2022年7月31日日曜日

2022 INDYCARレポート R13 ギャラガー・グランプリ Race Day 決勝:アレクサンダー・ロッシが2019年6月以来となる優勝

 

思い描いたものとは全く違う状況に直面してきた日々にロッシはこの勝利でピリオドを打った。「今日勝てたことで、また勝てると考えられる状況に自分たちは戻ることができたと思う」Photo:Penske Entertainment (James Black)クリックして拡大

 3年あまりの雌伏、さらに来季の移籍決定を経て
ついに優勝!


 アレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)は今日キャリア8勝目を挙げた。
 デビュー年だった2016年に第100回インディー500で優勝。2年目にはワトキンス・グレンで、3年目にはロング・ビーチとミッド・オハイオでライヴァル勢を圧倒するポール・トゥ・ウィン。ポコノでシーズン3勝目を挙げてランキング2位となった彼は、さらに勝ち星を重ねてチャンピオンになるもの……と考えられていた。

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 しかし、2019年にロング・ビーチでの2年連続優勝とロード・アメリカでの勝利を飾った後、ロッシは急に勝てなくなった。速さを見せたときにトラブルに見舞われ、アクシデントに巻き込まれることが重なり続けた後、予選でも決勝でも上位に来ることが少なくなっていった。2020年と2021年、ロッシは勝ち星なしで、表彰台は2020年には5回あったが、2021年はそれが3回にまで減った。
 今年もロッシは開幕戦と第3戦ではピットでのトラブル、第2戦ではマシンが壊れて……と負のスパイラルから抜け出せずにいるかに見えていたが、インディ500での5位フィニッシュで上昇気流を掴んだ。その頃、彼は自らのキャリアに関する大きな決断を下してもいた。“今年限りでアンドレッティ・オートスポートを離れ、来年からはアロウ・マクラーレンSPで走る”とロッシはデトロイトで発表した。「今シーズンの最後までアンドレッティ・オートスポートで全力を尽くす」と宣言した彼は、デトロイトで2位に入り、続くロード・アメリカでも3位と連続表彰台フィニッシュ。
 ミッド・オハイオでチームメイトのロマン・グロジャンと2回以上ぶつかるドタバタ劇を演じ、その精神状態が心配されもしたが、今日、インディアナポリスで2019年の6月以来となる勝利を挙げた。


チームメイトのハータ、またもマシントラブル
この間にロッシがレースリーダーに

瞬く間にトップを奪い、順調にレースをリードしていたハータだが、ミッショントラブルでリタイア Photo:Penske Entertainment クリックして拡大

 9番手スタートだったコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジェニアン)は、ロッシと同じブラック・タイヤ装着だったが、僅か6周でロッシまでをもパスして2番手に浮上。その後にポール・スタートだったフェリックス・ローゼンクヴィスト(アロウ・マクラーレンSP)も抜いてトップに立った。ロッシも彼に続いてローゼンクヴィストをパスしたが、ハータがレースをリードし続けた。しかし、ここでハータは駆動系トラブルでストップ。ロッシはトップに立ち、そこからゴールまで突っ走った。


バックマーカーの処理に手こずりながらも
ルンドガールドにスキを与えずにフィニッシュ!

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 3回目=今日最後のピットストップではリヤタイヤ・チェンジャーのエアレンチがホイール・ナットから外れにくくなってタイム・ロス。4秒以上あったリードが2秒半ちょっとまで減ってしまった。その次にはバック・マーカーがロッシの頭を悩ませることになった。ゴールまでまだ20周近くあった67周目、彼はジミー・ジョンソン(チップ・ガナッシ・レーシング)に追いつき始めると、そのタービュランスでマシン・コントロールに苦労し始め、2番手を走ルーキー、クリスチャン・ルンドガールド(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)との差が急激に縮まった。なんとかパスを成功さあせ、ルンドガールドジョンソンの後ろにスタックしている間にリードは4秒以上に戻った。すると今度はダルトン・ケレット(AJ・フォイト・エンタープライゼス)がロッシの前に登場。彼の後ろに3周つっかかってリードは4秒1から2秒3まで減少し、さらにはマシンのリヤから白い煙まで立ち上り始めた。

ルンドガールドはロッシを脅かすまでには至らなかったものの、ハイペースを保ち続けて自己最高位の2位 Photo:Penske Entertainment クリックして拡大

 目前の勝利をロッシは手放すことになるのか……とも思われたが、煙はどこかに消えてロッシはゴールまでトップの座を守り抜いた。「バック・マーカーたちはプッシュ・トゥ・パスを防御的に使用してまでリード・ラップに留まり続けようとしていた」とレース後のロッシは、その件に関するルール改正の必要性をレース後に訴えた。

「今日こうして勝つことができ、肩の荷が下りた
この勝利で、勝てる!と考えられる自分たちに戻ることができた」

 ハータがトラブルで消えたことによる勝利ではあったが、これまで幾つもの不運に見舞われてきたのがロッシなのだから、ライヴァルの不運が味方してくれての勝利は”アリ”。ルンドガールドも素晴らしい走りを見せ続けたが、ロッシにアタックするだけのスピードはなかった。今日のレースではアンドレッティ勢のロッシとハータがライヴァルたちより頭ひとつ抜け出した速さを実現していた。

ハータから祝福を受けるロッシ。チームの後輩であるロッシの後塵を拝してきたことの影響は本当になかったのだろうか? Photo:Penske Entertainment (James Black) クリックして拡大

 「長い間勝てなかった。でも、そのことで自分たちにストレスがかかっていたかどうかはわからない」とレース後にロッシは言った。精神面でのプレッシャーから、速かったりそうでなかったりの波が大きくなり、ミスも冒していたように見えていたが、彼はそう考えてはいなかったというのだ。「僕らは良い走りをした時も多かった。“勝てていない”という現実が頭の片隅にあり続けていたのは確かだが、それによってパフォーマンスが影響を受けていたと自分では考えていない。チームも自分も勝てていないことで厳しい立場に置かれていた。(オーナーの)マイケル(・アンドレッティ)にとっても大変な日々だったと思う。2019年を迎えるにあたって自分たちの抱いていた期待とは、まるで違う現実にこの2年半ほどは直面し続けてきた。しかし、今日こうして勝つことができ、肩の荷が下りた。ほっとした。いまの気持ちを言葉にするのは難しい。何もかもがうまく行かない状態が続くと、いろんなことに疑問を抱いてしまうものだが、自分たちは勝ったことがあるというのを忘れないで、もう一度勝てると信じ続ける必要があった。今日勝てたことで、また勝てると考えられる状況に自分たちは戻ることができたと思う」とロッシは語った。
 アンドレッティ・オートスポートで走っている間にもう一度勝ちたい。ロッシは強く思っていた。それが今日実現した。来年彼が加わるアロウ・マクラーレンSPにとっても、今日の勝利は大きな価値がある。

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 「残り4戦では、来週のナッシュヴィル、最終2戦のポートランドとラグナ・セカで我々は高い戦闘力を発揮できることと思う。セイント・ルイスでも良いパフォーマンスを見せたい。今日、自分たちは良い流れを手に入れた。ずっと勝てていない……という状況は過去のものになった。シーズン終盤戦を力強く戦い抜くのみだ」とロッシは目を輝かせていた。

3位フィニッシュしたウィル・パワーがポイント・リーダーに

オープニングラップでのオーワードとの接触や、その後にカストロネヴェスに割り込まれてラフに押し出されかかったりなどで大きく順位を落としたパワーは、5周目にピットインする戦略に切り替えてポジションアップに成功する。同じピットシークエンスを選んだオーワード、佐藤琢磨を引き離し、シヴォレー最上位の2位に Photo:Penske Entertainment クリックして拡大

 予選4位だったウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が3位で表彰台に上り、最後尾スタートだったマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)は11位止まり。2022年シーズンも残り4戦となって、ついにポイント・リードがパワーの手に渡った。
 「スタートはクレイジーだった。ちょっと酷いのでは? というドライヴィングをする者があった。みんなが本当にアグレッシヴに走っていて、優勝するのは本当に難しい。どのポジションでも激しい競い合いが繰り広げられている世界一厳しいシリーズ、それがインディーカーだ。レースを通してトラブルやミスを避け、ピット・クルーも完璧な仕事をしてくれないと、今日のような結果は得られない。16番手までポジションを下げた自分たちが大きなリカヴァリーをして3位フィニッシュできたのだから、本当に嬉しい。トラブルに巻き込まれず、3位でゴール。素晴らしい1日になった」とパワーは喜びを語った。

「今のインディーカーは予選も決勝も予測は一切不可能
どんなレースでも自分に獲得可能なものをすべて手に入れる
それだけを目指して戦わねばならない」


 「高い安定性を保ち続けてポイント・レースをリードする。今年はそれを最初から目標に掲げていた。長期的視野を持っての戦いを行っていく。それを我々は実践し続けてきている。自分たちがわかっていることだけをやる。それが今年の私だ。長年戦ってきているインディーカーのことはとても深く理解をしている。ほんの小さなことで流れがあっという間に大きく変わってしまうことも知っている。どのレースでも自分に獲得が可能なものをすべてを手に入れる。それだけを目指して戦わなくてはいけない。今日は燃費の状況が非常に厳しい中でも3位になれた。最高にハッピーだ」とパワーはコメントし、「残り4レース、チャンピオン争いをする者全員にプレッシャーはかかる。しかし、私はいかにしてリラックスするかなどを長年の経験によって十分に理解している。いまのインディーカー・シリーズではPP獲得者もウィナーも絶対に予想して当てるなんて不可能。来週のレースがどんな展開になるか、まったく読めない。トロントのようにワイルドな戦いになるのか、全然アクシデントなどもないクリーンな展開になるのか、全然わからない。最終戦のラグナ・セカを迎える時、誰と誰、何人がタイトル争いに残っていて、それぞれの点差がどれほどになっているか、一切予測はできない」と自分に言い聞かせるようにパワーは話した。誰にも負けないスピードや、出場する全レースで優勝を目指すスタイルから、最善を尽くして考え得るベストのリザルトを目指して天命を待つ……という戦い方にシフトしたパワー。その新手法で二度目のタイトル獲得はなるだろうか。ギャラガーGP終了時点でパワーは2番手のエリクソンを9点リードしている。3番手のジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)との差は32点。4番手のスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)には38点、5番手パト・オーワード(アロウ・マクラーレンSP)には46点の差をつけている。
以上

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