2017年9月13日水曜日

2017 INDYCAR レポート 9月13日:佐藤琢磨選手の来シーズンの動向について――マイケル・アンドレッティの発言をめぐって

佐藤琢磨の来季RLL入りはすでにアメリカでは既成事実化しているようだが……Photo:INDYCAR (Bret Kelley)
  琢磨選手の来年について読者のみなさんからいろいろご質問が寄せられています。そこで、マイケル・アンドレッティの『佐藤琢磨選手RLL入り』発言をめぐって、現状でお話ししたいと思います。

アメリカでは決定事項として報道も

琢磨陣営からは何も発表なし
 
 佐藤琢磨選手のレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング(RLL)移籍について、もうアメリカでは決定事項としての報道がされています。琢磨選手陣営はまだ何も正式に発表をしていませんし、「移る」とも「残る」ともコメントはしてません。アンドレッティ・オートスポート(AS)との契約上、それはできないことになっているからです。しかし、チーム・オーナーのマイケル・アンドレッティの方は、幾つかのインタビューに「琢磨はウチに残らない」、「レイホール行きはもう決まっている」、「琢磨サイドが再交渉のチャンスを与えてくれないのはアンフェア」などとコメントをし、マネジャーの実名まで出して批判。そういうのが契約違反になっちゃうのでは? と心配になるほどです。

シボレーへのスイッチの話がなければ
琢磨はAS残留だったはず……

 マイケルとすれば、インディ500ウィナーを失うのは大きなマイナスですからね。新規スポンサー獲得に支障ともなるでしょう。それで怒ってるんだと思います。しかし、タネを蒔いたのは彼の方なんです。シボレーへのスイッチを検討したから、ホンダでしか走れない琢磨選手は自分の将来のために他チームとの交渉をスタートさせるしかなかった。気づいたら良いシートは残ってなかった、という事態は避けたいですからね。もしマイケルがホンダとの再契約をスンナリ行なっていたら、琢磨選手は他チームとの交渉なんてせず、残留する意向だったと思いますよ。

背景にあるASの深刻な資金難

 今、ASは資金難です。マルコのマシンはスポンサー未定で、今年もほぼゼロで通しちゃってました。琢磨選手のマシンもサイド・ポッドがロゴなしかチームのスポンサー獲得用だったレースが多かった。ロッシの予算もNAPAだけで十分にカヴァーはできません。大丈夫なのはDHLが付いているハンター-レイだけ。サック・ヴィーチのAS入りの噂が本当だとしたら、彼はかなりの額を持ち込めるってことでしょう。フル・バジェットが1台分しかない確保できてない状況で、マイケルは4台体制を維持したい考えを変えてないんですから。
 そして琢磨選手ですが、もしRLL入りが本当なら、そちらの営業チームにとっては強力なセールス・ポイントになりますね。すでにシーズン半ばで、「来年2台でフルシーズンを戦うための資金調達はなった」と発表している通り、 RLLの営業はかなり頑張って来ています。今時はフル・シーズン・スポンサーの確保はとても難しく、レース毎、あるいは何戦かずつでスポンサー・スペースを切り売りするしかない。つまりは、より多くの企業、人々と会って交渉をまとめないとならないんです。
 
もし琢磨が加われば、RLLはさらに強くなるはず

 琢磨選手の移籍というか復帰が実現したら、成長著しいレイホールとのコンビネーションはとても楽しみですね。エディー・ジョーンズをトップとするエンジニアリング・スタッフは、1台体制でもトップ・レヴェルのマシンを作り上げる力を持っている。そこに琢磨選手の経験、フィードバックが加わったら、RLLはさらに強くなりそうです。エンジニアはロッシとインディー500で勝ったトム・ジャーマンになるのでしょうか? パトリック・レーシング、チーム・ペンスキーで活躍したベテラン・エンジニアは昨年末からRLLでコンサルタントとして働いており、オリオール・セルヴィアのマシンをインディでは見ていました。それとも、新たなエンジニアを加入させる? アンドレッティ・オートスポートで琢磨選手を担当していたギャレット・マザーセッドがRLLへ……なんて可能性もありますよね。シモン・パジェノーはチーム・ペンスキーへ移籍した際にシュミット・ピーターソン・モータースポーツからエンジニア連れて行きましたし。
これらの話は飽くまでも、マイケルの言う通りに琢磨選手のRLL移籍が本当だったら、ですけど。

以上

5 件のコメント:

  1. 天野さん、ハリケーン大丈夫だったみたいで安心しました。コメント、ありがとうございました。琢磨選手の件に関しては、シーズンが終わってからでないとわからないということですね。マイケルは、けっこう暴露してましたからね…。インディ500連覇がかかる琢磨選手にとっては4台体制のアンドレッティのほうが有利だと思いますが。レイホールは、なんと言ってもデトロイト2連勝がきわだちますよね‼琢磨選手も、デトロイトは得意ですから期待できますよね。でも、マイケルにあそこまで言われて琢磨選手もやりづらそう…気にしてないか?確かに、シボレーの甘い誘惑につかまらなければ琢磨選手はそのままだったと思いますし。私は、インディカーを観るのが大好きで契約だのエンジンがこうだの細かいことはわからないけど天野さんのブログは勉強になります。本当に、ありがとうございます。ソノマのレポートも、楽しみにしてます‼

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  2. RLLでインディ500獲れたら本当の意味で2012年のリベンジ達成ですね。
    しかし、マルコは肩入れしようがないくらい成績が悪いから良い(?)ですが、グレアムとチャンピオン争いするようになったら、ボビーの心情としては…。

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  3. アンドレッティ、資金難だったとは。気が付きませんでした。それでインディ500ウィナーを失うのは厳しいですね。

    琢磨選手サイドがリリースできるのはいつでしょう。
    最終戦の後ですかね?早く発表してほしいですね。

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  4. アンドレッティ・オートスポートは確かにインディーで強い。4年で3勝ですからね。4カー体制も大きなメリットです。しかし、資金難なら力を維持できないかも。来年は新エアロだから、より一層の開発が必要なのに。琢磨選手はインディを得意にしてます。優勝しかけた2012年を思い出してください。あの時はフルシーズン参戦を再開したばかりのレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングからのエントリーで、1台体制みたいなもの(ミチェル・ジョルダインJr.は琢磨のセッティングに全面的に頼ってのインディへのスポット参戦で予選不通過)だったのに、最終ラップに強豪チップ・ガナッシ・レーシングのダリオ・フランキッティと勝負していた。今のRLLは当時とは段違いの強さを持ってます。あ、これもまた、「琢磨選手が来年RLLで走るとしたら」という仮定での話ですけど。

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  5. 天野さん、情報ありがとうございます!
    いつも楽しみにしています。
    ASは、エンジニアリングはしっかりしているみたいなのに、メカニックのポカ(ミスというよりポカ)が多いような気がしていました。やはり、資金難が士気影響したりしていたのでしょうか?
    決して、チームと関係が悪いようにも思えなかったし。
    Daisuke8849さんの言う、本当の意味でのリベンジを見てみたいですね。

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