2022年5月22日日曜日

2022 INDYCARレポート R6 106回インディー500 Day5 Qualifications Day1:リナス・ヴィーケイが最速

 予選1回目は雷と雨で60分短縮に

 予選1日目、インディアナポリスには予報のとおりに午後になって雨が降り、夕方5時50分まで行われるはずだった予選は午後4時に雷によって中断され、その後に雨も降り出して4時46分に終了がアナウンスされた。
 明日の予選に進めるのは今日の最速12人。そのトップは4ラップ平均233.655マイルを記録したリナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシングだった。


 ファスト12として明日の予選でポールポジションを争うのは以下の12エントリーだ。

1 リナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング) 233.655mph
2 パト・オーワード(アロウ・マクラーレンSP) 223.037mph
3 フェリックス・ローゼンクヴィスト(アロウ・マクラーレンSP) 232.775mph
4 アレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング) 232.774mph
5 トニー・カナーン(チップ・ガナッシ・レーシング) 232.625
6 ジミー・ジョンソン(チップ・ガナッシ・レーシング) 232.398mph
7 エド・カーペンター(エド・カーペンター・レーシング) 232.397mph
8 マーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング) 232.275mph
9 ロマイン・グロジャン(アンドレッティ・オートスポート) 232.201mph
10 スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング) 232.151mph
11 ウィル・パワー(チーム・ペンスキー) 231.842mph
12 佐藤琢磨(デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR) 231.708mph



最初のアタッカー、オーワードが2位
続いて子コースインしたヴィーケイが1位と
気温の低い早い時間帯のアタッカーが明らかに有利な状況に


 雨の心配があるために予選は予定より1時間早い午前11時に始められた。インディーカーのその判断は正しかった。
 外気温が25℃で予選は始まり、最も暑かったのは午後1時あたり。気温は28℃、路面温度42℃まで上がっていた。その後は少しずつ気温が下がって行き、雨が降ってさらに涼しくなった。
 予選の趨勢を決めた1回目のアタック中は気温がどんどん上がって行く天候だったため、早いアタック順を昨日のくじ引きで引いていた人々が明らかな有利となっていた。最初のアタッカーとして走ったオーワードが2番手のスピードを記録し、2番目に走ったヴィーケイがトップだった。3番手になったのはアタックが4番目だったローゼンクヴィスト。暑さという不利を乗り越えてのファスト12入りを果たしたのはパワー、エリクソン、カーペンターの3人だった。


「走っていて速いな、と感じた」と語るヴィーケイ
「目指すのはポール・ポジションだ!」

 予選での最速ラップはヴィーケイの計測1周目=234.702mph。彼は2番手に0.618mphの差をつけて予選初日のトップとなった。
 「予選1日目に最速となれた。自分自身、走っていて”速いな”と感じたが、234.7mphという数字には正直驚いた。もちろん嬉しい驚きだった。今日の自分たちは予選のスタートとして最高のものが切れたと思う。マシンがとても速いことが証明され、明日の予選に向けての大きな自信を得ることもできた。目指すはポール・ポジションだ」とヴィーケイは語った。

 ファン・パブロ・モントーヤ(アロウ・マクラーレンSP)は予選前の車検でアンダートレイが破損されていることが発覚し、車検を通れず。9番目という恵まれたアタック順を棒に振り、暑さの中で30番目にアタック。予選順位も30位となった。


 ステファン・ウィルソンが引き当てた17番目にアタックを行わなかったのは、プラクティス後にエンジントラブルの可能性があるとわかり、エンジン換装作業に取り掛かったら予選に間に合わなくなってしまったのだ。4月に行われた2日間のテストに参加せず、公式プラクティスが始まっても多くの周回を重ねてマシン・セッティングの向上を実現しているようには見えていなかった彼らが、予選アタックで一度もコースに出ることなくインディー500の決勝進出権を与えられるのは不可解だ。

ハータ、エンジントラブルで予定通りアタックできず
アンドレッティ勢でファスト12入りはグロジャンのみ

 先週のGMRグラン・プリで優勝したばかりのコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジェニアン)は、ウォーム・アップ・ラップ中にエンジン・トラブル発生。16番手のアタッカーとして予選を終えることができなくなった。次のコース・インは2時過ぎで、暑いコンディションにマシンを調性し切れなかった彼らは予選25位となった。
 アンドレッティ・オートスポートはインディー500の予選でもう10年以上も速さを見せつけて来ていた。しかし、今年の彼らは戦闘力不足に陥っている。技術提携しているメイヤー・シャンク・レーシングの2人を含めてもファスト12入りしたのはたた1人だけで、陣営内のトップがそのグロジャンだったのだ。アレクサンダー・ロッシは20位、マルコ・アンドレッティは23位、ルーキーのデヴリン・デフランチェスコが24位だった。

 ヴィーケイのチームメイト兼オーナーのエド・カーペンターは、くじ運が悪くアタック順は23番目だったが、自分の順番にアタックしなかった者が彼の前に2名、ウォーム・アップ・ラップ中のエンジン・トラブルでアタックに入れなかった者が同じく1名いたため、20番手でコース・インした。気温が27℃以上、路面温度が40℃以上という暑さの中で走りながら4ラップ平均を232mphに乗せた。

シヴォレーエンジンが予選初日トップ3独占

 プラクティス3日間ではホンダがトップ2以上を独占し続けたが、予選1日目にはシヴォレーとの立場が逆転した。それはシヴォレーの方がパワーが出ているから……とも考えにくい。予選のコンディションにマシンを合わせ込む力量でエド・カーペンターとアロウ・マクラーレンSPがホンダ・ユーザーたちを上回っていたようだ。オーワードが1番目、ローゼンクヴィストが4番目のアタックと涼しい時間帯に走ることのできたマクラーレン勢がチャンスを見事に活かして2、3位につけ、予選初日でのシヴォレー・エンジンによるトップ3独占がなった。しかし、ファスト12入りしたエントリー数はホンダの方がシヴォレーより2台多い7台となっている。

チップ・ガナッシ、5人全員がトップ12入り
佐藤琢磨、チームメイトのマルーカスをバンプして12位に

 ホンダ勢ではチップ・ガナッシ・レーシングのパフォーマンスが一番良かった。彼らは走らせている5人全員がファスト12入りした。明日の12人だけによるプラクティスで5台分のデータを収集できる彼らは、2台が出場するアロウ・マクラーレンSPとエド・カーペンター・レーシング、1台ずつのデイル・コイン・レーシング・ウィズRWRとチーム・ペンスキーに比べて優位にある。
 全員に一度走行のチャンスが与えられた後は、時間と天候の許す限り再挑戦を行ってよいルールで、その時間帯に入ってすぐにカルーム・アイロット(フンコス・ホリンジャー・レーシング)がアタックを敢行。22番手だった順位を20番手に上げた。彼は最終的には19番グリッドからスタートすることになった。
 同じようにマルーカスに2回目の走行によって予選順位を17番手から12番手に上げた。しかし、その後に先輩チームメイトの琢磨が走りてギリギリでファスト12入りし、マルーカスは弾き出されてしまった。


マクロクリンとニューガーデン
ギャンブルに失敗


 それらの例とは逆にギャンブルに失敗したのがマクロクリンだった。15番手のグリッドを捨てて二度目のアタックを行った彼は、まったくスピードが出せずに26番手からスタートを切ることになった。
 マクロクリンの次にコース・インしたのは、14番手という順位を捨てたニューガーデンだった。しかし、彼が計測ラップに入る前にスピードウェイの半径10マイル以内で雷が発生したためにイエロー・フラッグが出され、ファスト12入りの夢はかなわないこととなった。しかし、ニューガーデンがアタックを完了できなかったのはラッキーであったかもしれない。マクロクリン同様にスピードをまるで出せなかった可能性もあるからだ。


レイホール勢、最上位が21番手と大苦境に

 ペンスキーやアンドレッティより惨憺たる成績だったのはレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング。グレアム・レイホールは21位にしかなれず、それはスポット参戦のセイジ・カラム(ドレイヤー&レインボールド・レーシング)のギリギリひとつ上だった。これが彼らのチーム内で最上位。あとの二人はジャック・ハーヴィーが31位、クリスチャン・ルンドガールドが32位と揃ってラスト・ロウだった。

佐藤琢磨、高温の時間帯にハイレヴェルなアタック
3周目のターン4でフェンスに当たりながらスロットル緩めず


 様々なドラマがあった予選1日目だったが、一番アップ・ダウンの激しい1日を過ごしたのが琢磨と彼のチームだったのではないだろうか。10番手のアタッカーとしてコース・インした琢磨は232.196mph平均を出してファスト12進出は確実だった。ところが、予選アタックを終えてピットに戻る際にターン3で減速レーンに入らず、本コース上を走ってピットに戻ろうとした結果、次のアタッカーとしてコース上での加速を始めていたマルコ・アンドレッティが琢磨を追い越す形となった。琢磨にインディーカーは走行妨害のペナルティを課し、予選記録は無効とされた。
 琢磨は全エントラントがアタックを終えた後の午後1時45分過ぎに2回目のアタックを敢行した。気温27℃、路面38℃という難しいコンディション下、232.482mphと良く、2ラップ目も231..890mphと暑い時間帯としてはハイ・レヴェルなスピードが出せていた。2ラップ終了時点でのアヴェレージは232.186mphで10番手に食い込めるもの。残り2周でのスピードダウンを小さく納めることができればファスト12に復活できるとの期待が持てる状況となった。
 ところが、計測3周目のターン2で琢磨はラインが外に流れ、SAFERウォールにヒットした。そこでスローダウンすればファスト12進出は不可能となるが、琢磨はスピードを落とさずバックストレッチを進み、ターン3へと飛び込んで行き、4周のアタックを完了させた。壁にぶつかった3周目でも231.144mphとスピードを高いままに保った琢磨は、4ラップ目を前の周より速い231.221mphだったことで4周アヴェレージを231.708mphとし、12番手へギリギリ滑り込んだ。


「本当にいろいろあった一日」と振り返る佐藤琢磨
「チームが素晴らしい仕事をしてくれました」


 琢磨の4人後、カラムが走っている間の午後2時13分に雨が降り出して予選は一旦中心になった。このまま終われば琢磨のファスト12進出は確定するのだが、雨が止んで予選は午後3時49分に再開された。気温は20℃、路面は33℃まで下がっており、降雨直後だったが湿度は逆に下がっていた。スピードの出し易いコンディションとなれば、12番手の”オン・ザ・バブル”にいる琢磨がファスト12から弾き出される可能性は十分にあった。しかし、マクロクリンのアタックは失敗に終わり、その次のニューガーデンがウォーム・アップ・アップを行っている間に雷、さらには雨で予選は終了。琢磨のファスト12入りが決定した。
 「本当にいろいろあった1日でした。最初のアタックでの自分たちのスピードは想定よりもずっと低いものでした。予選アタックに向けてのマシンの準備を入念に行おうと、私たちは朝のプラクティスを走らないことにしたのですが、コースのコンディションが昨日とは決定的に違うものになっていて、自分たちのセッティング調性は間違ったものになっていました。その後、ピットに戻ってくるラップでのトラブル(後続アタッカーの進路妨害で予選記録抹消)があり、私たちは再度アタックを行うこととなりました。暑いコンディション下での難しい走行となりましたが、なんとかスピードを出して12番手に入ることができました。チームが素晴らしい仕事をしてくれたおかげです」と琢磨は語った。

 今日のトップ12には2セットのタイヤが新たに供給され、明日の午後12時30分から彼らだけのためのプラクティスが90分間行われる。予選は夕方4時スタート。12人が半分の6人にまずは絞り込まれ、その6人がポールポジションと2列目までのグリッドををかけた予選ファイナルを戦う。
以上

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