2012年7月15日日曜日

2012 INDYCAR レポート:なぜ、インディカーは弱腰なのか? レースシリーズ主催者と出場チームオーナーの関係を考察

アメリカンオープンホイールの歴史は
シリーズ側とチームオーナー側の権力闘争史? インディーカー・シリーズを所有、運営しているのはインディーカーで、インディアナポリス・モーター・スピードウェイとは親子関係にある(スピードウェイが親)。
 チャンピオンシップがないと、チームオーナーはレースに出場できない。しかし、シリーズ側としても、多くのチームが出場してくれないと盛り上がらない。
 両者は持ちつ持たれつの関係にあり、力関係をどう保つかは非常に難しい。
 70年代に終わりにCARTができたのは、オーナー側の意見が強くなり過ぎてしまったパターンだった。シリーズ側であったUSAC(ユナイテッド・ステイツ・オート・クラブ)にも悪い点はあっただろうが、出場する側が主張を強くし過ぎる状況になって、自分たちでシリーズ運営を始めてしまった。
 残念ながら、CARTはオーナー尊重が過剰になって、シリーズの長は操り人形化。自動車メーカーが複数参戦し、彼らの意向が強く働いていた時代にはまだ何とかなっていたが、ダメ・シリーズ化に歯止めがかけ切れずになり下がって行った。そんなだから、スピードウェイのトニー・ジョージが新設したインディー・レーシング・リーグ(IRL)なんていうCART以上にダメなチャンピオンシップと競い合い、最終的に負けてしまった。


いまだに克服できないトニー・ジョージ時代の負の遺産
 IRLは最近、INDYCAR=インディーカーに名称&体制変更。ランディ・バーナードがインディーカーのCEOに現在は就いている。ジョージはお家のお金を浪費し過ぎたと批判を受けて権力を奪われた。
 しかし、ジョージ時代の負の遺産として、シリーズ主催者=サンクショニングボディーには弱腰の気風が残されている。ジョージが多くの部門に適材でない人材を起用していたものだから、オーナーたちの意見の方が正しかったり、あるいは、彼らの強く押す意見が通ってしまうことが多くなり、今もその悪影響が残ったままになっている。08年からほぼ全部の元CARTチームも参戦するようになって、またまたオーナーたちは力をつけ始めている。
 バーナードは、技術を含むレース運営面で良い人材採用をやって来ている。それが今年のエキサイティングなレース実現に繋がったと思う。
 次は商業部門の強化が必要だ。IZODは今年限りでタイトル・スポンサー降りてしまうなんていう噂もあることだし(5年契約のはずなのに、途中で解約?)。ついでに書くと、メディアを担当する陣営ももう少し勤勉なものへと体制変更、あるいは強化をして欲しい。


エアロキット導入問題はこのまま実現しないのか?
 オーナーたちの権力増強は、エアロキット導入に関して顕著に現れている。ようやく今年から導入された新型シャシーは、どのようなシャシーとするか、どのコンストラクターに任せるか、などを決定するためのグループ(=アイコニック)をインディーカーが作って、彼らがセイフティセルのサプライヤーとしてダラーラを選んだ。アイコニックは、新シャシーはエアロキットの競争とセットで導入することを決めた。ところが、オーナーたちの反対によって今シーズンのエアロキット導入は拒まれ、来年も2年続けて採用ナシということになりそうだ。オーナーたちが「お金がかかり過ぎる」と反対しているからだ。もしかしたら、このままエアロキット導入は、DW12時代には実現しないかもしれない。

インディカーよ信念を持て!良いお手本はNASCARにあり
 こうしたオーナーの声などズバーンッと却下して、自分たちの作ったグループ=アイコニックの決めたことを実現しなくちゃ。そういう気概、信念がインディーカーには欲しい。
 サンクショニングボディーは、もっともっと今よりも強くなくちゃいけない。そういう点でNASCARは良いお手本だ。「文句のあるヤツは出場してくれなくて結構!」という強気ぶり。もちろん、出場メーカーは時として協力し合い、シリーズがヘンな方向へと向かい始めた場合には、それを修正すべくサンクショニング・ボディーに働きかけている。オーナーたちも集まって陳情、要請ということは行っている。NASCARは完全な専制君主として君臨しているのではなく、オーナーたちとの協議を行っている。
 インディーカーは、ルール違反をしたチームにもっと厳格に対応しなくちゃダメだ。今のままでは、フェアプレーが行われていないシリーズという印象を世間に持たれてしまいそうだ。

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