2018年4月24日火曜日

2018 INDYCARレポート R4 ホンダ・インディー・グランプリ・オブ・アラバマ Race Day 決勝2:ドライでジョセフ・ニューガーデンの強さがさらに際立つ! 佐藤琢磨は8位でフィニッシュ

サスペンデッドとなったレースを制したのはニューガーデン。フェニックス戦に続き今シーズン2勝目を挙げてポイントリーダーに立った Photo:INDYCAR (Chris Jones) クリックして拡大
快晴の下、タイヤ、燃料とP2P完全リセットでスタート
 月曜のバーミンガムは予報に反して朝から快晴!
午後1時頃に降雨の可能性アリという予報は出ていたが、ドライ・コンディションのままゴールまで行くに決まってる……ぐらいの青空が午前11時のレース・スタート前には広がっていた。

全日の嵐のような天候から一転、爽やかな青空の下、ピットでコースインを待つマシン群 Photo:INDYCAR (Bret Kelley) クリックして拡大




 昨日すでにウェット・レースとしてスタートが切られているレースなので、タイヤは何を履いてもいいし、ブラックとレッドを両方使えという縛りもない。燃料は満タンにしてOKで、プッシュ・トゥ・パス(P2P)は全員がこのレース用の200秒にリセットされた。セッティング調整もしていいので、21台はみんなセッティングにドライ用に変更してグリッドについたはずだ。チャーリー・キンボール(カーリン)は赤旗前にリタイアしてたので出走できず、アクシデントを起こしたウィル・パワー(チーム・ペンスキー)は修理を受けるべく、マシンはガレージにあった。
昨日のヘビーウェットの中、P2Pで攻めていたサムライがいた!

 P2Pリセットの件、昨日のあのコンディションで使った人はいたのか??
驚いたことにホンダ勢にひとりいた。1回だけ、5秒ほど押したのはマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)。さすが! 
視界もない昨日のヘビー・ウェットの中、P2Pを使って攻めていたマルコ・アンドレッティ。15番手で再スタートし、最終的にトップ10フィニッシュを達成 Photo:INDYCAR (Chris Jones)

  近頃うまく行ってない彼だけれど、恐れを知らないところは健在。チャレンジ精神というか、何かやってやろうっていう気概もまだあるってことのよう。チームは上昇ムードだし、今年はインディー500あたりで炸裂してくれないものか。

一気にリードを広げたいニューガーデンはニュー・レッドを選択
ブルデイはユーズド・レッド装着、SPMは2人ともニュー・ブラック
 

ニュー・レッドで逃げるニューガーデンが、ブルデイ・ハンター-レイを引き離してターン17に飛び込む Photo:INDYCAR (Joe Skibinski) クリックして拡大
  ピット・ロードで先頭に並んだジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)のマシンは新品レッドの装着で、「一気に逃げますよ」という意気込みを見せていた。レース後に聞いたら、「路面もラバーがなくなっちゃってるし、一番グリップの高い新品レッドで行くのがベストと考えた」という理由を彼は述べた。それに対して2番目のセバスチャン・ブルデイ(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・ヴァッサー・サリヴァン)はユーズド・レッドをチョイス。「後半戦が勝負」と見ていたのだ。3番手のライアン・ハンター-レイと6番手のザック・ヴィーチが新品レッドで、4番手のアレクサンダー・ロッシはユーズド・レッドと、アンドレッティ・オートスポートはチーム内でも作戦が別れていた。そして、トップのニューガーデンと真逆の選択で来たのがシュミット・ピーターソン・モータースポーツ。5番手スタートのジェイムズ・ヒンチクリフも7番手のロバート・ウィッケンズも新品ブラックを履いていた。
 8番手スタートの佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は、新品レッドを2セット、新品ブラックも2セットある状況下、新品レッドをスタートに選んだ。

ニューガーデン、スタートから後続を大きく引き離す


Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大
 4周のウォーム・アップの後にグリーン・フラッグが振り下ろされると、ニューガーデンが1周目から猛プッシュ。5周で4秒ものリードを築き上げ、その後も差は広がる一方。1ストップで走り切りたい思惑もあったブルデイとの差が11秒以上に広がったところでニューガーデンは1回目のピット・ストップを行った。
 ブルデイはニューガーデンより6周長く走って55周目にピットし、ディクソンはさらに1周ストレッチして56周目にピットした。ほぼ同じ燃費状況でブルデイはユーズド・レッドから新品のレッドへスイッチ。ディクソンは新品ブラックから新品ブラックへスイッチした。

雨が降り始めるや、真っ先にニューガーデンがレインにチェンジ
ブルデイ、ハンター-レイはスリックで走り続けるが雨脚は弱まらず

 
71周目、トップのニューガーデンは真っ先にピットインしてレインタイヤに履き替えた Photo:INDYCAR (Bret Kelley) クリックして拡大

  ニューガーデンは決定的な差をライバル勢につけて逃げまくる。そこへ雨雲到来。2~3ラップに渡ってポツポツ降り続けたところでニューガーデンが一番最初にピットに滑り込んで来て、レイン・タイヤに履き替えた。「このタイミングは速過ぎないか?」と思われたタイヤ交換だった。ニューガーデンは大きなリードを持っていたワケだし、もう少し様子を見ても良いように見えたが、作戦をコールするチーム・ペンスキー社長のティム・シンドリック--ウィル・パワーが言うところの”ギャンブル傾向が強い”参謀ーーはガッツリ雨が降るという余程大きな確信を持っていたようで、迷わずニューガーデンをピットに呼び込んだ。
 トップの座はレッドで走り続けるブルデイのものになり、同じくスリックで走り続けたハンター-レイが2番手に浮上。ニューガーデンは3番手に下がったが、雨が弱まることはなかった。

ブルデイはニューガーデンに遅れること5周後の76周目まで粘ったがたまらずピットイン。結局、2時間ルールでレースは86周で終了。レインに履き替えてわずか10周ではポジション挽回もままならず、レースタクティクスで敗れる Photo:INDYCAR (Bret Kelley) クリックして拡大
 レースは規定周回数でではなく、2時間ルールでゴールが迎えられることになり、ウェットととなってラップ・タイムが遅くなったことから、80周プラスでチェッカーということに。路面のウェット具合がさらに進んだため、74周でハンター-レイはレイン・タイヤへとスイッチ。素晴らしいドライビングを続けていたブルデイも76周を終えるところでピットへ向かった。彼らのギャンブルは失敗に終わった。トライする価値があるギャンブルではあったが、天候回復に期待して長くコースに止まりすぎたためにレイン・タイヤ装着の後続に差を縮められ、ピットからコースに戻ったブルデイは5位にダウンしていた。

コンディションに左右されない決定的な速さと抜群の強運

 
走りでもタクティクスでも完勝! Photo:INDYCAR (Bret Kelley) クリックして拡大
 昨日の雨の中で見せた堂々たる走り。一転ドライ・コンディションとなった月曜日に見せたレッド・タイヤ装着でのスタート・ダッシュとレッドによるフル・スティントでライバルたちにつけた大差。さらには、ゴール前がウェットになってもミスを冒さずにゴール……と、2018年のホンダ・グラン・プリ・オヴ・アラバマでのニューガーデンの強さは、先週のトヨタ・グラン・プリ・オヴ・ロング・ビーチにおけるロッシ以上に決定的で、シーズン2勝目一番乗りでポイント・リーダーに復活した。

 もはやチーム・ペンスキーの若きエースと呼んでいいニューガーデン。彼の強さにケチをつけるつもりはサラサラないが、今日の通算9勝目は彼のこれまでのキャリアで見られた幸運、あるいは彼が生まれ持った強運に支持されてのものだったと捉えることもできる。レイン・タイヤへの交換タイミングでピットは好判断を下したが、あの後に雨が弱まって路面が乾き出す展開になっていたら、速過ぎるピットストップは大失策となっていた。そもそも、終盤に雨が降ったこと自体、1ストップ作戦を狙っていた面々のチャンスを奪い、ニューガーデンに優位を授けていた。

ブラックを貫く作戦のSPM勢が3,4位を獲得
佐藤琢磨は再スタート時と同じく8位でレース終了


 挑戦と諦めをバランスさせてハンター-レイは今季ベスト・リザルトとなる2位。ロッシはゴール前のウェット・コンディションでコース・オフもあって11位。
 3、4位にはブラック・タイヤで押し通す作戦だったヒンチクリフとウィッケンズが入賞。
 5位は前述の通りブルデイだったが、ゴールで真横に並んでいたスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)との差は僅か0.0871!



粘りの走りで佐藤琢磨は8位フィニッシュ Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大
  7、8位がグレアム・レイホール、佐藤琢磨の順でレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのコンビ。今日再開されたレースでは8番手スタートだった琢磨は、ロッシとヴィーチを上回ってのゴールとはできたが、グレアムとディクソンには先行され、ゴールも同じく8位となった。
 「昨日の雨の中での戦いで順位を大きく上げられた点は良かったし、18位スタートで8位でのゴールができた点も良かったと思います。しかし、僕らのロードコース用セットアップはダメだということもわかりましたね。今日のドライ・コンディションでの走りも、最初のスティントでのレッドでの走りは良くなかったですから。次戦もインディアナポリスのロードコースですから、セットアップで何か新しいことを試す可能性は十分有り得ます」と琢磨はレース後に語った。
以上

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