2021年6月13日日曜日

2021 INDYCARレポート R7 シーヴォレー・デトロイト・グランプリ Race1 Race Day 決勝:7戦で7人目のウィナー=マーカス・エリクソン初優勝

二転三転するレース展開をエリクソンが制した。インディーカー37戦目にしての初優勝だ Photo:INDYCAR(Chris Owens)クリックして拡大

21台がレッド・タイヤでスタート
そのうち12人が6周目以内にタイヤ交換してブラックに

 デトロイトGPのレース1が行われる土曜日は朝から快晴。雨雲はどこかに行ってしまったようだった。レースのスタート時の気温は28℃。決して高過ぎるレヴェルではなかったが、湿度があり、ドライヴァーたちには過酷なコンディションとなっていた。

スタートからオープングラップは大きな混乱もなく、オーワード、ロッシ、グロジャンの日予選オーダーとおりの順位で進む。しかし、オーワード3周目、ロッシ5周目、グロジャン6周目と、トップ3台を含む12台が6周目までにピットイン Photo:INDYCAR(Joe Skibinski)クリックして拡大

 出走は25台。そのうちの21台がスタート・タイヤにオルタネート=レッドを選んだ。そして、スタートして6周以内にこのレッド・スタート組のうちの12人がピットに滑り込み、早々にブラックへのスイッチを行なった。同じ作戦で来るチームがここまで多いとは、当の彼らも想定していなかったのではないだろうか。コースの空いたところに出てハイ・ペースで走るはずが、彼らによる集団が形成され、思うようにスピードを上げられない事態に陥ったドライヴァーも少なくなかった。

2ストップ組のディクソンがレースをリード
パワー2番手、佐藤琢磨も3番手に浮上!


ブラックでスタートしたディクソンがパワーをパスし12周目から首位をキープ。2ストップ作戦的中で、走りも盤石と思えたが、24周目給油目前にレッドフラッグが出てアドバンテージはフイに Photo:INDYCAR(Matt Fraver)クリックして拡大

 2ストップで走り切るべくコース上にとどまり続けた組の中から11番手スタートだったスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)がトップに立ち、予選7位だったウィル・パワー(チーム・ペンスキー)、予選16位だった佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)が3番手まで大きく浮上した。ディクソンが次々と見せたオーヴァーテイクも見応えがあったが、琢磨の躍進ぶりも目を見張るものだった。

ローゼンクヴィストのクラッシュで赤旗
ピットインを済ませていなかったディクソン不運


 しかし、24周目にフェリックス・ローゼンクヴィスト(アロウ・マクラーレンSP)が大クラッシュ。赤旗1回目が出された。レッド・タイヤでトップにまでの浮上していたディクソンは、まだ1回目のピットストップを行なっていなかったため、リードが霧散しただけでなく、レース開始直後にピットストップを行って順位を11番手まで大きく落とした。最終的にディクソンは8位でレースを終えた。

レースは2ストップ組のパワーがリード
エリクソン2番手に浮上し、佐藤琢磨も3番手と好位置キープ

ディクソン後退後、パワーは28周目からレースをリードし続け、48周目の2回目のピットイン後も安定してトップを快走する Photo:INDYCAR(Matt Fraver)クリックして拡大

 琢磨は18周目、パワーは20周目にピットに向かい、ここで大幅ロスを被ることはなかった。レースが再開されるとパワーは再びトップに立ち、2番手にはエリクソンが浮上。琢磨は3番手となった。エリクソンが先行したのは、琢磨のピット・ストップ1回目でクルーの使うエアガンにトラブル発生、作業時間が4~5秒も長くかかったためだった。
 ローゼンクヴィストのアクシデントはかなり激しかった。ターン9の入り口で逆に加速したようにタイヤバリアに突っ込んだ。90度に近い角度で激突したが、ドライバーには意識があり、インディカーのセイフティ・クルーが彼をコクピットから救出。そのままデトロイト市内の病院へと搬送され、数種の検査を受けることとなった。
 パワーとエリクソンが1、2番手を保って周回。3番手の琢磨はリナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)にパスを許してひとつポジションが後退。しかし、最終スティントに入ってからヴィーケイを抜き返した。

レース大詰めの残り7周で再びレッドフラッグ!
トップのパワー、ECUトラブルでエンジンかからず


65周目、グロジャンのクラッシュで出たレッドフラッグで、走行オーダー順にピットレーンで停車。ところが、いざ赤旗解除でコースインとなったとき、パワーのマシンはECUのトラブルでエンジンがかからず、ほぼ手中に収めていた優勝は幻に Photo:INDYCAR(Matt Fraver)クリックして拡大 

 そして2回目の赤旗が出された。ゴールまで7周というところでロマイン・グロジャン(デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR)がクラッシュしたためだった。ローゼンクヴィストのクラッシュよりは激突スピードが低かったが、グロジャンがぶつかったのはタイヤ・バリアではなく、コンクリート・ウォールだった。
 残り7周。イエローのままゴールとなっても不思議はなかったが、インディカーは赤旗を出すこととした。そして、それが一因となってパワーに大き過ぎる不幸が起こった。「なぜ、ここまでの……」という不運だった。レース再開に向けてエンジンをかけることができなかったのだ。オフィシャルが辛抱強く待ったが、時間切れとなり、エリクソン先頭としたマシン群がコースへと戻って行った。パワーは周回遅れでレースに戻るしかなかった。

エリクソン、リスタートでトップをキープ
佐藤琢磨、ヴィーケイとオーワードに逆転許す

エリクソンは残り3周のリスタートで、琢磨、ヴィーケイ、オーワードに付け入るスキを与えずゴールへと邁進 Photo:INDYCAR(Chris Owens)クリックして拡大

 残り3周でグリーン・フラッグは振り下ろされた。トップのエリクソンは最高のリスタートで後続を突き放し、ゴールまで逃げ切った。

 そのすぐ後方、2番手でリスタートを切った佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)だったが、リナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)とパト・オーワード(アロウ・マクラーレンSP)にグリーンフラッグ直後にパスされてしまった。表彰台を逃し、結果は4位となった。

初優勝を喜ぶエリクソン
「そろそろ自分にも幸運がめぐってきていい頃と思った」

チップ・ガナッシ、ダリオ・フランキッティに祝福されるエリクソン Photo:INDYCAR(Chris Owens)クリックして拡大

  エリクソンは、「パワーに不運が降りかかった。とても残念なことだった。しかし、僕も過去2シーズン、多くの不運に見舞われ続けた。そろそろ幸運が巡って来て良い頃だと考えていた。もしパワーが先頭のままレースが再開されたら、自分たちは何かができたと思う。こちらの方がスティントの最初では速かったはずだからだ」とエリクソンは語った。ディクソンによる勝利は実現しなかったが、エリクソンの活躍によってガナッシは勝利を祝えることとなった。

「今日はたくさんライバルたちをパスできた」と語る琢磨
「明日はハードタイヤのペースをもう少し上げたい」

 
レッドタイヤの持ちもよく、力強い走りでポジションアップを果たして理想的な展開に持ちこんだ琢磨だったが… Photo:INDYCAR(Joe Skibinski) クリックして拡大

 琢磨は4位でゴールし、「スタートが良いスタートが切れて、1回目のピットストップまでに2、3番手まで大きく順位を上げることができました。ところが、1回目のピットでトラブルがあり、順位を下げてしまいました。もったいなかったですね。それにしても、今日は本当にたくさんライバルたちを抜くことができたと思います。最後になって、頑張って抜いた相手にまた抜き返されてしまったのは悔しいところです。最後のリスタートで二つポジションを落としたのは、最終コーナーでトラクションが得られなかったためです。予選でスピードがなかったことと、あそこでのパフォーマンスの無さは繋がっているようにも考えられます。それから、ハードタイヤでのペースは、明日はもう少し欲しいとも感じました」と語っていた。

レース2での活躍が楽しみだ Photo:INDYCAR(Joe Skibinski) クリックして拡大

 ダブルヘダーの2レース目では、どのエントリーもマシンのレヴェルを上げ、オーヴァーテイクが難しくなる……というのが昨年までのパターン。レース2で好結果を残すには、予選が極めて重要になる。

ペンスキー苦境! 7戦消化しいまだ勝利なし

2位ヴィーケイ、3位オーワードはいずれも今シーズン初優勝を飾っており、奇しくも今季初優勝経験者2人が初優勝のエリクソンを囲む表彰台に。それにしても、ヴィーケイ、オーワードともにシヴォレーユーザーであり、ペンスキーの不振でシヴォレー勢の勢力図にも地殻変動が Photo:INDYCAR(Chris Owens)クリックして拡大
 

 デトロイトでのレース1は2021年インディーカー・シリーズの7戦目だったが、エリクソンが優勝し、今年7人目のウィナーとなった。しかも、これら7人のウィナーのうち、4人がキャリア初優勝(パロウ、オーワード、ヴィーケイ、そしてエリクソン)で、チーム・ペンスキーの元チャンピオン3人、パワー、シモン・パジェノー、ジョセフ・ニューガーデンはまだ今シーズンは1勝も挙げることができていない。
以上

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