2022年5月30日月曜日

2022 INDYCARレポート R6 第106回インディー500 Race Day 決勝:やっぱりガナッシ勢は強かった! 優勝はマーカス・エリクソン

2019年、アロウ・シュミット・ピーターソン・モータースポーツからインディーカーデビュー。翌年からチップ・ガナッシ・レーシングに移籍しインディーカー4シーズン目のエリクソン。昨年のデトロイトで初優勝を遂げて以来、急伸長を果たし、インディー500参戦4回目にして初優勝を遂げた Photo:Penske Entertainment クリックして拡大

チップ・ガナッシ勢5台で実に163周のリードラップ
優勝したのは第4の男、エリクソン!

 エントリーした5台すべてが予選でファスト12入りし、4台がファスト6でポールポジションを争い、PP、2位、5位、6位という結果を手にした。予選でのチップ・ガナッシ・レーシングのパフォーマンスはダントツだった。辛うじて対抗できていたのがエド・カーペンター・レーシングだったが、彼らにはレースでのパフォーマンスはあまり期待できない……というのが大方の見方だった。200=500マイルを通しての安定した速さを実現することは容易ではなく、2位フィニッシュをしたことのあるカーペンターではあるが、ゴール前に順位を入れ替えながらのトップを争った……という経験は未だ果たしていないのだ。
 ガナッシ勢のアドヴァンテージは、暑いコンディションになったレースでも大きなものがあった。5人のドライヴァー全員がリード・ラップを記録し(ジョンソンがリードしたのは違えたピット・タイミングという恩恵に浴してのものだったが)、その合計は200周のうちの163周にも上った。そして、優勝したのは第4の男=マーカス・エリクソンだった。

ディクソンとパロウがレースをリード。予選でチップ・ガナッシ勢に割って入るスピードを見せたヴィーケイは果敢にアタックしたものの39周目に単独クラッシュ Photo:Penske Entertainment クリックして拡大

レース早々にディクソンとパロウが1-2態勢を構築

 ポール・スタートはシリーズ・タイトル獲得6回、インディ500・1勝、インディでのPPは5回目というスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)で、予選2位は昨年度チャンピオンで、昨年のインディ500で2位フィニッシュしている(=優勝し損ねている)アレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)だった。この二人の間にスタート直後こそ予選3位のリナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)が割って入ったが、しばらくするとフロントローから出たガナッシの2人が1-2体制を構築し、ポジションを入れ替えつつレースをリードした。トップ交代は燃費セイヴのためで、彼らは30周で6回もトップ交代を繰り返してレースを引っ張り続けた。

ディクソンにアンダーカット目、パロウには
その1,2周遅れでピットインする作戦をとったが……

 ディクソンとパロウがポジション・スワップを繰り返してゴールまで突っ走る……なんてレースはツマラナさ過ぎる! そうなる可能性が十分に考えられた。ところが、最強チームには意外な弱点があり、彼らは大きな優位を100パーセント活用できなかった。
 去年の苦い経験=不運なタイミングのイエロー。それを避けるには、トップグループの誰かがピットに入ったら同じようにピットインする……あるいは自分が誰よりも先にピット・ストップをしてしまうことだ。今年のガナッシはディクソンにアンダーカット目の作戦を採用させ、パロウはそれより1、2周遅れでピットさせる作戦を取らせていた。その一方で彼らはトップ・グループの4〜8番手ぐらいを走り続けていたマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)とトニー・カナーン(チップ・ガナッシ・レーシング)には、ディクソン及びパロウとは正反対の作戦=オーヴァーカット気味に走らせた。作戦を2対2に分ければ、レース展開がどっちに転んでも優勝を狙える可能性が高いためだ。

69周目、パロウがピットロードに向かうタイミングでイエロー!
楽勝と思われたディクソンは177周目ピットロードで速度違反

 パロウが69周目終えてピット・ロードに向かうとカルーム・アイロット(フンコス・ホリンジャー・レーシング)がクラッシュ。パロウはもうほとんどピット・インしていて、本コースに戻ることなどできない地点まで進んでいたため、仕方なくピット・ロードをスルー。その後も続いたイエロー中に給油だけのサーヴィスも受けたために最後尾近くまで後退させられた。昨年取り逃したインディ500を……という25歳のスパニッシュの野望はここでほぼ尽きた。インディ500で勝つには運もかなり必要……というか、ひとつでも不運に見舞われると勝ちは厳しくなる。

独走態勢となりつつあったディクソン、177周目、最後のピットインで痛恨のピット・スピード・バイオレーション Photo:Penske Entertainment クリックして拡大

 パロウが消えたらディクソンは楽勝……と思えたが、アンダーカット作戦が6タイム・チャンピオンにプレッシャーをかけていた。177周目、彼はピット・ロードでのスピード違反というディクソンらしくないペナルティで優勝のチャンスを棒に振った。

オーバーカット作戦を採っていたエリクソン
オーワードとの一騎打ちを制す

オーワードを引き離し、優勝の確率が高まったその矢先にレースは赤旗となり、残り3周での超スプリントで再度オーワードと一騎打ちになるというエリクソンにとって一転、試練ともいえる状況に。しかし、巧みなリスタートでエリクソンはオーワードのアタックを跳ね返した Photo:Penske Entertainment クリックして拡大

 最後はチップ・ガナッシ・レーシングvs.アロウ・マクラーレンSPになった。そして、勝ったのはガナッシのエリクソンだった。
 「自分たちのマシンが速いのはわかっていた。しかし、勝利するのは大変だった。パト・オーワードを背後に封じ込めるためにやれることは全部やった。それが達成できたから最高に嬉しい。信じられないぐらいだ。赤旗が出たのにはかなりビックリした。簡単に勝たせては貰えないということだ。自分たちのマシンが速いことに自信があった。最終ラップのターン1で彼に並びかけられたが、彼にヒットしてウォール送りにするつもりなど一切なかった。アウトから並びかけて来た彼にとって、私をそのまま抜き去るのはかなり難しかったはずだ。自分は自分のラインを保つだけ……と考えていた。それが可能とわかっていた。スロットルは全開を保っていた。私と並んだままターン1を通過できるのか? と思った。自分はインサイドのラインさえ守れればスロットル全開でコーナリングができると確信していた」。

Photo:Penske Entertainment クリックして拡大

 パロウが不運に見舞われ、ディクソンがミスを冒し、カナーンにあと少しのスピード不足があっても、エリクソンは素晴らしいマシンを作り上げ、500マイルの長距離レースを完璧にマネジメントし切って優勝に辿り着いた。

チップ・ガナッシにとっては10年ぶり5回目
ホンダエンジン3年連続15回目のインディー500優勝

Photo:Penske Entertainment クリックして拡大

  チップ・ガナッシ・レーシングのインディー500優勝は2012年以来という超久々ぶり。これで5回目のインディ制覇。
 ホンダはこれで15勝目。2020年の佐藤琢磨、2021年のエリオ・カストロネヴェス、そして今年のエリクソンと3年連続優勝が達成された。
以上

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