2023年2月3日金曜日

2023 INDYCARレポート 2月2日:インディーカー・テスト1日目

ザ・サーマル・クラブのコースを疾走するチップ・ガナッシのルーキー、マーカス・アームストロング Photo:Penske Entertainment (Chris Jones)クリックして拡大

会員制コース、ザ・サーマル・クラブで
2日間のスプリング・トレーニングがスタート


 カリフォルニア州内陸部のパーム・スプリングス近郊にあるサーマルという砂漠の中の町。そこに造られたのがザ・サーマル・クラブという会員制レーシング・コースで、今日から2日間のNTT・シリーズ・スプリング・トレーニング(合同テスト)が行われます。
 ここのメンバーになるにはクラブ内の敷地か住宅を買わないとならないそうで、コースサイドには超・豪華な住宅が建ち並んでいて、建設中のものも幾つか見えました。ただのガレージ付きではなく、何台もクルマを停めることができる大きなガレージを備えた家が多く、2階のテラスからコースが見えるところもありました。販売されている物件をネットで見たら、500万ドルとか、それ以上のものまで並んでいました。

今回のコースレイアウト。やたらくねくねした印象だ クリックして拡大

多彩なレイアウトがチョイスできるザ・サーマル・クラブ
今回は全27台が全長2.9km、17コーナーのコースを走行


 ザ・サーマル・クラブのコースは多くのレイアウトが採用できるようデザインされています。インディーカーはその中から全長2.9マイルに17のコーナーを持つレイアウトを使うこととしました。そこにフル・シーズン参戦を行う27台すべてが集結。2日間のメディア・デイの後にテストは華々しくスタートしました。天候も前日までより明らかに向上、日中の気温がようやくカリフォルニアっぽいレヴェルまで上がって来ました。

セッション1でトップに立ったのはハータ
AA新加入のカークウッドが僅差の2番手タイム

午前、午後ともにハータがトップタイムをマーク Photo:Penske Entertainment (James Black)クリックして拡大


 最初のテスト・セッションは午前9時開始で11時30分までで、セッション2は午後1時30分から4時まで。4時からはピット・ストップの練習が30分間行われました。
 開始時の気温は11℃と低く、路面へのタイヤ・ラバーが乗って来るまでには少々時間がかかりましたが、コルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジェニアン/ホンダ)が最速ラップ=1分39秒9303をマークしました。彼は午後のセッション2でも1分39秒3721のトップ・タイムを記録して見せました。アンドレッティ・オートスポートとハータが今シーズンは大活躍する……ということなのでしょうか?
ハータ二世が走った周回数は、午前中が19周、午後は23周でした。

オートネイションのピンクのカラースキームを受け継いだカークウッドが快走する Photo:Penske Entertainment (Joe Skibinski) クリックして拡大

 セッション1で2番手につけたのは、今年からアンドレッティ・オートスポートで走ることとなったインディーカー2年目のカイル・カークウッド(アンドレッティ・オートスポート/ホンダ)でした。アロウ・マクラーレンに移籍したアレクサンダー・ロッシのシートに納まったのが、2021年のインディー・ネクスト(当時はインディー・ライツで、今シーズンから新名称に)・チャンピオン。彼はインディーカーへのデビュー・シーズンをAJ・フォイト・エンタープライゼスで過ごし、インディーカ・ネクストを一緒い戦ったアンドレッティ・オートスポートに戻って来ました。彼のベスト・タイムは1分40秒0236で、先輩チームメイトのハータとの差は僅かに0.00933秒という好パフォーマンスでした。午後はクラッチ・トラブルのために1周しか走ることができなかったカークウッドですが、シーズン最初のセッションでアンドレッティ勢が1−2を占めた、ということです。

3番手にはパジェノーがつけ、実質的にアンドレッティが1-2-3
シヴォレー最上位は4番手につけたヴィーケイ
ニューガーデン、パワーが5、6番手につける


 セッション1の3番手には2016年インディーカー・チャンピオンのシモン・パジェノー(メイヤー・シャンク・レーシング/ホンダ)が来ました。タイムはハータと0.185秒差の1分40秒1178。MSRのエンジニアリングはアンドレッティ・オートスポートが請け負っていますから、このホンダ勢によるトップ3独占はアンドレッティによる1ー2−3と考えてもいいでしょう。

カラースキームを一新したヴィーケイが午前中のセッションでシヴォレー勢トップに Photo:Penske Entertainment (Chris Jones)クリックして拡大

 セッション1の4番手は2020年インディーカー・ルーキー・オヴ・ザ・イヤーのリヌス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング/シヴォレー)による1分40秒1913でした。そして、5番手には2017、2019年チャンピオンのジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー/シヴォレー)が1分40秒2062でつけました。

ニューガーデンとローゼンクヴィスト Photo:Penske Entertainment(Chris Jones) クリックして拡大

 セッション1の6番手は2014年と昨年のチャンピオンであるウィル・パワー(チーム・ペンスキー/シヴォレー)。ラップ・タイムは1分40秒3527でした。そして、7番手はロマイン・グロジャン(アンドレッティ・オートスポート/ホンダ)=1分40秒3810。

ルーキー最速はチップ・ガナッシのマーカス・アームストロング!
ディクソン、パロウ、エリクソンを抑えての8番手タイム


Photo:Penske Entertainment (James Black) クリックして拡大

 8番手はルーキー最速ともなったマーカス・アームストロング(チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ)による1分40秒5302でした。ルーキーには1セット多いタイヤ・セットが供給されるとはいえ、いきなりチーム最速となり、セッション・トップだったハータとの差も0.5999秒という目覚ましいラップ・タイムを叩き出したアームストロングは、ポテンシャルの高さを見せたと言っていいでしょう。彼は午後のセッション2でも10番手に食い込んでいました。
 セッション1の9番手は6度のタイトル獲得経験を誇るスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ)=1分40秒5930で、10番手はジャック・ハーヴィー(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング/ホンダ)=1分40秒6046でした。
 セッション1ではトップ5が0.3秒、トップ7が0.5秒の中に収まっていました。

 セッション1の最多ラップはルーキーのスティング・レイ・ロブ(デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR)による32周で、6周と一番走らなかったのがパト・オーワード(アロウ・マクラーレン/シヴォレー)の6周。ロブは24番手、オーワードは14番手という成績でした。

全チームが本格的に走りこんだ午後のセッションもハータが首位
2位はルンガー、3位にはパロウ
マクラーレンは1台もトップ10に入れず


 セッション2では前述の通りにハータがトップで、2番手には昨年のルーキー・オヴ・ザ・イヤー=クリスチャン・ルンドガールド(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング/ホンダ)がつけました。彼のベストはハータに0.0046秒差まで迫る1分
39秒3767でした。
 全チームがより本格的に走り込んでいたセッション2では競争が激化。トップから0.3秒以内に7人がひしめき、0.5秒の中に9人が入っていました。

移籍を巡ってのチームとのトラブルも解消し、インディーカーに集中すると語るパロウ。午後のセッションで3番手タイム Photo:Penske Entertainment (Chris Jones)クリックして拡大

 セッション2の3番手は2021年インディーカー・チャンピオンのアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ)で、彼のベストはハータと0.0249秒、ルンドガールドと0.0203秒の差しかありまえせんでした。同4番手はロマイン・グロジャン(アンドレッティ・オートスポート/ホンダ)の1分39秒4826。5番手以下にはパワー、ディクソン、カルーム・アイロット(フンコス・ホリンジャー・レーシング/シヴォレー)、スコット・マクロクリン(チーム・ペンスキー/シヴォレー)、パジェノー、アームストロングと続いていました。

ザック・ブラウンにマシンの状況を説明するオーワード。一気にトップチームへと駆け上がると目される今年のマクラーレンだが、テスト初日は不発 Photo:Penske Entertainment (Chris Jones)クリックして拡大

 ロッシを加えた3カーに拡大したアロウ・マクラーレン/シヴォレーは、意外にもテスト初日の2セッションで誰もトップ10入りを果たせませんでした。
 インディーカー2年目のデヴリン・デフランチェスコ(アンドレッティ・スタインブレナー・オートスポート/ホンダ)とデイヴィッド・マルーカス(デイル・コイン・レーシング・ウィズHMD/ホンダ)は健闘しましたが、ポジションはセッション2での13、14番手とトップ10入りは叶いませんでした。セッション1、2ともにチーム最上位はパト・オーワードでしたが、ポジションは14番手と15番手でした。

 今日は朝から空はずっと快晴で、セッション1終了時の気温は20℃でした。最高気温となった21℃は午後1時に記録され、その時の路面温度は33℃に達していました。セッション2の後半には路面温度が降下。走行終了時の気温は21℃に保たれていましたが、路面は27℃まで下がっていました。


トップタイムのハータはあくまで冷静
「評価を下すにはまだまだ早い。ここのコーナーは
シーズン中にレースを戦うどこのコースとも似ていない」


Photo:Penske Entertainment (Joe Skibinski) クリックして拡大

 両セッションでトップだったハータは、「今日は今年の走行1日目。いろいろ評価を下すにはまだまだ早い。開幕戦のセイント・ピーターズバーグに行ったら勢力図がガラリと変わっているというは十分に起こり得る。今日はドライヴァーたちにとって本当に久しぶりのインディーカーでの走行で、周回を重ねることでチームが一緒に働く時間を過ごした、といったところだと思う」とコメントし、コースの印象は、「実際にザ・サーマル・クラブを走ってみて、ここのコーナーはシーズン中にレースを戦うどのコースのどのコーナーにも似ていないと改めて確認された。今日までのところ、少なくとも自分はそう感じている。コースの路面も奇妙だった。インディーカーで走るどのコースとも違っていた。7つのコーナーは1速ギヤで回るもの。インディーカーのストリート・コースにもそこまでの数のファースト・ギヤ・コーナーはない。自然の地形を利用したロードコースとして、かなりスピードの低いコースでもある。しかし、コースに不満を言いたいのではない。ドライヴしていて楽しいコースであるのは間違いないのだから。特にコースの奥の方がおもしろい。ここでレースをすることになったら、タイヤの摩耗が勝敗の鍵を握ることになるだろう。オーヴァーテイクは難しいと思う。高速コーナーの後にブレーキング・ゾーンが多く、前を行くマシンに接近したまま走るのは難しいだろう。とは言うものの、本当にどうなるかは実際にレースをしてみなければわからない。インディーカーのカレンダーにはレースに全然向いていないと考えられるコースもあるけれど、それでもインディーカーがファンが見て楽しいレースを実現して来ている」と話しました。

初日の最多ラップはスティング・レイ・ロブ

精力的に走りこんだデイル・コイン・ウィズ・リック・ウェア・レーシングのルーキー、スティング・レイ・ロブ。サイドポンツーンにメインスポンサーのロゴがないのが気がかりPhoto:Penske Entertainment (Chris Jones)クリックして拡大

 今日の最多ラップはルーキーのロブによる63周。彼のチームメイトのマルーカスが55周で、パワーとニューガーデンも50周と多くのラップを重ねていました。

順調にテスト初日を終えたディクソン Photo:Penske Entertainment (James BLack) クリックして拡大

 両セッションでトップ10入りを果たしたドライヴァーとしてハータとアームストロングを先に挙げましたが、彼らの他にもグロジャン(7番手/4番手)、パワー(6番手/5番手)、ディクソン(9番手/6番手)、パジェノー(3番手/9番手)がいました。アンドレッティ・オートスポート(メイヤー・シャンク・レーシング含め)とチップ・ガナッシ・レーシングがとても良い滑り出しを見せたと言えるでしょう。ディフェンディング・チャンピオンのパワーは速さを見せた上に多くのラップもこなし、2年連続、3回目のタイトルに向けたモーティヴェイションの高さを感じさせました。さらに、ディクソンやパジェノーといったヴェテランもテスト初日からいい感じでプッシュができている印象でした。
以上


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