2018年7月9日月曜日

2018 INDYCAR 佐藤琢磨コメント R11 アイオワ・コーン300 アット・アイオワ・スピードウェイ Race Day 決勝:「クルマを感じながら攻めつつも、コントロールして走ることができたので、ここまで順位を上げられたと思います」

Photo:INDYCAR (Joe Skibinski) クリックして拡大
「正直言って、ポディウムを争えるほどの
スピードが僕たちにあるかどうかはわからなかった」


Jack Amano(以下――):3位入賞、おめでとうございます!

佐藤琢磨:ありがとうございます!

――シングル・フィニッシュを目指すと言っていたのが、表彰台フィニッシュとなりました。

佐藤琢磨:正直言って、ここまでは期待していなかったですよね。レースに参加する以上、常にもちろん勝利は意識するし、トップは目指すけども、まぁ現実的に考えてジュニア・フォーミュラでもあるまいし、これだけのトップ・フォーミュラであまり奇跡っていうものは起こらないし、ましてオーヴァルは雨のレースがないわけだから、ここまでのクルマの完成度を見る限り、もちろんトップ10と言いつつトップ5は狙っていたけれども、ただ正直言ってポディウムを争えるほどのスピードが僕たちにあるかどうかはわからなかった。ただ、昨日の夜、実は僕たち結構色々やったんですよ。クルマのセッティングを変えました。どれだけ御存知かはわからないですけど、何度もガレージの方に出てっていろんなクルマを見て、取れる情報は全部とって、そこから導き出した自分たちのクルマの状態と、速いクルマのセッティングを見比べたんです。


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「他のドライバーたちが彼らの予想以上に苦しんだレースになった
純粋なスピードでは僕らはファステストじゃなかったと思います」

――外から目で見ただけでわかる点があるんですか?

佐藤琢磨:わかりますね。特にサスペンションのピック・アップ・ポイントでロール・センターの位置はわかるので。もうウィニング・カーのジェイムズ・ヒンチクリフのもバッチリ見て記憶しました。


――ビクトリー・レーンでの撮影が終わった後に見てたのは、それだったんですね?

佐藤琢磨:そうです。そう言うのって意外に大事で、グレアム・レイホールと僕のクルマで今日、明暗を分けたのはそこだと思うんですよね。グレアムは昨日までとほぼ同じスピードでしたよね。クルマも大きく変えていなかったし。ただ、僕らはちょっとこう自分たちのやり方をやっていて、ファイナル・プラクティスから決勝までにクルマを変えたんですよね。特に、スプリングを50ポンド、100ポンド変えるっていうのは、自分たちで想像できるんだけれども、ロール・センターを変えるっていうのは結構勇気がいることなんです。クルマが大きくバランスを崩す可能性もあるから。ロール・センターだけじゃなく、すべてトウもキャンバーも、スプリングやダンパーのパッケージもすべて含めてのバランスだから、それがやっぱり崩れてダメになっちゃう可能性もあったんだけど、自分たちとしては可能性がある限りそこに賭けたいって気持ちが強かったので、それを実行して、それが良かった。結果的には、だから科学的に検証した結果が今日良くて、たまたま他のドライバーたちが彼らの予想していた以上に苦しんだというレースになっていたと思います。純粋なスピードでいうと僕らはファステストじゃなかったと思いますね。特に、スティント内の真ん中から終盤ではトラック上で一番速いってことが今日は何度かあったんだけど、純粋にニュー・タイヤでバーっと走った時とか、リスタートではジョセフ(・ニューガーデン)とかヒンチクリフの方が速かった。そういう意味では非常におもしろいレースだったかな?」
 正直、こんなにダウンフォースがこんだけ小さくされたマシンて嫌だった。もうちょっとオーヴァルらしいサイドバイサイドのレースをって思ってたから。でも、ダウンフォースがない中で、周りがすごく苦しんでいる中で、自分もアクセルをコントロールしながら走っていて、それはとても楽しかった。今日は本当に、クルマを感じながら攻めつつも、コントロールして走ることができたのでここまで順位を上げることができたかな、と思いますね。

「今日のオーバーテイクはタイヤをどう持たせたかというオーバーテイク

スティントの20週過ぎからものすごい差が出ましたよね」 


――昨日のファイナル・プラクティスでは、オーバーテイクがほとんど見られなかった。それが今日、レースではかなり多くのオーバーテイクがありましたよね?

佐藤琢磨:そうですね。だからその、オーバーテイクっていうのがどういう観念かってことなんですよね。通常のグリップ・レベルが安定している中でのオーバーテイクっていうのは去年より減ってるんですよ、やっぱりダウンフォースが少ない分。ただ、アイオワの特徴で言うと、ボトム・レーンがものすごくバンピーなので、だいたいみんなセカンド・レーンを走る。そうすることによって走り方、戦い方の幅が増えるんですよね。ボトム・レーンは実はグリップが一番高く、そこをもちろん走ることもできるので、フォンタナみたくマルチ・レーンになるので、ダウンフォースが少なくても前のクルマに近づくことができる。それでオーバーテイクが可能になるんですよ。ただ、今日のオーバーテイクはどっちかって言うと、タイヤをどういう風に持たせたかっていうオーバーテイクでしたよね。結局、ニュー・タイヤをみんなが装着した直後ではオーバーテイクは少なかったと思うんですよね、リスタート直後の1〜2コーナーを除いては。それが安定して来て、5周ぐらいタイヤのオイシイところがあって、次の10周が膠着状態になって、その後ですよね。スティントの20周過ぎからものすごい差が出ましたね。
――最初のスティントはスタート順位をほぼ保ってましたが、その長いスティントの後半で順位を上げて行った。そこで今日はかなり行けそうだと感じましたか?

佐藤琢磨:感じましたね。最初、スタートした直後に順位を上げることができなかったのは、クルマがあまり曲がらなくて、物凄くスロットルを戻していた。スピードを載せられなかった。だけど、意外と周りも似たような状況で、これだったらどんぐりの背比べだから、自分だけが悪いんじゃないから結構勝負になるかなって考えましたね。そうやって走っているうちに、30周ぐらい走ったところかな、周りが大きくスロットルをリフトしないと曲がれなくなって来た。その中で自分たちは強かったですよね。そこで次のピット・ストップ、さらに次のピットでみんなフロント・ウィングを上げてって、多分みんなのペースも上がるだろうって考えてたんですよ。僕らも今日は4ターン以上ウィングを上げて、もう最後はリヤがもうこれ以上は・・・ってところまで行ってました。それぐらい、3スティントをかけてクルマを作って行って、その中でマシンのハンドリングとしては周りより一歩先手を打てたので、特にミッド・スティントからのタイヤの摩耗した時点でのペースがすごく良かった。
「ニューガーデンが後ろに迫ってきたときに

ラップダウンを逃れられたのが今日の大きなポイントでしたね」


――ザック・ヴィーチのアクシデントまでイエローがなく、何度も周回遅れギリギリのシーンがあった。あそこで見せた粘りが今日はすごかったですね?

佐藤琢磨:良かったです。とにかく今日はジョセフが速かった。特に、スタート直後からの彼のクルマは本当に決まっていた。スペンサー(・ピゴット)が言ってた、“レース中に一度もフロント・ウィングを変更しなかった!”っていうのも結構驚異的。ある意味、ジョセフもそういう状況だったんだと思います。彼が僕の真後ろまで迫った時、僕自身のペースはそんなによくなかったですけど、そこそこのペースで走れたので、後ろに従えて何とかラップ・ダウンを免れた。それはその後のイエローとかを考えると、あそこは大きなポイントでしたね。
――ギリギリになると1台パスし、そのマシンを間に入れてニューガーデンとの差を広げる……というシーンが繰り返されてました。

佐藤琢磨:そう、そう、そう。今日はトラフィックの処理が難しかった。レース・リーダーであっても難しかったぐらい。そこをうまく逆手に取れたと言うか……。


「エドとの軽い接触によって、再びポジションを元した形に」
 ――終盤にはトップ争いまで上って行く勢いでしたが、ピット・タイミングが遅くて順位を下げました。

佐藤琢磨:そうでしたね。自分自身、正直言ってラスト・スティントに入ったところで4台に抜かれたじゃないですか。アレって、彼らが僕より5周ぐらい先にピットに入って、ニュー・タイヤでゲインしたんですよね。それに対して僕は、トラフィックに引っ掛かっててペースがずっと上がらなかった。どうスティントをストレッチして、どのタイミングでピットに入るかっていうのは、自分はレースをしてるからわからない。だから、ずっとP2って出てたのが、いきなりP5になっちゃった時には何が起きたのかさっぱりわからなかった。
――しかも前との差がかなり大きく開いてしまっていた。

佐藤琢磨:大きかったですよね。だから、そういうこともレースでは起こり得るんですよね。ただ、今日の場合は最後に見捨てられなかった。
――最後のピット・ストップ前に実力で2番手まで上っていたのに。

佐藤琢磨:そうでしたね。そして最後はエド・カーペンターとの軽い接触。それによって引き金を引いて、また元に順位を戻したって感じになりましたね。そうなることを狙ってやったわけじゃないし、むしろエドがあそこでスピンするっていうのは非常に珍しいことだろうし。残念ながら……なのか、不幸中の幸いなのか、当たってお互いハッピーだった。彼は僕が接触したことでビッグ・クラッシュを避けることができたし、こっちはリヤのフェアリングをちょっと直せば大丈夫な程度のダメージでした。そこは良かったですね。

「イエローフィニッシュはファンも僕らも残念ではあるけれど

今日はそこまでのレースが良かったのでチームもすごく喜んでくれました」

 ――あのままグリーンでレースが続いてたら、ゴール前にピゴットとハードなポジション争いになってたでしょうね。

佐藤琢磨:なった。イエローが出た後にまたグリーンになったら、リスタートで行く気でしたよ。最終的にイエロー・チェッカーっていうのはファンとしても、僕らとしても残念なところはあるんだけれども、ただ、今日はそこに行くまでのレースがすごく良かったので、チームもすごく喜んでくれた。ボビーも”みんなすごい笑顔だよ”って言ってくれてました。今日は本当に、こんなクルマを作ってくれたエンジニアのエディ(・ジョーンズ)とチーム全員に感謝したいですね。

 
「ボビーが”ピットに入る”って言いだしたので”ええっ!”て

僕は入るつもりはなかったし、入れと言われても無視しようと思ってた」

――最後のイエローで、ジョセフとロバート・ウィッケンズ、二人がピットに入りましたよね?
僕としてはかなり驚いたんですけど、拓磨陣営としてはピットと相談とかあったしたんですか?


佐藤琢磨:最初は、ボビーがピットに入るって言い出したんですよ。でも、えぇっ? と思って、俺たちフェニックスでそれやって失敗したじゃん?
本当に入るの? って何度も聞いて、ステイ・アウトになりました。
 

――危うかったんだ!
 

佐藤琢磨:そう。危うかったですよ。でも、僕は入るつもりなかった。無視しようと思ってた、入れって言われても。だって、どう考えたって残りはもう5周でしょ?
もしあそこで入っちゃってたら、ポジションが後ろに行き過ぎて絶対に届かないと思った。それだったら、後ろにもラップ・カーいたし、ある程度はニュー・タイヤのクルマが最終的には上って来るかもしれないけど、十分に抑えられるぐらいのスピードは持ってたし、逆にあそこでピットに入らない人とのバトルになるから、結果的にはスペンサーとの戦いになっていたんじゃないかな?
だいたい、あぁいう場合はリーダーの作戦をフォローするんですよね。なんか変なカタチで僕らがレースの最後をコントロールしてましたよね。自分たちがイエローを出して、自分たちでポジションも戻して……。

 
――エド・カーペンター、テキサスではウィッケンズにぶつかり、今回は拓磨選手の目の前で単独スピン。

佐藤琢磨:さっきエド、感謝しに来ましたよ、ホントにありがとうって。

――琢磨選手がぶつかったことでスピンが止まった?

佐藤琢磨:そう。スピンしたものを戻してあげた。あのままぶつからなかったら、彼はリヤからクラッシュせずに済んだ。こっちはチョンってぶつかった。でも、あれもラッキーだった。あれがタイヤに当たってたら絶対にパンクしちゃってたもん。

――フロント・ウィングは当たってない?

佐藤琢磨:当たってない。彼のフロント・ウィングと僕のリヤのタイヤの前にあるフェアリングがちょっと触った。

「ショートオーバルで、ずーっとプッシュして

追い抜いてポディウムに乗れて、すごく楽しかった」

――ショート・オーバルでこれだけ戦えるクルマを作れた。今日のレースは達成感ありますね。

佐藤琢磨:自信になりますね。自信に繋がった。良かったよね、久しぶりだったから。今までショート・オーバルっていうとミルウォーキーとかでレースをリードしたりとか、いいレースを見せれたことはあった。ここアイオワでも2010年にポール・ポジションを獲ったり、その後もいいレースがあったんだけれども、なかなか最後までまとまらなかったですよね。それが今日はずーっとプッシュして、追い抜いて、追い抜いて勝負してポディウムに乗れたので、そこはすごく楽しかったし、久しぶりにショート・オーバルはいいなって思いましたね。ただ、これってどのシートに座ってるかなんですよね。例えば今日のライアン・ハンター-レイとかは、本当に嫌だったと思いますよ。早く家に帰りたいって思ってたはず。アンドレッティ・オートスポートがあそこまでのスピードを見せていて失速したのは意外だったですけどね。前半の彼らは良かったですけどね。みんながダメな時は良かったんだけど、みんなのペースが上がってからは彼らは最終的に上がって来れなかった。今日はロッシを3回ぐらい抜いたし。アレは快感でしたね。
これからのシーズン残りの6戦、このまま上って行くような
シーズンとして最終戦を迎えたいですね」

――今回のレースでエド・ジョーンズたち、琢磨担当エンジニアリング・チームとのシーズン終盤、楽しみになったんじゃないですか?

佐藤琢磨:そうですね。結束力はついて来たと思います。やっぱり、ポーンってすぐに結果が出ることもあるけど、時間がかかるけども確実なものを作り上げて行くってふたつのパターンがありますよね。例えばシモン・パジェノーがチーム・ペンスキーに行った時、1年目は悪かったけど、2年目にタイトルを獲った。時間がかかっても良くなるってことはある。僕がアンドレッティ・オートスポートに行った時にはギャレット(・マザーセッド)というKVレーシング・テクノロジー時代に一緒だった、勝手知ったるエンジニアだったのですぐにパフォーマンスが出たけども、今年、エディーとやって、お互いのやり方、紙の上や机の上など、走っていない時はお互い非常にわかり合っていたと思うし、フィロソフィーも似たようなものを持ってたと思う。でも、仕事を一緒にやって行くと、本当にちょっとしたところでボタンをかけ違うと、インディーカーのここまでのコンペティションだと、1個かけ違うと全然走らないクルマになっちゃう。それがきっちりと、ひとつひとつようやく良くなって来て、6月からのレースで非常に良くなって来ています。階段を少しずつ登って来てます。まぁ、これからのシーズン残りの6戦、チームが得意としているところもあるし、僕自身が楽しみにしているコースもあるので、このまま上って行くようなシーズンとして最終戦を迎えたいですね。
以上

1 件のコメント:

  1. 天野さん、取材おつかれさまです‼最初に、すみませんがIMSAのGTクラスでフォード67号車に乗っていたライアンブリスコーが優勝したという記事を読みました。すごく、うれしかったです‼IMSAは、テレビでやっていないのでなかなかブリスコーのレースシーンを観れなくてさみしいのですが…。ブリスコー、インディ復活ないのでしょうか。観たいものです…。さて、アイオワは異次元のニューガーデンが楽勝かなって思ってましたが…ヒンチやってくれました。ウィッケンズにいいとこ持ってかれっぱなしだったから(笑)ニューガーデンとウィッケンズの残り5周でのピットインは、作戦ミスだったのでしょうか?琢磨選手、もってましたね‼エドとの接触も大きくなかったみたいですしリードチェンジで琢磨選手がトップになってピットインして5番手に下がったのはニューガーデンたちに合わせてピットインしてたら違う終わり方をしていたのでしょうか?表彰台で、はしゃいでた琢磨選手がよかったですね‼本当にうれしそうでしたから。ブルデーは、アイオワがお気に召さなかったようで…次の好相性のトロントで頑張ってほしいです‼長々とすみませんでした。次のトロントも楽しみにしてます。体には気をつけて取材してくださいね。

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