2015年7月2日木曜日

2015 INDYCAR レポート R11 MAVTV500 レースレビュー:パック・レーシングについて読者の反響にお答えします!

自らラインを下げたことが琢磨を巻き込むアクシデントの引き金となってしまったパワー。しかし彼のその怒りの矛先は琢磨に向いていたのではないはずだ Photo:INDYCAR (Chris Jones) クリックして拡大
二度とやらないはずだったパックレーシングだが
 
 佐藤琢磨選手が大活躍したMV TV500、ファンの皆さんからのレスポンスが素晴らしく、琢磨選手のコメントには多くのコメントも頂きました。ありがとうございました。
 皆さんはあの“パック・レーシング”をどう感じたでしょうか?


 「二度とコレはやらない約束だっただろう」というのが多くのインディーカー関係者のレース後の意見でした。“コレ”とは勿論、パック・レーシングです。大ダウンフォースで安定感バッチリのマシンで戦うパック・レーシングでは、スキルの重要度が大幅に下がり、しかも接近し過ぎているためにひとつの事故が大きなものに発展し易いのです。当然、ドライバーたちの危険度は高まり、スタンドにいるファンだってアブナイ目に遭う確率が増えます。見た目は確かにエキサイティングなんですが、リスクが大き過ぎる、というのが本当のところでしょう。いくらホイール・ガードを装着するようになったとはいえ、インディーカーにとっては危険に過ぎるレース形態と言えます。

琢磨に向けてではないウィル・パワーの怒り

 ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が琢磨選手との接触&クラッシュの後にステアリングを放り投げ、怒りを爆発させていました。アレは琢磨選手に対しての怒りではなく、パック・レーシングに対して、それを再び行なわせたインディーカーに対しての怒りだったと思います。ニュー・ハンプシャーの1マイル・オーバルで雨が降っているのにグリーン・フラッグを降った、愚かな競技長=BB氏への強い抗議の気持ちから両手の中指を立ててしまったのと状況は同じです。
 2011年のラス・ヴェガスでの事故ではダン・ウェルドンが亡くなり、パワーも背骨に大きな負傷をしました。そんな彼だけに、「パック・レーシングは二度と御免」という意識を強く持つているんです。ちなみに、アクシデント直後のセイフティー・クルーに対する態度はインディーカーによって「不適切」と判断され、25,000ドルの罰金と今シーズンいっぱいの監察処分がパワーには言い渡されています。

優勝を逃したことは実に残念

 皆さんが感じられた通り、あのアクシデントはパワーがラインを大きく下げたことが原因だった。私もそう考えています。スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)も少しだけラインを上げてたかもしれません。琢磨選手とすれば、あの直前にサイドウェイになったマシンを見事に建て直し、スピードもそんなに落っことさずに3ワイドを作っておきながら……間に挟まれて何もできない状況に陥ってました。リスクの重要度が低いとは言うものの、マシンのセッティングに善し悪しは間違いなく存在し、琢磨選手のそれは出場23台の中でベストか、それに近いものになっていた。あのアクシデントが起こるまでは、ギリギリのところでマシンを操ってのバトル&オーバーテイクを繰り返していた。しかも、タイヤを気遣って、コクピット内のツールを駆使して戦っていた。だからこそ彼は二度、三度の猛チャージが可能だったワケで……優勝できなかったのは実に残念です。ただ、もし勝てていたら、その場合は少々ビミョーな心持ちになっていたでしょうね。怪我人が出なかったのは大きな救いでした。マシンは何台かが大破しましたが。

またしても琢磨と当たってしまったカラム。意図的だったのか??

 セイジ・カラム(チップ・ガナッシ・レーシング)が琢磨選手に二度ぶつかった件は、彼に反省してもらわないと困ります。ただ、インディーカーによる超接近戦は彼にとって初めての体験で、もう皆さん御存知の通りに向こう見ずな若者ですから、大胆さが表に出過ぎ、マシンを完全に制御下に置けていなかった。だから、あちらこちらにぶつかっちゃったってのでしょう。誰かに故意に接触していた、というコトは絶対にないと思います。レース中に彼に対し、「危険なドライビング」とオフィシャルから警告が出されることもありませんでした。




レースの最後も、ブリスコーとハンター‐レイのクラッシュでイエロー・フィニッシュに Photo:INDYCAR (Chris Jones)   クリックして拡大
 インディー500でぶつかった琢磨選手とカラム、彼らがフォンタナで2回も接触したのは、同じようなポジションで争い続けていたからでしょう。カラムは最終的に5位でゴールしました。今回のレースでは琢磨選手の走りが際立っていて、それは誰の目にも明らかだったので、カラムとしては琢磨選手について行くこと、あるいは近くにポジショニングすることで上位を目指していたのかもしれません。
 AJ・フォイト・エンタープライゼス&琢磨選手としては、インディーカーに今回の件をキッチリと理論的に説明し、インディーカーが行うべきチェックを彼らにバッチリとやってもらう必要があります。AJがガツーン! と言ってくれればいいんですが、今はラリーが指揮を任されているので、彼がこの件はキッチリやらないといけませんね。

納得できないレイホールのお金によるペナルティ
 グレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)の優勝に水を差す気は……少しだけあります。あの給油作業によるミス(フューエル・ホースの先端危惧をつけたままピット・アウト。その部品をコース上に落としてイエローの原因を作る)は絶対にペナルティの対象となるべきだったと思うからです。罰金は10,000ドルと高めですが、このうち5,000ドルは保留っていうのがまた意味不明。担当クルーも3レースに渡って監察処分とされますが、ピットでのミスはレース後の審議でペナルティ決定……というのが完全にセオリーになって行くんでしょうかねぇ? ペナルティがお金によるものばかりになると、違反行為が軽んじらるようになりそうで心配です。レイホールは燃料をピット・ロード上にドバーッと撒いちゃったんだから、他のコンペティターを危険に晒したって点からも重いペナルティを即座に受けるべきだったと思います。あぁいうのが二度と起こらぬようにクルーやチームが気をつけるよう罰を重くしておく
……のが手だと思います。

マニュファクチャラー・ポイントはどーなっているのか??

 
 フォンタナでシボレーは60点のボーナス(エンジンが2,500マイルを交換ナシで走破)をゲット。パワー、セバスチャン・ブルデイ(KVSHレーシング)、カラム、スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)、トニー・カナーン(チップ・ガナッシ・レーシング)、チャーリー・キンボール(チップ・ガナッシ・レーシング)のエンジンで達成。
 ホンダもフォンタナで同じボーナスとして30点を獲得。こちらはシュミット・ピーターソン・モータースポーツの5号車、レイホール、ギャビー・シャベス(BHAウィズ・カーブ・アガジェニアン)のエンジンで。
 しかーし、シボレーもホンダもフォンタナでは60点の減点もされていた(!) 上記とは反対で、2,500マイルに届かずに壊れてしまったエンジンがあったためだ。それらは、シボレーがファン・パブロ・モントーヤ、エリオ・カストロネヴェス、ステファノ・コレッティ(KVレーシング・テクノロジー)の3台。ホンダはジェイムズ・ジェイクス(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)、佐藤琢磨(AJ・フォイト・エンタープライゼス)、ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)だ。
 この結果、シボレーは1,108点、ホンダは921点となって、11戦8勝中のシボレーがリード。ホンダはフォンタナで3勝目を挙げたが、今後更に勝ち星を増やして行けるか??
以上

4 件のコメント:

  1. ジャック天野さん。忙しいのにわざわざありがとうございます。
    パワーの件はそうだったのですか‼映像からすると琢磨選手に向かって怒りをぶつけに行ったのか。と思ってしまいました。
    レース後のインタビューでも怒りが冷めやらぬ感じでしたし…。でも、パワーが誰に対して怒っていたのかが分かったのは良かったです。
    カラムにかんしては故意なのか?そうでないのか?は本人の心の中に聞かないと分かりませんね。
    これからも琢磨選手とはコース上で順位争いをする事は多いと思うので、もしまた接触なんて有ったら、もう故意と認定しても良いんじゃないかと思いますね…。
    もし何かがあってからでは遅いので、AJフォイトチームとしてちゃんとチップガナシーに抗議をしてほしいですよね。

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  2. アマノさん、追加情報ありがとうございます。
    私、先日初めてコメントさせて頂いた者ですが、興奮の余りそれを書くことを忘れていました。
    今回のパック・レーシングをどう感じたか?
    一言で言えば、近年になくエキサイティングでした。
    個人的には、琢磨選手が勝てそうだったこともありますが、オーバルでは2012年のINDY500以来の大興奮でした。
    リードチェンジも頻繁にあり、やってる方は大変でしょうが、観てる方は最後まで先が読めない、手に汗握る展開だったと思います。

    ただ、面白かっただけに、残念だったのは、最終的には暴れた者勝ちみたいな終わり方に感じたことでした。
    ウィナーのレイホール、5位のカラムは、両者とも相当暴れまくってて、色々やっつけちゃってたように見えたので、ちょっと暴れ過ぎじゃないかと。

    今回のフォンタナ戦は、テキサスの反省から、ダウンフォースもグリップも増える仕様になり、それが行き過ぎちゃったんですよね。
    それが暴れやすい原因にもなったんだと思うし、あの終盤の20台ダンゴ状態とかはさすがに異常に感じたので、あんな超過密状態で誰もが好き勝手にブンブン振り回せない程度に、運営側の適切なコントロールが必要なのかなって思いました。

    それが出来れば、ある程度のパック・レーシングは歓迎したいです。

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  3. 今回のパック・レーシングについては、「エキサイティング」と「危険すぎる」の2つが率直な感想です。

    これほど大迫力なレースになるとは予測もできませんでしたが、同時に「こんなレースを何度も行っていたらいずれ大変な事が起こるのではないか」とも感じました。

    終盤の2回のイエローは「運良く」誰も怪我をしなかっただけで、最悪の事態も十分に有り得たように見えました。

    もちろん、インディー500でも「大変な事が起こりかねない」と思いながら見ていますが、今回は「危険」の密度が高いというか恐ろしさのレベルが桁違いでした。

    「危険すぎる」という部分を完全に除外して考えれば、近年では「最もエキサイティングで物凄い迫力」のレースだったとも思います。

    危険すぎるが故にそうなったのであれば残念な事ではありますが。

    今回は夜開催から昼開催に変わったことで、運営側のダウンフォースの読み違いによるイレギュラーな展開だったのかもしれませんが、「こんなレースは駄目だ」「これがレースだ」のような両方の意見がチームやドライバーから聞こえてくるので、今後どのようになっていくのか判りませんが、バランスを取らなければならない運営側の舵取りは非常に難しそうですね。

    セイジ・カラムの件については、彼はインディー500の件で感情的になっていて接近するとどうしても強引なドライブになってしまい、その結果が「接触」となっているのかもしれませんね。

    とは言え、インディー500接触後のピットへの怒鳴り込みとその際の「今後に意図的な接触事故を起こすことを予告するとも受け取れる暴言」、その後のペナルティーとなった悪質なブロック行為、今回の2度の接触、偶然とは言い難いのも事実です。

    また同じ事が起こってレースが台無しになるのは見たくないですし、インディーカー側にこれまでの詳細を伝えてチェックを強化して欲しいですね。

    現地では「因縁の2人」のような実況もあるようですが、カラムとのクリーンなバトルが見れたらその時は白熱するでしょうし素晴らしいと思います。

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  4. ひろっさん2015年7月5日 23:52

    天野さん
    いつも、テレビでは伝えきれない情報を伝えていただきありがとうございます。

    今回のレースは、とても酷いレースだったと思います。
    結果的に怪我人は出てませんが見てて楽しいレースでは無かったです。

    ダンの事故を見た事がある方それは解ると思います。
    命懸けのリスクが高すぎるし、それをエキサイティングとは言わないと思います。
    個人的にはここまでハイリスクなコースでの開催は望まないです。


    カラムに関してですが確かに琢磨さんとの因縁感はありますが、単純にカラムはオーバルでの走りは経験不足と言えますね。
    ハンターレイとブリスコーの事故はカラムがハンターレイ側に降りすぎて来たのがきっかけとでしたしチーム側にしっかり教育していただきたいですね!

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