2022年5月2日月曜日

2022 INDYCARレポート R4 ホンダ・インディー・グランプリ・オヴ・アラバマ Race Day 決勝:一撃必殺! パト・オーワードが見事な今季初優勝

ファスト6ではヴィーケイに逆転されてPPを逃したオーワードだったが、決勝ではアウトラップでヴィーケイに挑み逆転に成功! 手応えある勝利にポディウムで喜びをはじけさせる Photo:Penske Entertainment  (Matt Fraver)クリックして拡大

心配された雨も上がり、決勝は完全ドライに

 心配された雨は午前中で降り止み、インディーカーのレースは完全ドライ・コンディションで行われた。気温は24℃まで上昇。朝からの激しい雨でチケットは完売でもお客さんが来ないかも……と心配されたが、晴れ上がった空の下、コースサイドは埋め尽くされていた。10年以上をかけて新南部のアラバマ州バーミンガム界隈にもインディーカーのレース・イヴェントは定着してきた感がある。バーバー・モータースポーツ・パークには二輪と四輪、両方を大量に所蔵する素晴らしいミュージアムもある。

ポールシッターのヴィーケイが序盤からレースを完全に支配する Photo:Penske Entertainment (Chris Jones)クリックして拡大

 ポール・シッターのヴィーケイがレースをリード
2位オーワードに付け入る隙を与えず

 第12回目を迎えたHondaインディー・グラン・プリ・オヴ・アラバマは、今年もエキサイティングなバトルとなった。

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 ポール・ポジションからスタートしたリナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)は悠々とトップを守り、2番手を走る予選2位だったパト・オーワード(アロウ・マクラーレンSP)にアタックをさせないだけの距離を保って走り続けていた。

ヴィーケイは第2スティントでもオーワードを引き離し、独走態勢を固めていった Photo:Penske Entertainment (Joe Skibinski)クリックして拡大

 レースが中盤を迎え、装着タイヤがレッドからブラックに変わっても二人のパフォーマンスに変化は現れなかった。”今日はオランダ出身の21歳がキャリア2勝目へ逃げ切るのかな?”と見えていた。
 しかし実際にはオーワードも”十分にチャンスはある”と余裕を持って周回を重ねていたという。「インディーカーのレースは長い。チャンスは必ずやってくる。それを逃さす仕留める」と彼は強くフォーカスしていた。

61周目、ヴィーケイとオーワードが同時ピット
アウトラップのターン5でオーワードがヴィーケイをパス

62周目、2回目のピットを終えてのアウトラップに勝負を懸けたオーワードが、5ターンでヴィーケイをオーバーテイク! Photo:Penske Entertainment (Joe Skibinski)クリックして拡大

 逆転劇が見られたのは2回目のピット・ストップ終了直後だった。90周のレースが61周目を終えたところでトップのヴィーケイ、2番手のオーワードが同時にピット。クルーの作業時間で順位がひっくり返ることはなかったが、アウト・ラップでオーワードが勝負に出た。そのラップの前半戦、ヘアピン状のターン5にアプローチするところでオーワードがアタック。外・外・外と回ってヴィーの前に出た。この時点ではまだピットしていないアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)がトップだったが、これがウィニング・パスとなり、前に出たオーワードはヴィーケイとの差をあっという間に広げてみせた。

2周後にピットインしたパロウ
ヴィーケイのギリギリ前でレース復帰に成功!

パロウは2回目のピットストップからコース復帰した64周目、ぎりぎりでヴィーケイの前でコースインすることに成功 Photo:Penske Entertainment (Matt Fraver)クリックして拡大

 パロウがピットに向かったのは2周後。前方が空いた2周を思い切りプッシュし、クルーは短時間でパーフェクトな作業を施した。ダッシュしたパロウがピット・ロードを駆け下り、ターン2でコースに合流。オーワードがトップに躍り出、パロウはヴィーケイのギリギリ前にピット・アウトした。

トップに立ってからもオーワードはなおペースを上げ、パロウ、ヴィーケイを引き離す。85周目にベストラップをマークするほど完璧な終盤の走りだった Photo:Penske Entertainment (Joe Skibinski)クリックして拡大

 装着したばかりのタイヤでパロウはヴィーケイの攻撃を封じ込めた。しかし、先行するオーワードとの距離はなかなか縮めることができなかった。ヴィーケイはトップを奪われてからは意気消沈したかのようにペースが上がらず、勝負はオーワードが逃げ切るか、パロウが大逆転でのバーバー2連勝を飾るかになった。

オーワード、レース終盤パロウを突き放し手応えある勝利
「コールド・タイヤで走るときが自分にとってのチャンスと思っていた」


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  レース終盤をオーワードは完全にコントロール下に置いていた。二人の差は1秒ほどに縮まることもあったが、すぐに2秒ほどに広がった。オーワードは集中力を高め、自身のファステスト・ラップを何度も更新しながらゴールを目指した。

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 「コールド・タイヤで走る時が自分にとっての唯一のチャンス。そう考えていた。2回目のピット・ストップからコースに戻った時、僕は勝負に出た。パロウは自分の後ろにピット・アウトして来たので、あそこからは彼との間隔を保ち続けることに努めた」と逆転勝利を喜んだ。狙いすました一撃で相手を倒し、その勝利では大きな満足が得られたことだろう。

しぶとく2位を獲得したパロウがポイントリーダーに浮上
ハータは3ストップ作戦奏功せず


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 しぶとさを今回も発揮してパロウは2位。未勝利ながらポイント・リーダーの座に躍り出た。去年の初タイトル獲得も若さに似合わぬ安定感が決め手になっていたが、ディフェンディング・チャンピオンとして戦う今シーズンも去年と同等かそれ以上の安定した戦いぶりを彼は見せている。
 パロウの成熟ぶりに比べ、コルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジェニアン)はロング・ビーチに続いて最速の存在でありながら、それに見合う結果を手にすることはできなかった。3ストップ作戦でのハード・チャージは見応えがあったが、終盤戦を迎える前にプッシュ・トゥ・パスを使い切ってしまっていては、よほど展開が味方してくれない限り優勝までを望むことはできない。

6位フィニッシュのマクロクリンはランキング2位に
ニューガーデンも3ストップ作戦を選んで失敗


 ポイント・スタンディングの2番手はマクロクリンで変わらず。彼はスタートでパロウの前に出たが、最終的に6位という結果を得るにとどまり、3点差で2番手につけている。第2戦テキサス、第3戦ロング・ビーチで連勝してポイント・リーダーとなっていたジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)は、バーバーではスタート位置の悪さからギャンブルである3ストップ作戦を採用する道を選び、それが当たらなかったために14位でゴール。ポイント・ランキングは3番手に下がった。

19番手スタートのパワー、粘りの走りで4位
5位ディクソンも予選順位から8ポジションアップ

粘りの走りでビッグェスト・ムーバーとなったこの日のパワー。20代のドライバー3人がポディウムを独占した中でベテラン勢トップでもあった Photo:Penske Entertainment (Joe Skibinski)クリックして拡大

 19番手スタートからウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が彼らしくない冷静かつ粘り強い走りを続けて4位フィニッシュ。13番手スタートだったスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)もレッドーレッドと繋ぐクレヴァーなタイヤ・ストラテジーが功を奏して5位でのゴールを実現した。

レイホール、グロジャンに2度当たられ激怒
問われるグロジャンのフェアネス


 父親譲りのしぶとさで上位を走り続けたグレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は、ゴールを目前にして“人気者”のロマイン・グロジャン(アンドレッティ・オートスポート)からの激しいアタックを受けた。レイホールは先行し続けたが、ヘアピンで並びかけたグロジャンがサイド・ポッドに二度体当たり。これにはレイホールもかなり腹を立てていた。最終ラップにレイホールはガス欠に陥ったか失速。7位をグロジャンに奪われることになっただけに、怒りを増幅させた彼はインディーカーに審査を要求することになるだろう。アンドレッティ・オートスポートに移籍してインディーカーでの2シーズン目を迎えているグロジャンは、マシンを仕上げる能力、レーサビリティ、集中力の高さとミスの少なさ……など評価をさらに高めている面もあるが、開幕戦からアチコチでぶつかって来ており、フェアなドライヴァーかどうか……という点での評判は下がりつつある。

佐藤琢磨、力強い走りでトップ10まで浮上するが
第2スティントでブラックを選択したことが裏目に


 佐藤琢磨(デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR)は予選17位から13位でフィニッシュした。プラクティス2回と予選まではマシンの仕上がりが悪く苦しみ続けたが、ウォーム・アップで一気にスピード・アップ。レースでの戦いぶりが期待されたが、レース中盤からの展開が味方をしてくれず、大きく順位を上げてのフィニッシュは果たせなかった。

トップ10内フィニッシュを射程に入れたレース展開を実現していた佐藤琢磨だったが、1回目のピットストップでブラックタイヤをチョイスしたことが裏目に出て、レッド装着のディクソン、パワーらに先行を許すことに Photo:Penske Entertainment (Joe Skibinski)クリックして拡大

 4つ前のグリッドからスタートしたディクソンの後ろにつけてファースト・スティントを終えたところまではよかったが、ピットでブラックとレッド、どちらのタイヤを選ぶかが明暗を分けた。ディクソンはレッドからレッドへと繋ぎ、リスタートも活用して上位へ進出。琢磨の後ろにいたパワーはブラック・スタートからレッドにスイッチしていたので、彼もまたレース中盤に上位へ駆け上がった。琢磨はブラック装着でのリスタート後、レッドを装着した面々に順位を明け渡すことを続ける展開に陥り、3ストップ組に有利なタイミングでイエローが出たこともあって燃費も厳しい状況に陥った。ディクソンと同じように1回目のピット・ストップでレッドを選べていたら、アグレッシヴに走って順位をグイグイ上げて行くレースを戦えていたかもしれない。17番グリッドから13位でゴール。ポジションを4つ上げてのゴールだが、パワーやディクソンと同じような上位フィニッシュも不可能ではなかったと考えると悔しい結果だ。

「今日は昨日のウォームアップほどのフィーリングではなかった
その理由が何なのか、見つけ出す必要があります」

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「昨日のファイナル・プラクティスでやっとスピードが出せるようになりました。やっぱり、それでは遅かったですよね。もっと早くそういう状況になって、もっとマシンに手を入れたかった。今日のレースには、昨日のウォーム・アップを走ったマシンに少しだけれど変更を加えて臨みました。雨への対策も少しだけ考えたセッティングでした。もっとも、フル・ドライのセッティングを施していたとしても、自分たちにはまだ何かが足りていなかったかな……とも思います。今回悔しかったのは、セカンド・スティントでブラック・タイヤを履いちゃったことでしたね。ディクソンの後ろにつけていい感じで走っていたのに、イエローが入った。あそこからのリスタートでレッドを履いていたディクソンは一気に前に行くことができて、自分の方はというと、なぜだか後ろにレッドを履いたドライヴァーがいっぱいいて、彼らに抜かれることになってしまったんです。今日はクルマの感じ自体は悪くなかったのですが、昨日のウォームアップで感じられた良いフィーリングではなかった。暑いコンディションではそれが出せなかった。その理由が何なのか、週末を振り返って見つけ出す必要がありますね」と琢磨は語った。次はインディのロードコース。バーバーと同じ常設サーキットでの戦いで琢磨はリヴェンジを目指す。
以上

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