2011年7月14日木曜日

2011INDYCAR レースアナリシス R9 ホンダ インディ トロント: パワーがキレた

レース後に怒りを爆発させたパワー

 トロントでは、チャンピオン争いを2シーズン連続で繰り広げているふたり、ダリオ・フランキッティ(チップ・ガナッシ・レーシング)とウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が接触した。ピットタイミングによって彼らは中団グループを走行中で、トップ争いへと返り咲こうと走っているところだった。
ターン1の先のロングストレートで背後から接近し、ターン3へのブレーキングでオーバーテイクを試みたフランキッティだったが、パワーの前に出ることはできず、彼のフロントホイールがパワーを突付いてしまった。フランキッティはそのまま走り続けたが、パワーはスピンした上にエンジンストール。順位を大きく下げ、その後にはアレックス・タグリアーニ(サム・シュミット・モータースポーツ)と接触してクラッシュ、リタイアの憂き目に遭った。

 2戦連続でリタイアし、フランキッティにポイントリードを大きく広げられてしまったことも影響してだろう、パワーの怒りが爆発した。バーサスのピットレポーターにマイクを向けられると、「彼がペナルティを受けなかったとしてもそれは驚きじゃない。なぜなら、彼はペナルティを受けないことになってるからだ。まったくいつもどおりのことだよ。あれは汚い走りだった。彼は僕をスピンさせた。これまでに、彼にペナルティを課した人っているんだろうか? 彼は皆さんがお望みの通りの汚さだ。僕はブレーキングでインサイドを空けておいた。ダリオには本当にガッカリだ。こっちはいつもクリーンにレースしてるのに、彼は僕に対して汚いドライビングをしてくる。セント・ピートでも彼は同じことを僕にした。あの時に僕は何も言わなかったけど、今回また同じことをやった。ダリオには失望させられた。みんなに対して文句を言い、みんなのことに対して泣き言を言う。そんな彼こそが一番汚くレースをして、インディカーからペナルティは受けることがない。この状況は正しくない!」と一気にまくし立てたのだ。

「汚い走りは断じてしていない」とフランキッティは反論

 ウィナーとなったフランキッティが最初に発した見解は、「彼は僕をブレーキングで負かそうとして自分でブレーキングを遅らせ過ぎ、ドアを開けた。僕はインサイドに入った。こっちは壁ギリギリで、ウィルがマシンを寄せて来た。僕はノーズをと突っ込んだ。そのノーズを引っ込めようとしたが、彼の方がドアを閉めて来て、結果的にその代償を払うことになった」と、パワーに対して批判的だった。しかし、長い表彰式を終えた後の記者会見では、ダリオは少しトーンダウンしていた。「クラッシュしてリタイアしたこともあって、怒りが爆発してしまったんだと思う。僕だって同じ立場だったらそうなってしまうだろう」とまで語った。ただし、汚いドライビングという批判に対しては、「絶対に僕は汚いレースはしていない。これまでもずっとそうだったし、これからもだ。セント・ピータースバーグで僕らは接触していない。アレはアグレッシブな走りではあったけれど、汚い走りでは断じてなかった」ともフランキッティは主張した。

フランキッティのフロントが流れたのが原因か?

 今回のアクシデントはどっちが悪かったのか? インディカーはビデオを見て、アル・アンサーJr.他が「レーシングアクシデント」と判定、ペナルティなしと決めたが、フランキッティがミスしたための接触と見えた。彼は「こっちは壁ギリギリで……」と主張したが、コーナー立ち上がりでフロントが流れた。だからパワーを突付いてしまった。チップ・ガナッシも「ドアを自ら開けておいて、次に自ら閉めた」とコメントしていたが、パワーがそこまでラインを寄せたようには見えなかったが……。どうだろう? 1周目にライアン・ブリスコー(チーム・ペンスキー)がトニー・カナーン(KVレーシング・テクノロジー・ロータス)を弾き飛ばしてしまったのと全く同じ状況だった。あのコーナー、イン側の出口でグリップが低いのだ。そこを走らざるを得なかったフランキッティだが、彼の走り方は少々楽観的に過ぎ、滑ってしまった。そして、ぶつかったというのが真相ではないだろうか?

パワーとフラッキッティ、久々に激しい2強対決の構図に

 パワーの怒りは理解できる。予選後の会見でもパワーは、「ダリオは概してクリーンにレースをする」とコメント。「おいおい、概してってどういう意味だ?」とフランキッティが突っ込むと、「セント・ピータースバーグでオレを壁に押しやったじゃないか」と返した。ここでふたりはディティールを話し合うことには避けたが、パワーの側には前々から「ダリオはクリーンじゃない」という印象があったのだ。ふたりはその件をジックリ話し合い、お互いの考えをクリアにしておくべきだった。
これからこのふたり、どうなって行くんだろう? 因縁の対決へと発展してくんだろうか? 楽しみだ。本能的に速いパワーと、経験的に速さに磨きをかけているフランキッティ、今のインディカーで最速の二人が仲が悪く、ライバル心を剥き出しにして戦うってのはアリだ。オーバルレーシングではお互いを尊重することが強く求められるためもあって、インディカーは仲良しクラブ的レースになりがちだ。それが少々行き過ぎていた感が近頃はあったので、強いライバル関係の誕生は歓迎したい。ミルウォーキーでのピットでのイザコザみたいな、セコイ話は抜きで、ガチンコの勝負を期待したい。

水をさしたライブ放送の誤報

 今回余計だったのは、インディカーによる大きなミスだ。アメリカのライブ放送では、「ダリオにはグリーン・フラッグ後のドライブ・スルー・ペナルティが課せられる」とコメンテイターたちが話していた。インディカーの公式ツイッターでも同じ情報が流れていたという。しかし、レース後にインディカーは、「そういう発表をする意思はなかった。審議の結果、ペナルティは課さないことと決まった」と発表した。じゃ、あれはテレビ局の暴走だったのか? だとしたら実に罪深い。レースの興味を大きく削いでしまっていた。ツイッターにペナルティの情報を流したのは誰だったんだろうか? こちらも真相究明がなされるべきだ。そして、こんなショボい過ちは二度と起こらないよう対策をして欲しい。

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