2018年5月22日火曜日

2018 INDYCAR レポート 第102回インディアナポリス500 Day6 予選:佐藤琢磨、予選2日目にスピードアップ

Photo:INDYCAR (James Black) クリックして拡大
 ポール・デイの朝、明るい表情となった佐藤琢磨
「昨日よりマシンはだいぶ良くなった。やっとあるべき姿に戻った感じ」

 ポール・デイの朝、プラクティスを終えた佐藤琢磨がピットロード裏を電動キックボードで軽快に走って来た。
 「マシンがちょっと良くなった。まだ究極のスピードっていうのかな? それを上げなきゃいけないけど、暑さへの合わせ込みは昨日より大分良くなった。やっとあるべき姿に戻った感じ」と話す表情は昨日の険しさとは違い、随分と明るくなっていた。
「ここからドラッグを減らすのは苦難の仕事だけれど、少なくとも226mph台の上の方は狙えそう。単独で226mphは出せる。4ラップが安定した予選としたい」と言った後、琢磨はファンの求めに応じてサインをし、ガソリン・アレーに戻って行った。

昨日33番手だったディヴィソン、驚異の226mph!
 今日もインディアナポリスは好天。10〜33番グリッドを決める予選グループ1が始まる午後2時45分、気温は29℃だった。インディーカーの計時チームのモニターには湿度50%と表示がされていたが、それ以上に感ずる蒸し暑さともなっていた。
 昨日のスピードが遅かった順にアタック。最初がジェイムズ・デイヴィソン(フォイト・ウィズ・バード・ホリンジャー・ベラルディ)。驚きの226.255mphを記録。2日目にはクラッシュ。予選落ち候補の筆頭に躍り出、昨日ギリギリ予選通過を果たした彼だが、好調のAJ・フォイト・エンタープライゼス本家の2台、トニー・カナーンとマテウス・レイストの助けを得てスピード・アップして来た。
 次はコナー・デイリー(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・トム・バーンズ・レーシング)。こちらは絶好調セバスチャン・ブルデイからの好影響が期待できるチームのはずだが、214mph台と苦しい数字しか出せなかった。

そしてレイホール軍団3人が連続のアタック
セルヴィアはスピードアップに成功、レイホールはいまひとつ


レイホール軍団の最初のアタッカー、セルヴィアがコースイン Photo:INDYCAR (Mike Harding) クリックして拡大
  3番目は琢磨のチームメイト、オリオール・セルヴィア(スクーデリア・コルサ・ウィズ・レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)だ。スポット参戦の彼だが、経験は十分。今年のエアロキット開発ドライバーを務めた。彼のアタックは1周目が2126mph台に乗り、225.699mphに。昨日からハーフ・マイルのスピード・アップだ。
 次がグレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)。今年のプラクティスで最も苦しんで来た印象の彼は、まだスピード・アップは不十分で225.675mphがベスト。4周目は224mph台に落として平均225.327mphという数字に終わった。
 レイホール軍団は3人連続のアタック。もう琢磨の順番だ。気温は29℃と変わらないが、太陽が照りつけ、路面温度は51℃に上がっていた。

佐藤琢磨、ゆったりとしたウォームアップからアタック開始
プラクティス直後のコメント通りの走りで暫定トップに


 ウォーム・アップのスピードは217.819mph。チームメイト2人は225mph台まで上げていたが、琢磨は緩やかなスピード・アップでタイヤを気遣っていた。そして注目の1周目……226.856mph。朝のプラクティス直後に話していた通りの数字が出た。2周目は226.637mph。このぐらいのドロップは許容範囲だ。コクピット内でツールを操作し、さ後半の2周を高いままに保つことができるか?
3周目は……226.468mph。そして4周目は226.268mph。琢磨のアタックはこの時点までで最速となる226.557mph。プラクティス直後のコメント通りとなる走りを、この日一番暑いコンディションで実現して見せた。
 マシンを降りた琢磨から笑顔がこぼれた。同時に安堵の表情も。ディフェンディング・ウィナーにメディアが殺到した。

「アタックを全ラップ226mphに乗せられ、戦略もよかったと思います」
 「ちょっと速くなると、急にみんな聞きに来るよね」と琢磨。レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの苦戦ぶりは明白だったので、アメリカのメディアも遠慮していたのだ。
 マシンは確実に良くなっているのか、琢磨に聞いた。
 「予選アタックに出て行く列の中で”ダウンフォースをつけて行こう”という話になりました。結局、ここまで何をやっても究極のトップ・スピードっていうのを残念ながら手に入れることができていないんですよね。だからウィングを軽くして行っても、確かにタイヤがフレッシュな1周目は今日僕が今出したスピードよりも、もしかして0.5mphぐらい速くて227mphに乗せられたかもしれないけど、その後が多分、タイヤのデグラデーションとかでスピードが落ちちゃうかもしれないので、この際、遅いなら遅いなりにコンシスタンシーというか平均値で行こうと。それで実際に、アタック4周を全部226mph台に載せられたので、そういう意味では戦略も良かったと思います。今日の朝に試したことが非常にポジティヴに働いていて、クルマのバランスも大分良くなっていました」と琢磨は説明した。

チームメイト2人がウォームアップからハイペースだったのに
琢磨がウォームアップのスピードを落とした理由とは?


 ウォーム・アップのスピード・コントロールについて尋ねると、「極端にダウンフォースを落とした時などはタイヤも労らなきゃいけないのだけれど、ターン1に入って行く時のフィーリングを確認したいんです。だからウォーム・アップを速くしたりするんだけど、今日に関して言えば自分はダウンフォースがあるのがわかっていたので、ラインもコンパクトだったと思います。それだけ走る距離を短くして、4ラップを平均で高くする。スピードは遅いかもしれないけれど、そこで稼ぐ戦略。それで走るしかなかったんです。自分は抑え目のウォーム・アップ・ラップで、チームメイト2人はプッシュ気味していた。それは彼らが今日の予選に向けて大幅にクルマを作り変えたからですよ。朝のプラクティスでは3台のセッティングを分けました。僕のはコンサーバティブなものだったんですけど、昨日からひとつ非常に大きな変更をやりました。他の2台は大きくセッティングを変えて走って、良かったところもあったけれど、スピードを乗せられなかったので、基本的には僕のセットアップに近いものをインストールしたんです。だから、彼らはウォーム・アップ・ラップで感覚を見たかったんでしょうね。僕はそこには余裕があったので、抑え目に行って、タイヤを持たせて……という走りを目指しました。本当にクルマに乗り込む直前までエンジニアのエディー(・ジョーンズ)と電話で話して、ダウンフォースを決めて行きました(エンジニアはテレメトリーで走行データをチェックする必要があるのでチームのピット・ストールに陣取り、琢磨は予選スタートを始めるピット・ロードの入り口側と離れた場所にいたため)。予選に行くのにダウンフォースをつけるっていうのは気分的にはあまり嬉しくないんだけれど、でも、自分たちの置かれている状況を考えればそれがベストだと思ったので、それで行きましたね」と琢磨。一部で諦め、違う部分でスピードを確保する。ベテラン・ドライバーとベテラン・エンジニアのコンビでなければ選択肢にくい決断が下されたということらしい。

決勝に向け、マシンの状況は一気に上向きに
「いま、80%まで上がってきているかも」


 予選での進歩が琢磨の表情をさらに明るくしていたのは、スピード・アップを果たしたセットアップが決勝にも使えるものだからだ。予選2日目にして新エアロキット装着マシンがようやく自分たちが考える通りに動き出した。セッティングの変更とハンドリングの変化が考える通りのリンクをするようになった。
 「これはレースに向けても大きな前進です。予選というのは、ダウンフォースをつけると言ったって、やっぱり軽い状態。クルマの動きがより明らかに見えて来るので、足回りなどのセッティングというのはかなりレースにも通用するところが多いんですよ」と琢磨は語った。
 予選前日のファスト・フライデイを終えた時、琢磨をはじめとするレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのマシンは仕上がり具合が非常に低かった。しかし、今日の予選で一気に状況は上向いた。
 「今、80パーセントぐらいまでマシンの仕上がり具合は上がって来てるかも。だけど、ここからの20パーセントってすごく大変だから。それに、まだまだトラフィックでの走りがわからないので……。少なくともクルマの安定感と、フィーリングから考えればファスト・フライデイの終わりと比べれば、非常に良くなっていると思う」。

コインとアンドレッティがリードする現状のホンダ陣営内バトル
レイホールはここから追撃態勢へ

 4時半過ぎ、10番グリッド獲得の最有力候補だったアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)が32番手に転落する”事件”で予選第1グループは終了。昨日のジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)の予選落ちといい、インディー500は本当に何が起こるかわからない。厳しい状況を抜け出し、明るい兆しを見つけつつある琢磨のスターティング・グリッドは16番手に決まった。トニー・カナーンとマテウス・レイストのAJ・フォイト・エンタープライゼス・コンビ、マルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・ハータ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジェニアン)、ブルデイのマシン作りの恩恵を得ているザカリー・クラマン・デ・メロ(デイル・コイン・レーシング)、ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)、プラクティスでの好調からは失速気味だが、何とか最後の粘りを見せたカーリンのチャーリー・キンボールが琢磨を上回ったものの、昨日の29番手から一気に16番手まで琢磨はジャンプ・アップした。”ザ・ビッゲスト・ムーヴァー”は33番手から19番手に14順位を上げたデイヴィソン。クラマン・デ・メロも琢磨と同じく13のポジション・アップを果たした。
 ホンダ陣営内でのバトルはコインとアンドレッティがリードし、ガナッシが彼らを急追中。その戦いに食い込んで行くきっかけを彼らはインディの長い戦いの中でしっかり掴み取らなくてはならない。

以上

0 件のコメント:

コメントを投稿