2011年3月27日日曜日

2011 INDYCARシリーズ 解説—ピットでの燃料補給を安全にするシステム「リフューエリング・セイフティ・インターロック・システム」

今年から全マシンに装備される燃料供給安全システム
 アメリカン・ホンダとホンダ・パフォーマンス・デベロップメント(HPD)は、インディカー・レースの安全性を高める「リフューエリング・セイフティ・インターロック・システム」の開発を完了し、今年の開幕戦から導入する。

 このシステムが出場全マシンに装備されることにより、ピットでの火災や、マシン火災、そしてピット・クルーたちの怪我はかなりの確率で防がれることになるはずだ。インディカーは燃料補給ホースが外れないうちにピット・ボックスから発進することができなくなるからである。
 燃料ホースがマシンの給油口に繋がった状態でマシンが急発進すると、ホースが引きちぎられて燃料が撒き散らされる。これまでに多くの火災が、そのようにして起きてきた。燃料補給は少し前まではふたりが担当していたが、クルーの周囲への視認性を高めて安全を向上させようと、近年では燃料補給装置に改善がなされ、担当はひとりに減らされていた。
Photo: INDYCAR(Ron McQueeney)

 しかし、依然として彼らフューエル担当クルーは危険に身をさらしていた。燃料ホースがサッと抜けなかった場合に、マシンの後輪に轢かれる、あるいは、マシンに跳ね飛ばされてピットロードに叩きつけられる可能性は、依然として残されていたのだ。
 2008年、アメリカン・ル・マン・シリーズのレース中にピット火災が発生し、クルーのひとりが全身にやけどした。HPDは翌2009年にINDYCARやスポーツカー耐久レースで使えるシステムの開発に着手した。

 彼らが作り上げたのは、フューエル・プローブと呼ばれるマシン側の給油口部分にセンサーを装備してエンジン・コントロール・ユニット内のギヤボックス・コントロール・ユニットに繋げるもので、ピット・レーン上のマシンに燃料ホースのノズルが挿入されている限り、ドライバーがギヤ・チェンジ用のパドルを操作してもギヤボックスはニュートラルにとどまり続ける。ホースが完全に外れない限り、1速ギアが繋がって発進をすることが不可能とするものだ。
 これをHPDは2009年、2010年シーズンの間に、出場チームに依頼してプラクティス中やテスト時などに装着してもらい、データを集めて完成を急いでいた。開幕を目の前にした3月中旬、バーバー・モータースポーツ・パークで行なわれたオープン・テストで、HPDは集まった全チームのマシンに新システムを提供、チームに対するレクチャーを行ない、一斉導入される開幕戦の前に彼らに十分な理解をしてもらうことに努めていた。

 2004年シーズンを終えたところでシボレーとトヨタが撤退し、インディカー・シリーズはホンダ・エンジンのワンメイクとなった。エンジン・メーカー間の開発競争が姿を消したのだ。そこからのホンダは、エンジン・トラブルを一掃すべく信頼性の向上を目指し、同時にレースのクォリティやエンターテインメント性の向上などにも力を注いできた。そして今回、彼らはリフューエリング・セイフティ・インターロック・システムを完成し、レースの安全確保に大きく寄与することとなった。

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