2013年6月11日火曜日

2013 INDYCAR レースアナリシス 第8戦テキサス:エキサイティングだった昨年のテキサス戦は何処へ? エアロ・パッケージ変更と新ファイアストン・タイヤ導入……新要素が多過ぎたのか?

カストロネベス、2位を大きく引き離す独走勝利 Photo:INDYCAR(John Cote)
ドライバーたちはレースの間ずっと必死にマシンを操っていたというのに……

 2位でゴールしたライアン・ハンター・レイ(アンドレッティ・オートスポート)は深い溜め息とともにいった。「ハードなレースだった。マシンをずっとコントロールし続けていた。遅いマシンでも抜くのは難しく、グリップを探し求めて走っていた。“クラッシュする!”と思った瞬間は何度もあった」。
 彼はウィナーの約4.7秒後方でゴールした。0.047秒じゃなく、0.47秒ですらない4.6919秒もトップに離されてのゴールした。”競争の激しさは空前絶後”のはずのインディーカー・シリーズだが、テキサスでのファイアストン550はエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)がブッチギリの勝利を記録した。
 多くのファンは今回のレースを「はずれ」と評価したことだろう。エリオを含むドライバーたち全員が、2時間弱のレースの間ずっと必死の思いでマシンをコントロールして戦っていたというのに……。
 ほんの2週間前のインディー500では、レコードの倍の68回ものリードチェンジが見られた。それがテキサスではたったの4回。リードチェンジが多ければ即ちレースはエキサイティングってほどシンプルではないものの、ここまで少ないとヤッパリ盛り上がりにくい。1週前のストリートレース、デトロイトでもリードチェンジはレース1がテキサスと同じ4回で、レース2はテキサスの倍の8回もあった。

新エアロパッケージとファイアストンの新しいタイヤが原因か?

 ファイアストン550は、実に近頃のインディーカーらしくなかった。たまにはハズレもあって仕方ない? いや、ハイバンクの高速オーバルでのレース、去年はとてもエキサイティングだったじゃないか! 今年も期待度が大きかった。それが裏切られた。インディーカーの技術部門には深い反省と、即座の善処が求められて当然だ。
 今年のレースがワンサイド・ゲームになったのは、フルコースコーションが3回と少なく、それらがレース前半に集中していたせいもあった。展開が単調になって独壇場を生み、そのままゴールまで流れが変わらず突き進んだ。しかし、レースをつまらなくした張本人というべき理由は、今年の使用マシンにあった。新エアロパッケージの導入とファイアストンの新しいハイスピードコース用タイヤだ。
 ドライバーたちは身の危険も感じながらマシンを懸命にコントロールし続けていた。ダウンフォースが小さく、10周も走る前にグリップが大幅に失われるタイヤを装着したマシンで……。我々はそんなレースを見てもスリリングだと感じることができていなかった。これは極めて不幸な事態だといえる。


インディーカーの科学的推察が今回に関しては裏目に

 インディーカーの技術部門は、このところずっと“いい仕事”をしてきていた。コースの種類によってターボの上限ブースト圧の規定を変更したり、装着する空力パーツについてもアレコレ思案してレースのエンターテインメント性を高めていた。それらは今年のインディーまでうまくいっていた。ところが、今回は彼らの科学的推察と現実の間に大きな乖離があった。つまりは読みが外れたということ。タイヤに関しても、ファイアストンとすれば安全性の追求など様々なことに取り組んでいるのだろうが、スペックの変更頻度が高過ぎるように感ずる。プライベートテストはごく限られた日数しか許されていないというのに、レース本番とでタイヤのスペックが異なる……これでは出場チームは非常に難しい状況に置かれてしまう。
 アレコレ書いてきたが、今回のテスサスでエリオとチーム・ペンスキーの勝利に文句をつけたいわけではない。彼らの勝利は実に素晴らしいものだった。ライバル勢にあれだけの差をつけることができたのは、エリオのドライバーとしての力、作戦・戦略を練り上げるチームの頭脳、迅速かつ確実なピット作業を行うクルーっちの高い能力……すべてがダントツのハイレベルにあったことの証明だった。そんな彼らでもなかなか勝てない。それが今のインディーカー・シリーズ。テキサスはちょっと……だったが、シーズンの中盤、後半戦もおもしろいレースが行われることと思う。
以上

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