2011年6月1日水曜日

2011 INDYCARシリーズ レースアナリシス R5 インディ500 その4:ウェルドンとヒルデブランド、どちらが勝利に相応しい?

アメリカンドリームが現実となる瞬間は、一瞬にして潰えたと思われたがその影には、きわどいルールの適用があった。
Photo:INDYCAR(LAT)
ルーキー擁する老舗チームvsインディウィナーを起用したスポット参戦の新興チーム

 チーム・ペンスキーが3台体制を敷きながらまったく優勝争いに絡んで来れず、チップ・ガナッシ・レーシングはターゲットの2台がゴールを目前に揃ってガス欠で失速。そんなレースで安定した速さを発揮し続け、最後に優勝を争うことになったのは、ルーキーを起用したIRL生え抜きチーム=パンサー・レーシングと、インディ500に2回目のスポット参戦を行う小さなチーム=ブライアン・ハータ・オートスポート・ウィズ・カーブ/アガジェニアンだった。
 勝ったのは2005年のウィナー、ダン・ウェルドン。JR・ヒルデブランドは2位に敗れた。ウェルドンの勝利にケチをつけるつもりはないが、今年のインディ500での優勝者に相応しかったのは、この二人のうちのどちらだったんだろう? 

どちらの勝利になってもヒューマンストーリーが成り立つ展開に

 あのアクシデント直後、コースがすぐさまフルコース・コーションとされていたら、ヒルデブランドはクラッシュしながらも勝てていた。ウェルドンが優勝を諦め、バックストレッチあたりで2位狙いに気持ちを切り替えてた場合にも、今回のような大逆転は起こらなかった。
 パンサーはインディ500で3年連続2位フィニッシュをしてきていた。悔しい経験を重ねてきたチームがついに初勝利を飾る! そんな感動的サクセスストーリーが完成されるところだった。しかし、パンサーの2位フィニッシュは4年連続へと伸ばされることになった(これはこれですごい記録なのだが……)。 
 ウェルドンはインディ500での優勝経験を持つが、今年はスポット参戦だった。素晴らしいオーバルでのドライビング能力を認められていながら、去年走っていたパンサー・レーシングとギャラで揉めたため、今シーズンを走るチームを失くしてしまていた。そこへ元チームメイトで、まだチームオーナーとなって2年と少しのブライアン・ハータから声がかかり、ウェルドンは出場の意思を固めた。インディカー・シリーズのレースに出場するのは、去年のインディ500以来となる2回目……そんな若いチームの優勝。こちらもヒルデブランドのものとはまったく別のサクセス・ストーリーだ。
Photo:Naoki Shigenobu
明暗を分けたものがルールの適用だったというイロニー

 どちらがウィナーとされても不思議はないゴールシーンになった。そうなったのは、レフェリー役の仕事がプロフッショナリズムを欠いていたからだ。「人間とはミスを冒す動物」という考え方がアメリカ人の間には広くあるが、今回のケースは、「イエローが出るまでに時間がかかったのは人間のミスの範囲」ということで世間の理解は得られているようだ。しかし、スポーツのルールというものは、いかなる状況であっても全員に対して公平に正しく適用されるべきだろう。インディカーという組織が、その理想へと少しずつでも近づいて行くことを期待する。
 それにしても、インディ500は多くの議論を巻き起こす。事件やハプニングが生まれる頻度が高い。歴史と伝統に彩られたレースは、それだけのパワーを備えているということなのだろう。

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