2016年5月22日日曜日

2016 INDYCARレポート 第100回インディアナポリス500 5月21日 予選1日目:初日トップはジェイムズ・ヒンチクリフ

ヒンチクリフが大逆転で初日の最速タイムをマーク Photo:INDYCAR(Chris Jones) クリックして拡大
午後4時41分以後、ファスト9のバンプ・アウト合戦がスタート

 全員に一度アタックのチャンスが与えられた午後4時41分以降から走行終了時刻の午後7時までは、誰もが何度でもアタックをしてよいルール。一度走ったデータからセッティングを向上させることは可能だし、予選時間の終了間際は路面コンディションが良くなるかもしれない。ただ、どのタイミングで予選のラインに並ぶか、その判断が難しい。予選にはファスト・レーンと第2レーンが用意され、保持しているスピードを放棄してでもアタックしたい場合はファスト・レーンを選べば、第2レーンの先頭に並んでいるドライバーより優先してアタックの権利を与えられる。
カストロネヴェス、暫定トップに浮上
 エリオ・カストロネヴェス(チーム・ペンスキー)は、自分のポジションが8番手に下がった時にアタックを決意した。ファスト9からバンプ・アウトされない可能性も残されていたが、そうなってからでは、ファスト・レーンに並んでもアタックの順番が回ってこないまま予選時間終了となり、取り返しがつかなくなると考えられたからだ。
 チャンスは一度しかないかもしれない。背水の陣で臨んだ彼のウォーム・アップ・ラップは、今日最速の227.591mph。これだけ速いと4ラップ目にタイヤのグリップが下がる心配もあるが、230.401mph、230.933mph、230.556mph、230.111mphという素晴らしい4ラップで平均は230.500mph。一気にトップに躍り出た。

ヒンチクリフ、平均230.946mph!大逆転でトップに
 これで今日のトップは決まりと思われたが、グレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・ウィズ・セオドール・レーシング)がガックリの227mph台で終わった後、ジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)がエリオより更に速い228.032mphのウォーム・アップ・ラップの後、231.221mph、231.130mph、231.003mph、230.425mphと3ラップで231mphを記録して平均230.946mph。大逆転でトップをカストロネヴェスとロジャー・ペンスキーの手から奪い取った。

 続いてアタックしたファン・パブロ・モントーヤ(チーム・ペンスキー)は、230mph台にも平均を載せられず、ファスト9入りは叶わず。スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)も229.497mphと充分なスピード・アップは果たせず。結局、チップ・ガナッシ・レーシング・チームズのドライヴァーはファスト9にひとりも入れなかった。ディクソンは最終的に13位。トニー・カナーン=19位、チャーリー・キンボール=25位。


パワー、ファスト9圏外から2番手に

 その次はウィル・パワー(チーム・ペンスキー)だった。6時37分にコース・インした彼は、今日の最速となるウォーム・アップ・ラップ(ヒンチより0.001mphだけ速かった!)の後に231.112mph、230.994mphを出し、アヴェレージはヒンチを上回る231.053mphに! 更なる大逆転実現か……と思われたが、3周目は230.599mphに落ち、アベレージも230.901mphとなって2番手に後退。4周目は230.241mphで平均は230.736mph。トップには立てなかった。それでも、ファスト9圏外から2番手に食い込んだのだから、アタックは大成功だった。




2度目のアタックに成功したパワーと、パワーにバンプ・アウトされたセルヴィア。明暗分けた二人 Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大

 オリオール・セルヴィア(シュミット・ピーターソン・マロッティ・レーシング)は、パワーにバンプ・アウトされて10番手となって再アタック。しかし、2ラップ目に姿勢を乱して227mph台しか出せず、3周目も225mph台。226.893mphで24番手と、二度目のアタックが大きく裏目に出てしまった。
アグレッシブなデイル・コイン
コナー・デイリー、果敢に2回目のアタック!


積極的なアタックでタイムを伸ばしたコナー・デイリー。パドックで父・デレックとリラックス Photo:INDYCAR (Mike Finnegan) 
 次はコナー・デイリー。デイル・コイン・レーシングは積極果敢に今日の予選を戦っていた。デイリーは227.804mphを放棄してアタックし、227.862mphに僅かながらスピード・アップ。17番手となった。明日の予選に向けても、今日二度目のトライをしたことが役立つ可能性がある。
 続いてギャビー・シャヴェス=こちらもデイル・コイン・レーシング=がアタック。午後6時48分に計測開始。1周目は227.204mph。これは遅過ぎで、他のドライヴァーたちに走行のチャンスを与えるべくアタックを中止した。この結果、彼はアクシデントでアタック4周を完了できなかったピッパ・マン(デイル・コイン・レーシング)や、今日のプラクティスでのアクシデントで予選に出場できなかったマックス・チルトン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)と同じく、予選1日目の記録ナシとなってしまった。

 残り時間が10分を切った。ここでマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)が3回目のアタックを行なった。彼とライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)は、まだ第2レーンからのアタックが可能だった夕方6時少し前に二度目のアタックをトライしていたが、ハンター-レイがギリギリで9番手。アンドレッティはファスト9入りを確定できるスピードを出せなかった。


アンドレッティ、再びチームメイト同士のバンプアウト合戦に

 6時52分、今日最初の3回目のアタッカーとしてアンドレッティがコースへ。彼は3周目まで230mph台を保った。しかし、4周目が229.359mphへ大きく落ちてアヴェレージは230.037mphに。そして、皮肉にもハンター-レイをファスト9からバンプ・アウトする9番手につけた。
 そして、アンドレッティのすぐ後にはハンター-レイがアタック。1周目に231.315mphという見事なスピードを記録。2周目は230.951mphで、3周目も230.594mphと高いスピードを維持。ヒンチクリフを上回りトップだったが、4周目が230.265mphにダウン。アヴェレージは230.805mph。4周の合計タイムが0.0925秒という僅差ながら、ヒンチクリフがトップをキープ。ハンター-レイは2番手となった。 

 
2011年の予選の再現となるチームメイト同士のバンプ・アウト合戦となったAA。今度はマルコがはじき出される結果に Photo:INDYCAR (David Yowe) クリックして拡大 

  予選終盤のアンドレッティ・オートスポートのチームメイト同志による争いは、 2011年のインディー500の予選を思い起こさせるものだった。あの年、マルコはチームメイトのハンター-レイをバンプ・アウトした。それも、今年のようなファスト9からのバンプ・アウトではなく、正真正銘のバンプ・アウトだった。ハンター-レイは予選落ちを喫したのだ。ただ、彼にとって幸いだったのは、AJ・フォイト・エンタープライゼスが予選を通していたブルーノ・ジュンケイらを降ろし、アンドレッティとフォイトの混成チームとして出場することを決定。そのマシンにハンター-レイが乗ることとなって、彼のインディー500出場はなったのだった。あの時の“共食い”ほど悲惨ではなかったが、今日もまたチームメイト同志によるバンプ・アウト合戦がアンドレッティ・オートスポートで起こったのだった。
ラスト・アタッカーのアレシン、7位に入りロッシをバンプ・アウト

 まだ予選に残り時間はあった。6時59分にミカイル・アレシン(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)がコースへ。彼も3回目のアタック。計測1周目を彼が走っている間に午後7時となり、これ以上のアタックは認められないことになった。予選1日目最後のアタッカーとなったアレシンは、4周平均230.209mphをマークし、7番手に飛び込んだ。シャヴェスが2回目のアタックの1周目にある程度のスピードを出し、もう1周走り続けていたら、アレシンのアタックはギリギリで間に合わなかっただろう。そして、ルーキーのアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)がバンプ・アウトの憂き目に遭い、明日の予選でポール・ポジション争いに加わる権利を失った。アンドレッティ・オートスポートからは2人がファスト9に入ったが、予選終盤に2人がバンプ・アウトされるという厳しい現実も経験した。
ファスト9にはホンダ5台、シボレー4台
 31台が走り、30台が暫定順位を手にした。最終的にファスト9に生き残ったのは、以下のメンバー。
1 ジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)Honda
2 ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)Honda
3 ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)Chevy
4 エリオ・カストロネヴェス(チーム・ペンスキー)Chevy
5 タウンゼント・ベル(アンドレッティ・オートスポート)Honda
6 ジョセフ・ニューガーデン(エド・カーペンター・レーシング)Chevy
7 ミカイル・アレシン(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)Honda
8 カルロス・ムニョス(アンドレッティ・オートスポート)Honda
9 シモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)Chevy

 ホンダが1-2で、9人のうちの5人を占めた。内訳はアンドレッティ・オートスポートが3人シュミット・ピーターソン・モータースポーツが2人。
 シボレー勢はチーム・ペンスキーが3人と、エド・カーペンター・レーシングが1人。

 予選1日目をトップで終えたヒンチクリフ。彼は去年のインディ-500プラクティス中にアクシデントを起こし、サスペンション・アームが体を突き抜けて瀕死の重傷を負った。1年を経て、驚異的かつ劇的なカムバックを彼は果たしたとういことだ。
 「今日、自分たちがファスト9に入る自信があった。今日の最速に意味はないが、トップであったことは悪くない事実だ。チームに感謝する。クルーたちは2月からずっとこのマシンの準備を入念に進めてきていたんだ」とヒンチはコメントした。


佐藤琢磨「大きくマシンを盛り返せたことは本当にうれしい」

佐藤琢磨(AJ・フォイト・エンタープライゼス)は16位。二度目のアタックを検討したが、マシンを用意した時点で、もうファスト・レーンにマシンがズラリ。チャンスを手にできなかった。チームメイトふたりも二度目のアタックは行わず、ジャック・ホウクスワースが28位、アレックス・タグリアーニが29位だった。

セットアップ変更が的中し、佐藤琢磨は明日に懸ける Photo:INDYCAR (Doug Mathews) クリックして拡大
  「二度目のアタックに行く決意をチームとしたのですが、間に合いませんでした。トップ9を狙えるスピードが出せると考えていたので残念です。しかし、今朝のまったく走れなかったような状態から、こうして大きく盛り返せたことは本当に嬉しいことで、チームの仕事ぶりに感謝しています。明日は、今日の経験からみんなスピード・アップをして来るでしょう。10番手以降のポジションを争いますが、4列目~5列目にグリッドを確保できるようにしたいですね」と琢磨は語った。

 明日の予選では、今日の10番手以下(走行ナシ、記録ナシの者含む)が10~33番グリッドを競い合い、ファスト9が栄えあるポール・ポジションと、3列目までのグリッドを争う。プラクティスは正午開始。10番グリッド以降の予選は午後2時45分スタート。ファスト9によるポール・ポジション争いは5時からだ。
以上

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