2022年1月22日土曜日

2022 INDYCARレポート 1月21日:1月下旬のニュース

日本のスーパー・フォーミュラ経験者がまたインディーカーにデビュー Photo:INDYCAR (クリックして拡大)

AJ・フォイト・エンタープライゼスがタチアナ・カルデロンを12戦にエントリー

 昨年からAJ・フォイト・エンタープライゼスとスポンサー契約、カー・ナンバー14をフルに彩っていた”ロキット”が、今年は2台目のサポートも行うことになった。そのマシンに乗るのは、日本のトップ・オープン・ホイール=スーパー・フォーミュラに参戦していたコロンビア出身の女性ドライヴァー、28歳のタチアナ・カルデロンだ。カー・ナンバーは11を纏う。フォイトのチームはダルトン・ケレットもフル・シーズン・エントリーさせるので、2022年は3カー・チームとしての参戦になる。カルデロンはストリートとロードコースの12レースを走る。残りの5レース=オーヴァルにもカー・ナンバー11が出場するのか、その場合は誰を乗るのか……は未だ発表されていない。

カルデロンは昨年、ロードアメリカですでにインディーカーをテストしている Photo:INDYCAR (クリックして拡大) 

 「インディーカーにデビューできることをとても嬉しく思います。これを実現させてくれたジョナサン・ケンドリック、ロキッと、AJ・フォイト・レーシングに深く感謝します。11年前にアメリカで私はレースのキャリアをスタートさせましたが、それ以来、インディーカーを意識していました。そして今年、グリッドに着けることになり、夢が叶います。セイント・ピーターズバーグでの第一戦が今から待ち遠しいです。この挑戦が大変なのは理解しています。しかし、これは大きなチャンスですから、フルに活かしたいと考えています」とカルデロンは意気込みを語っている。
 カルデロンは昨年、すでにインディーカーのテストを一度行っている。ミッド・オハイオ・スポーツ・カー・コースで7月に開催されたレースの後、セバスチャン・ブルデイのマシンを走らせたのだ。
 チームの人道式を採るラリー・フォイトは、「タチアナは昨年のテストでポテンシャルの高さを見せてくれた。我々は3カー・チームとしてエキサイティングなシーズンを送ることができそうだ」と語っている。


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JPMがアロウ・マクラーレンSPから今年もインディー500出場

 インディー500で2勝しているファン・パブロ・モントーヤが、今年もインディー500にエントリーして来る。昨年同様にアロウ・マクラーレンSPからで、彼にとって7回目のインディー・エントリーとなる。スポンサーも昨年同様に世界一のトルティーヤ・メーカーであるミッション・フーズ。カー・ナンバーも「6」で変わらない。ロードコースでのグラン・プリ・オヴ・インディアナポリスにまずは出場し、続けてインディー500出場を果たす。昨年9位フィニッシュしたJPMは、インディーでの3勝目を3つ目のチームで……に挑戦する(2000年:チップ・ガナッシ・レーシング。2015年:チーム・ペンスキー)。パト・オーワードとフェリックス・ローセンクヴィストにとって、経験豊富な大ヴェテラン、JPMをインディーでのチームメイトに持つことは大きなプラスとなるはずだ。
 「アロウ・マクラーレンSP、ミッションとともにまたインディーに参戦できることとなり、エキサイトしている。あのレースは自分の心の中で特別な場所を占めている。去年のアロウ・マクラーレンSPとの経験は素晴らしいものだった。そこから更に前進できることを楽しみにしている。自分たちはトップグループで戦い、勝利に挑戦できるチャンスがあると考えている」とモントーヤは言っている。

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エド・カーペンター・レーシングの結論=コナー・デイリーの継続起用

 エド・カーペンター・レーシング(ECR)は暗号資産などを取り扱うデータ・テクノロジー会社=ビットナイルが今年からカー・ナンバー20の新たなメイン・スポンサーになることを発表(複数年契約)。同時に、そのマシンに乗ってフル・シーズン・エントリーするのがコナー・デイリーになると明らかにした。ビットナイルはECRの2台目、リナス・ヴィーケイの乗るカー・ナンバー21のサブ・スポンサーも務める。
 デイリー(30歳)が全17戦争を任されるが、エド・カーペンターが引退するわけではない。彼はもちろん、インディー500に出場する。その他にも、オーヴァル・レース3戦にカーペンターはECRの3台目のマシンで出場する予定だ。
 「今年もECRで走れることになり、大変嬉しい。1チームでフル・シーズンを戦えるのは2017年以来のことなので感謝している。私はECRを信頼している。我々は毎年、ともに進化をして来た仲だ。ビットナイル・シヴォレーでレースを走るのを今から楽しみにしている」。

……ということで、2022年のライン・アップを見てみよう。

チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ
スコット・ディクソン
アレックス・パロウ
マーカス・エリクソン
ジミー・ジョンソン
トニー・カナーン(インディー500のみ? オーヴァルのみ全戦?)

チーム・ペンスキー/シヴォレー
ジョセフ・ニューガーデン
ウィル・パワー
スコット・マクロクリン

アロウ・マクラーレンSP/シヴォレー
パト・オーワード
フェリックス・ローゼンクヴィスト
10戦ほどに3台目をエントリーする計画
ファン・パブロ・モントーヤ(インディーGPとインディー500の2レース)

アンドレッティ・オートスポート/ホンダ
コルトン・ハータ
アレクサンダー・ロッシ
ロマイン・グロジャン
デヴリン・デフランチェスコ(R)

メイヤー・シャンク・レーシング/ホンダ
エリオ・カストロネヴェス
シモン・パジェノー

エド・カーペンター・レーシング/シヴォレー
リナス・ヴィーケイ
コナー・デイリー
エド・カーペンター(オーヴァルのみ)

レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング/ホンダ
グレアム・レイホール
ジャック・ハーヴィー
クリスチャン・ルンドガールド(R)

デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR/ホンダ
佐藤琢磨

デイル・コイン・レーシング・ウィズHMDモータースポーツ/ホンダ
デイヴィッド・マルーカス(R)

AJ・フォイト・エンタープライゼス/シヴォレー
カイル・カークウッド(R)
タチアナ・カルデロン(R) ストリートとロードコースの12戦に出場
ダルトン・ケレット
カルデロンのマシンでオーヴァル戦に参戦するドライヴァーを起用か?

フンコス・ホリンジャー・レーシング/シヴォレー
カルーム・アイロット(R)


インディーカーのテスト情報

 フロリダ州セブリングのセブリング・インターナショナル・レースウェイのショート・コースで1月10日、メイヤー・シャンク・レーシングの新べヴェテラン・コンビ=エリオ・カストロネヴェスとシモン・パジェノー、そして、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングが今年からフル・シーズン・エントリーさせるデンマーク出身の20歳、クリスチャン・ルンドガールドがテストを行った。
 ベスト・ラップはパジェノーが52秒33で最速。ルンドガールドはそれよりコンマ1秒遅い52秒43がベストで、カストロネヴェスは52秒69だった。雨によって彼らのテストは予定より早く終了となった。

 1月18日にはAJ・フォイト・エンタープライゼスの新ルーキー・コンビ=カイル・カークウッドとタチアナ・カルデロンが、チーム・ペンスキーのデイン・キャメロン(スポーツ・カー・チームのドライヴァー)と共にテスト。カークウッドは74周、キャメロンは76周、カルデロンは57周を走り、カークウッドが52秒769で最速だった。キャメロンは52秒841、カルデロンは53秒251のベストをマークした。

 カークウッドがインディーカーのテストをするのは、もうこれで4回目になる。アンドレッティ・オートスポートでセブリング、バーバー・モータースポーツ・パーク、インディアナポリス・モーター・スピードウェイのロードコースを走ってきている。彼は、「ここでは昨年の秋にアンドレッティ・オートスポートのマシンを走らせているが、今日の自分たちのマシンとの間に凄く大きな差があるとは感じなかった」とコメントしている。シャシー・セッティングはフォイトのものも上々という意味だ。エンジンはアンドレッティ・オートスポートがホンダ、フォイトはシヴォレーと違っているが……。

 キャメロンはIMSAシリーズの最高峰カテゴリーで2回チャンピオンになっている33歳。今後、彼がインディーカーの世界にチャレンジして来る可能性は極めて低いが、初めてインディーカーをテストするチャンスが与えられた。チーム・ペンスキーに限らず、データ収集を行うために、このようなドライヴァーを起用するケースはよく見られる。若手を含めたインディーカーへの参戦経験のなドライヴァーたちに走行のチャンスを与えることをシリーズ主催者であるインディーカーは奨励している。そのルールを巧みに利用してのことだ。

デイン・キャメロン。1988年カリフォルニア出身の33歳 Photo:2017, Richard Dole/LAT Photo USA(クリックして拡大)

 キャメロンというドライヴァーは、2016年にアクション・エクスプレス・レーシング(去年からデイトナ24時間レースで小林可夢偉を起用しているチーム)のコヨーテ・キャディラックDPでIMSAシリーズのチャンピオンとなり、2018年にペンスキーがアキュラ(ホンダ)とタッグを組んだDPiプロジェクトをスタートさせた時、そのドライヴァーに起用された。彼は2019年にファン・パブロ・モントーヤとともにアキュラARX-05を駆ってシリーズ・チャンピオンに。ペンスキーとアキュラのジョイントが2020年に解消されると、2021年にはメイヤー・シャンク・レーシングのアキュラに搭乗し、シリーズ5位となった。そして2022年、キャメロンはヨーロッパに進出する。2023年からのペンスキーはポルシェ・ワークスとしてLMDhマシンをIMSAシリーズと世界耐久選手権(WEC)で走らせる計画。その準備として、今年のチーム・ペンスキーはWECのLMP2カテゴリーにフル・シーズン・エントリーを行うのだ。キャメロンはそのドライヴァーの一人に抜擢された。

2022年のインディー・ライツは14戦

 インディー・ライツ・プレゼンテッド・バイ・クーパー・タイヤズの2022年シーズンは14レースで構成される。レース数を多くしつつ、参戦経費高騰を抑制するためにダブルヘダーを3週末で採用している。さらに、昨シーズンの最終戦のようなインディー・ライツだけによるレースの独立開催はなくし、すべてのレースがNTTインディーカー・シリーズとの併催とされる。
 ダブルヘダー開催はインディアナポリス・モーター・スピードウェイのロードコース、デトロイトのベル・アイルのストリート・コース、ウェザーテック・レースウェイ・ラグナ・セカ。
 オーヴァルは全長の短い2コースでの開催だけで、今年もインディアナポリスの伝統あるスーパースピードウェイを使ったレースは行われない。

2/27 セイント・ピーターズバーグ(ストリート)
5/1   バーバー・モータースポーツ・パーク(ロードコース)
5/13  インディアナポリス・モーター・スピードウェイ(ロードコース)
5/14  インディアナポリス・モーター・スピードウェイ(ロードコース)
6/4   デトロイト ベル・アイル(ストリート)
6/5   デトロイト ベル・アイル(ストリート)
6/12  ロード・アメリカ(ロードコース)
7/3   ミッド・オハイオ・スポーツ・カー・コース(ロードコース)
7/23  アイオワ・スピードウェイ(ショート・オーヴァル)
8/7   ナッシュヴィル(ストリート)
8/20  ワールド・ワイド・テクノロジー・レースウェイ(ショート・オーヴァル)
9/4   ポートランド・インターナショナル・レースウェイ(ロードコース)
9/10  ウェザーテック・レースウェイ・ラグナ・セカ(ロードコース)
9/11  ウェザーテック・レースウェイ・ラグナ・セカ(ロードコース)

合同テスト
4/5   インディアナポリス・モーター・スピードウェイ(ロードコース)
6/15  ワールド・ワイド・テクノロジー・レースウェイ(ショート・オーヴァル)
6/22  アイオワ・スピードウェイ(ショート・オーヴァル)

 インディー・ライツのタイトル・スポンサーであるクーパー・タイヤズは、オハイオ州アクロンで1914年に創業した老舗タイヤ・メーカーで世界の12カ国以上に工場を持っている……が、昨年6月にグッドイヤー傘下に入った。インディーカーにタイヤを単独で供給するファイアストンにとって、グッドイヤーといえば最大のライヴァルと言っていい存在だ。
 ファイアストンは1995年にインディーカーに復帰し、グッドイヤーとの戦いに勝ってタイヤを全エントラントに供給することとなった。グッドイヤーは撤退を余儀なくされたのだ。
 再びオープンホイールへのタイヤ供給を行うこととなったグッドイヤーが、タイヤ戦争を勃発させる可能性は?
……おそらくゼロ。シリーズとしても、タイヤの競争はパフォーマンス差が簡単に大きく出てレースをつまらなくしてしまう可能性が高いことから、導入はしたくない。

今週末はデイトナ24時間レース。インディーカー・ドライヴァーのエントリー多数

現役
スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング キャディラックDPi)
アレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング キャディラックDPi)
マーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング キャディラックDPi)
アレクサンダー・ロッシ(ウェイン・テイラー・レーシング アキュラDPi)
ジミー・ジョンソン(アクション・エクスプレス・レーシング キャディラックDPi)
エリオ・カストロネヴェス(メイヤー・シャンク・レーシング アキュラDPi)
シモン・パジェノー(メイヤー・シャンク・レーシング アキュラDPi)
パト・オーワード(ドラゴンスピード LMP2)
リナス・ヴィーケイ(レーシング・チーム・ネダーランド LMP2)
   =リヌス・ファン・カルムトウトとしてエントリー
ジャック・ホウクスワース(ヴァッサー・サリヴァン・レーシング レクサス GTD PRO)
カイル・カークウッド(ヴァッサー・サリヴァン・レーシング レクサス GTD PRO)

インディーカー出場経験有り
セバスチャン・ブルデイ(チップ・ガナッシ・レーシング キャディラックDPi)
ケヴィン・マグヌッセン(チップ・ガナッシ・レーシング キャディラックDPi)
トゥリスタン・ヴォーティエ(JDCミラー・レーシング キャディラックDPi)
マイク・コンウェイ(アクション・エクスプレス・レーシング キャディラックDPi)
ライアン・ディール(エラMS LMP2)
ギャビー・シャヴェス(アンドレッティ・オートスポート LMP3)
タウンゼント・ベル(ヴァッサー・サリヴァン・レーシング レクサス GTD)

以上

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