2013年4月17日水曜日

2013 INDYCAR レースアナリシス R2 アラバマ タイヤ・ストラテジー:ウィナーはフレッシュ・レッドをファイナルスティントで使用

スタートから3連続でレッドを選んだエリオ Photo:INDYCAR(Chris Jones)
カストロネベス、レッド→レッド→レッドの奇策でトップに

 エリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)が予選6位からトップに立った。どうやって? ピット・タイミングが良かった? ピット作業が速かった? どちらも正解の一部だったと思われる。しかし、一番の要因はスタートからレッドを3連続投入したタイヤ作戦にあった。奇抜と表現していい作戦だったが、見事に成果が得られた。オマケに、チームメイトのウィル・パワーが2ストップ作戦に出て、レース半ばにRHRの前を走る展開となったもんだから、まるでエリオを逃がす援護射撃のようにパワーはRHRの前に立ちはだかり続けた。
誤算だったファイナルスティントのブラックの性能

 エリオのリードは10秒以上に広がった。しかし、ファイナルスティントを彼はユーズドブラックで走らねばならなかった。ルールによって2種類両方のタイヤを使うことが義務づけられているからだ。スタートからレッドを使い続けたので、最後のピットストップでは選択の余地ナシでブラックを投入せばならなかった。
 レース終盤、レッドを履くライバルたちを相手にエリオはトップを守り切れなかった。開幕戦とは違い、ゴール前に性能で優位にあったのはレッドの方。エリオは3位になった。6番グリッドからの表彰台登壇ならヨシとすべきところか……。


最後をレッドで戦う自分のスタイルで勝利したハンター-レイ

 優勝したのはライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)=RHR。彼は最終スティントにフレッシュレッドを投入する彼の好みのパターンで今回も戦っていた。スタート時に履いたユーズドレッドで26周を走り、最初のピットストップでブラックにスイッチ。セカンドスティントは17周と短くして、2回目のピットストップでユーズドレッドを装着した彼は23周を走った。ファーストスティントより3周短いが、ここではペースカーランがなかった上、ブラックタイヤ装着で前を走るパワーをパスしようと躍起になってタイヤに負担をかけた……といった理由による。

同じタイヤ戦略のディクソンだったが、猛追及ばず

 そして、ファイナルスティントは前述の通りに新品のレッド。これが期待通りの威力を発揮、エリオを抜いてトップに立つと、ゴール前のスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)のチャージもかわしてチェッカードフラッグを受けた。
 ディクソンのタイヤストラテジーはRHRと同じだった。ただ、ディクソンが最後のピットが66周目だったのに対し、RHRは2周後の68周目だったので、レッドで戦うべき距離の短さがアドバンテージとなっていた。ディクソンは78周目に自身のファステストラップを記録して猛チャージをかけたが、逃げるRHRも自らのレース中のファステストラップを83周目に出し、オーバーテイクを許さなかった。
 

佐藤琢磨、ファーストスティントを早めに切り上げたことが裏目に

 12番手スタートだった佐藤琢磨(AJ・フォイト・エンタープライゼス)のタイヤ使用は、フレッシュレッドで始まり、次がフレッシュブラック、レース後半には2セットのユーズドレッドを続けて投入するというパターンだった。
 1回目のピットは23周を終えたところ。フレッシュレッドとしては早めだったが、それはブラックでペースの上がらないマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)の後ろに続く列に入ってしまったからだった。
 フレッシュレッドでスタートするメリットは、最初の数周とスティント終盤にポジションアップできる可能性が高まる点。琢磨はスタートとリスタートで3つ順位を上げた。フレッシュレッド装着のメリットの半分はキッチリ享受した。しかし、スティントを早めに切り上げたことで残り半分のメリットはギブアップした形になった。実際、膠着状態に陥ったレース序盤に琢磨の目の前を走っていたパワーは、フレッシュレッドでスタートから31周を走り、ピットストップ1回目の後の順位は5位にまで上がっていた。対する琢磨のポジションは、ピットの後に13位に下がっていた。


タイヤ戦略の新たな焦点はセカンドスティント!?

 中団の12位グリッドだった琢磨としては、スタート用にユーズドレッドは選びにくかったのかもしれないが、それならファーストスティントはフルタンクの燃料がなくなるまで長く走る作戦に拘るべきだったと思う。これを結果論と言われてしまえばそれまでだが……。セカンドスティントにブラックを、というのは今回のレースでも多くのチームが使った作戦。このパターンはこれまで多くのサーキットで頻繁に見られたパターンだ。そこで考えられるのが、独自の、他とは違う作戦でアドバンテージを手に入れる戦い方。レースのどの部分で順位が一番動くのか、あるいは自ら動かすことができるのか……見極めが良ければ大きく順位を稼ぐチャンスが得られる。例えば、スタートからの2スティントでレッドを連続使用するエリオの今回の作戦がそれだった。琢磨陣営もセカンドスティントにユーズド、もしくは大胆にフレッシュのレッドを突っ込む手があったように見えた。ポジションゲインに適しているのはスタート後とゴール前というのがセオリー化しているが、セカンド・スティントがそうなる今回のようなレースは意外に少なくない。
以上

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