2020年7月13日月曜日

2020 INDYCARレポート R4 REV グループ・グランプリ RACE2 決勝:若手大活躍のレース2、ウィナーはフェリックス・ローゼンクヴィスト

Photo:INDYCAR (Joe Skibinski) クリックして拡大
グリッド前方を固める若手vs後方に控えるヴェテラン
予想に反しレース2の主導権は完全に若手に


 ポール・ポジションがパト・オーワード(アロウ・マクラーレンSP)、予選2位がコルトン・ハータ(アンドレッティ・ハーディング・スタインブレナー・オートスポート)、予選3位がアレックス・パロウ(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・チーム・ゴー)。若手が前方グリッドを占拠したのは素晴らしいが、予選4位以下に並んだヴェテラン勢はレースで手強いだろう。若いトップ3はどこまで上位を守れるのか……などと考えていたが、ロード・アメリカでのレース2は、完全に若手が主役となった。

暴れまくるパワー、ハンター-レイとレイホールの
ヴェテラン2人をやっつけ0周リタイヤに

 ヴェテラン最上位グリッド=4位だったライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)は、1周目のメイン・ストレートで予選8位だったウィル・パワー(チーム・ペンスキー)に追突されてクラッシュした。パワーはターン3出口ではグレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)にもヒット。こちらもリタイアへと追いやった。たまにあるんですよね、パワーって暴れ過ぎちゃうことが。気の毒なのはハンター-レイとレイホール。優勝候補のヴェテラン2人がまさか0周リタイアを喫するとは……。

ニューガーデン、ディクソンも勢いを欠き、予選2位のハータも後退
勝負は逃げるオーワードと追うローゼンクヴィストの一騎打ちに


 ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)、シモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)らの走りも精彩を欠き、開幕4連勝の可能性もあったスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)にもトップ争いを行なうだけのスピードはなかった。予選3位だったパロウ、予選2位だったハータも徐々に後退し、優勝争いは「逃げるオーワードと追うフェリックス・ローゼンクヴィスト(チップ・ガナッシ・レーシング)の一騎打ち」となった。
Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大

ピットミスにも諦めないローゼンクヴィスト
ラスト10周すぎからPtoPでアタック開始


 予選7位だったローゼンクヴィストは、1回目のピットを16周目まで引っ張り、実質3番手までポジション・アップ。次のスティントでパロウを抜き、2回目のピットは29周目。オーワードの後ろの2番手となった彼だったが、ピットでミスがあり、縮まっていた差が逆に広がった。コース上でのゲインをピットですべて投げ出し、勝利のチャンスもなくしたかにみえた。
 それでもしぶとく攻めの走りを続行。オーワードが41周目に最後のピットに向かい、ローゼンクヴィストはもう1周走ってからピット・ロードへと入った。

 この時のイン・ラップではオーワードが速く、最後のピット作業を終えたローゼンクヴィストがコースに戻るとオーワードのリードは6秒以上になっていた。

 勝負あった。そう思った。追いつとくろまでは行っても、パスは難しいだろうと、しかし、逃げるオーワードが残り10周を切る辺りからプッシュ・トゥ・パスを積極的に使い始めた。それでもふたりの間隔は小さくなって行き、ついにローゼンクヴィストはオーワードに追いついた。


ターン6サイドバイサイドの闘い

 ターン5へと向かう下りの直線、ドラフティングを使ったローゼンクヴィスとはオーワードのアウトに並びかけた。しかし、アウトから抜くのではなく、コーナリング・ラインをクロスさせて次の左コーナーでインに入る作戦だった。左直角のターン5を先に回ったオーワードだったが、その左側からローゼンクヴィストはパスしにかかった。並んだ2台は軽く何度か接触し、登り坂の頂上、ターン6を2台はサイドバイサイドで回った。
 ターン6の出口でまた2台は接触。オーワードはランブル・ストリップに乗ってバランスを崩した。そして次のコーナー、イン側にポジションできるはずだったオーワードの鼻先をかすめながらローゼンクヴィストがトップを奪った。


チップ・ガナッシ、セカンドスティントから
3連続でフレッシュ・ブラック投入
「相手がレッドと聞いてチャンスはある

と思った」とローゼンクヴィスト

 最後のピット・ストップでオーワードとアロウ・マクラーレンSPが選んだのはユーズド・レッド・タイヤ。1周遅くピットしたローゼンクヴィストと彼のチーム、チップ・ガナッシ・レーシングは最初のスティント以外はフレッシュ・ブラック・タイヤを3連続投入した。
 オーワードのユーズド・レッドはゴール前10周を切ってからグリップを大きく下げた。6秒以上あったリードが12周でゼロになり、大逆転が実現された。

 「相手がレッドを選んだのを聞いて、チャンスはあると思った」とローゼンクヴィスト。「残っていたプッシュ・トゥ・パスをあの1周で一挙に使い切って差を縮めた」とも彼は語った。チップ・ガナッシ・レーシングという強豪に抜擢された若手は、デビュー2年目のシーズン序盤、4レース目にして初勝利。さぁ、2勝目をすぐさま挙げることになるのか?
注目したい。


オーワード、優勝派のガスがフル参戦3戦目で2位!

 3年前のラグナ・セカでセンセーショナルなデビューを果たしたオーワードは、フル・シーズン・エントリーのチャンスを与えてくれたアロウ・マクラーレンSPが敷いた強力なエンジニアリング体制を味方に、キャリア初ポール・ポジションを記録し、初優勝をかけた争いに敗れはしたものの、初の表彰台登壇を達成。こちらも今シーズンのこれからが楽しみな存在だ。

 レース1で3位フィニッシュしたパロウは、序盤にハータを抜いて2番手を走ったが、ブラック・タイヤにスイッチしたセカンド・スティントからハンドリングに苦しみ始めたが、それでも7位でのフィニッシュを果たした。ロードコースでは今後も上位を走る期待感十分だ。

 マーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)も16番手スタートから4位フィニッシュ。サンティーノ・フェルッチ(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・ヴァッサー・サリヴァン)もスタート直後の”避けられた接触”によるペナルティを跳ね返して6位フィニッシュと、トップ7が若手で占められたのがロード・アメリカでのレース2だった。


Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大
ダブルヘダー2戦で安定した走りを見せたのは若手だけ
佐藤琢磨、レース2を8位フィニッシュし、

2戦いずれもトップ10フィニッシュ達成

 ダブルへダーは短時間での形勢逆転が難しいため、2レースとも結果が似たものになりがちだ。しかし、ロード・アメリカでの2レースで表彰台に上った顔ぶれはまったく違っていた。ただし、オーワードは2位/8位で、パロウは3位/7位で。ハータは両レースとも5位に入り、フェルッチは両レースとも6位だった。そして、エリクソンが10位/4位。安定していたのは若手ばかりだった。

 そんな中、佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は12番手スタートから8位でフィニッシュ。レース9位だったから、彼もまたロード・アメリカでの2レースともトップ10入りしたドライヴァーとなった。「グレアムと少し違うセッティングでスタートし、あちらの方が良かったので、良かったところを取り入れてレース1を戦ったけれど、グレアムのマシンと同じように良くなっているとは感じられなかったので、レース2に向けてはセッティングを大きく変えることにしました。予選でそれを試すのはギャンブルですけど、やった結果は良い方に出た。レースでのハンドリングはブラック、レッドの両タイヤでよく、ニューガーデンとクリーンにバトルして、彼をパスすることもできた」と琢磨はレース1からのパフォーマンス向上に対しては評価をしていた。しかし、その結果が8位では喜んではいられなかった。トップ5入り、さらには優勝争いへと絡んで行くのが目標だ。

 若手の躍進でまた競争の激しさが増したインディーカー・シリーズ。次戦は来週末のアイオワ。今年最初のショート・オーヴァルは、今週と同じくダブルへダーだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿