2019年9月2日月曜日

2019 INDYCARレポート R16グランプリ・オブ・ポートランド Race Day 決勝:ウィル・パワーが今季2勝目

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パワー、圧倒的な勝利で歴代6位タイの37勝目

 全17戦のチャンピオンシップの第14戦ポコノでシーズン初勝利を挙げた2014年チャンピオンのウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が、第16戦ポートランドでも勝った。しかし、時すでに遅し。ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)がポートランドで5位フィニッシュ。パワーが今シーズン、逆転チャンピオンとなる可能性は消滅した。
 今年の彼がチャンピオン争いを最後まで行えなかったのは、シーズン序盤に不運が重なったためだ。開幕2戦を作戦ミスとメカニカル・トラブルで失った彼は、勢いに乗るチャンスを阻まれた。
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 第14戦ポコノで勝ったものの、その時すでにタイトルの可能性がほぼなくなっていたパワーは、「残るレースは全部勝つ!」ぐらいしかモティヴェーションの保ちようがなくなっていた。ポートランドでの全力投入は、幸いにも目指す勝利に繋がり、3レースで2勝目。シーズン開幕からの14戦で一度も勝てなかったのが嘘のようだった。しかし、同時にパワーのようにタイトル争いが使命のドライバーにとっては、そこに繋がって行かない勝利の持つ価値は非常に小さい。そう強く感じさせられたのが今週末のポートランドでのレースだった。

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 キャリア37勝目、セバスチャン・ブルデイ(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・ヴァッサー・サリヴァン)と並ぶ歴代6位タイという快挙も、何やら虚しく響いていた。馬鹿らしいアクシデントのせいで、1週間前のゲイトウェイや、昨年のポートランドのようなエキサイティングなコンペティションがコース上で繰り広げられなかったことも、そこには大きく影響していた。

ハータ、レッド・タイヤでのスティント終盤の走りに課題

 ルーキーながらキャリア2回目のポール・ポジションをポートランドで獲得したコルトン・ハータ(ハーディング・スタインブレナー・レーシング)。生まれ持ったスピードには極めて優れたものがある。それは改めて証明された。しかし、インディーカーの長いレースで勝利するには、まだまだ彼のドライバーとしての成熟度が不足していた。チームも彼を勝利まで導くだけの実力を備えてはいないと証明されてしまった。

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  レッド・タイヤでのスタートは、予選でトップ3だった他の2人と同一の作戦だったが、ソフト・コンパウンドのレッド・タイヤでフル・スティントを戦い、安定したラップ・タイムを保ち続けることがルーキーの彼には不可能だった。コーナーでバランスを崩すシーンが増えて行き、37周目にトップの座をディクソンに明け渡した。そこですぐさまピットに入ればまだダメージは小さかったが、チームにはそうする決断力はなく、そうするための準備も整っていなかった。来シーズンのチーム存続が危ぶまれているのも、このような状況では致し方ないのかもしれない。

ディクソン、パワーをパスして快走中に全電源喪失


 ポイント・ランク4番手でポートランドを迎えたスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)は、まさに理想的なレース展開を手に入れた。スタートでパワーをパスし、残る1人=ハータは自滅するように彼の前から姿を消したのだ。ところが、そんなディクソンを突然の電気系トラブルが襲い、彼の勝機は失われた。チップ・ガナッシ・レーシングらしくないメカニカル・トラブル=機能しなくなったバッテリーの交換でディクソンは3周遅れに陥り、タイトル奪取は不可能となった。
 ディクソンの脱落により、パワーのレースでのトップは安泰となった。2番手にはルーキーのフェリックス・ローゼンクヴィスト(チップ・ガナッシ・レーシング)が浮上して来たが、ポートランドでの彼にトップを奪うだけの力はなかった。2回目の2位フィニッシュは、ルーキーにとっては素晴らしい成績。ルーキー・ポイント・トップの座もサンティーノ・フェルッチ(デイル・コイン・レーシング)から奪い返し、残すは1戦となった。

佐藤琢磨、スタート直後ターン1のマルチ・クラッシュに巻き込まれる

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 ポートランドでのレースは、今年もスタート直後にターン1でマルチ・クラッシュが発生した。コース・イン側で起こったグレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)とザック・ヴィーチ(アンドレッティ・オートスポート)の接触が発端となり、ジェイムズ・ヒンチクリフとコナー・デイリー(ともにアロウ・シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)にスピンしたヴィーチのマシンが突っ込んで行った。

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  彼ら4台はその場でリタイアがほぼ決定。佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)はマシン右側にダメージを受け、スペンサー・ピゴット(エド・カーペンター・レーシング)とシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)もスピンを喫して大きくタイムとポジションをロスした。琢磨はサイドポッドとアンダートレイ、さらにはサスペンションにダメージを受けて2ラップ・ダウンに陥り、2年連想優勝、シーズン3勝目の可能性を断たれた。

好調のハーヴィー、3位走行中にハンター‐レイにヒットされる
 
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  リスタート後には3番手走行中のジャック・ハーヴィー(メイヤー・シャング・ウィズ・SPM)に、4番手のライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)がハード・ヒットした。アレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)のアタックを退けようとトライしたハンター-レイは、前を行くハーヴィーの存在を忘れてしまったのか、ターン1にインサイドからオーバー・スピードで飛び込み、アウト・イン・アウトで走るハーヴィーとラインが交錯、接触に至った。ターン1へのアプローチで完全に先行していたハーヴィーに、ハンター-レイが激突したのだった。ポコノでの2年連続アクシデントも今回も、アクシデントの原因を作ったのはハンター-レイだ。インディーカーのオフィシャルたちが、そうした考えに至り、裁定を下さないことを不思議に感ずる。インサイド優先という思い込みが強過ぎることが、アクシデントの原因になっている。ポジションを争っている相手のイン側に飛び込むことができても、それでライバルのマシンが地上から消えて無くなるわけではない。戦っている相手と自分、双方がコーナーをクリアする必要があることは変わらないのだ。しかし、ハンター-レイの場合、誰かのインに入った途端、アウト側にいたライバルは存在しなくなるか、全面的に彼のパスに協力してラインを譲るという、まるで非論理的、非現実的な考え方に固まっている。レース・キャリアの初期の時点で、そのような考え方は否定、修正がなされるべきだった。しかし、そうならないまま、彼は2012年にインディカーのシリーズ・チャンピオンにまで上り詰め、2014年にはインディー500での優勝までも飾っており、もはや彼の考え方を否定したり、改めさせる余地など無くなってしまった。才能あるドライバーだけに、とても残念。救いは彼のこの先のキャリアが、そう長くはないことだ。

タイトル争いはニューガーデン、ロッシ、パジェノーの3人に

ニューガーデンのアドバンテージは41ポイント!

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 パワー以外は不完全燃焼だったポートランドが終わり、2019年のタイトル争いはニューガーデン、ロッシ、パジェノーの3人に絞り込まれた。ランキング2番手に浮上したロッシとニューガーデンのさは41点で、3番手に下がったパジェノーとニューガーデンの差は42点。ニューガーデンの優位は大きく、他の2人はほぼ変わらない状況から逆転タイトルを目指す。
以上

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