2011年4月25日月曜日

2011 INDYCARインサイドコラム4 R3ロングビーチ:選手・チームによって違う!? 接触時のペナルティ対応。トップチーム、人気選手には甘い印象……

ロングビーチでペナルティを科されたトレイシー
Photo:INDYCAR(Dan Helrigel)
 ロングビーチでのアクシデントに対し、インディカー・シリーズのレフェリー役を努めている元ドライバーのアル・アンサーJr.がコメントを出した。

 彼はロングビーチで6勝を記録。1989年のレースではマリオ・アンドレッティを弾き飛ばして優勝し、マリオが説教をしに表彰式に乗り込んだことは今でも語り草となっている。当時を彼は振り返り、「完全なるレーシングアクシデントで、ぶつけるつもりはなかった」と話した。……ぶつける意思がないのは当たり前。そんなもんを持ってもらってたら困る。レースでペナルティの対象となるか否かは時代に関わらず、ぶつける意思の有無が基準になるべきじゃない。
 ポール・トレイシーがレース序盤にシモーナ・デ・シルベストロをヘアピンでスピンさせ、ペナルティを受けた……ってあれ、やっぱり接触に対するペナルティだったんだ。本人は「ピットスピード違反によるもの」って言ってたが。トレイシー、本当にスピード違反と思っていたのだろうか? それとも彼なりにインディカーに気を使った? いずれにせよ、あの少し前に同じ場所でジャステイン・ウィルソン(ドレイヤー&レインボールド・レーシング)がスピン&ストップしていたのは、カストロネベスに追突されたからだった。

 同じコト(=追突)をやって、同じ結果(=相手をスピンさせる)を招いてもトレイシーはペナルティを受け、カストロネベスはお咎めナシ。IRLではこのようにルールの適用が不安定だ。
 アンサーJr.は、「エリオのターン1での判断は悪く、チームメイトを弾き飛ばした。しかし、エリオはそれによって順位を上げはしなかった。あの後に我々が彼にピットでのストップ&ゴーや同一ラップの最後尾までポジションを下げるペナルティを科したとしても、彼のフィニッシュ順位に変わりはなかったはずだ。アクシデント直後に彼のエンジンはストップし、トップと同一周回の一番後ろまで下がった。あのアクシデントで彼は自らに十分なペナルティを科されたということだ。今回のトレイシー、バーバーでのライアン・ハンター-レイのケースは、誰かを弾き飛ばしたことによって彼らが順位を上げている。だからペナルティの対象になった」と説明した。カストロネベスはウィルソンをスピンさせて順位を上げているのだが?

 順位を大きく落としたらペナルティーはなし……って考え方は、理論的であるようで、実はかなり理不尽だ。アンサーJr.の言うとおり、ペナルティを科しても科されなくてもほぼ同じポイントが得られる状況になるなら、ポイントを剥奪するとか少し減らして与えるとか、すでに獲得している分からもマイナスするぐらいの厳しさが必要になってくるだろう。
 インディカーの審判ぶりは、前々から公正ではないとの印象を与えてきている。少なくとも私ジャック・アマノはそう感じてきている。そして、それはインディカーの体質なのか、変わる様子がない。今回も強く感じたのは、誰かにぶつけたことによって順位を上げたとか、順位を一切上げなかった……などが彼らの基準になっているのではなくて、弾き飛ばしたのが誰で、誰が弾き飛ばされたかという点に重点が置かれているように考えられる。ハンター-レイがぶつかったはライアン・ブリスコーで、トレイシーがスピンさせたのはデ・シルベストロだった。かたやペンスキーのドライバーで、もうひとりは開幕戦の快走で人気急上昇中のシモーナ。シリーズが大事にしてる面々に被害が生じると、そうなる理由を作ったドライバーたちはペナルティの対象になる。そういう印象を受ける。

シリーズ内でのチームの力がペナルティ判定基準か
 ロングビーチでのエリオの場合、ウィルソンへの追突というミスは、ウィルソンやドレイヤー&レインボールド・レーシングには悪いが、彼らがシリーズに大事にされてないので不問。パワーにヒットしたケースは、「エリオは大きく順位を下げたし、それ以上責めるのはやめにしよう。被害を被ったのがチームメイトという同情すべき状況でもあるし……」と、穏便に、ダメージが小さくなるよう収めた……という印象なのだ。
 アンサーJr.は、「トレイシーは1台をパスしようとターン11へと飛び込んでいったが、あれは攻撃的過ぎた。カストロネベスの場合は攻撃的過ぎはしなかった。オーバーテイクするつもりはなく、接近して追走していた」とも話したが、トレイシーはジェイムズ・ジェイクス(デイル・コイン・レーシング)をパスすべく彼のインサイドに突っ込み、勢い余ってシモーナに接触。トレイシーにはシモーナにぶつける気はゼロだった。そもそも、オーバーテイクの意思の有無がペナルティの基準にされるってのはおかしい。

 ヘアピンでのアタックは攻撃性過剰で、ターン1はオーバーテイク・ポイントだから許容されるってのもヘンだ。ヘアピンは抜けない場所なので油断して走ってオッケーってこと? それならレース中ずっとイエロー出すとかにすれば?
 パワーは上位フィニッシュができなくなった。その時の彼のドライビングには一切の問題もなかった。単純に、先輩チームメイトがブレーキングでコントロールを乱し、後ろからぶつかってきたアクシデントだった。被害が及んだのがチームメイトだったかどうかは、この際まったく関係ない。そして、ディクソンも非常に大きな被害を受けた。エリオの決定的なミスによって。複数のドライバーがダメージを受けた。アメリカって国はミスに対して寛大で、それは彼らの美点でもある。

アクシデントを意図してオーバーテイクをする選手はいない
 しかし、「仕方がない」と全部認めていたらミスが減ることはない。あの接触は重大なミスだった。そこにどんな意図があったか、あるいはなかったのかは取りざたされるべきじゃない。あのミスにはペナルティが課せられるべきだった。開幕戦に続く、3戦で2回目の重大ミスだったのだから。最もベテランの部類に入るドライバーが冒したミスという意味では、さらに厳格な対応が検討されるべきだったと思う。
 トップグループを走っていたって、ヘマをしたら後方集団に埋もれてのゴールになる。そんなのは当たり前だ。「上位フィニッシュができず、少ないポイントしか稼げなかったことが、もうそれ自体十分にペナルティ」なんて考え方は間違っている。そんなもんはまるでペナルティになどなっていない。
反省をしているというカストロネベスだが……。
Photo:INDYCAR(Dan Helrigel)
「チームメイトにぶつかりたいなんて誰も考えないよ。当然、あの接触も意図的じゃなかった。時間を戻せるなら、あんな愚かなミスを冒さないようにしたい」とカストロネベスは反省しきりだが、時間は戻せないし、愚かなミスによって大きな被害を受けたドライバーはチームメイトだけじゃなかった。
「ドライバーたちがどんな判断を下すか、我々はチェックを行い、記録をしている。エリオが今後も間違った判断を下し続けた場合には、何らかの行動を起こす」ともアンサーJr.は言っている。まさか自分のお世話になったチームのドライバーだから……というワケではないんだろうが、チーム・ペンスキーのドライバーたちに対しては対応も随分と寛容だ。「次のレースではカストロネベスのコースでの振る舞いをチェックする。3戦のうちの2戦でまずい選択を行なっている。それが我々の注意をひきつけた」とも彼は語ったが、走行マナーに関する記録っていうのは今年から始まったものなのか? 去年までのレコードを検討していたら、開幕戦のスタート直後の多重アクシデント発生で、カストロネベスにはすぐさまチェックが入ってよかった。

 回避可能だったアクシデントとレーシングアクシデントの線引きは難しい。それは重々承知しているつもりだが、今回のアンサーJr.の説明には、残念ながらまるで説得力がない。「私たちは、ロジャー・ペンスキーがカストロネベスと話した方が効果は大きいとも感じている」と、シリーズの取り組むべき大きな問題を、小さなチーム内の問題にすり替えている点にも首を傾げざるを得ない。

2 件のコメント:

  1. よく言えば臨機応変、悪く言えば優柔不断

    以前からインディはルールが曖昧でペナルティも、?ってこともよくあったと思います。
    この辺がシリーズとして一流になれないところだと思います。

    これはスポーツですから公正な判定をしてもらいたい。

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  2. ぜひ今度アンサージュニアに直接取材して
    真意を尋ねてほしいと思います。

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