリックして拡大

イベントはヨーロピアン、ハードはアメリカン
 
 今日で2日目。関係者の皆様のお陰でいろいろわかって来ました。
 ヨーロッパの匂いがするエア・レースですけど、レース・プレーンはアメリカ製ですね。ジブコ・エアロノーティクスってオクラホマ州にある会社が作るエッジ540のV3というモデルを今やエントラント全員が使用しています。インディー・レーシング・リーグ時代にGフォースが淘汰されてダラーラのワンメイクになったのと同じ状況だと言えますね。



空冷水平対向6気筒のエンジンは、今時見ないカウンター・フロー。上空ではシリンダーに吸い込む空気が冷たいので熱い排気を通すエキゾースト・パイプとエア・インテークが近いのはメリットとなるんだそう。エンジン下にマウントされたインテークマニフォールドには機械式インジェクターを装備 Photo:Masahiko Amano クリックして拡大
  エンジンもアメリカ製。自動車と飛行機なら歴史で世界のどこにもヒケは取らない……のがアメリカですから。ライカミングという会社が作っているサンダーボルトAEIO-540-EXPという空冷フラット6が使われてます。水平対向とは意外……ですが、飛行機には向いてるんだそうです。積み易く、宙返りなどの時にも燃料供給や潤滑に問題が起こりにくい、と室屋選手のメカニック氏が教えてくれました。ライカミングはペンシルヴェニア州のウィリアムズポートというアメリカ人でもほとんど知らない小都市が本拠地。私はたまたま友人の出身地だったので知ってましたが、今シーズン終盤にワトキングス・グレンからノース・キャロライナまで下った時に通りかかったら、川沿いの田舎町でした。インターステイトも走ってない。今年、リトル・リーグ世界大会の決勝が開催され、日本チームが優勝してたんで、聞いたことがあるって方もいらっしゃるかもしれません。

エンジンとプロペラは主催者からの支給によるワンメイク


ソンカ機のノーズにあるエア・インテークは室屋機と形状が違ってますね。下の丸いのは吸気用。上側の三角形のはシリンダーヘッド冷却用 Photo:Masahiko Amano クリックして拡大
  プロペラもアメリカ製。そして、エンジンとプロペラという超主要パーツが主催者からの支給になってます。ワンメイクってコトです。キーとなるコンポーネントを主催者所有にしとけば、エントラントがルールに外れた改造とかを行えない。こうすれば安全確保もし易い。しかし、完全なワンメイクにしちゃツマラナイので、ボディにはエントラント毎の工夫が限られた範囲内でですが、行えるルールとされてます。ここもインディーカーと似てるかな。いや、インターナショナル・レース・オブ・チャンピオンズ(IROC)の方が似てるか? 

チーム・ファルケンの整備風景。エア・インテーク=3つとも丸いでしょ? チーム・クルーはパイロット含め5人までに制限され、経費高騰を防いでます Photo:Masahiko Amano クリックして拡大
  インディーカーはエンジンにバトルが許されていてホンダとシボレーが現在は戦ってますが、逆にエアロは完全に全員が同じのユニバーサル・キットを来年=2018年から使うようになります。そして、チーム毎のモディファイは禁止。イコール・コンディション化で競争を激化させ、見て楽しいコンペティションとするのが狙いですが、エア・レースはそこがより鮮明って感じでしょうか。

エンジンパワーは約300ps以上、機体重量はインディーカーより軽量

 
 エンジンのスペック詳細が未公表ってのは、何やら不思議です。わかっている範囲で書くと、排気量が約9,000ccで最大出力が300ps以上といったところ。排気量の大きさの割りにパワーが低いのは、最大回転数がレギュレーションで2,700rpm(!)に制限されているからなんだそうです。インディーカーは12,000rpmが上なのに!! トラブル=パイロットの生命の危機のため、電子制御のインジェクションじゃなく機械式、トランジスター点火じゃなくてマグネトー……と信頼性の確立されている技術のみが使用されているとのことです。


ブライトリングがスポンサーのミカエル・ブラジョーの乗る機体は”錆び”が出ているようなエイジング・ペイントが施されていて、パイロットの着るレーシング・スーツ…………じゃなくてフライト・スーツもわざわざ古いデザインのものを着てます Photo:Masahiko Amano クリックして拡大
  このエンジンを搭載したレース・プレーンのパフォーマンスは? というと最高速が430km/h。ただし、競技中は380km/hに上限が設定されるとのこと。スピードはインディアナポリス・モーター・スピードウェイにおけるインディーカーとほぼ同じですね。機体の継ぎ目をテープ貼ってカヴァーしてるところとかもインディー500マシンと一緒でした。機体のウェイトはミニマムが695.8224kg(=パイロット込み):インディーカーはスーパースピードウェイ仕様でミニマムが716.688kg(ただしドライバー抜き)と少し重めですね。

室屋選手、予選11位!明日のレースはソンカ選手といきなりの対決に


パゴダ前広場にあった室屋選手のバナー。スカイ・ラウンジてのはVIPおもてなしスペースのよう Photo:Masahiko Amano クリックして拡大
   さて、今日のプラクティス3及びクォリファイングですが、室谷選手はプラクティスが8番手、2回のアタックが許された予選でのベストが11位と苦戦気味でした。
 対するポイント・リーダーのソンカは4位の好位置につけました。そして面白いことに、11位と4位は明日イキナリ直接対決を行ないます。1位と14位、2位と13位というように互い違いに組み合わされるルールだからです。金曜はペナルティこそあったものの最速だった室屋選手。土曜日になって調子が下がってしまった感もありますが、最初のラウンドでソンカを倒せたらチャンピオンに大きく近づきます。
 そして、明日は午前中が雨の予報で、風向きや湿度などコンディションが午後の競技では今日までとは大きく変わることとなりそうなんです。それに見事対応した上で、完璧なフライングをした者がウィナー、そしてチャンピオンに輝くってことですね。舞台は整いました。
 なお、予選1位はダークホース=前戦ラウジッツリンク2位ながらタイトルの可能性がないマット・ホール(マット・ホール・レーシング)選手でした。

0 件のコメント:

コメントを投稿