2018年3月14日水曜日

2018 INDYCARレポート 3月14日:あなたはロッシ派? それともウィッケンズ派? 開幕戦、最終リスタートでのアクシデントはなぜ発生したのか 



こわばった表情でピットに戻るウィッケンズ Photo:INDYCAR.com クリックして拡大
ラスト2周でのリスタート、1ターン接触……その原因はどこに?

 2018年の開幕戦では、いきなり議論沸騰となるアクシデントが発生しましたね。優勝目前だったルーキーのロバート・ウィッケンズ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)は、残り4周で2回もリスタートがあり、そのうちの1回でバンプされた……。あ、こう書くとぶつかったアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)が悪かった印象になっちゃいますね。


ウィッケンズはレース終盤もロッシに付け入る隙を全く見せなかった Photo:INDYCAR (Joe Skibinski) クリックして拡大
リスタートはファイナル・ラップと誰もが思ったが……

 残り4周のリスタート、ウィッケンズは危なげなくトップを保って、ラップ後半にはロッシに差をつけていた。ゴール前になってもウィッケンズの方が明らかに速かった。それは事実。ロッシはそれを身をもって知ってたので、少し焦っていただろうし、少々の無理強いも厭わないつもりでいたと思われます。

 そこでまたイエロー。最後のリスタートはゴールまで2周で切られることに。
 リスタートは更に次のラップだと思ってませんでした?
状況的に、リスタートはファイナル・ラップになるだろうって雰囲気でした。ウィッケンズもそう理解していたとのことでした。それが急にリスタートと聞かされ、ルーキーでもあり、慌てちゃったんですね。ターン14前の短いストレートで加減速してロッシを振り切るのに失敗。加速も悪く、完璧なタイミングでアクセルを踏み込んだロッシにがっちりスリップに入られてしまった。

2台は1コーナーでのブレーキングバトルに!!
ウィッケンズがアウトから高速で寄せ
ロッシはリヤがブレイクして接触


 ストレートを半分走った先でロッシはインへ。ウィッケンズは一瞬反応したけれど、インに並ばれるのが防ぎ切れないと見るや、ラインをホールドしてターン1にアプローチしてました。DTMで揉まれているドライバーは、少し慌て気味で臨んだリスタートでダッシュに失敗しても、ストレートを加速する中で再び落ち着きを取り戻した様子でした。
 二人はハードなブレーキング・バトル。この日最も盛り上がったシーンでした。並んだままコーナーへ飛び込む2台!



Photo:INDYCAR (Chris Owens)
 インのロッシが有利かと思ったが、ウィッケンズが予想以上にハイスピードを保ってアウトからラインを寄せて行く。ロッシのスペースが急激に狭められ、さらに減速が必要な状況に。そこで彼はリヤを滑らせ、右の前輪がイン側の縁石に僅かながら乗り上げた。次の瞬間、ロッシは更にスライドし、ウィッケンズと絡む。

「彼はP2Pボタンを押すタイミングが遅かった」とロッシ
「ウィッケンズは1コーナーの奥でタイヤかすの中に僕を追い込んだ」

 「レースを再開させるというインディーカーの決断は遅かった。リスタートで普通プッシュトゥパス(P2P)は使えないが、あの時のリスタートでは使用許可が出た。僕がそれを知らされたのはターン13と14の間だった。そして、僕はロバートに急接近するチャンスをもらった。彼はP2Pボタンを押すのが遅かった」とロッシは状況を説明。インディカーの突然のP2P使用許可は、「パスがさらに実現しますように」ってことなんだろうが、試合中のルール変更なんて普通のスポーツにありますか? 

ロッシは3番手でレースに復帰し、表彰台に乗ることはできた Photo:INDYCAR (Chris Jones) クリックして拡大
 「あそこ以外にチャンスはないと思った。スリップから抜け出すとロバートはトップを守る動きを見せた。そうする権利が彼にはあったが、その後にコーナーの奥で僕をタイヤかすの中に追い込んだ」とロッシは相手にドライビングを批判した。インに入ればラインはタイトになるし、タイヤかすで汚れているのはドライバー全員が知っていたことのはずだが……。

 ウィッケンズは相手にスペースを与えたと主張していたが、それはギリギリ小さ過ぎるぐらいのサイズだった。ただ、「インサイドの自分に権利があったのだから、ウィッケンズはターン1でのポジション争いは諦め、とりあえず私にトップを譲るべきだった」ぐらいのロッシの考え様は、佐藤琢磨に何度かぶつかったライアン・ハンター-レイのそれに似ている。驚いたのは、「僕は優勝し、彼は2位フィニッシュできていたはずなのに。そうならなくて残念だ」というロッシのかなりゴーマンかましたコメント。

アクシデントの責任はロッシにありと主張するウィッケンズ
「最後のリスタートでインディーカーは何をしたかったんだろう?」


 ウィッケンズはロッシの動きに対し、「彼はブレーキングを遅らせ過ぎた。ラインを外れたらタイヤかすでコースはひどく汚れている。それでもコーナーの奥まで突っ込み、リヤをロックさせ、滑って僕にぶつかって来た。これ以外に説明のしようがないと思う」とアクシデントは責任はロッシにアリと主張した。そして、「最後のリスタートでインディカーは何をしたかったんだろう?
 ペースカーはライトを消さずに走っていた。その前までと手順がまったく違っていた。僕はレース・リーダーなのにペースをコントロールする機会が与えられなかった。なんだかすごく不利なポジションに立たされてしまったように感じた」とレースコントロールの不可解な動きに疑問を呈した。これに対してインディカーは、「リスタートが切られることはチームに明確に伝えた。ドライバーが準備を行うのに十分な時間もあったはずだ」との見解を出した。

アマノの結論:リスタートはもう1周後に切るべきだった
そしてロッシにはペナルティが課せられるべきでは?


 レースのアクシデントは判定が難しい。佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)に突っ込んで行ったスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)はペナルティを課されたけれど、ほぼ同じアクシデントでスペンサー・ピゴット(エド・カーペンター・レーシング)にぶつかったグレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)はお咎め無し。しかし、ほぼ同じ状況と見えても微妙にそれぞれは違っているので、どこからがアウトで、どこまでがセーフかの線引きは難しい。それはそれとして、今回思うのは、リスタートはもう1周後に切るべきだったろうし、突然のP2P使用許可は不要だったということ。そして、ロッシにはペナルティが課せられるべきだった、とも私は思う。
以上

9 件のコメント:

  1. 天野さん、おつかれさまです。レポートありがとうございます。私は、ロッシでもウィッケスでもない間に優勝をさらったブルデー派です…へんなこと書いてすみません。でも、初優勝はすぐそこだったのにあのようなかたちになったのは残念だし本人がいちばん悔しいと思います。グレアムのような暴れん坊とは違いロッシは物静かなわりには姑息なことをするな…という印象が私にはあります。ペナルティがないのも、おかしいと思いますし…。グレアムの暴れん坊を言い変えれば、アグレッシブで果敢に責めてる…以前はグレアムはあまり良い印象を持たなかったけど今ではめっちゃ応援してます。ウィッケスは、今回は残念だったけどこれから活躍するのは間違いないのでは?天野さんのレポート、楽しみにしてます。ありがとうございました。長々と、すみませんでした。

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  2. 天野さんいつも楽しく拝見させていただいてます。

    僕はウィッケンズ派でもロッシ派でも無いですね。
    どちらにも言い分があると思いますからね。

    しかしロッシのコメントにはちょっといらっとさせられましたが(笑)

    それよりもIndycarのその場のルールというのはやめた方が良いと思いますね。
    あと、ジャッジにもばらつきが有るのも…。

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  3. 私はウィッケンズ派。只々、あの当て方は無いだろうと。
    ロッシもルーキーじゃないんだから・・・おっと、ディクソンさんにも言えますなwでも天野さんのレポートを読んで、ちょっとショック・・・だって(以前から、ちょくちょく在った事ですが・・)ショウアップのための恣意的なルールの運用は、スポーツの理念から遠くかけ離れたものだと思いますから。そこが凄く残念。F1でも結構ありますよね、こんな事例。

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  4. レースコントロールのジャッジには疑問あるけど、
    2018年シーズンはこういった接触が増えそうだな。
    と思いました。
    ユニバーサルデザインによって一新されたエアロが
    もたらす、
    トップスピードの向上
    ドラフティングの入りやすさ
    制動距離の延長
    ターン時のGフォース減少
    により、オーバテイクシーンが増えてインディカー
    をより面白くしてくれることを期待したいです。

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  5. >「最後のリスタートでインディカーは何をしたかったんだろう?
    ・新人にいきなりポールトゥウィンをかませられると格好悪い
    ・アメリカ人に勝たせたかった
    の両方だと思います。

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  6. レーシングアクシデントだけど、止まりきれない、通常のラインを走れないのはドライバーのミス。
    ペナルティを出さないと無理な突っ込みが横行し避けない方が悪いみたいなことに。
    ロッシは物静かな上にブラックなとこがあって怖いですね。
    琢磨さんも本当に残念。まだ新車に慣れてないのでしょうが、追突ってレベル低く感じてしまう。(琢磨さんもデビュー戦で追突してましたが(苦笑))

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  7. 天野さん、いつもありがとうございます。

    ロッシが3位だったらペナルティー無し?
    トップをリタイアさせて優勝だったら、さすがにペナルティー有りかな?
    じゃあ2位ならどうだったのかな…?
    なんだか不思議な判定ですね。

    ディクソンのは、その瞬間に競ってる相手じゃない車にぶつかったのですから、妥当だと思いますね。

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  8. ロッシが、何年か前の琢磨選手だったら・・・・・

    たぶん、同じことをやっていたような気もしなくはないです。そして、「自分はレーサーなんで」っていうコメントをすると思う。実際に、ロッシは、ツイッターで言ってたけど。

    だから、ロッシの言い分もわかるけど、やっぱりあのリアのスライドは、そうなるのはわかってたよね。とは思うので、強引すぎたかな、と思います。

    去年の最終戦のソノマでも強引なパッシングを琢磨選手にしかけたロッシ。
    なんか、穏やかな雰囲気の猫をかぶるのをやめたのかしら?と思うくらい、発言もやることも荒くなってきたのが、ちょっと、残念です。。。。




    最近の琢磨選手なら、もうちょっと慎重にやってると思うけど。

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  9. CART時代を含めてルールがいい加減だ!!以前、ルールがめちゃくちゃだと高木虎之介さんが怒ってたが、スポーツ以前に興業色が強すぎる。命の危険にさらされるドライバーの事を考えろと言いたいが、未だに適当ですね。インディーカーが一流のスポーツになれない原因の一つですよね。

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