Photo:Penske Entertainment
パワー、フレッシュ・レッドを生かし、序盤でイニチアチブを握る
ポール・ポジション・ウィナーのクリスチャン・ルンドガールド(アロウ・マクラーレン/シヴォレー)が規定外のエンジン交換でペナルティを受けて7番グリッドからのスタートとなったせいで、予選4位ながら3番グリッドからスタートしたウィル・パワー(チーム・ペンスキー/シヴォレー)は、上位陣が早目に1回目のピット・ストップを行う作戦に出たことで、まんまとトップの座を手に入れると、そこから全力疾走を続けてレースのイニシアティヴを握り、終盤のルンドガールドとアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ)のチャージを振り切ってゴールまで走り切った。
オーストラリア出身、44歳はヴェテランは残り3戦という終盤になって、ようやく今シーズン初優勝を手に入れた。
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パロウ、3位入賞でタイトル獲得
ホンダもマニュファクチャラーズ・チャンピオンに
シヴォレーは今季3勝目をアイオワでのレース1に続くシーズン二度目の1-2フィニッシュで飾った。しかし、パロウが3位、グレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング/ホンダ)が4位でゴールしたことにより、ホンダの2025年インディーカー・シリーズ・マニュファクチャラーズ・タイトル獲得が決定した。2021年以来となる、アメリカン・トップ・オープンホイール・チャンピオンシップでの11回目の栄冠だ。
オーワード、エンジン関連のトラブルで脱落しタイトルの可能性消失
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予選2位、ポール・ポジション・スタートだったパト・オーワード(アロウ・マクラーレン/シヴォレー)は、スタート、リスタートを完璧に決めて序盤のトップを快走したが、エンジン関連のトラブルに見舞われて優勝のチャンスも、初タイトル獲得の可能性も消滅した。そのトラブルがなくても、ユーズド・レッドによるスタートで早目のピット・ストップに入った段階で、彼の今日のレースでの勝ち目は無くなっていたかもしれない。
ローゼンクヴィストも早めのピットインが裏目に
フロント・ロウ外側グリッドから発進したフェリックス・ローゼンクヴィスト(メイヤー・シャンク・レーシング・ウィズ・カーブ・アガジェニアン/ホンダ)は、オーワードと同じタイミングでのピット・イン=せっかくの新品レッドを序盤の15周だけで捨てる勿体無い作戦を選び、もっと前のイエローでピットしていた面々の後方にスタック。勝機を失った。
パロウはブラック・タイヤでスタート。新品レッド装着のパワーに突き放され、1回目のピット・ストップを終えたところで中団グループに飲み込まれたため、更なる苦戦を強いられた。ファースト・スティントで思い切りプッシュしたパワーは、中団の混雑のギリギリ前にピット・アウトすることに成功し、パロウとの差を20秒にまで広げて見せた。
パワーを猛追するルンドガールド、そしてパロウ
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久々にペンスキーらしい作戦力が見られた。レース巧者としての本領が発揮され、序盤の展開を見てセカンド・スティントにユーズド・レッド投入という決断が下された。ピット作業後にコースに戻った時、どこにポジショニングできるかもキッチリ計算がされた、見事なタイミングだった。
しかし、その後も簡単に勝たせてはもらえなかった。ルンドガールドが最終スティントで追いつき、バック・マーカーに進路を塞がれている間にパロウも迫って来たのだ。
パロウとの間に一時は20秒の差をつけていたパワーだったが、1回は使わなくてはならないブラックをサード・スティントで投入すると、後続との差は縮まり始め、最終スティントにユーズド・レッドを入れると、新品レッドを残していたパロウの追い上げが始まった。
バックマーカーを抜きあぐねたパワーだが、最後まで後続に隙を見せずゴール!
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パワーが厳しい状況に置かれていたのは、終盤のプッシュ・トゥ・パス使用に明確に現れていた。トップを走り、まだルンドガールドとの間隔は十分にあるというのに、パワーはパワー・ボタンを毎周のように少しずつ押し、後続と差を保ち続けようとしていた。ファイナル・スティント開始時には、レースの中盤戦でそれを多用せざるを得なかったパロウのP2P残量がトップ3の中で最も少なかったが、逃げたいパワーと追いつきたいルンドガールドがP2Pを多用し、パロウとの立場が逆転。ゴール目前でパロウによる大逆転……というシナリオも可能な状況が出現した。
P2Pをフル活用し、パワーは必死で逃げ続けた。バック・マーカーとして表れたマーカス・エリクソン(アンドレッティ・グローバル/ホンダ)を抜けずに苦しんだ。しかし、さすがは44勝して来ている元チャンピオン、パワーがミスを冒すことはなく、とうとう最後までルンドガールドにアタックのチャンスを与えなかった。
キャリア45勝目!「今の僕は自分のキャリアなかでベスト」
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「とても長い1日、そして、素晴らしい1日になった。今日の僕はスタートからゴールまでプッシュし続けていたよ。また勝てて嬉しい」とパワーは安堵の表情を見せた。「今の僕は、自分のキャリアの中でベストのドライヴァーとなれている。遅くなってなんかいないんだ。速くなっているぐらいで。マシンをより深く理解し、レース・クラフトを向上させ……ということが僕にはできている。そういう点で、自分は他の人たちとは違うタイプのドライヴァーなのだと思う。これまでもずっと、休むことなく全力を投入し続けて来た。レースこそが自分が情熱の対象だから。レースが大好きなんだ。だから今日のように、まだ勝つことができるんだと思う」。
彼より若いチームメイト二人は、今年未だ勝利を挙げることができていない。パワーのインディーカー歴代4位につけるキャリア45勝目は、チーム・ペンスキーにとっての2025年シーズン初勝利でもあったのだ。来季もチームに残れるかが決定していないヴェテランが勝ち、来年もペンスキーで戦うことが決まっている、野心に溢れる二人は未勝利。世の中は難しい。
「今週末の我々は、最初のプラクティスから良いスタートを切ることができていなかった。そこからセッティングを幾つも変更した。去年速かったマシンが、今年もそのまま速いっていうことは、近頃ではあまりない。我々はマシンのセッティングを変え、予選でPP獲得までの力を備えさせるところまでは行かなかったものの、4番手のスピードは確保した。それらを振り返ると、終わってみれば、とても良い週末にできたということなんだと思う」。
今日の勝利は、パワーのペンスキー残留を後押しすることとなるのか? それとも、ライヴァル・チームの獲得意欲をこれまで以上に掻き立てるものとなるのか??
以上
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