2013年6月21日金曜日

2012 INDYCAR レースアナリシス 第9戦 ミルウォーキー:スティント内のラップタイムの落ち具合が大きい状況で、タイヤマネジメントのスキルが問われる戦いが混戦をよんだミルウォーキー。変化する路面への対応が完璧だったハンター-レイがレースを制す

レース序盤をリードしたマルコだったが…… Photo:INDYCAR (Chris Jones)クリックして拡大
マルコ・アンドレッティ、圧倒的な速さを結果につなげられず

 ザ・ミルウォーキー・マイルでは強豪3チーム(チップ・ガナッシ・レーシング、チーム・ペンスキー、アンドレッティ・オートスポート)がずっと勝ってきていたが、今年は彼らが優勝から6位までを独占。ところが、三強でマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)ひとりだけがトップ10入りを果たせなかった。ポールポジション獲得、今季初優勝にかなりの手応えを感じていたマルコだったが、最初のスティントをリードした後にピットとマシンにトラブル。20位に終わった。
 スコット・ディクソンは11番手スタートで6位。ダリオ・フランキッティは最後尾スタートで8位。ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシングの元チャンピオン二人が粘り強く戦っていた。もうシーズンも折り返し点が近づいているが、近いうちの優勝戦線復帰はなるんだろうか?


 なお、フランキッティの10号車は予選後にエンジンを交換していたが、それは「レース中に走行距離が交換時期の2,000マイルに到達するので」という事情から。「セッティングの何を換えてもダメだから、エンジンのパワーダウンをチームが疑った」というのが本当のところかもしれないが……。去年のミルウォーキー、ダリオがポールだったのだ。グレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)も同じくレース中の2000マイル突破がエンジン交換の理由。しかし、こちらもチームメイトのジェイムズ・ジェイクスにまたしてもパフォーマンスで劣り、エンジンを疑ってみたということのようだ。


後方からのスタートとなった琢磨だが、ピットタイミングを生かしてトップに浮上。リードラップ109周を数えた Photo:INDYCAR(Chris Jones) クリックして拡大

タイヤマネジメントの良し悪しが出やすい戦いに

 去年のフランキッティによるポール・スピード(2周平均)は168.737 mphだった。それが今年は170.515mph(マルコ・アンドレッティ)に上がった。シャシーセットアップがレベルアップし、エンジンの性能も向上してスピードアップがなされたということか。
 しかし、ファイアストン・タイヤは去年とまったく同一スペックだった。そのせいかスティント内のラップタイムの落ち具合がより大きくなっていた。そのマネジメントがうまければスティント中盤から順位を上げていくことが可能で、タイヤを摩耗させ過ぎてしまったドライバーたちはズルズルとポジションを下げていく。スキルの差が出やすく、レースが混戦になる。まさにインディーカーが狙っている通りの戦いになっていた。


ドライビングスキルをアピールした琢磨の快走

 15番手スタートだった佐藤琢磨(AJ・フォイト・エンタープライゼス)は、レース序盤の60周過ぎから109周をリードした。レースが始まって間もなくのイエローを利用したピットストップが正解で、作戦の良さによって順位を大きく上げた。運も良かったということだ。しかし、一端上位に食い込むや、そのポジションを彼は走り続けていた。ショートオーバルで順位を落っことすのは簡単。琢磨陣営はマシンのセッティングもドライビングも非常にレベルが高かったということだ。
 ところが、2回目のピットストップの後、183周目に彼はクラッシュしかけた。202周目にはセバスチャン・サーベドラ(ドラゴン・レーシング)が琢磨と同じくギリギリのところでアクシデントを回避。彼は今回、予選6位とマシンの調子も非常に良く、レースでも160周過ぎまでトップ10で頑張り続けていたが……。そして211周目、アナ・ベアトリス(デイル・コイン・レーシング)がターン4でアクシデントを起こした。レースが終盤に入ったところでハンドリングトラブルに遭うマシンが増えた。路面に何ら変化があったということなのだろう。


変化する路面への対応が完璧だったハンター-レイ 

 「タイヤラバーが乗って路面は変わっていく。終盤の路面がレース前半と違っていたのは確か。しかし、路面が良くなっていってハンドリングが悪くなるというのは……」と琢磨は首を傾げていた。それに対してウィナーのライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)はレース後、「変化する路面への対処がどれもパーフェクトだった」とコメントしていた。彼は2回目のピットストップで何か一捻りを入れていたということなんだろう。コンディションが変わったと思われる200周前後で最も速かった。その時の路面に彼のマシンはバッチリ合っていたということだ。
 チーム・ペンスキーの2人が2、3位でゴールしたが、アンドレッティ勢の強さは特筆もので、EJ・ビソが今季の自己ベストとなる4位フィニッシュを飾り、ジェイムズ・ヒンチクリフはディクソンの攻撃を跳ね返し通して5位でゴールしたのだ。


Photo:INDYCAR(Chris Jones)

 この事実を見るとマルコの不運ぶりを改めてつくづく感じさせられる。ミルウォーキーはアンドレッティ家というより、マイケル・アンドレッティにとって幸運なコースとわかった。自らドライバーとして5勝を挙げたレースで去年からプロモーターを務めることになり、その最初のレースで自チームが優勝&3位。今年は息子がポールポジションを獲得し、レースでは自分がピットで陣頭指揮をとるハンター-レイが2年連続連勝=チームの5勝目を達成。4人走らせるうちの3人がトップ5フィニッシュした。
以上


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