2022年3月6日日曜日

2022 INDYCAR レースアナリシス R1 ファイアストン・グランプリ・オヴ・セイント・ピーターズバーグ :2022年開幕戦にルーキーは6人が出場

 

予選12位、決勝18位といずれもルーキー最上位をマークしたカークウッド Photo:Penske entertainment クリックして拡大

開幕戦のル―キー6人のパフォーマンスを診断!

 今年のNTTインディーカー・シリーズにが始まりました。
 今年は参戦するルーキーは6人。女性ドライヴァーのタティアナ・カルデロン(AJ・フォイト・エンタープライゼス)はストリート&ロードコースのみにエントリーする。
 開幕戦ファイアストン・グラン・プリ・オヴ・セイント・ピーターズバーグでの彼らのパフォーマンスを振り返って行こう。

Photo:Penske entertainment クリックして拡大

史上初の男、カークウッド、堂々予選Q2進出!

 最も活躍したのは昨年のインディー・ライツ・チャンピオン=カイル・カークウッド(AJ・フォイト・エンタープライゼス)だった。フロリダ州ジュピター(=フロリダ半島のセイント・ピーターズバーグのちょうど反対側=大西洋岸)出身の23歳はロード・トゥ・インディーの3カテゴリー(=USF2000、インディー・プロ2000、インディー・ライツ)すべてでチャンピオンになった史上初のドライヴァーでもある。インディーカーの予選はもちろん今回が初めてだったが、いきなりQ1をクリア(=ルーキーでは唯一。今回のQ1はパト・オーワード、佐藤琢磨、アレクサンダー・ロッシ、エリオ・カストロネヴェスもクリアできてないのに!)。Q2では最下位だったが、レッド・タイヤでの初めての走行が予選前のプラクティス2だったことを考えれば、このパフォーマンスは高く評価されるべき。

ルーキー最多のテスト回数をバックボーンに
いち早くインディーカーに習熟
サポート役ブルデイも貢献

Photo:Penske entertainment クリックして拡大

  カークウッドはルーキーの中では最多のテスト日数をこなすアドヴァンテージとともに開幕を迎えた。10月にバーバー・モータースポーツ・パーク、11月にインディアナポリスのロードコースでアンドレッティ・オートスポートのマシンをテストする機会を与えられ、フル・シーズン・エントリーの契約を結んだフォイト・チームのマシンもセブリングで1月にテスト。アンドレッティ・オートスポートに大きく劣らないマシン・セッティングをフォイトが持っているとの感触を得た彼は開幕直前にセブリングで2日連続のテストを行って開幕に備えた。その2日間のテストでは二人のチームメイトたち=ダルトン・ケレットとカルデロンも走った。
 さらに、開幕戦では昨年までフォイトで走っていたセバスチャン・ブルデイがカークウッドのサポートについた。彼の担当エンジニアのマイク・コリヴァーはブルデイと1シーズン以上を共に戦った仲。その経験豊富なドライヴァーが間に入ったことでエンジニアと新人ドライヴァーのコミュニケーションは深められた。レッド・タイヤに関してもカークウッドは有益な情報を与えられたのだろう。
 レースでのカークウッドはチームの選んだ3ストップ作戦が見事に裏目に出たため、予選順位より大幅ダウンの18位でのゴールとなった。しかし、レッドでもブラックでも彼のペースは良く、ドライヴィング・ミスなしでフル・ディスタンスを走破。タイトルを獲りながら着々とステップ・アップしてきたドライヴァーらしくデビュー戦でやるべきことをキッチリ理解し、実践した印象だ。

シングルカー・エントリーのハンディを負いつつ
スピードのあることをを見せたアイロット

アイロットは予選19位、決勝19位 Photo:Penske entertainment クリックして拡大

 次に健闘したドライヴァーはカルーム・アイロット(フンコス・ホリンジャー・レーシング)。彼はルーキーだが、昨シーズンの終盤3戦を経験している点でライヴァル勢を一歩も二歩もリードして開幕を迎えた。ただし、シリーズでたったひとつになってしまったシングル・カー・エントリーのチームで集められるデータ量が1台分のみ。先輩チームメイトからのアドヴァイスなし、データのシェアやセッティング作業の分担もできないの大きな不利だ。アルゼンチン出身オーナーの情熱は漲っているチームだが、インディーカーでの経験豊富なメンバーも少ないという厳しい体制。それでもGP3、F2でシリーズ3位、2位となってフェラーリF1のテスト・ドライヴァー、アルファ・ロメオF1のリザーヴ・ドライヴァーを勤めた実力の持ち主(似たキャリを持つもう一人のルーキー、クリスチャン・ルンドガールドより成績は良かった)とあって、昨年の3レースでインディーカーに十分に親しんだアイロットはセイント・ピーターズバーグでスピードのあるところを見せつけた。デビュー2シーズン目にチップ・ガナッシ・レーシングに抜擢されてチャンピオンになったアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)のように、彼には来シーズンに向けて強豪から声がかかるかもしれない。
 アイロットはレッド・タイヤを履いて19番手グリッドからスタートし、19周でピットに入り、そこからはブラックーレッドーブラックと繋いだ。結果は予選と同じ19位だった。

レイホールのカーナンバー30ルンドガールド
佐藤琢磨にパスされトップ10フィニッシュを逃す

琢磨をリリースしたあとのRLLの30号車のシートを得たルンドガールドは予選15位、決勝11位に Photo:Penske entertainment クリックして拡大

 上記の二人の他は昨年のインディー・ライツでランキング2位だったデイヴィッド・マルーカス(デイル・コイン・レーシング・ウィズHMD)、昨年1レースだけ出場しているデンマーク出身、アルピーヌF1ジュニア・チームにいたクリスチャン・ルンドガールド(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)、日本のスーパー・フォーミュラを走っていたコロンビア出身のカルデロン、そして、インディー・ライツで昨年走っていたイタリア系カナダ人のデヴリン・デフランチェスコ(アンドレッティ・スタインブレナー・オートスポート)が今年のルーキーだ。

デフランチェスコは予選18位、決勝では3周遅れの22位。レースのフィニッシュ直前、トップ争いマクロクリンとパロウの前をせき止める形で走行を続け、思わぬ形で目立ったインディーカーデビューとなった Photo:Penske entertainment クリックして拡大

 予選15位だったルンドガールドは、終盤に佐藤琢磨(デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR)にパスされて惜しくもトップ10を逃し、11位でゴールした。それでも初のストリート・レースで彼は手堅く経験を重ねていた。ルーキーの開幕戦としては決して悪くない成績だ。

女性ドライバー、カルデロンもしっかり完走
シーズン前好調だったマルーカスはクラッシュ


カルデロンは予選25位、決勝は3周遅れの24位 Photo:Penske entertainment クリックして拡大

  昨年ミッド・オハイオでインディーカーを初めて走らせ、オフのテストを開幕直前のセブリングで2日間だけ遂行したカルデロンは、予選25位でグリッド最後尾からデビュー戦のスタートを切った。「インディーカーのステアリングは重い。そして、レースは長い」とレース前に言っていた彼女だが、ゴールまでしっかり走り切り、ピット・ストップも、レッド・タイヤでの走行も経験したことは次のロング・ビーチ以降に向けて大きな収穫となった。
 

マルーカスは開幕前の好調をセイント・ピーターズバーグでは発揮できず Photo:Penske entertainment クリックして拡大

  最後は予選24位だったマルーカス。昨年10月にバーバー・モータースポーツ・パークでデイル・コイン・レーシング・ウィズRWRのマシンに乗ったのがインディーカー初テストだった彼は、そこでトップ・タイムを出し、次にインディアナポリス・モーター・スピードウェイのロードコースで今度はチーム・ペンスキーのマシンに乗った。そして、開幕前にセブリングで2日連続のテストを実施。その1日目にはプッシュ・トゥ・パスを使ったとはいえ、コルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジェニアン)に続く2番手のタイムを出した。開幕に至るまでのパフォーマンスが良かっただけに意気込み過ぎたのか、マルーカスは今回のレースで唯一クラッシュをしてしまったドライヴァーとなった。救いは壁にぶつかるまでの21周に渡ってレッド・タイヤを経験できたこと。しかし、彼はまだ20歳。インディー・ライツ6勝の実績も持つ彼もカークウッド同様に将来を有望視されているアメリカ人ドライヴァーだ。
以上

1 件のコメント:

  1. こんなに新人が加わっているとは(こういうところも違いますね、F1と)。

    そして佐藤琢磨選手の偉大さを改めて認識した次第です。

    返信削除