2022年9月12日月曜日

2022 INDYCARレポート R17 ファイアストン・グランプリ・オヴ・モントレー Race Day 決勝:最終戦で勝ったのはアレックス・パロウ。チャンピオンはウィル・パワー

ディフェンディングチャンピオンのパロウ、最終戦で快走しようやくシーズン初勝利を挙げる。契約問題で揺れるパロウにとって、この勝利は今度彼の動向にどんな影響を与えるのだろうか? hoto:Penske Entertainment クリックして拡大

 6グリッド降格のハンデをものともせず!
パロウ、16周目でトップに浮上

 予選5位だったが、エンジン交換のペナルティによって11番手グリッドからスタートしたアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)は、ファースト・スティントで錚々たるライヴァルたちを次々とパスして行った。1周目でシモン・パジェノー(メイヤー・シャンク・レーシング)、マーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)、フェリックス・ローゼンクヴィスト(アロウ・マクラーレンSP)の3人を抜き、その後にはスコット・マクロクリン(チーム・ペンスキー)、デイヴィッド・マルーカス(デイル・コイン・レーシング・ウィズHMD)を攻略した。アレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)とパト・オーワード(アロウ・マクラーレンSP)が早目のピット・ストップを行ったため、パロウは14周目にはトップ3入りを果たし、ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)とカルーム・アイロット(フンコス・ホリンジャー・レーシング)も彼より先にピット・インしたため、16周目にトップに躍り出た。

4周目にマクロクリンをパスして7位に浮上するパロウ。ここから12周で一気にトップに浮上。そこから重ねたリードラップはトータル67周! Photo:Penske Entertainment (James Black)クリックして拡大

驚異的なペースを最後まで維持して
後続を30秒以上突き放す独走で今季初勝利

 パロウのチームメイトたちは4ストップ作戦を採用していたが、彼だけはオーソドックスな3ストップとなった。それは彼のマシンにスピードがあることが序盤にして明らかになったからだ。この作戦が見事に中、ライヴァル勢を30秒以上も突き放してチェッカード・フラッグを受けた。チームとの契約でトラブルに陥ったが、最終戦でシーズン初勝利を掴んだ。これが彼の将来のために良い影響を与えればよいのだが……。

「驚くほどマシンは安定していて
レースの上を走っっているようだった」


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 「最終戦が厳しい戦いになるのは、ラグナセカ入りする前からわかっていた。事前テストをしたが、自分たちはレースウィークエンドが始まっても良いセッションと悪いセッションの両方があるぐらいで、パフォーマンスが安定していなかった。しかし、今朝のウォームアップで僕らは一気に良くなった。僕は自分のマシンに対して”スーパー・ハッピー”になった。しかし、エンジン・ペナルティがあるので、マシンが良くなってもレースは難しいだろうと見ていた。最初のスティントはかなり大変だろうと予想していた。ところが、自分でも驚くほどマシンは安定していた。正直な話、レールの上を走っているぐらいに感じた。ポートランドや、最近のそのほかのレースのようにタイヤのデグラデーションで苦しむこともなかった」とパロウは彼らしい笑顔でレースを振り返った。

驚異的なチャージを見せたニューガーデンだがパロウには届かず
「ここまで順位を上げることができた自分たちは満足している
来年はもっと安定感を高めなければダメだとも思う」

 
予選最後尾からスタートしたニューガーデンは難所のコークスクリューで鋭いマニューバーを見せオーバーテイクを重ねていった Photo:Penske Entertainment (James Black)クリックして拡大

 2位でゴールしたのはジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)。ポイント・リーダーのウィル・パワー(チーム・ペンスキー)とは20点差。しかし、予選でスピン&スタックという大きなミスを冒し、スタート・ポジションは26台中の25番手となった。そんな逆境を跳ね返し、ニューガーデンは2位まで上がってきた。パロウが今日ほどのスピードを手にしていなかったら、ニューガーデンは最後尾から優勝していた。驚異的チャージだった。それでも彼はチャンピオンにはなれなかった。パワーがタイトルだけに照準を絞り込んだ完璧な走りを続けて3位でゴールしたのだ。
 「全力を注ぎ込んで目標達成を目指した。今日はパロウが速かった。信じられないほどに。最終2スティント(ニューガーデンは4ストップだった)でのスピードは凄まじかった。驚くべき走りだった」とニューガーデンは完敗を認めていた。
 自分より前のグリッドからスタートした23台をパスしたが、1台だけ抜けなかった。そして、逆転タイトルも実現しなかった。

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「ポール・ポジションからスタートできていたら話は全然違っていただろう。大きな差を跳ね返すような戦いはしなくて済んだのだから。しかし、仮にそうできていたとしても、レースとシーズンの結果がどうなっていたかはわからない。パロウより前でゴールすることは今日と同じように難しかったかもしれないし、勝っていてもパワーが4位以下に沈まなければタイトルは彼のものになっていたんだから。それでも、ここまで順位を上げることができた自分たちのレースに関しては満足している。最終的にチャンピオンにはなれなかったけれどね。来年は今年とは違うポジションにつけて最終戦を迎えたい。自分たちにはそれができると思う。来年はもっと安定感を高めないとダメだとも思う」とニューガーデンは語った。

パワー、3位入賞でシリーズチャンピオンを獲得
「長期的視野をもって戦うことをやり通し
チャンピオンになった今、大きな達成感を感じている」

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 二度目のタイトルを獲得するために3位が必要だったパワーが、3位でゴールして2022年のシリーズ・チャンピオンとなった。彼はデトロイトでの1勝のみでタイトルを手に入れた。ランキング2位となったニューガーデンは5勝、ランキング3位のディクソンは2勝、ペンスキーの若いチームメイトでランキング4位に食い込んだスコット・マクロクリンは3勝、ランキング7位のパト・オーワード(アロウ・マクラーレンSP)も2勝を挙げたシーズンに、1勝のみのパワーが頂点に立った。

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 「表彰台が9回。強力なリザルトだ。安定性こそが重要。今シーズンは最初からそう考え、行動し続けてきた。チャンピオンになるには長期的視野を持って戦わなくてはいけない。それをやり通し、チャンピオンになった今、大きな達成感、満足感を感じている。今朝は朝3時前に目覚めてしまったり、緊張をしていた。ものすごくストレスのかかった1日になっていた。もちろんナーヴァスになっていた。しかし、それは激しい戦いを行うアスリートにとっては必要なものなんだ。レースを通してもストレスは大きかった。それでも自分はできる限りドライヴィングにフォーカスし続けた。現在のシリーズのベスト2人、ディクソンとニューガーデンを倒してのタイトルというのも自分に大きな喜びを与えてくれている。少し前だったら、チームメイトが勝って自分は4位とかだったら怒りまくっていた。今年は違った。表彰台に上れたらもちろん最高だが、トップ4だったらハッピーと考えていた。チームメイトが優勝しても、自分が4位以内でゴールできていたら、”全然問題ない。自分たちはよくやった”と感じることができていた。

シーズン1勝だが、ポール・ポジションは実に5回!
ルーキーや若手の台頭が著しいその一方で
41歳のベテランが存在感を見せつけたシーズンに


 勝利は確かに1回だけだった。しかし、ポール・ポジションをシーズン最多の5回獲得したことが示している通り、パワーは持ち前のスピードをまったく失っていない。”4位でもハッピー”というフィロソフィーで戦い、タイトルを手に入れたパワーは、来年はさらに手強い存在となるだろう。パロウの優勝、カルーム・アイロット(フンコス・ホリンジャー・レーシング)の予選2位、クリスチャン・ルンドガールド(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)の5位フィニッシュと最終戦だけ見ても若手の奮闘ぶりには目覚ましいものがあるインディーカー・シリーズだが、マリオ・アンドレッティのポール・ポジション獲得記録を超える68回目のPPからスタートした41歳のパワーが2022年のシリーズ・タイトル獲得を果たした。ヴェテラン勢がその存在感を主張した形だ。ドライヴァー、チームともどもインディーカー・シリーズはかつてないほどに層が厚くなり、戦いは熾烈になっている。

アイロットは5位走行と健闘していたが、ピットアウト後に突如エンジンがストップしてリタイア Photo:Penske Entertainment (James Black)クリックして拡大

 いつ不運に見舞われるか……と心配され続けたパワーだったが、レース結果に強くフォーカスした戦いぶりに徹することによってをそれらを回避することができたようだ。そんな彼にはメカニカル・トラブルが襲い掛かることもなかった。

佐藤琢磨、ダンパー破損、そして手の骨折……
困難が度重なる苦しいレースを走り抜き、1周遅れの23位に


 佐藤琢磨(デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR)にとっては非常に苦しい最終戦となった。プラクティス1からタイヤの内圧設定が定まらなかたっために、琢磨はマシンのセッティングをまとめ上げることができずに決勝を迎えた。22番手という後方グリッドからスタートで5台をパスしたが、ダンパーの破損でマシンのハンドリングは悪化。リスタート時にダルトン・ケレット(AJ・フォイト・エンタープライゼス)と接触してステアリングを握っていた右手の親指を負傷した。ゲイトウェイでの接触で痛みを感じるようになってたという右手は、今日の接触で骨に入っていた亀裂が大きくなってしまったようだった。接触直後は激痛に見舞われたが、それに耐えながら琢磨はゴールまで走り切った。

手の甲でステアリングを保持しての走行!
「シーズン最後のレースがいい戦いができなかったことは残念」

佐藤琢磨は決勝でもマシンのトラブルに悩まされた Photo:Penske Entertainment (James Black)クリックして拡大

 「スタートはうまくいったんですけどね……。4ストップで行ったチームもあった中、自分たちはスタートで順位を大きく上げたり、早目にピットに入るチームもあったりで、順位が上がって行ったこともあって3ストップで行くしかなくなったんですよ。しかし、ダンパーが壊れてしまって、マシンのハンドリングがおかしくなった。さらに、ダルトン・ケレットだったかな? リスタートで彼と接触した時にタイヤとタイヤが絡んだようになって、以前から問題を抱えていた右手が完全に骨折してしまったようで、すごい激痛が走りました。その後は指じゃなくて手の甲とかでステアリングをホールドして頑張り続けました。走っているときはアドレナリンも出ているので痛みは途中からなくなりましたが、もう完全に麻痺しちゃってる状態でした。シーズン最後のレースで良い戦いができなかったのは残念ですが、インディ500やデトロイト、ゲイトウェイなどでスピードを見せることはできた、というシーズンだったと思います」と琢磨は語った。

以上



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