2019年8月20日火曜日

2019 INDYCAR 佐藤琢磨コメント R14 ABCサプライ 500:レーシング・インシデントだ、と佐藤琢磨は主張

「彼らが完全に下に動いている
僕のオンボードカメラの映像を見てほしい」


――アクシデントはどのように発生したんでしょう?
佐藤琢磨:みんな僕が下に寄って行ったって言うけど、彼らが完全に動いている。自分のオンボードカメラの映像で、僕のマシンの下のシーム(路面の継ぎ目)を見て欲しいんです。まっすぐ、まっすぐ僕は進んでいて、当てられている。これでどうして自分の方がアヴォイダブル・コンタクト(回避が可能だった接触)と言われなくちゃいけないのか。これでダメだと言うなら、どうしなくちゃいけなかったのか? 今、インディーカーと話をして来たけれど、その時にはまだ僕のオンボード映像がなかった。彼らは11アングルから見ているって話で、俺の言うこともわかったもし、ロッシとハンター-レイが動いて来たのもわかった、と。だけど、最終的には俺に責任がある……みたいなことを言ってました。責任があるって表現はおかしいか……。でも、もうインディーカーはアヴォイダブル・コンタクトってリリースをしちゃっているじゃない? それに関しては、今は何もしない、と。ニュートラルな立場で、俺のオンボード映像も含めた全部のエビデンスを見てから最終的にジャッジするって。
 プロベーションに関しては、インディーカーは、「プロベーションになったからって何でもないよ」って言うんだけど、僕にとっては重大問題。ペナルティを彼らがイシューしているってことは、僕が(このアクシデントを引き起こした張本人として)非難をされてるってことじゃない?
 だから、それを取り下げてくれれば、ただのレーシング・インシデントになる。この件に関しては、チームも戦いますよ。チームのCEOのピアース・フィリップスが明日の朝一でインディーカーに行ってくれます。

「ハンター-レイが動いたことが引き金を引いている
そこに誰も気づかないで僕が全部悪いことになっている」

 とにかく、事の発端はターン1の出口でロッシが遅かった事。それでハンター-レイが左に行って、僕は左に行った。僕は基本的にスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)をフォローしただけだった。ハンター-レイが、実はロッシを抜いた後に寄って行ったんですよね。みんなスリップ・ストリームを使いたいから、コースの真ん中に行きたがるんですよ。彼はロッシを抜いてから上に上がって行った。それをロッシは避けざるを得なくて、右に行ったところで僕ら2台に挟まれた。だから、ロッシは悪くない、ハッキリ言って。でも、ハンター-レイが動いたのが、ある意味アヴォイダブル・コンタクトの引き金を引いている。そこに誰も気づかないで、全部僕が悪いことになっちゃっている。これは僕はもう日本人である限り仕方がないんですよ。だって、相手は両方ともアメリカのスター。(一人は)チャンピオンシップ・コンテンダーだし。だから、そう言った状況になるのもわかるんだけど、最後まで戦いますよ、これは。ずっとやって来たからね、F3時代から。

「ターン2どころか、ターン1出口の直後でストレート・ライン
だから僕がアクセルを緩めたり右に逸れて譲る必要はなかった」

――去年もここで大きなアクシデントがあった。スーパースピードウェイのポコノが危険なコースであることは事実です。

佐藤琢磨:僕としては、もちろん、今回みたいに好いスタートを切った時にはチャンスだと思うけど、ターン2に入る時にはいつも以上に気をつけて、サイド・バイ・サイドになったら、本当に行けるのかどうかを見て、あるいは、ちょっとでも前に出ている相手を先に行かせるっていうことを考えていた。無理に行くつもりはなかった。ただ、アレはまだターン2どころか、ターン1出口の直後でストレート・ラインだし、少なくとも映像でわかる通りに僕は右にも左にも動いていないわけですよ。だから、そこで僕がわざわざアクセルを緩めたり、あるいは右に逸れたりして譲る必要はなかったと思うんですよ。僕は知らないわけですよ、もう抜いちゃってるからね。前はディクソンとかがみんな真ん中に寄って行く。そこから自分が離れる必要はないわけですよ。

――スタート直後のストレートでマシン群が接近する状況になっていましたね?
佐藤琢磨:スタート位置が今回ターン1寄りに動かされていたんですよね。ポールポジションはジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)のスピードは一定だったのかもしれないけど、4列目の僕でさえすごく前に詰まりそうになったんですよ。一回加速してからバーッとブレーキを踏んで、もう1回再加速をした。確かに混乱はありましたね。ロッシ自体はターン1に入る時にインサイドで、そこからの出口で踏み込み切れていない感じはありましたね。彼のオンボードを見る限り。だけど、それは何とも言えない。

「ひっくり返ったのは初めて
ローゼンクヴィストが無事で本当に良かった」


――琢磨選手としては、もうロッシは抜いたと思った、クリアになったと思った後に唐突にぶつかられた印象なんですね?

佐藤琢磨:そうです。だから、後ろで何かがあったのかって思った。でも、あの時は誰の責任か……とかを考えるよりも、本当に恐ろしかったので……。

――裏返って止まった。


佐藤琢磨:初めてでした、ひっくり返ったのは。まず最初に、フェリックス・ローゼンクヴィストが大丈夫だったのが良かった。すごい心配だった。彼がいなかったら、僕は病院に行ってたかもしれない。と言うのは、ロッシと当たってコースの内側に行って、ハンター-レイとも当たって、そのままバウンスしてターン2の外側に向かって行ったんですよ。そのターン2に70度ぐらいの角度でぶつかるように見えていた。これは本当にヤバいって思ったところにフェリックスがぶつかって来て、僕を弾き飛ばして、彼自身はフェンスに行くことになった。彼はアウト側にいたので、ターン2の壁に対する角度が浅かった。そう言う意味では不幸中の幸いでしたけど、何れにしても誰もアクシデントなんか望んでないしね。全員が大きな怪我がなかったことに関しては感謝をしています。

「今回、僕を一人助けてくれたのがダリオ・フランキッティ」
――色々なデータが検証される前から、琢磨選手に対して色々な批判が出ている。とても残念な状況となっています。

佐藤琢磨:今はSNSもあるし、何かを見た瞬間のことで判断をしがち。そうした傾向はレースだけじゃなく、世界中でそうだと思います。オンボード・カメラは広角レンズなので、みんなが真っ直ぐに走っていても、(外側にいるマシンは)真ん中に寄って来るように見えるんですよ。彼のオンボード映像を見ると、僕が来てるように見えるんですよ。ただ、外からの映像、僕のオンボード映像などを見ると、そうではなかったことがわかる。今回はシームがあったのが、ある意味ではラッキーだった。アレのおかげで運転はしづらいんだけど、今回アレがなかったら誰が動いていたのかがわからなかったと思うから。今回、一人僕を助けてくれているのがダリオ・フランキッティなんです。医務室にダリオが来て、「タク、メディアに出る前にちゃんとオンボード映像を見ろ。アレはアレックスの方が動いている。お前がアレックスを抜いてから彼の方が動いているから、それをシッカリ確認した上で話をしないといけないよ」って言ってくれました。ダリオはその話を何人かのジャーナリストと話してるはずです。それがブロードキャストされていないのが残念だけど。ダリオと僕とは色々と今までにヒストリーはあるけれども、彼がやっぱり偉大なチャンピオンだなって思うのは、スポーツをフェアに見ているってところですね。凄く今、僕は彼に対して感謝をしています。

「なぜ自分だけがプロベーションを含めた、批判をされるのか
それだけは、やっぱり腑に落ちない」


――まだ1周目でしたが、3台が並んで、かなりのタービュランスが巻き起こっていたんでしょうか?

佐藤琢磨:もちろん、そうですね。それから、シームの上に乗るとクルマが凄く動くんですよ。だから、シームがひとつ、タービュランスがひとつ。それから、スーパースピードウェイの特徴ですけども、誰もがスリップ・ストリームに入りたい。インディーカーのアリー・ルイエンダイクが”なんで、みんながあんなにくっついて走るのかがわからない”って言ってましたが、彼らの時代のマシンはそんなにスリップが効かなかったのかな?
”コースは広んだし、もっとスプレッドして走ればいいのに”って言ってたけど、コースの中心に行くのは、今は自然な流れなんです。そういう状況下で、自分たちはお互いに最大限のリスペクトと、プロフェッショナリズムを持って最高のレースを戦っているつもりなんだけど、今みたいに色々な付加的な要素があるから、みんなが”自分は真っ直ぐ走っている”と思っているんだけど、実際にはハンター-レイが抜いた後に上がって来てた、それが問題なんですよね。あの時の僕は、確かに右側すぐが壁じゃなかったから、避けようと思えば避けられたのかもしれないんだけど、相手がゆっくりなスピードで寄って来たんじゃなかった。僕のクロージング・スピードがあまりにも速くて、抜き去っちゃってるんですよね。だから、避けるっていう発想に先ずならなかったワケです。ジリジリ、ジリジリと相手が動いているのが見えて、”あぁ……来た”って思ったら、真っ直ぐ行かないで避けましたよ。僕だって、そんなわざわざ人に突っ込んで行くようなドライヴィングをするわけがない。自分だって好いレースがしたいし、特にロビー(=ロバート・ウィッケンズ)のことがあったから、ターン2に向けて無理なんてまったくしないワケですよ。でも、アクシデントは起きちゃうものだしね。今回は最悪の条件が幾つか重なってしまった、と。ただひとつ、ここでなぜ自分だけがプロベーションを含めた、批判をされる対象となるのかっていうのは、やっぱり腑に落ちない。

「インディーカーには発言を取り下げてもらいたい」
――インディーカーは佐藤琢磨をプロベーションにするって、もう決めているんですか?
佐藤琢磨:いや、言ってないけど、すでにインディーカーはすでに”アヴォイダブル・コンタクトでカー・ナンバー30が……”って、何かわからないけど言ってるワケですよ。一応プロベーションじゃないですか、暫定の。だから、自分としては、インディーカーには最終ジャッジメントでそれを取り下げてもらいたい。そうなれば、レーシング・アクシデントという話でおさまる。僕がジグザグ走行をしたワケじゃないワケだから。言論の自由があるので、いろんな人がいろんな思想を持つのは全然構わないんですけど、今のツィッターの恐ろしいのは、これでなんで僕が、”人殺し”だとか、”責任感の話をしているだ”とか、”フレームの話はしてない”とか、みんな言いたい放題なんですよね。そういう人たちのことは、自分とすればどうでも良いんだけれど、あまりにもそういうのが多くて、悲しいですよね。本当にスポーツが好きだったら、ちゃんと見て、何が良くなかったのか、次にどうすべきかってことを話せばいいのに、人殺し扱いをされても困る。

――アクシデントに至る前のスポッターからの情報、指示は?
佐藤琢磨:今回のレースに関しては、ドライヴァーズ・ミーティングでマルコ・アンドレッティが言ってたんですよ。”スポッター2人は混乱するだけだ”と。一人でコース全体が見れますからね。コースのどこでスポッターが切り替わるのかは、それぞれのチームのスポッター次第なんですけど、それって別に、”はい、ここで!”って電気的に切り替わるワケじゃないんですよ。二人が同時にしゃべっちゃう場合もあるし、お見合いになっちゃうこともある。で、今回はターン1を超えたところで”クリア”だというところまでは聞いている。でも、ロッシたちを抜いている時に”インサイド”っていう情報は聞いていないんですよ、僕。”インサイド”って言わないし、”クリア”もないから、自分でジャッジするしかない。だから動かなかったんですよ。僕は真っ直ぐ行っただけ。それでもバッて当たっちゃった。アレはどうしようもない。少なくとも、あそこで”インサイド、インサイド、インサイド、インサイド”って言われていれば、僕も更に注意をしますよね、”クリア”を聞くまでは。”3ワイド、インサイド”って言われていたら、真っ直ぐじゃなく、外側に避けていたかもしれない。でも、こればっかりはタラレバの話をしても仕方がない。アクシデントになるまで、僅か3秒しかないからね。その間に300メーター以上走っちゃってるんで。本当に、誰も大きな怪我をしなかったのが、本当に不幸中の幸い。僕らにとっては、凄く残念なレースになってしまった。

「マシンは昨日よりは良くなっていたと思いますけど
それを知る由もなかった」
 
――今日のマシンは、昨日から大きく変えて行っていたのですか?
佐藤琢磨:大きくは変えてないんだけど、細かいところは色々変えました。例えば、シームでマシンが動くという問題に対しても、スプリングを換えても何もならないんですよ。ただ、トウを変えてクルマの動きがポインティになりにくいように、ちょっと緩やかになるようなセッティングは施しました。昨日のグレアム・レイホールと僕の結果から、よりダウンフォースを上げて、でもドラッグは最小限に抑えるっていうクルマ作りはしたので、昨日よリは良くなってたとは思うけどね、それを知る術もなかったです。グレアムはレース後、ストレートが遅かったって物凄く怒ってましたね。リスタートとストレートが遅くてレースにならなかった、と。それから、ボトミングもひどかったということでした。僕は彼より高いライドハイトにしていたから、”その部分では彼らより良かったよね”ってエンジニアのエディー(・ジョーンズ)と話していました。ただ、レースをリードできるようなクルマではなかった。良くてもトップ5でしたかね。

「チームは今、最後の3戦をいいレースにしようと言っている
セント・ルイスではアイオワでのスピードを見せたい」

――休みなく2連戦です。

佐藤琢磨:気持ちの切り替えをして、残りのレースを戦いたいですね。去年はセント・ルイス(=ゲイトウェイ)はうまく行かなかったけれど、チームは凄く今、最後の3レースをいいレースにしようって、みんな言ってくれています。だから、チームとして一丸となって、ベスト・レースを戦って行きたいですね。セント・ルイスに関しては、去年が良くなかったので、ちょっと何とも言えないけれども、アイオワでのスピードをそのまま、同じショート・オーヴァルなので見せたいですね。
以上

3 件のコメント:

  1. NBC中継のオンボードはロッシやハンター=レイ、ローゼンクビストのマシンには搭載されてたのに、琢磨選手のマシンには非搭載だった。

    判定は中継オンボードの映像を使うため、結局それが琢磨選手バッシングにつながった。

    しかし琢磨選手のマシンにはチーム独自のオンボードカメラ学校搭載されてた。

    今度はこのチーム独自のオンボード映像も照らし合わせるみたいですね。、琢磨選手に非がなかった事をただただ願うしかない。

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  2. 今回のマルチクラッシュは琢磨選手のマシンのオンボードカメラを見る限りは琢磨選手は真っ直ぐ走ってて後ろから押されてましたね。
    もし、チームが独自のカメラを搭載してなかったら…と思うとゾッとしました。。
    それにしてもダリオ・フランキティがメディカルセンターまで足を運んで琢磨選手にすぐに車載カメラを見て、それからマスコミ対応しろとアドバイスしてくれたのはすごく琢磨選手が助かりましたね。
    有り難かったですよね。

    それにしてもハンターレイは琢磨選手に厳しい意見を述べてたようですが…彼こそ2年連続で大クラッシュに関係しているのでちゃんとこの事実を検証してから意見を述べてほしかったなと思いますが…。

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  3. この映像の5:48あたりを見ると、明らかに左の二台が上がってきてます。
    https://youtu.be/YgnVcAFLsRw

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