2018年4月17日火曜日

2018 INDYCAR レースアナリシス R3 トヨタ・グランプリ・オブ・ロングビーチ:アレクサンダー・ロッシが完全開花

ユニバーサル・エアロのマシン作りでライバル勢に一歩先んじることに成功したアンドレッティ・オートスポートと、ロッシの抜きんでたドライビングが際立った今年のロングビーチ戦だった Photo:INDYCAR (Joe Skibinski) クリックして拡大
衝撃的だったロッシのパフォーマンス

 昨晩はなかなか眠れなかった。そのことに自分自身驚いた。3日続けて朝7時前のサーキット入りをして眠いはずだったのに、日中のレースで少々興奮し過ぎたってことらしい。もちろん、アレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)の圧倒的パフォーマンスによって。実に印象的な速さ、そして強さだった。ぶっちぎり、ワンサイド・ゲームは好きじゃないけれど、昨日のはロッシの勝ちっぷりは衝撃だった。

多少のコンディションの変化にも全くロッシの走りが揺るがされることはなかった Photo:INDYCAR (Joe Skibinski) クリックして拡大
決勝日、低くなった気温をライバルたちは歓迎していたが……
 決勝日のロングビーチは空に薄い雲がかかり、レースを通じて気温は金曜、土曜より低くなっていた。それをドライバーたちは歓迎していた。少しでもタイヤに優しいコンディションになるから。ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)は、「路面温度が金曜、土曜より低くなったことでフロアによるダウンフォース発生量が増え、タイヤのグリップは上がり、摩耗の進行も少しだが遅くなっていた」と話していた。
 この暑くないコンディション、実は喜んでいたのはロッシ以外のドライバーたちだったかもしれない。もし暑くなっていたら、ロッシは昨日以上の強さを見せつけて勝っていた可能性が高い。それほどアンドレッティ・オートスポートのマシンの完成度は高く、ロッシのドライビングはシャープだった。

「僕らは金曜日からターン11に強くフォーカスしていた」
 

決勝レースでターン11を立ち上がるロッシ。この立ち上がりで稼ぎ、バックストレッチから12ターンでライバスに隙を与えない作戦だったという Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大

 「今週末を通して僕らのマシンの良さは言葉で表現し切れないほど素晴らしかった。それを無駄にせずに勝てたことが嬉しい。ストリートレースにありがちな妙な展開にならなかった。僕らは金曜からターン11に強くフォーカスしていた。このコースで一番長いストレートへアプローチするコーナーだからだ。予選でさえ、ターン11の立ち上がりを重視したマシンに仕上げる努力をしていた。ホンダ・エンジンのドライバビリティがとても良く、それが今日のレースでも我々のアドバンテージになっていた」とロッシ。リスタートで彼に食らいつくことのできたドライバーはいなかった。彼と同じホンダ・エンジンを使うドライバーであっても、ターン1でアタックを仕掛けるところまで近づけた者はいなかった。
アンドレッティ・オートスポートに新しいエンジニアリング体制が
ユニバーサル・エアロのマシン作りでライバルをリード


ポディウムでロッシを囲んでクルーたちが記念撮影 Photo:INDYCAR (Joe Skibinski) クリックして拡大
 去年チーム入りしたテクニカル・ディレクターのエリック・ブレッツマン(長年チップ・ガナッシ・レーシングでスコット・ディクソンを担当)の体制はかなり早い段階でアンドレッティ・オートスポートを上昇気流に乗せ、コースを選ばずスピードを発揮できるようになっていた。そして新エアロ・キットが導入されると、その戦いで先手を取ることに成功している。一昨年までの迷走、低迷ぶりが嘘のようだ。ロッシ担当エンジニアはジェレミー・ミレス。エド・カーペンター・レーシングではジョセフ・ニューガーデンと共に3勝を挙げ、アンドレッティ・オートスポートに移って来てからはロッシとワトキンス・グレンでポール・トゥ・ウィン達成。そして昨日、ロング・ビーチで勝った。若いアメリカ人ドライバー2人のサクセス・ストーリーに貢献して来ているわけだ。
全力を出し尽くしたパワーもロッシにアタックできず
 レースが終盤を迎えてパワーが2番手に復活、一番の強敵が現れた。しかも、2014年チャンピオンはプッシュ・トゥ・パス(P2P)の残り時間でロッシに対して明らかな優位にあった。今週ドライバーたちに与えられていたのは200秒。1回につき最長20秒間のパワー・アップが得られる。パワーは経験をフル稼働、P2Pをできる限り効果的に使ってロッシに迫ろうとした。対するロッシは逆にできる限りP2Pを使わずに逃げ、相手より残り時間が長い状況に持ち込もうと走り、ついにゴールまでアタックらしいアタックのチャンスを与えなかった。

勝利を率直に語るロッシ「僕らには余裕が残されていた」


完璧な勝利を収めた手応えと自信がロッシの表情にみなぎっていた Photo:INDYCAR (Joe Skibinski) クリックして拡大
  インディーカーでの3年目を迎え、ロッシは本来持つキャラクターを見せ始めているということらしい。実力を発揮できる状況になって、少しずつ本音で語り始めた。低音ボイスで必要最小限の言葉しか発しなかったが、口元をちょっと緩めるぐらいの笑顔を見せ、メディアとのやり取りを楽しむようなところも出てきている。
 ロング・ビーチでの優勝後には、「相手のP2P残量が自分より多かった点は確かに気がかりだった」と話し、「パワーとの距離を抜かれる心配のないレベルに最後まで保ち続ける必要があり、それを実現できたことにちょっとした達成感を感ずる」と微笑んだロッシ。彼はその後、「僕らにはもう少し速く走れるだけの余力が残されていた。相手との間隔は1秒あれば大丈夫と考えていた」と自信を覗かせ、終盤にイエローによる影響について尋ねられると、「ゴールで僕が2位につける差が変わっただけ」とストレートなコメントを口にした。


実力伯仲の中、一歩抜きんでたロッシ

 チームやドライバーの実力が拮抗しまくっているところへユニバーサル・エアロ・キットを導入し、新興チームの参戦や才能ある若手の流入も重なって、インディーカー・シリーズの戦いはますます熾烈の度合いを高めている。ライバルたちを明らかに上回る存在として突出することは、まさに至難の技だと言えるか。しかし、ロング・ビーチでのロッシ、あるいはアンドレッティ・オートスポートは頭一つ抜け出していた。プラクティス、予選、レース、それぞれで異なったコンディションを乗り越え、マシンを最速とするセッティングを見出していた。そこにロッシの才能、実力が加味されて最高のパフォーマンスを見せての勝利がなった。ワトキンス・グレンに続く圧勝で、ついにロッシは完全に開花した。ウィル・パワー、ファン・パブロ・モントーヤ、ポール・トレイシー、エリオ・カストロネヴェス、アレックス・ザナルディ、ナイジェル・マンセル、マイケル・アンドレッティ……らの全盛期が思い起こされた。
以上

2 件のコメント:

  1. 天野さん、レポートおつかれさまです。ロッシの一人旅でした。なんか、つまらないレースになるのかな…と思っていたら私の中だけかもしれませんがいろんなドラマがありました。鮮やかにディクソンを抜いたブルデー‼と思ったらペナルティーでした。そして、いいところまでいってたのにチームメイトのクラッシュでサービスを受けられずスルーしたブルデーにサービスを受けたディクソン。それを知らなかったとはぐらかしたマイクハル…。ジョーダンキングに追突されてそれに追い討ちをかけるように追突したハンターレイ…。ブルデーとハンターレイは、かなりやらかしてましたがブルデーがかわいそうだと思うのは私だけなのでしょうか。解説の黒澤さんが、デイルコインは昔とぜんぜん違うって言ってましたがブルデーがエンジニアでしたか?連れてきて最近はジミーバッサーも加わり力をつけてきてるんだな…と思いました。私は、細かいルールや車の細かいことはわからないけどインディを観るのが大好きだしブルデーには頑張ってほしいです‼天野さんのレポートも、いつも楽しみにしてます。次のアラバマも、楽しみにしてます。天野さん、ありがとうございました。長々と、すみません。

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  2. 今季は本当にロッシの当たり年ですね。

    開幕3戦全て表彰台でランキング首位。このままだと中盤で総合王者になりかねない??

    他のドライバーも「打倒ロッシ」頑張らないと。

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