2020年2月17日月曜日

2020 INDYCARレポート 2月16日:合同テスト直後にテキサスでルーキー・テスト


参加した4人のルーキーは全員テキサスのハイバンクにも順応

 21112日の火曜、水曜にサーキット・オブ・ジ・アメリカスでの合同テストが終わってすぐ、200マイルほど北上したところにあるテキサス・モーター・スピードウェイで続けてテストが行われた。2020年の第9戦が行われるコースでオーバル用のルーキー・テストが催され、オリヴァー・アスキュー(アロウ・マクラーレンSP)、スコット・マクロクリン(チーム・ペンスキー)、アレックス・パロウ(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・チーム・ゴー)、リナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)の4人が参加し、全員が合格した。このテストでももちろん、全車がエアロスクリーンを装着していた。全長1.5マイル、ターン1側が20度、ターン3側は24度というハイバンクを備えた超高速オーバルでの走行は、ロードコースのCOTAでのものとはまったく異なるものだが、ルーキーたちはキッチリ順応して見せた。

唯一セットアップから一人でこなしたアスキュー
「他のルーキーより多く走れてラッキー」と自信

 マクロクリンは昨年と2017年シリーズ・チャンピオンでテキサスでのレースに昨年勝利しているジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)がマシンをセット・アップした後の走行。ヴィーケイはオーナー兼ドライバーでオーバル・スペシャリストのエド・カーペンター(エド・カーペンター・レーシング)が先ずは搭乗、セッティングが確認されたマシンで走行。パロウもチームメイトのサンティーノ・フェルッチ(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・ヴァッサー・サリヴァン)がチェックを行ったマシンを委ねられた。
 ただ一人、オーバルでの走行経験豊富な先輩チームメイトを持たないアスキューは、自らで全走行をこなし、「テストは楽しかった。オーバルが大好きだから、このテストはずっと前から楽しみにしていたんだ。走っての印象は、去年インディー・ライツで行なったケンタッキー・スピードウェイでのテストと感覚が似ていたというもの。どちらもトライ・オーバルのあるレイアウトで、路面がスムーズ。ただ、マシンはまったくの別物で断然速い。あのスピード域での30mphプラスは100mph以上ぐらい速くなっているように感じた。オーバルでの経験はあるので、インディーカーでの走行でも不安を感じることなく、マシンの挙動を感じ取れていた。それができていれば、エンジニアが必要な情報は得られる。先輩チームメイトにセット・アップしてもらえなかった分、自分は他のルーキーたちより多くの走行時間が得られたのだから、有利と感じた」となかなかのビッグ・マウスぶり。COTAテストで7番時計を出して大きな自信をつけたということのようだ。

エアロスクリーンに対しては押しなべて肯定的なベテラン勢
「視界に歪みはなく気にならない。乗っていて静か」

 後輩チームメイトのマシン・セットアップを準備したベテラン勢は、エアロスクリーンに関連で以下のようなコメントを残している。
 ニューガーデンは、「エアロスクリーンによって安全性は大きく進歩した。ドライバーの頭部保護はずっと必要とされて来ていて、それがついに手に入った。インディーカーにとっては、カーボン製タブ導入以来となる大きな変化だと思う。それがあったのは、もう30年も前。安全についで言えば、HANSデバイス以来となる技術革新。HANSが導入されたのは2000年代の最初だった」と語り、カーペンターは実際に走った印象、感想として、「コクピット内の空気の動きにはまだ細かな改善が必要と思う。視界はとても良く、歪みもなかった。乗っていて静かな点がこれまでと違う点。信じてもらえるかはわからないが、そういう細かな違いがマシンの動きを感ずるところなど、ドライバーの感覚に影響する。前からの風圧をヘルメットは受けなくなっていて、今度は風が後ろから来て、頭が前に少し押される感じ」。フェルッチは、「自分にとっては、エアロスクリーンは装着されているか、一切気にならない。静かになっているのは事実。テキサスでのレース中には日没もあるが、エアロスクリーンのあるなしは関係ない。眩しさも問題にはならない。陽が傾いた時に路面が見えない人は、どんな状況でも見えない。エアロスクリーンをつけたマシンはとても魅力的なルックスになっている。上部にLEDでも付けて飾り立てたら、さらにクールでは?」

NASCAR
チャンピオンが来シーズンにインディーカー挑戦?

 ザ・キングリチャード・ペティに並び、NASCAR最高峰シリーズで最多の7回チャンピオンになっているジミー・ジョンソンがインディーカーのプレ・シーズン・テスト1日目に姿を見せていた。週末はNASCARシリーズ開幕戦にしてシリーズ最大のレースのデイトナ500がフロリダ州デイトナ・ビーチのデイトナ・インターナショナル・レースウェイで行われるが、そのすぐ前の火曜日に彼はテキサス州のオースティンを訪れていたのだ。マクラーレンSPのゲストとしてのサーキット・オブ・ジ・アメリカス入りしたという彼は、ウィル・パワーやシモン・パジェノー、グレアム・レイホールなど多くのドライバーたちと話をしていた。
 今シーズン限りでストックカーから引退することを発表しているJJは、驚いたことに来年以降、インディーカーに挑戦することに興味があるのだという。オースティンでもそれを明言していた。1975年生まれですでに44歳だが、インディーカーへの挑戦は実現するだろうか?
オフロード出身で1998年にストックカーに転向したJJは、トップシリーズで過ごして来た20年間ずっとシボレー・ドライバーだった。インディーカー挑戦もシボレー・チームから……というのが現実的だ。意外なのは彼がインディーカー挑戦をロードコースでと考えているところ。NASCARレースの大半はオーバルで、豊富な経験を持っているというのに。カリフォルニア出身だが、NASCARシリーズを戦うためにノース・キャロライナ州シャーロットを本拠地としているJJは、レーシング・カートを結構な頻度で走らせているという。


去就が注目されていたジェイムズ・ヒンチクリフは
RLL3台目でインディー500に?

 プレ・シーズン・テストが終わってすぐ、アメリカのレース誌系ウェブが、「ジェイムズ・ヒンチクリフはレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング入りが濃厚」というニュースを流した。「確たる証言や情報は得られていないが、RLLはインディー500での3番目のドライバーの今も探していると言っており、状況証拠は揃っている」とレポートはヒンチのRLL入りに自信あり気だ。COTAでのボビー・レイホールは、「ヒンチを走らせる可能性があると喜んだ時期もあったが、結局それは実現しなかった」とコメントしていたが……
 昨シーズン終了後にシュミット・ピーターソンとマクラーレンが合流し、シートを失ったヒンチは、「大型スポンサーを見つけてインディー500に出場するための資金確保はなった」と1月に発表。インディーの他にも地元トロントなど幾つかのレースに出場することを目指している。ヒンチにとっての問題は、RLLがインディーでは3台を走らせるつもりである一方、インディー以外のレースを3カー体制で戦う意思を持っていないところ。無理な台数増はチーム力を薄めることにしか繋がらない、と彼らは考えているのだ。

インディー500に関する大きなルール変更x2 
予選システムとターボのブースト圧アップ

 2020年のインディー500では、ファスト・フライデイとそれに続く2日間の予選で、去年までのパワーに45馬力がプラスされる。ターボのブースト圧は去年だとプラクティスとレースが18.9psi130kPa)で、予選とその準備のための予選前日は20.3psi(140kPa)というレギュレーションだったが、今年は予選用のハイ・ブーストが21.8psi(150kPa)に引き上げられる。ロード/ストリート・コース及びショート・オーバルで許されているブースト圧と同じにされる。

 エアロスクリーンという安全装備を纏い、インディーカーは一気に26kg以上重くなった。空力性能も下がり12mphのスピード・ダウンが想定され、インディーカーは去年までの予選スピードを維持したいとの意向からエンジンをパワー・アップさせるためのルール変更を決断した。予選の行われる2日間が好天、低温などのコンディションに恵まれれば、大幅なスピード・アップがなされる可能性もある。

 予選システムも変わる。グリッド最後尾の3グリッドをめぐる戦いが激しくなるのだ。1回しかアタックできないルールから、複数回アタックしてよいルールにされることで、ファスト9によるポールポジション争いだけでなく、決勝出場をかけたバトルでもドラマが生まれることが期待される。
以上

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