2023年3月6日月曜日

2023 INDYCARレポート R1 ファイアストン・グランプリ・オヴ・セイント・ピーターズバーグ Race Day 決勝:開幕戦ウィナーはマーカス・エリクソン

波乱の開幕戦を制したエリクソンとチップ・ガナッシ。プラクティス1から好調を維持していたアンドレッティ勢はスピードを結果につなげられなかった Photo:Penske Entertainment クリックして拡大 

 快晴の下、2023シーズン開幕戦がいよいよスタート

 今週末は3日間とも快晴。気温は今日も28℃まで上がりました。風は金曜ほどではないものの、コンスタントに吹き続け、ターン4へのアプローチでインディーカーのリヤを不安定にしていました。
 開幕前テストで速かったアンドレッティ・オートスポート勢が、予選でもロマイン・グロジャン、コルトン・ハータの順で1-2。レースでも逃げ切るのか、ライバル勢の逆襲があるのか……レースは正午過ぎにスタートが切られました。

ポールポジションからスタートしたグロジャン、セカンドポジションのハータの2台のアンドレッティ勢が、後続を大きく引き離していく序盤の展開に Photo:Penske Entertainment クリックして拡大

アンドレッティ勢好調の秘密はブレーキ対策にあり

 アンドレッティのアドヴァンテイジは、ブレーキのキャラクター変更への対応ぶりにあったようです。昨シーズン終盤戦でブレーキのフィーリングや効き具合の悪化を経験した彼らは、その原因がインディーカー指定のワンメイク・ブレーキ・パーツ(パフォーマンス・フリクション・コーポレーション製)のキャラクター変更にあると考え、徹底的なリサーチを行って問題を解決したということのようなのです。
 インディーカーの技術部門に尋ねると、「当該製品の素材や品質に変わりはありません」との答えが返ってきましたが、製造の工程、もしくは材料に微妙な差が生じ(おそらくカーボン製ブレーキ・ローターに)、ブレーキの性能が以前と違うものになっていたと考えられています。インディーカーのコントロールが及ばないエリアでのトラブル……というのが真相なのかもしれません。インディーカーとしては、引き続き規定通りの製品を供給してくれるようメーカーに要求をし続けるしかありません。サプライヤー側がその要請に対してパーフェクトな仕事を実践できていない……というのが今回のケースであることは十分に考えられます。パンデミックの及ぼしたサプライ・チェーンへの悪影響がこんなところに現れてしまった、ということなのかもしれません。今年のセイント・ピーターズバーグではプラクティスの間から、“舗装の一部が変わったことが原因でアクシデントが多発している”という話になっていましたが、ブレーキ性能が昨年より悪くなっていることがマシンを不安定にさせ、アクシデントを誘発していた可能性がどうやら強いようなのです。


ポールシッターのグロジャンがレースをリード
追撃するハータはタイヤの摩耗で後退し、最終的にクラッシュ

スタート直後、集団の後方でマルチクラッシュが発生し、カストロネヴェス、パジェノー、デフランチェスコ、フェルッチ、ペダーソンの5台がリタイア。レースはいきなり赤旗となった。さらにこの後もクラッシュが多発し、開幕戦は荒れた展開に Photo:Penske Entertainment クリックして拡大

  ポール・ポジションからトップを守ったグロジャンは、初勝利に向けてファースト・スティントを悠々と走っていました。一方で予選2位だったハータは、今年もセイント・ピーターズバーグでは安定感が今ひとつで、オルタネート・タイヤの消耗がライヴァル勢より早く進行してしまいました。グロジャンには大きく引き離され、ピット・ストップが近づいたところで予選3位だったパト・オーワード(アロウ・マクラーレン/シヴォレー)のパスを許し、その後には何台ものマシンに次々とパスされ、最終的にウィル・パワー(チーム・ペンスキー/シヴォレー)との接触、タイヤ・バリアにクラッシュという結末に繋がってしまいました。

「マシンはよかった」と悔しがるハータ
「表彰台どころか優勝の可能性もあった……」


  マシンを降りたハータは、「自分達のマシンは本当に良かったと思う。オルタネート・タイヤでの走りでは劣っているように見えていたかもしれませんが、プライマリー・タイヤでのマシンは良かったんです。自分の前を走っていた面々にはオルタネート装着車が多かったので、あそこからは彼らをパスして行くことができるはずでした。表彰台どころか、優勝の可能性もあったぐらいだったと考えています。こんなシーズン・スタートになってしまうなんて非常に悔しいですね」と語っていました。外から見える印象と、走っている本人の感触との間に今回は結構な違いがあったようです。

グロジャンをピットタイミングでかわし首位に立ったマクロクリン
2回目のピットアウト直後のターン4でグロジャンとクラッシュ

ピットタイミングを生かして前に出たマクロクリンとグロジャンの激しい攻防が続く。トップを行くマクロクリンはグロジャンに後ろにつかれながらも、冷静なドライビングでスキを見せなかったのだが…… Photo:Penske Entertainment クリックして拡大

 グロジャンの初優勝はなりませんでした。彼はゴールすることすらできませんでした。
 予選6位からプライマリー・タイヤでのスタートを選択したスコット・マクロクリン(チーム・ペンスキー/シヴォレー)が、最初のピット・ストップ終了後にギリギリでグロジャンに先行し、その後はトップを守り続けました。100周のレースは2ストップで走り切れる展開となり、グロジャンは70周で自身2回目、このレース最後のピットストップを敢行。マクロクリンのピットはその翌周でした。そして、作業を終えたマクロクリンはまたしてもギリギリでグロジャンの前へとピットアウトして来ました。二人の差は1回目のピットストップ時よりも小さく、ピットロードと本コースの合流部分で接触が起こりそうなほどでした。
 すでに1ラップ以上を走ってきてタイヤが温まっているグロジャンと、まったくのコールド・タイヤであるマクロクリン。この勝負はグロジャンが有利と映っていました。少し長めのストレートの後のターン4、マクロクリンがまたしてもインサイドを抑えるラインを巧みに採ったため、グロジャンは今回もアウトから仕掛けました。そして、両者はコーナーの真ん中で”激突”までは行かないまでも、明らかに”接触”以上のハードなコンタクトをして、2台揃ってノーズからタイヤ・バリアに突っ込みました。
 自分の対峙している相手が、勝負のかかったコーナーで冷静に引くタイプのドライヴァーなのか、そうではないのか、グロジャンは判断を誤ったと言えるでしょう。少々楽観的に過ぎました。

「グロジャンに申し訳ない」と語るマクロクリン
「コールドタイヤでプッシュしすぎました」

 グロジャンを走らせるアンドレッティ・オートスポートには、いかにもアメリカンな、自由を尊重する気風があります。クルーたちに対してだけでなく、ドライバーたちもコントロールをしようという考え方は持っていないようです。オーバーテイクをトライするか否か、そのタイミングも含め、判断は完全にドライバーに任されている印象です。
 グロジャンは自らの判断でアウトからのパスを仕掛け、それは失敗に終わりました。ターン5からのタイト・セクションの先、ハード・ブレーキングが必要なターン10の方がパスには適していたのではないでしょうか。ウィナーとなったエリクソンは、「自分なら抜くのはターン1かターン5。それ以外はない」と話していました。

マクロクリン、昨シーズンに続いての開幕戦優勝はならず Photo:Penske Entertainment クリックして拡大

  レース後にマクロクリンは、「ロマイン(・グロジャン)に申し訳ありません。ふたりともあそこは勝負に行っていました。そして、私が大きなミスを冒したんです。コールド・タイヤでプッシュし過ぎました。コーナー・イン側での充分なグリップは、オルタネート・タイヤでは得られてもプライマリー・タイヤでは不可能だったんです。私はリヤをロックさせていました。ホイール同士がぶつかり、2台ともに優勝争いから脱落してしまいました」と非が彼の側にあることを認めていました。マクロクリンは勝負所で相手に道を譲るタイプでなかった上に、状況判断をミスしてマシンのコントロールを失ってしまっていた……というのが今回の真相だったわけです。

「たくさんのDHLサポーターの前でぜひとも勝ちたかった」

 F1からインディーカーに来て3シーズン目のグロジャンですが、勝てない時間が長くなっているために、こういういミスをしてしまったと言えるのではないでしょうか。初勝利が欲しくて欲しくてたまらない彼は、そのチャンスが小さくなってしまうのを恐れて仕掛けが早くなってしまった……という風に見えました。あのコーナーでは、どう考えても相手の協力なくしてパスの実現は不可能ですから。ヴェテランの割に狡猾さがなかった……とも考えられる戦いぶりでしたね。レース後に佐藤琢磨選手がGAORAの放送で説明していたように、ラインをクロスさせてコーナー立ち上がりで前に出る……というのがベストだったでしょう。あるいは、ターン5からのタイト・セクションの先にあるターン10=適度にスピードの乗るストレートの先の左90度コーナー=でインを奪い、クリーンにパスするのか良かったと思います。結果論ですが。
 「カー・ナンバー28は強力でした。DHLのサポーターがたくさん来てくれていたイヴェントのため、今日は是非とも勝ちたかったんです。私たちのマシンはロング・ランで速く、それが大きな意味を持つレーストなるはずでした。私たちには高い競争力がありました。また16レースが残っています。今日のレースで私たち、アンドレッティ・オートスポートは上位で戦う力があることを見せられたと思います」とグロジャンは話していました。応援してくれる人々のためにも勝ちたい。温厚に見えるグロジャンですが、その中身はかなり熱いドライヴァーなのです。今回、タイヤ・バリアで止まってしまったマシンのコクピットで何度もステアリングを叩いていましたね。マシンを降りるとヘルメットを被ったままタイヤ・バリアの空洞に向かって何か叫んでいました。

オーワード残り3周、優勝目前の最終コーナー立ち上がりでマシンが失速

 トップ2が自滅し、予選3位から淡々と上位を走り続けていたパト・オーワード(アロウ・マクラーレン/シヴォレー)に優勝のチャンスが巡って来ました。リスタートもうまく決めた彼は1周で2秒以上の差をマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ)につけ、開幕戦勝利に向かって突き進んでいました。
 ところが、もう残り3周になろうという最終コーナーの立ち上がりで彼のマシンは突然失速し、エリクソンが前に出ました。スピードが奪われた原因は?


エリクソンに迫られながら、泰永摩耗したマシンを巧みにコントロールしていたオーワード。ラスト3周、勝負所での思わぬトラブルで首位を譲ることに Photo:Penske Entertainment クリックして拡大

 レース後にオーワードは、「プレナム・チャンバー内に炎が発生してしまうことがあるんです。これもレースです」とコメントしていました。今回が初めてのトラブルではない、ということも彼は話していましたが、詳細をさらに尋ねられると、「調査を行うべきでしょう」とかわしていました。シヴォレーが解決すべき問題……ということなのでしょうか。
 オーワードの新チームメイト、アレクサンダー・ロッシは予選12位から4位フィニッシュ。「プラクティス、予選の時から今年のレースが荒れた展開となることは見えていました。レースではチームが素晴らしい働きをしてくれました。ミスは一切ありませんでした。チームの3台すべてが非常に速かったとも思います。フェリックスにはスタート直後に不運(アクシデント)が襲い掛かりましたが……。3台ともがトップ10でフィニッシュする力を備えていました。今日のレースはとにかくクリーンに走り切ることが重要、という展開で、チームとして最高のスタートが切れたと思います。金曜日の我々は少々苦しい状況に置かれていましたが、レースまでに力を高めることができました。ここからの私たちはさらに強くなって行くだけだと思います。テキサスでの第2戦の前に長めのインターヴァルがあることも私たちにとっては良い機会になるでしょう。テキサスはマクラーレンがこれまで強さを発揮してきたコースでもあります。今後も自分たちの弱点を把握し、その改善に努めることを続けます」とロッシは移籍先での初レースを終えて手応えを感じている様子でした。

エリクソン、昨年のインディー500以来の勝利
「とてもハッピー!この勝利はオフにチームが重ねたハードワークの賜物」


Photo:Penske Entertainment クリックして拡大

 オーワードが不運に見舞われ、勝利はエリクソンのものとなりました。2秒以上あった差がコンマ5秒に縮まっていたのですから、オーワードにトラブルがなくてもエリクソンが逆転していた可能性はあります。プッシュトゥパスの残量でもエリクソンは有利でした。しかし、本当に彼がオーバーテイクを完成させての逆転優勝ができいたかというと、それは微妙なところでした。オーワードが後続を封じ込めたままゴール……という結末になっていた可能性は低くはなかったと見えていました。

エリクソン優勝、ディクソン3位。パロウはレース終盤ポジションを落とすも8位。インディーカーデビューレースのアームストロングはルーキー最上位の11位と、チップガナッシは最高のシーズンスタート。一方、優勝を逃したオーワードのアロウ・マクラーレンもローゼンクヴィストはリタイヤしたものの、新加入のロッシが4位となり、評判通りのチーム力を見せつけた Photo:Penske Entertainment クリックして拡大

  キャリア4勝目、昨年のインディー500以来の勝利についてエリクソンは、「とてもハッピーです、結果に対しても、パフォーマンスに関しても。チームがオフシーズンに行ったハードワークの賜物です。自分としては、このオフから予選を良くすることに力を注いで来ています。1ラップをいかに速く走るか。その部分を良くするべきだとの結論にエンジニアと達し、彼はセッティングを大きく向上させてくれました。自分も精神面など、予選でのパフォーマンスを上げることに取り組んできました。今週末はその狙い通りに予選で上位につけることができました。それが今日の勝利に繋がったと考えています。パト(・オーワード)が早めの加速をしたリスタートでは、私のラインが少しアウトに膨らんで、タイヤがマーブルを拾ってしまいました。あの直後の半周ほは氷の上を走っているようでした。タイヤがきれいになってからはペースを上げ、それが大変良かったのでパトにプレッシャーをかけ続けようと考えていました。相手のトラブルによるパスだったのかしれませんが、すぐ後ろに迫っていたからこそ、チャンスが来た時にパスができたのです。今年はシリーズ・チャンピオンになり、インディー500でもう一度優勝する。それらを目標に戦って行きます」と語りました。粘り強さが身上のエリクソン。強豪チーム内で最初のウィナーとなった彼が今年もチャンピオン争いを行うことは充分に考えられます。
以上

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