2014年8月12日火曜日

2014 INDYCAR ニュース 8月10日:トニー・スチュワートがダート・トラックで死亡事故を起こす

7月27日、ブリックヤード400でのトニー・スチュワート。アンガー・マネジメントを受けて、このところ落ち着いてきているように見えたのだが… Photo:INDYCAR (Jim Haines)
あってはならない事故が発生
これはモータースポーツ・アクシデントと言えるのか?


 先週末にストック・カーのNASCARスプリント・カップはニュー・ヨーク州のロードコース、ワトキンス・グレンでレースを行った。その週末の土曜日の夜、近くにある全長0.5マイルのダート・トラックで開催されたスプリント・カーのレースにトニー・スチュワートは出場した。NASCARのトップ・カテゴリーで3回もチャンピオンになっている彼は、その前はIRLインディーカー・シリーズでもチャンピオンとなった実績を持っているが、元々はUSACのスプリント、ミジェットなどタイトル総なめにしたダート・トラックをルーツに持つドライバーで、ビッグ・レースの週末にも小さなコースでのレースに何度となく出場して来ていたのだ(去年はそういうレースで大ケガもしたが)。
 そのスチュワートがレース中にコース上を歩いていた選手を轢き、死亡させてしまった。なんで選手が歩いていたのかというと、事故を起こした相手に対する抗議が目的で、それはフルコース・コーション中のことだった。


 亡くなったのは地元ドライバーのケヴィン・ウォードJr.(20歳)。スチュワートとぶつかってクラッシュ。裏返しにストップしたマシンから降りて来たウォードJr.は、コース上を歩いてスチュワートに対して強く抗議するジェスチャーを見せていた。そして、怒り心頭のウォードJr.の近くに差し掛かったスチュワートがなぜかアクセル・オン。マシンはスライドしながら加速し、ウォードを轢いた。救急車で搬送された病院でウォードJr.の死亡は確認された。

 スチュワートに相手を傷つける気はなかっただろう。しかし、敢えて危険な行為=相手の至近距離でマシンをスライドさせる行動を取った事に疑いの余地はない。一部始終はビデオに録られていた。
 しかし、コースの地元のシェリフは、「レースのアクシデントとして調査中」であるとか、「スチュワート氏に対して、刑事的責任の存在が問われてはいない」などと発表していた。
 スチュワートがアクセルを踏んだことが証明されれば(ビデオでそれは明らかなのだが)、その意図が明らかにされる必要が出て来る。そして、それはおそらく我々が見て感じた通りに、ウォードJr.を脅かす、あるいは彼に泥を引っ掛けるという狙いによるものだったはずだ。これは、レースというスポーツの中で起きたアクシデントなどではないのでは?

 スチュワートは事情聴取を受けた後に解放されたことで、翌日のNASCARのレースに出場する意向だった。NASCARも「自分たちの主催していたレースではないし、スチュワートの今日の私たちのレースへの出場を拒む理由はまったく見当たらない」と言っていた。しかし、世間の強い逆風を察したのだろうか、180度の進路転換がなされ、スチュワートのレース出場は取り止められた。彼が予選を通過させたマシンは代役ドライバーによってレースを走ったが……。

 ネットではアメリカの法律専門家が、「最低でも第二級非謀殺人での逮捕、勾留をされる可能性がある。その場合の刑は禁固1~15年で、このケースではおそらく15年に近い方の数字になるだろう。“非謀”の言葉が取れて”第二級殺人”と判断される可能性すらある」とコメントしていた。

 コース上を歩き、走っているマシンに近づいて行ったウォードJr.の行動も褒められたものではない。そこに大きなリスクがあることは誰にでもわかる。しかし、抗議する相手を轢いてしまった例など聞いたことがない。あってはならない事故が発生してしまった。
以上

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