2017年6月26日月曜日

2017 INDYCARレポート 第10戦 コーラー・グランプリ・アット・ロードアメリカ Race Day 決勝:スコット・ディクソンが今季初勝利

ウイナーズ・サークルで喜びを爆発させるディクソン。ペンスキー勢を1台1台打ち負かして掴んだ今季初勝利だ Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大
ディクソン、ペンスキー軍団4台を向こうに回して優勝

 プラクティス2、プラクティス3、予選とトップ4をスウィープし続けたチーム・ペンスキーがレースでも上位を独占するかと思われたが、彼らは2、3、4、5位でフィニッシュ。トップだけを取り損ねた。栄冠をさらって行ったのは宿敵チップ・ガナッシ・レーシング・チームズのエース、スコット・ディクソンだった。もう今シーズンは後半戦に入っている。ディクソンは遅ればせながらの今季初勝利を飾ったわけだ。未勝利でもポイント・リーダーだった彼は53点を稼ぎ、ポイント・リードをレース前の13点から34点へと広げた。ランキング2番手は今季8回目のトップ5フィニッシュとなる4位で完走したシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)だ。

難敵パワーには激しいバトルの末、ピットタイミングを利用して先行
続くカストロネヴェスも2回目のピットでパス


 ロード・アメリカでのコーラー・グランプリは今シーズンのチャンピオン争いで重要なポイントになる。多くのドライバーとチームがそう考えていた。5度目のタイトルを狙うディクソンは、その点を強く意識していたのだろう、とてもしぶとい戦いぶりを見せた。

スタート直後、PPのカストロネヴェスがレースをリード。レイホールが激しいマニューバーで上位をうかがう Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大


 スタートで予選3位のシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)をディクソンがパスしたのは、相手が温まりの遅いブラックタイヤを履いていたからだった。最初の一人は難なくパスできたが、次が厄介だった。ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)だ。後輩チームメイトにスタートでパスされて機嫌を損ねたわけでもないのだろうが、今日はパワーのドライビングはラフになっていた。ディクソンは少なくとも2回コーナーで押し出された。アレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)、ジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)も同じ目に遭った。
 

Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大
 パワーの前に出るために、ディクソンは燃費セーブに作戦を切り替えた。そして、狙い通りに相手より1周多く走って1回目のピット・ストップへ。ピットからダッシュすると彼は抜きにくい相手の前にまんまと出ることに成功した。これで3番手。
 次はエリオ・カストロネヴェス(チーム・ペンスキー)。ポール・シッターだったが、ブラック・タイヤでのスピードが今ひとつでニューガーデンに抜かれ、2番手。その座を何とか維持していたが、ブラック・タイヤでのスティント中にディクソンは差を縮めた。そして、2回目のピット・ストップを終えたところでカストロネヴェスの前に出た。

レッドタイヤを利して、ニューガーデンをリスタートでアウトサイド・パス


ディクソンは31周目のターン1でニューガーデンをパスしてトップに浮上。ニューガーデンは一度カストロネヴェスにも先行されるが巻き返し、ディクソン追撃態勢を整える Photo:INDYCAR (Joe Skibinski) クリックして拡大

 残るのはニューガーデンのみ。ディクソンが彼からトップを奪ったのは、55周のレースの31周目だった。リスタート後のターン1でニューガーデンを仕留めた。ここでレッド・タイヤを履いていたことが今日の大きなポイントになった。逆に、ニューガーデンはこのタイミングでブラック装着だったため、グリップをフルに発揮するまでに長い時間が必要で、ポジションを譲らねばならなかった。
 レース終盤、トニー・カナーン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)のクラッシュでフル・コース・コーションが出され、残り7周でリスタートが切られたが、ここでディクソンはベテランの味を発揮し、ニューガーデンを巧みに突き放した。この時はトップ5全員が新品のレッドを装着していたが、ディクソンは1周で1.5秒ものリードを築き上げた。その後の3周でニューガーデンに差を縮められたものの、残3周となってからディクソンは逆にリードを広げ、0.5779秒差をつけてチェッカード・フラッグを受けた。

今季初勝利を喜ぶディクソン「作戦が的確だった」
 「今日は思い切りハードに戦った。運も味方してくれたが、作戦が的確だったことが一番の勝因だろう。クルーたちが素晴らしいピット作業をしてくれた。そして、ホンダの頑張りにも深く感謝する。パワーを引き出しながら燃費も良くするのは大変だが、それを達成している。今年は開幕からスピードも安定感もあるのに、不運に見舞われ続けた。ダブル・ポイントのインディでほぼ最後尾という結果にもなった。本当なら、もう2、3勝していておかしくなかった。今日、やっと勝てて嬉しい。今シーズン、あと2、3勝したいところだ」とウィナーのディクソンは語った。

「イエローが出ていなければ……」悔しがるニューガーデン
 ニューガーデンはチーム・ペンスキーの最上位となる2位でフィニッシュした。敗因は第3スティントでもブラック・タイヤを履いていたことか? レッドのディクソンにトップを奪われたのだから、そう言えないこともないのだが、彼はその作戦を使ってチーム内の最上位を手にした。彼は第2、第3スティントと連続してブラック・タイヤをチョイスしていた。
 

終盤、じわじわとディクソンに迫り、プレッシャーをかけたニューガーデンだったがアタックするまでには至らず Photo:INDYCAR (Matt Fraver) クリックして拡大
 「2位は悔しい。あと少しだったから尚更だ。我々の作戦は間違っていなかったと思う。自分たちの考えていた通りに、常にトップを争うレースを戦えていた。今日はイエローの出るタイミングが自分たちに合っていなかった。そして、今日はディクソンとガナッシ・チームが強力だった。マシンの仕上がり具合の良さを考えると、今日勝てなかったのは非常に悔しい。あのイエローが出ず、トップを保てていたら、今日は勝てていたかもしれない」とニューガーデンは話した。
佐藤琢磨、超高速コーナーでコースアウト 
 
日本でのインディー500優勝メディアツアーでテストに参加できなかったことも影響し、苦しいレースとなった琢磨 Photo:INDYCAR (Mike Harding)クリックして拡大

  佐藤琢磨は首の痛みで朝のウォーム・アップを走らず。レースでは29周目、ピット・ストップからのアウト・ラップでタイヤの内圧が上がらず、超高速コーナーで飛び出してガード・レールにヒット。しかし、エンジンを再始動してピットに戻ることができ、ダメージを負ったマシンながら1ラップ・ダウンでゴールまで走り切り、19位。ランキングはカストロネヴェスに抜かれて4番手にひとつ後退した。トップとディクソンとは56点差だ。
以上

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