2021年4月18日日曜日

2021 INDYCARレポート R1 ホンダ・インディー・グランプリ・オヴ・アラバマ Day1 プラクティス1:今シーズン最初のセッション最速はアレックス・パロウ


  

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曇り空の下、いよいよ2021シーズンがスタート

 4月17日、アメリカ中部時間の午前10時、NTTインディーカー・シリーズの2021年シーズンが開幕した。
 空は曇りがち、気温は18℃、路面温度27℃で45分間のプラクティス・セッションはスタート。エントリーは24台だ。今日は雨が降るとの予報も昨日まではあったが、初セッションの途中からは陽が差し込み、プラクティス終了時の気温は19℃。路面は30℃だった。どうやら雨の心配はなく、路面は1日ドライ・コンディションが続きそうだ。

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路面改修で2019年から大きくタイムアップ!

 昨年このコースでのレースはCOVIDー19パンデミックのために開催されず、2019年以来のレースとなる。インディーカーはエアロスクリーン付きに変わっている。そして、路面改修でグリップが大幅アップしてもいる。2019年のレースとは大きく様変わりがしているということだ。走り出してすぐ、2019年のポール・ポジション・タイム=1分08秒5934(by 佐藤琢磨)を上回るラップが次々と記録され、最終的には出場24台すべてが1分07秒台に入った。このセッションでは全員がプライマリー・タイヤ(=ブラック・タイヤ)を使用していたのに、である。オプショナル・タイヤ(レッド・タイヤ)だったらどこまでタイムが縮まるのか。予選は今日の夕方、もう1セッションのプラクティスの後に行われる。

パロウ、2016年のトラックレコードを破るタイムをマーク

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 トップ・タイムをマークしたのはアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)。インディーカー2年目の彼はこのコースでのレース経験はないが、ビッグ・チームに移籍して最初のプラクティス、セジTVという新スポンサーのカラーリングを纏ったマシンでベスト・ラップ=1分06秒4721を叩き出して見せた。2016年にセバスチャン・ブルデイが樹立したトラック・レコード=1分06秒6001をあっさり凌駕したということ。セッションは短く、彼が走ったのは18周。そのうちの10周目にベストはマークされた。シーズン初セッションでトップという幸先の良い出足をスペイン出身の24歳は切った。彼の担当エンジニアは大ベテランのジュリアン・ロバートソンが務めている。昨年までのカー・ナンバー10の体制が引き継がれた形だ。

2番手にコルトン・ハータ、3番手にニューガーデン

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 2番手タイムはインディーカー参戦3年目のコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート)のものとなった。パロウと0.0176秒という僅差の1分06秒4897をハータ二世は16周走ったうちの6周目に記録した。今シーズンの彼はアンドレッティ・ハーディング・スタインブレナー・オートスポートからではなく、本家のアンドレッティ・オートスポートからのエントリーとなって、マシンもゲインブリッジがメイン・スポンサーで、カー・ナンバーも26に変わっている。ただし、担当エンジニアはネイサン・オールークで変わらずだ。
 ホンダの若手がトップ2。3番手にはバーバー・モータースポーツ・パークで最多の3勝を挙げているシヴォレー・ユーザーのジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)が来た。インディー500初優勝を今年最大の目標に掲げるニューガーデンだが、シリーズ・タイトルも勿論狙っている。得意のコースで開幕ダッシュ……が理想のシナリオだ。彼もエンジニアとのコンビネーションは継続。2019年から組んでいるギャビン・ウォードがピット・スタンドに陣取っている。ニューガーデンのベスト・ラップは1分06秒4957でパロウとの差は0.0236秒という小ささだった。ハータとの差は更に小さい0.0060秒。トップ3がコンマ1秒以内にひしめく大接戦だった。彼は14周をこなし、ベストはハータと同じく6周目に出していた。

新プライマリータイヤは温まるのに時間が必要

 上位のタイムはセッション半ばに出された。通常ならセッション終盤に路面コンディションも良くなり、ベストが次々塗り替えられるシーンが展開されるのだが、今日は残り10分を切ったところでフェリックス・ローゼンクヴィスト(アロウ・マクラーレンSP)がピットロードのガードレールにぶつかる珍しいアクシデントを起こし、5分弱の赤旗中断があった。グリーン・フラッグが出たのは残り時間が4分半を切ってからで、コースに出た全車がハードにアタックしたものの、ここで自己ベストを更新したドライヴァーはゼロだった。ファイアストンがプライマリー・タイヤに今回採用している新コンパウンドは、ワーキング・レンジまで温めるのに時間がかかり、ベストは4、5周目に出る状況のようなのだ。

トップ10にはガナッシ3人。ペンスキー3人
アンドレッティ3人、マクラーレン2人


ペンスキーから今シーズンフルエントリーするマクロクリン Photo:INDYCAR(Joe Skibinski)クリックして拡大
  4番手以下はチャンピオン6回だがバーバーではまだ勝ち星のないスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)、オフのバーバーでのテストで最速だったパト・オーワード(アロウ・マクラーレンSP)、昨シーズンはロードコースで彼らしいキレのある走りが見られなかったアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)、バーバーで2011、2012年に連勝しているウィル・パワー(チーム・ペンスキー)、ハコ車出身ルーキーのスコット・マクロクリン(チーム・ペンスキー)、F1からインディーカーにスウィッチして3年目のマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)、ガナッシからマクラーレンに移籍してインディーカー3シーズン目を戦うローゼンクヴィストが続いた。トップ10の内訳はガナッシが3人、ペンスキーが3人、アンドレッティが2人、マクラーレンが2人。これが今年のトレンドか……と判断をするのはまだ早いかもしれないが、ロッシまでの6人がトップからコンマ2秒以内、8番手のマクロクリンまでが同コンマ3秒以内。11番手となったコナー・デイリー(エド・カーペンター・レーシング)までが同コンマ4秒以内とインディーカー・シリーズに実力伯仲ぶりは今年も凄まじい。

佐藤琢磨、今季最初のセッションは20番手
「リヤのスタビリティをもう少し上げたい感じです」

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 佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は2019年のバーバー・ウィナー。開幕前に一度テストを行っているが、シーズン初プラクティスでの成績は20番手だった。18ラップとこなした周回は平均以上だったが、ベストは1分07秒5349で、トップとは1秒0628の差があった。チームメイトのグレアム・レイホールは最多タイの22周を走り、ベストは1分07秒3100と琢磨より速かったが、ポジションは18番手にとどまっていた。
 「マシンのセッティングはオフのテストからの続きでしたが、ライヴァル勢のラップタイムが予想より速かった。テストの時より気温が暖かくなっているのにタイムが速くなっています。その辺りの事情がまだわかっていませんが……。プラクティス時間が短いので、試せる項目というのは決して多くはありません。テスト・アイテムとしてはふたつぐらいしかトライできませんでした。そして、それが良いトライアルだったのかが、最後にニュー・タイヤで走った時に確認し切れなかったんですよね。好いラップ・タイムが出るのが、みんな走り出してから3、4、5周目だったでしょう? だから、最後の走行は3周だったんで、好いタイムが出ても良かったんだけど、リヤが滑っちゃったし、前で土煙が上がっていたのも見えたのでアタックし続けるのをやめました。もう一歩前まで行きたかったですね。フロント・エンドが入ってリヤにスタビリティがあるクルマがベストだけれど、今の自分たちはどっちかと言うとリヤのスタビリティをもう少し上げたい感じ。そうできないと、タイムを上げて行こうという時にリヤが崩れる形になりますね。あとはレッド・タイヤを履いた時にどうなるか。ブラック・タイヤでのバランスはそこそこ良いものになっていると思います。午後のプラクティスではレッドを試します。そちらでロング・ランにまで漕ぎ着けるかどうかは時間的なこともあってわからないんだけれど、やってみます。レッドはブラックとのタイム差はあまりないかもしれません。ブラックでもうこれだけ速くなってますからね。ただ、レッドは速いタイムを出せるタイミングが早く来るから、ベストは2周目とかに来るかもしれないです」と琢磨はコメントした。

予選の焦点はポテンシャル不明のレッドタイヤ

 競争のレヴェルがまた一段高まっているとも見える状況から、予選ではQ1からトップ・チームであってもレッド・タイヤの投入がマストとなる見込み。レッドのライフがどれだけ短いかはまだ明らかになっていない。オフのテストでレッドが使われることはないからだ。路面のグリップが高まったことで、レッドのアタックは1周しかできないことになる可能性も考えられる。もしそうなら、ユーズド・レッドで戦うQ3はより一層難しい戦いになる。今シーズン初の予選は緊迫感漂うものとなりそうだ。

注目のルーキー、グロジャンは21番手
ジミー・ジョンソンは最後尾の24番手に

 

インディーカーを熱望していたグロジャン。今シーズン3人目のフレンチ・ドライバー Photo:INDYCAR(Joe Skibinski)クリックして拡大

 最後に注目のルーキー2人について。
 F1から乗り込んで来たロマイン・グロジャン(デイル・コイン・レーシング)はインディーカーでの初セッションで19ラップを走行。1分07秒5534のベストで琢磨のすぐ後ろの21番手だった。セバスチャン・ブルデイ、シモン・パジェノーに加わる3人目のフレンチ・ドライヴァーが誕生するとは……インディーカーも変わった。グロジャンは今日が誕生日! 35歳になった。

注目のジミー・ジョンソンは最初のセッションは最後尾 Photo:INDYCAR(Joe Skibinski)クリックして拡大
 

 そして、アメリカで注目度抜群のジミー・ジョンソン。NASCARの7タイム・チャンピオンは強豪チップ・ガナッシ・レーシングからのエントリー。彼がNASCAR時代に乗っていたシヴォレーでなく、ホンダ・エンジンを使うチームで走ることになったのは意外だった。驚きであったとさえ言える。シヴォレーへの貢献度は大きなものがあったが、45歳のルーキーへのサポートはなされなかった。デビュー・セッションとなった今朝のプラクティス、JJは”ルーキーらしく”22周という最多タイのラップ数をこなしたが、ベストは1分07秒9509で最後尾の24番手だった。トップとの差は1秒4788。ガナッシからの出場であることを考えると、この差は非常に大きいと言えるかもしれない。ジョンソンがトラブルなどナシに力を出し切っていた場合の話だが。F1での経験豊富なグロジャンとの比較をすると、二人の差は0.39775秒あった。こちらも差は大きかった。すぐ前の23番手だったマックス・チルトン(カーリン)との間にも0.1855秒の差があった。チルトンも元F1ドライヴァーだ。

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