2019年3月19日火曜日

2019 INDYCARレポート 3月17日 第67回モービル1セブリング12時間 プレゼンテッド・バイ・アドバンス・オートパーツ 決勝 :キャディラック軍団の壁厚く

開幕戦で1-2を飾ったキャディラックDPiは、セブリング12時間では表彰台を独占。耐久マシンとしての完成度の高さを見せつける結果に Photo:LAT Images クリックして拡大

雨中のスタート、PPのアキュラは序盤で電装トラブル発生
 フロリダ州セブリングでの12時間耐久レースは雨の中でスタートし、2時間ほどで曇り空になって、路面は瞬く間に乾いて行った。ドライコンディションのレースではフルコース・コーションがほとんど出されず、かなりのハイペースでバトルが続けられた。
 金曜日の予選でポールポジションと予選3位という好結果を残したチーム・ペンスキーのアキュラARX-05だったが、デイン・キャメロンの乗るポールシッターは雨のためか電気系にトラブルを出し、早々に遅れを採った。、もう1台もタイヤの内圧設定が高過ぎてハンドリングが悪く、こちらもスタート直後にトップ争いから脱落した。なんとも、ペンスキーらしくない出足だった。それでも、レースは12時間もの長さ。挽回は不可能では無いはずだった。


奮闘したペンスキーのカーナンバー7のカストロネヴェス/リッキー・テイラー/ロッシ組のアキュラDPi。トップと同一周回での4位 Photo:LAT Images クリックして拡大
レースをリードするキャディラックDPiアキュラもペースアップして前を追ったが……
 レースは3年前のDPi初年度からキャディラックを走らせて来ているアクション・エクスプレス・レーシング2台がリードし、マツダは折り返し点まで1台がトップ争いに残っていた。ニッサンは昨年のセブリング・ウィナーだが、そのチームはもう参戦していない。彼らからマシンを買い取ったチームが、トップ・グループの後ろで淡々と周回をこなしていた。
 2台のアキュラは、トップグループとほぼ同等のラップタイムで走り続けていた。スピードはあったが、同ベースでは差が縮まって行かない。カーナンバー7を任されていたキャメロン、カーナンバー6に二番手で乗ったリッキー・テイラー、二人の若手はチームのミスによる遅れを取り戻そうとプッシュをし過ぎたようだ。名門チームの起用に応えようと力が入り、彼らはコーフオフやスピンによって傷口を広げてしまった。

キャディラック勢1-2-3!と開幕戦に続いて圧勝
 2台揃って周回遅れに陥ったアキュラ。若いドライバーたちを責めるのは簡単だが、そうしたミスが起こらないように、両ピットに陣取る指揮官は先回りした行動を取っていたのだろうか。チームに貢献したいという考えに囚われがちな彼らの心理を理解し、精神面を支える細やかな無線による声掛けができていたら、彼らは冷静に為すべき仕事をこなすことができたはずだが……。
 結局、序盤に負ったダメージが大き過ぎ、予選で上位に並んだアキュラは決勝での優勝争いをとうとう行えないまま今年のセブリングを終えた。レース後半は、キャディラック軍団だけによるトップ争いが繰り広げられた。ゴール間際になってカーナンバー7のアキュラがリード・ラップに復帰した。諦めずに戦い続ける姿勢、名門チームならではの士気の高さとそれを評価することはできるかもしれないが、そこからの彼らが優勝争いに斬り込んで行くシーンは見られなかった。周回遅れのゴールというリザルトが避けられただけだった。トップ3を走るアクション・エクスプレス・レーシングとウェイン・テイラー・レーシングの合計3台のキャディラックDPi-V.Rは、アキュラARX-05より僅かだが確実に速いペースで優勝の栄誉を競い合い、ゴールへと雪崩れ込んだ。勝利を飾ったのはフェリペ・ナサール/エリック・キュラン/ピポ・デラーニ組=アクション・エクスプレス・レーシングのカーナンバー31だった。デイトナで2位となって味わった悔しさをセブリング制覇で彼らは晴らすこととなった。2位はそのデイトナ・ウィナー、ウェイン・テイラー・レーシングのトリオ、ジョーダン・テイラー/レンガー・ヴァン・ダー・ザンデ/マテュー・ヴァシヴィエールだった。フェルナンド・アロンソと小林可夢偉の助けなしでも彼らは優勝まであと一歩に迫った。3位はウィナーのチームメイト・マシン(ジョアン・バルボサ/ブランドン・ハートリー/フェリペ・アルバカーキ)。

速さはあるアキュラDPi、
レースでの課題はターボの利点を生かす戦い

 セブリングではキャディラックによる表彰台独占がなった。2戦とも予選でポール・ポジションを獲得できていない彼らだが、開幕戦デイトナ24時間での1-2フィニッシュに続き、セブリングでも圧勝。DPiタイトルを獲得するのは、今年もキャディラック・チームとなりそうな勢いだ。少なくとも今までのところは……。
 昨年からフル・シーズン・エントリーしているアキュラ。チーム・ペンスキーとのコンビでの参戦には、初年度から勝利を重ねることさえ期待されていた。デビュー4戦目にして昨年ミッド・オハイオで優勝した時には、そうなって行くかと思われた。しかし、その後は勝利を飾れず。2シーズン目の開幕2戦を見る限り、キャディラックの壁は依然として高い。
 アキュラはオレカ製LMP2シャシーにオリジナルカウルを纏わせたDPiマシンを使って来ている。エンジンは3.5リッターV6のツイン・ターボだ。対するキャディラックはダラーラ・シャシーをベースとして、エンジンは自然吸気の5.5リッターV。アキュラは予選ではキャディラックを上回るスピードを見せることが多々あるが、レースでは低排気音を轟かせるキャディラックの方が優っている。
 IMSAにはバランス・オヴ・パフォーマンスというルールがある。レース毎に各マシンのエンジンの回転数とターボのブースト圧、車重、燃料タンク容量の数値を調整し、競争を激しい状態に維持しようとするものだ。トラフィックをかい潜って戦う耐久イベントでは、低回転域からもパワーの出る自然吸気・大排気量のキャディラックのようなエンジンが有利なようだ。GTクラスが混走しないスプリント・レースで、2シーズン目のアキュラがキャディラックを相手にどんな戦いを行うかは、次のロング・ビーチで見ることができる。

予選セカンドポジションのマツダ77号車
果敢に序盤をリードするも3時間をまたず火災発生

 

マツダの77号車も予選セカンドポジションからスタートし、積極的にレースをリードしたがトラブルが発生Photo:LAT Images クリックして拡大 
  デイトナの予選でフロント・ロウ独占をなしたマツダ勢は、セブリングの予選でも2、7位とまずまずの結果を残した。ル・マン24時間レースで15勝も挙げているドイツの名門スポーツカー・チーム=ヨーストとのジョイントは、ある意味ではペンスキーとアキュラのタッグ以上の注目と期待を集めている。
 ヨーストが加わったのは2017年の半ば過ぎ。1年半の努力によってマツダRT24-Pの戦闘力はかなり高まっている。「いつ勝っても不思議ではない」とマツダ首脳は自信を見せ、予選2位となったトゥリスタン・ニュネスも、「予選にでも決勝にでも、大きな自信を持って臨むことができている。今年の方がその自信が大きくなっている」と話していた。
 雨の中でのペースカー・ランが終わり、レースにグリーン・フラッグが振り下ろされると、ニュネスは最初のコーナーでアキュラをパスし、トップに躍り出た。予選7位だったカーナンバー55も短時間で順位を上げ、トップ争いに加わった。
 2リッター・インライン4にシングル・ターボというエンジンは、スポーツ・プロトタイプのトップ・カテゴリー用エンジンとしてはサイズが小さ過ぎるように思えるが、それがマツダの推し進める”スカイアクティブ”理論にマッチするものなので、彼らはエンジンのスケール・アップは考えていない。
 セブリングでの彼らは、予選2位だったカー・ナンバー77が、ティモ・バーナード搭乗中に小火災が発生、3時間も走らないうちに優勝戦線を離れた。マツダが止まると、「またあのエンジンが壊れたか」と考える人は多いが、デイトナでの火災は人為的ミスが原因で起きたターボ火災で、AER製の4シリンダー・エンジンが壊れたのではなかったという。そして今回は雨が原因なのか、電気系回路がコクピット内で火災が起きてしまった。

マツダのもう1台、カーナンバー55は
中盤までトップ争いに絡む走りを見せたがトラブルで6位


 残ったカー・ナンバー55は6時間経過時点でもトップ争いの真っ只中にいた。レース中のファステストラップを終盤戦に記録したのもこのマシンだった。敗因はアクシデント。近頃のセブリングではトラブル・フリーでなければ表彰台に手を届かせることすら難しいのだ。彼らはトップから2周遅れの6位でゴールした。
 ファステスト・ラップを記録したハリー・ティンクネルは、「セブリングというのは本当に大変なレース。今日は雨で始まり、どらいになってからもドライビングは非常に難しかったけれど、僕らのマシンは本当に速かった。私が次に出場するのはワトキンス・グレン。最終戦のプチ・ル・マンも走る。それらのレースで優勝を目指して戦うのを楽しみにする」と語った。
 デイトナに続いて自分の搭乗中に火災に見舞われたバーナードは、「マツダRT24-Pは良いセッティングになっていて、ロケットのように速かった。あのまま走ることができていたら、優勝を争えていたはずだ」とコメントした。今後のスプリントではマツダのパフォーマンスにも注目だ。

GTLMのフォードGTディクソン組、またも不運に泣く
 

GTLMクラスを制したのはポルシェGTチームの911RSR、911号車 Photo:LAT Images クリックして拡大
 GTLMクラスでは最後の連続コーションを味方につける燃費作戦でポルシェ911 RSRが優勝。レースの大半をリードし続けたフォードGT勢、そのチームメイト同士の戦いで終始アドヴァンテージを握っていたライアン・ブリスコーの乗るカー・ナンバー67(スコット・ディクソンも搭乗)は、最後の最後で他車との接触により後退し、6位でのゴールとなった。デイトナでは自分たちの思惑と違うタイミングで出されたレッド・フラッグにより勝利を逃した彼ら。2戦連続で大きな不運に勝利を阻まれたわけだ。セバスチャン・ブルデイの乗るもう1台は2位でゴールしたが……。
 
またも不運に見舞われたチップ・ガナッシのフォードGT 67号車が脱落後、2位を獲得したハンド/ミューラー/ブルデイ組のフォードGT66号車  LAT Images / Scott R LePage クリックして拡大
 GTDクラスはランボルギーニ・ウラカンGT3が1-2フィニッシュ。3位はフェラーリ488 GT3。予選トップだったアキュラNSX GT3
EVOは2台揃ってクラス・トップと同一周回でのゴールこそ果たしたものの、ピットでのペナルティ、最後のリスタートでの他車との接触などからクラス7位、8位(キャサリン・レッグとアナ・ベアトリスがクリスティーナ・ニールセンと搭乗)と悔しい結果になった。
以上

1 件のコメント:

  1. 天野さん、取材おつかれさまです。やっぱり、ブリスコーの接触はショックです。ブルデーの2位は、うれしいけど…。インディは、テレビで観ることはできるけどブリスコーは何のカテゴリーに出ているのかわからないのでテレビで観ることはほとんどないので残念です。インディ復帰を強く願っていますが可能性はないみたいですし。天野さんのブログで、ブリスコーの情報が知れるのでうれしいです。ありがとうございます‼

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