2020年6月2日火曜日

2020 INDYCARレポート6月2日:シーズン開幕への準備状況



(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのニュースレターより)
レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのテクニカル・ディレクター=トム・ジャーマンに聞く

 今週末の66日、2020年のNTT INDYCARシリーズが、テキサス・モーター・スピードウェイの1.5マイル・オーバルで開幕する。COVID-19ウィルスの感染爆発によって2ヵ月半も遅れていたシーズンが、ジェネシス300”でついにスタートを切るのだ。レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのインディーカー部門でテクニカル・ディレクターを務めるトム・ジャーマンが、同イベントに向け、幾つかの質問に答えた。


Q
2ヵ月半という長きに渡ってシーズン開幕が保留された中、エンジニアリング・グループは何にフォーカスして来たのでしょうか? 外出規制が敷かれていましたが、エンジニアたちは、どのように仕事をしていたのですか?

A
RLLのエンジニアリング・チームは、自宅での仕事へとスムーズに移行できました。それは、私たちが通常のスヵジュールでも様々な場所で仕事をして来ているからだと思います。レースとレースの間、サーキットでのテスト、開発のためのテスト、バーチャル・テストを普段でも行っています。それらのテストをする場合、異なる場所にいる者同士でデータを共有し、作業をしています。私たちにとっては、今回のように毎日同じ場所で仕事をし続ける方が、正常な状態と異なっている、と言えると思います。
 世界中の多くの人々と同じように、私たちにとっての最大の課題は、将来の不確実さでした。幸いなことに、インディアナポリス500にまた出場する機会がある、というのはわかっていましたから、私たちが最も焦点を当てたのは、インディに向けた準備となりました。ただ、焦点は変わらなかったものの、仕事のやり方、進め方に関する細部では何度か変更がなされました。サーキットを使ったテスト、風洞テストはキャンセルされました(インディーカーが急遽設定したパンデミック用ルールにより)。そして、インディーでのレースはスヵジュールが8月にずれ込み、使用可能なタイヤのセット数が減らされました。開幕が遅れたことでできた時間を使い、私たちはこれらの変更にいかに対応するかを様々検討し、調整をすることができたと思います。
 私は、チームのスタッフが、不確実な状況に置かれながらも状況の変化を吸収することや、新しい解決策を見出すことに集中する高い能力を備えていることに感銘を受けました。


Q:すべての挑戦によってチャンスは生まれると思います。今回の休止期間は、一緒に仕事をすることに関して、何か新しい方法など、プラスになることはありましたか?
 

A"インディーカーの=iレーシング・チャレンジはチームにとって良い機会になりました。私たちはチームのエンジニアリング・グループの上下関係をひっくり返し、何人かの若いエンジニアたちに指揮を取らせました。これにより、経験の浅いエンジニアたちが彼らの能力を示す場を与えることができました。また、これをすることで予想外の成果も得られました。チームが一丸となって働き、楽しみ、お互いを高め合う姿を見ることができたのは素晴らしいことでした。

Q
:テキサス・モータースピードウェイでのレースにおいて、すべてのチームが直面する課題は何になるでしょう?
 
A:いつでもテキサスは難しいのです。毎年、ハンドリングやタイヤの劣化、ピット戦略といった要素の複雑な組み合わせがレース結果を決定づけます。新しい仕様のタイヤ、エアロスクリーン装着での初レース、最大35周に限られるスティント、そして2ヵ月半もの走っていない期間などにより、とてもエキサイティングなレースになることと期待しています。私たちが最初にフォーカスするのは、2020年仕様のタイヤを履き、エアロスクリーンを装着して新しくなっている空力と重量配分に合わせたセットアップを良いものとすることです。今回はRLLにとって、2020年用のエアロスクリーン装着マシンをオーバルで走らせる初めての機会であり、タイヤのスペックも新しくなっていますから、プラクティスで良いセッティングの方向性を掴むことが重要です。

Q
1セットのタイヤで走れる最大スティントが35周に制限されますが、戦略面にどのような影響が出ますか?
 
A: 戦略の選択肢には制限がかかりますが、タイヤの割り当てセット数が、チーム毎の作戦に大きな柔軟性を与えることとなります。レースでは6セット、または7セットのタイヤを使うることが可能(ピット・ストップは5回か6回になる)。6セットの場合、最初のピット・ストップはスタートから2535周目の間になりますが、チームがもう1回多くピット・ストップする作戦を採用して7セットのタイヤを使う場合、ピット・ウィンドウをどう取るか、作戦の幅は大きく広がります。イエローが早めに出た際にピットに入り、もう一度イエローでピットするチャンスに恵まれることを期待することもできます。一方で、6セットで走り切る作戦のチームは、グリーンの間にピット・ストップするか、レース終盤にピットして、トラック・ポジションを犠牲にしてもフレッシュ・タイヤというメリットを代わりに手に入れる、という戦い方もできます。イエロー・フラッグの出されるタイミングと、フレッシュ・タイヤ装着時にどれだけ相手をパスできるかという能力、そして、タイヤの劣化が鍵を握ることになるでしょう。私たちはプラクティスによってデータをある程度集めることは可能です。ただし、プラクティスが午後であるのに対し、レースは夜ですから、コンディションは大きく異なるものになる可能性も考えられます。


Q
: 昨年は佐藤琢磨がポール・ポジションを獲得し、グレアム・レイホールは決勝で3位フィニッシュと、RLLはテキサスで好走しました。エアロスクリーンの追加によって上々だった
チームのパフォーマンスは否定されることになるのでしょうか。それとも、基本的なセットアップは引き継がれるのでしょうか?


A
: 琢磨は予選で素晴らしい仕事をしてくれ、グレアムはレースを戦い抜き、表彰台でのフィニッシュを実現してくれました。2019年の基本的なセッティングの中には、貴重な部分もあります。しかし、オーバル・レースでは常に細部が非常に重要なんです。そして、インディーカー・シリーズに出場しているチームはすべてが強力ですから、プラクティスで集めたデータを基にした、レースに向けての意思決定がチーム間の差を生み出すことになるでしょう。プラクティスのデータを最も上手に活用できたチームが、レースでスピード面の優位を得ます。しかし、戦略の選択肢が多くあるため、スピードだけでは勝てないかもしれません。

Q
:我々のチームが最後にオーバルを走ったのは9ヵ月も前のことです。オーバルを走るのと、ロードやストリート・コースを走るのとでは、心構えが違うのでしょうか? エンジニアリング、クルー、ドライバーの観点から見て、どうでしょう?


A
:心構えは違いますね。多様性を提供している世界で唯一のチャンピオンシップ、それがインディーカー・シリーズです。違いが最も大きいのは、オーバルとロードコースです。 

ロードコースのイベントとは、ラップ・タイムのためにどれだけ正しい妥協点を見出せるかを競うもので、ひとつのコーナーを最適化しようとトライすることはほとんどありません。それに対してオーバルでは、もっと小さな部分にフォーカスします。エンジニアとドライバーは、走るラインとセットアップの最適な組み合わせを見つけようと努力します。それはしばしば、ひとつのコーナーに対して行われます。オーバルはセッティングの変更も小さく、走行ラインの小さな変更とセットアップの微調整だけでパフォーマンスが上がることもあります。
 オーバルではすべてのことがハイ・スピードで起こるため、心の持ち様、気構えといったものも重要です。時速200マイルで23台が並んで走るために、ドライバーたちには常に高い集中力を保つことが求められます。ロードコースでのひとつのミスは、順位をひとつ落とすことに繋がるかもしれません。それに対してテキサスでのひとつのミスは、それを冒した者のレースを終わらせてしまうことにすらなり得ます。前回のオーバル・レースから9ヵ月も経過しているのに、プラクティスは1回のみ。素早くスピードに乗ることが大事になるでしょう。
以上




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